マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
戦いは終わり、爆炎と砂埃が晴れてその場に残る者達の表情を露わにする。
しかし、片や疲労しながらも穏やかな顔を崩さないのに対し、もう片方は明らかに不機嫌だった。
『アニキ~。大丈夫?』
「引っ付くな。……チッ! まさかあの状況で引き分けに持ち込まれるとは」
イエローが目をウルウルさせて寄り添おうとするのを、万丈目はぴしゃりと苛立たし気に追い払う。勝敗だけで言えば引き分け。しかし万丈目からすれば負けに近いと感じていた。
「ふふっ。そうでもないさ万丈目君。この引き分けは、僕がこのターンで勝敗が付かなければ降参すると言ったから君が攻めを急いだ事も原因の一つ。それにもう一つ」
吹雪は指を一本立てて更に続ける。
「前のターン君は僕の目を覚まさせる事を優先し、敢えて攻撃力の高いアームド・ドラゴンではなくレッドアイズで直接攻撃した。そのダメージ分が通っていれば、今のターンアームド・ドラゴンで先に攻撃する事でレッドアイズ・バーンを発動する前にLPを削り切られていたよ」
レッドアイズ・バーンの発動タイミングは破壊された時。つまりダメージ計算の後なので、戦闘ダメージでLPが0になっていれば当然使えない。
そう勝ち筋はあった事を指摘したのだが、万丈目は余計に苦虫を噛み潰したような顔をする。
「ふんっ。どこまで行っても所詮たらればだ。それを言うなら操られて万全でない状態の吹雪さんに勝ちきれなかった時点でこちらの不利。……はぁ。まあ良い。悔しいが、俺様がこの学園のトップに立つ為に越えねばならん壁の一つを味わえただけ良しとするさ」
「ハハハ。じゃあ壁としても先輩としても、もう少し頑張ってみようかな! 早速あの黒い靄の本体を追いかけ……っと」
笑いながら歩き出そうとした吹雪がぐらりと態勢を崩し、それをカイザーががっしりと支える。
「吹雪。ただでさえ消耗しているんだ。少し休め。お前もだ万丈目」
「すまないね亮。でも大丈夫。少し肩を貸してもらえれば平気さ。君もそうだろう万丈目君?」
吹雪が見た所、万丈目は自分ほどには消耗していないと判断していた。途中まで闇のデュエルだったというのに大した精神力だと感心しつつ、彼ならばさっさと一人で敵を追いかけるだろうと予想し、
「いや。カイザーの言う通りだ。俺様もここで少し休むので、吹雪さんも休むと良い」
そう言って手ごろな石に腰かける万丈目に対し、少し驚いて目を見開いた。ちなみにカイザーやイエローも驚いていた。
「何だ? 俺がここで休むのがそんなに不思議か?」
「まあね。少し戦った僕でもそう思えるほどに、君は……そう。闘志に満ち溢れていた。なんなら消耗していようが追いかけるんじゃないかというぐらいだったのに、ここで休むという選択肢が出るとはちょっと思いづらくて」
吹雪の言葉にイエローがうんうんと頷き、カイザーも目で同意を語っていた。
「追わんとは言っていない。少し休んでからというだけだ。それに……奴が言ったからな。
「まあ。久城は俺が認めた男。敵が幻魔だろうと助太刀も要らんかもしれんがな」とニヤリと笑う万丈目に対し、『ア、アニキの信頼が重いのよん』と少々引き気味のイエロー。
「という事らしい。万丈目もこう言っている事だし吹雪も休め。そんなよれよれではいざ戦いになってもどうにもならないだろう?」
「……仕方ないか。折角先輩として良い所を見せるチャンスだったんだけどねぇ」
七精門のド真ん前というとんでもない場所ではあるが、吹雪も折れてその場に座り込む。
こうして決戦を終えた男達は、僅かながらの休息を取る事となったのだ。
「ところで、休んでいる間に君の明日香についての想いをもう少し詳しく聞かせてもらいたいなぁ」
「聞いてくれますかっ! まず天上院君の魅力は何と言ってもあのデュエル中に見せる凛とした横顔に……」
「お前達。休むんじゃなかったのか?」
……僅かばかりにはならないかもしれない。
◇◆◇◆◇◆
一方その頃。
バキバキバキ。
『くっ!? そろそろ限界か』
幻魔を抑える幻想体達の状況は、いよいよもって悪くなっていた。
死んだ蝶の葬儀の操る蝶の群れは大半を散らされ、足元を拘束していた雪の女王の氷は力づくで破られた。
葬儀自身も精気を大分吸われ、もう実体化を保つことが精いっぱい。だというのに、
グオオオオオンっ!
肝心のラビエルはほとんど消耗していない。まったくの無傷とまでは言わないが、少しずつ吸収した精気によって回復しているのだ。
『そうだ。やれラビエルっ! そのまま我らにたてつく邪魔者共を蹴散らしてしまえっ!』
肩に乗る悪霊が騒ぎ立てる中、ラビエルは命令でというより散々自身の邪魔をした精霊を薙ぎ払うべく剛腕を振るう。だが、
『やああああっ!』
あわや腕が葬儀を叩き潰さんという所で、ココロの放つ無数の星形弾がそれを阻む。
『セイちゃんっ! 今っ!』
『分かってる』
致命傷には程遠く、すぐに精気吸収で治ってしまう程度の威力だが、それでも葬儀をセイが逃がす時間を稼ぐには充分。しかし、
『きゃあっ!?』
『センパイっ!?』
直撃こそしなくても幻魔の一撃が大地を叩き、その拳圧が衝撃となってココロを襲った。セイの加護で致命傷こそ負わないが、それでも吹き飛ばされてゴロゴロと地面を転がるその姿はもうボロボロだ。
皮膚はあちこち切れて血が滲み、髪もすっかり鮮やかさを失った。服は土に塗れ、ステッキも取り落とした。だというのに、
『……はぁ……はぁ』
その瞳に諦めの色はない。落ちたステッキを拾い直し、ぎゅっと力強く握り直して力強く幻魔を見据える。
『……何故だ? 何故だ何故だ何故だぁっ!? 何故そこまで立ち上がる。勝ち目などない事は分かるだろうっ!?』
悪霊は苛立たしさと不可解さにそう叫ぶ。
本当ならとっくに目的地に辿り着いていた。ラビエルの進みの遅さを差し引いても、間違いなく今頃は闇のアイテムを奪取し、三幻魔を操る力を手にしている筈だった。
なのに現実はこれだ。すぐに潰せると睨んでいた幻想体達は、互いに協力し合いどこまでもしぶとく食い下がってくる。その中でも極めつけがこの魔法少女だ。
『もしや……お前もラビエルと同じく闇のアイテムで従わされているのか? もはやそうとしか考えられん。でなければここまで命を削って戦う理由はない筈だっ!?』
正確にはラビエルにそこまで絶対の強制力が働いている訳ではないのだが、悪霊は闇のアイテムによる強制だと推測する。だが、
『……はぁ……別にぃ? 一応……ある程度は管理人さんに従うけど、流石に……命が尽きるまでは頼まれてもしないかなぁ』
『では何故だっ!? 何がお前をそこまで駆り立てるっ!?』
ヒステリックに叫ぶ悪霊に対し、
『だって……
『…………は?』
そう目をキラキラさせて笑って見せるココロを見て、悪霊は理解できない言葉を聞いたとばかりに呆けた声を漏らす。
『ワタシの目の前には強大無比な悪党。後ろには守るべき人達が居て、一緒に戦ってくれる心強い仲間達も居る。こんなのどこからどう見ても愛と正義の魔法少女じゃないっ! なら、ワタシはいくらだって戦える。どれだけ傷ついたって、どれだけボロボロになったってっ! 正義は負けたりしないんだからっ!』
『……まったく。センパイって人は』
セイがそれを聞いて顔を押さえて嘆息する中、悪霊はふと気が付いた。
目の前の何者かは、確かに笑っているのだ。心の底からこの状況を喜んでいる。そしてその瞳の奥底にあるのは、愛や正義という美しいモノ……の皮を被ったもっとおぞましい
『ひっ!? ……ラビエェッルっ!』
目の前のコレは危険だ。精霊の力云々ではなく、もっと言葉にしづらい何かに悪霊は恐怖を感じ、パニックに陥りかけながらもラビエルに排除を命じた。
『センパイっ!? 避けてっ!?』
セイが自分の加護が限界に近付いている事を察して叫ぶ。次の攻撃は直撃で即アウト。避けたとしても衝撃で加護は剥がれ落ちる。
葬儀もまだ体力が回復していない。そんな中幻魔の剛腕はココロめがけて突き進み、
シュルシュルシュル。ビシッ!
『言ったでしょ? ワタシには心強い仲間達が居るって』
『ふぅ。……ようやくね』
魔法少女達はどこまでも屈しなかった。よって、
「やっと追いついたぞ!」
グルァ!
いかがでしたでしょうか? どうにかココロの内に潜む狂気を表現できれば良かったのですが。
実際ココロの精神性は、ラビエルを相手取った瞬間から常時テンション全開状態だったりします。これ以上ないっていうくらい彼女にとって自身が愛と正義の魔法少女であると認識できる状況でしたので。
次回からデュエルパート……なのですが、私事で申し訳ないのですが問題が重なり、次話は来月投稿を予定しています。
読者様方には少々お待ちいただければ幸いです。