マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 そう言えば最近遊児デュエルしてないなぁ。……という訳で、タッグデュエルです。




 あとがきにまたちょろっとだけ登場した幻想体の能力と印象を載せておきます。宜しければご一読ください。


タッグデュエル 遊児・隼人対十代・翔 その一

 

「いやあありがとうね遊児ちゃん。それにあなた達も。おかげで何とか開催できそうだわ!」

 

 トメさんが喜びながら手を取ってくる。別に上手くいったのは偶然だから良いんだけどな。

 

「いえいえ。丁度暇してた奴が何人かいて助かりました。いつもお世話になってますからね。お役に立てて良かったです」

「気にすんなよトメさん! 困った時はお互い様ってな」

 

 購買部主催タッグデュエル大会当日。俺達は授業後に購買部に向かい、この大会の参加申請を終えた。トメさんによると開催できるかどうかギリギリの人数だったそうで、この参加がちょうど決め手になったという。

 

 ちなみにチーム分けだが、明日の制裁タッグデュエルの練習を兼ねているので当然十代と翔で一チーム。……あと何故か俺と隼人もチームで参加となった。

 

 俺は当初横で見てるだけのつもりだったんだが、「横で見てるだけなんてつれないこと言うなよ。折角だから遊児と隼人も参加な!」と十代に強引に押し切られた。

 

 あくまで第一の目的は十代と翔にタッグデュエルの経験を積ませること。そして第二にトメさんに協力して大会の参加者を引っ張ってくることだ。参加した時点でトメさんへの義理は果たせたことになるが……。

 

「遊児。折角だし頑張ろうなんだな!」

「えっ!? ……あ、ああ。頑張ろう!」

 

 隼人が珍しくやる気を見せている。この前の父親との一件からまたデュエルに前向きに取り組み始めたのは良いが、俺はそこまでやる気じゃないんだよなぁ。……まあ出るからには大いに楽しむつもりではあるが。

 

 

 

 

「はぁ~いお集まりの皆様! 長らくお待たせいたしました。これより購買部主催タッグデュエル大会を開催いたします!」

「「うおおおっ!!」」

 

 店員のセイコさんの開催の合図とともに、ここに集まった生徒たちの雄叫びが響き渡る。ノリが良いのは大変結構だ。

 

 と言っても参加者自体はそこまで多くなく、俺や十代のチームを含めて8チームの計16人。それ以外はたまたま来ていた客や、俺が声をかけたけど参加はしなかった暇な奴らだ。

 

「ルールは簡単! それぞれLPはパートナーと共通で8000。最初のターンは全員モンスターの攻撃は行えません」

 

 本番前のセイコさんの説明を、参加者は全員集中して聞いている。ここを怠って、実戦で聞いていなかったは通らないからな。

 

「パートナーのフィールドも自分のフィールドとして扱えますが、伏せカードの確認や発動は行えません。相談も無しです」

「なあ遊児。つまりはどういう事だあ?」

「そうだな。……ざっくり言うと、パートナーのモンスターを生け贄やコストに使うことは出来ても、パートナーの伏せているカードを勝手に見たり使ったりは出来ないってことだ。相談がダメっていうのは多分味方のカードの確認防止のためだろうな」

 

 横から隼人が小さな声で話しかけてきたので、自分なりにまとめて説明する。十代達を見ると、どうやら翔もよく分からなかったらしく十代に訊ねている。

 

 ……よし。今の内に聞いておけば、明日の本番に失敗するという事はないだろう。少しずつ身になっているようで何よりだ。

 

 他にもこまごまとした説明はあったが、残りはタッグデュエルのというよりも店での注意事項の面が多かったので省略する。

 

 デュエル中に飲食しちゃダメって……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 どこぞのシリーズでそんな主人公が居た気もするが、少なくともGXの世界でそんな人は居ないはずだ。……居ないよな?

 

 説明も終わり、対戦相手をくじ引きで決定する。十代達のチームとは……ふむ。場所が離れているから当たるとしたら決勝戦か。何ともお約束だな。

 

「こりゃあ燃える展開じゃねえか! 遊児! 隼人! 決勝で会おうぜ!」

「その意気込みは良いんだが、まずはタッグデュエルの経験を積むことを第一にな! ……翔も最悪ここでならミスしても挽回が効く。思い切ってやって見な!」

「うん。ありがとうね久城君。まずは初戦、アニキの足を引っ張らないように頑張るよ……隼人君も、決勝でね!」

「おう! 約束なんだな!」

 

 こうして十代達と決勝で戦うという熱い約束を交わし、俺達はそれぞれのデュエルスペースに赴くのだった。

 

 

 一時間後。

 

 

「さあ皆様! いよいよこれより購買部主催タッグデュエル大会、()()()を開始します。まずはこちらのタッグ。オシリスレッド所属、遊城十代君と丸藤翔君ペア!」

「いえ~い! どうもどうも!」

「ど、どうもっす」

 

 セイコさんの合図とともに、これまでの試合を勝ちあがった猛者が二人、決勝用のデュエルスペースに歩み出る。

 

 これまでは場所の都合によりソリッドビジョン無しのテーブルデュエルだったが、決勝戦のみはそれが出来るだけのスペースが取れるのだ。

 

「続きまして……これは意外っ! なんと決勝戦の対戦相手も同じオシリスレッドの生徒です! 久城遊児君と前田隼人君、どうぞ!」

「す、凄いんだな! 俺がこんな場所まで来られるなんて……遊児のおかげなんだな!」

「いや。隼人がよく自分と相手の場を見ながら動けたからさ。俺のやったことなんてそれに乗っかっただけだ」

 

 多少ご都合主義の流れは有るが、どうにか俺達のチームも決勝まで駒を進めることが出来た。と言っても実力だけで勝ち上がれたとは流石に思っていない。ちゃんと理由もある。

 

 一つは今言ったように、隼人が予想以上に奮戦したこと。以前のやる気のなかった頃に比べ、確実に隼人も成長している。

 

 二つ目は俺のデッキが対処しづらいという事だ。幻想体という珍しいカテゴリのため、戦闘記録が少なく対処法も確立されていないのだろう。

 

 一応三つ目の理由として、参加者の大半はオシリスレッドの生徒だったことも挙げられるか。数少ないラーイエローの生徒は十代達が倒したしな。

 

 兎にも角にも、こうしてなんとか約束通り決勝まではこぎつけたわけだ。俺と隼人、十代と翔でそれぞれ所定の位置に移動する。

 

「へへっ! やっぱり来たな遊児。隼人。待ってたぜ!」

「ああ。なんとかここまで辿り着いたぞ。そっちはちゃんとタッグデュエルの経験は積めたのか?」

「うん! 少しずつだけど、なんとなくタッグデュエルのことが分かってきた気がするよ。……ここまで来たんだ。負けないよ二人共!」

「おう! 俺も負けないんだな!」

 

 鼻を掻きながらいたずらっ子のように笑う十代は当然として、翔も少しではあるが自信が付いてきたようだ。これなら明日の制裁タッグデュエルも大丈夫だろう。

 

 本来なら、さらに調子を上げるべくこちらがわざと負けるというのも選択肢の一つとして挙げられるかもしれない。だが、

 

「遊児。そう言えばお前とはこれまで一度も本気でデュエルしたことなかったよな。……全力でデュエルを楽しもうぜっ!」

「これまで何度もアドバイスに乗ってもらったけど、アニキと一緒に戦う以上僕も負けられない! 今日は勝たせてもらうよ!」

「思えば俺がここまで来られたのも、皆のおかげなんだな。だからこそ……俺はお前達に勝ちたいんだなっ!」

 

 十代も、翔も、隼人も、この中の誰一人として、相手が友人だから手を抜こうなどと思っているものは居ない。いや、()()()()()()()全力でぶつかろうとしている。

 

 こんな熱い奴らの心意気を、わざと負けるなんてことで穢すというのは明らかに無粋。という訳で、

 

「……上等だ。最後の最後で敗北の味を教えてやる。かかってこいやっ!!」

 

 熱い奴らには熱いノリで! 俺は軽くクイっと指を曲げ、不敵な笑みを浮かべながら挑発してみせたのだ。

 

 今俺は、原作主人公に挑む。

 

 

 

 

「「「「デュエルっ!!」」」」

 

 遊児・隼人 LP8000

 十代・翔 LP8000

 

 順番 翔→隼人→十代→遊児

 

「まずは僕からだ。ドロー! ……僕はパトロイドを攻撃表示で召喚! カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

 翔の場に、パトカーのような形のモンスターが出現する。相手の場のセットされたカードを確認出来るモンスターか。ピーピングは地味に強いんだよな。

 

「俺のターンなんだな。ドロー! 俺はモンスターを裏側守備表示でセット。カードを1枚伏せて……ターンエンドなんだな」

 

 モンスターをセットして隼人は守りの構えだ。

 

 パートナーのセットしたカードは味方であっても覗くことは出来ない。なのでタッグ戦において、裏側守備は味方に対してもブラフとなる。それでもやるという事は、俺の予想が正しければおそらくあれは……。

 

 隼人は視線をこちらにチラリと向けて一度こくりと頷く。……ここまで信じられているとあっては、確証があろうがなかろうが関係ないか。出来る限りやってみるだけだ。

 

「俺の番だな……ドローっ! 俺はフェザーマンを守備表示で召喚! カードを2枚伏せて……ターンエンドだ」

 

 十代の場に翼持つ緑のヒーローが出現する。ふむ。流石の十代も最初のターンは様子見か。まあ皆最初のターンは攻撃できない以上、どう仕掛けられても良いように守りを固めるのが定石だよな。

 

「最後は俺だな。ドロー。……俺は手札から『幻想体 空虚な夢』を守備表示で召喚」

 

 俺の場に現れたのは、白くてもこもこの宙に浮かびながら眠る羊だった。目を閉じて眠る様は中々に愛らしい。

 

 ただ宙に浮いているだけで普通ではないのだが、体毛の下の地肌はどうやら紫色。そして同じく薄い紫の頭部から伸びる二つのクルリと巻いた角に、体毛の中からぎょろりと覗く緑と紫の瞳が何とも言えない不気味さを醸し出している。

 

 ソリッドビジョンでは初めて見たけどこんな感じなのか。……う~む。もふもふもこもこで、枕にして昼寝でもしたらさぞ気持ちよさそうな気がするのだが、それと同時に何故か()()()()()()()()()という感じもする。不思議な羊だ。

 

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンドだ」

 

 こうして攻撃の出来ない一巡目は、各自ほとんど動きのない静かな滑り出しから始まった。

 

 

 

 

 そして、激動の二巡目が始まる。

 




 本当にちょろっとでしたね!

 次話は明後日投稿予定です。




 これから下は幻想体の説明になります。

『幻想体 空虚な夢』

 星3 ATK1400 DEF1000 獣族 光

 効果
 ①このカードの召喚、特殊召喚、リバース時、このカードにクリフォトカウンターを2個乗せる。
 ②このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードにPEカウンターを2個乗せる。
 ③1ターンに1度、相手の攻撃宣言時に発動可能。相手フィールド上の攻撃表示モンスター1体を選択し、守備表示にする。このカードがフィールド上にある限り、そのカードは表示形式が変更できない。
 ④自分のターン終了時、カードに乗っているクリフォトカウンターを1つ取り除く。
 ⑤自分のターン終了時、このカードにクリフォトカウンターが乗っていない場合、このカードを破壊しフィールド上の全ての表側守備表示モンスターを攻撃表示にする。この効果で攻撃表示になったモンスターは攻撃力が0となり、表示形式を変更できない。

 相手に幸せな夢を見せる羊。しかし夢が幸せであればあるほど、現実に戻った時に辛くなる。いくら普通に眠っても、一度起きてしまったらもうその幸せな夢は見られない。

 最終的には相手が永遠に眠っていたいと懇願するようになるヤバい羊。あとブチ切れると何故かニワトリに変身して周りを叩き起こしに来る。安眠妨害。

 だけど能力の雲のベッドはとても寝心地が良さそう。

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