マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 お待たせしました。投稿再開です。


誇りある夜の貴族は見上げない

 

 足止めする吹雪さんを万丈目とカイザーに任せて大鳥に乗りかける事しばらく。

 

 途中十代達の所から呼び戻した審判鳥と罰鳥を加え、やっと追いついたと思えばそこはまさに激戦地だった。

 

 周囲の木々はへし折れ、地面は所々陥没し、まともな生物は周囲から姿を消している。そんな中、

 

 ギリギリ。ギリギリ。

 

 ラビエルの剛腕は、ココロに届く直前で審判鳥のロープに絡め捕られて止められている。だが、間に合った……とはちょっと言いにくい状況だな。

 

『……はぁ……はぁ』

『……ふぅ。やっとね。待ちくたびれたわ』

 

 幻想体達は酷い有り様だった。

 

 ココロは幻魔の拳を前に一歩も退いていないものの全身傷だらけ。

 

 セイさんは剣を構えてしっかり立っているが、それはそれとして酷い疲労の色が見て取れる。

 

 葬儀さんに至っては近くの木に寄りかかってまともに動けずにいる。

 

 雪の女王は姿が見えないが、ラビエルの足元に氷の破片が散らばっている事から間違いなく奮戦はしたのだろう。

 

「皆遅れてゴメンっ! あとは……任せろっ!」

 

 こんなボロボロになるまで皆が稼いでくれた時間だ。無駄には出来ない。俺は威風堂々と立つラビエル、そしてその肩に乗る悪霊をキッと見据える。

 

『バランサーか。……一人という事は、吹雪の相手は他の奴らに押し付けてきたという事か。良いのかぁ? 暗示をかけたとはいえ奴も元セブンスターズ。そして奴には我らの闇のカードも渡してある。今頃お仲間は全滅していなければ良いがなぁ?』

 

 悪霊は顔を歪めてイヤらしく嗤う。実際吹雪さんは操られていようが強敵だろう。おまけに闇のカードもあるとなれば苦戦は免れない。だがな、

 

「舐めるなっ! あの二人がそんな簡単に負けるものかっ! なんなら今頃無事吹雪さんを正気に戻してこっちへ向かっているかもな!」

 

 俺は悪霊に向けてそう啖呵を切る。万丈目は自分が引き受けると言った。ならファンがそれを信じずしてどうするよ。

 

 そして、こっちも任された以上止まっている暇はない。

 

「おい。自称ヴァンパイア一族の化身さんよ。俺はお前にデュエルを申し込むっ!」

 

 俺はデュエルディスクを構えて悪霊にはっきりと宣言する。この世界ではデュエルは特別な意味を持つ。なにせ世界の命運もデュエルで左右される世界だ。こいつらを止める一番の正攻法だろう。しかし、

 

『はっ! 何かと思えばデュエルだと? それを受ける理由がどこにある?』

 

 悪霊は鼻で笑ってそれを拒否。受けないか……まあその答えも予想していなかったわけじゃない。

 

 重ねて言うが、この世界においてデュエルは特別な意味を持つ。正直な話、勝敗や内容によってはカードの精霊だろうが邪神だろうが存在に関わるダメージを負うのだ。

 

 悪霊からすれば必要もないのにわざわざそんな危険を冒す事もない。勢いで受ける可能性に期待したがそれは流石になかったか。なので、

 

「理由が要るのなら出してやるよ。ここでデュエルを受けないのなら、俺は全力でお前とラビエルを足止めする。勿論幻想体達と一緒にな」

 

 グルァっ! パタパタ。

 

 俺に合わせるように大鳥が唸りを上げ、罰鳥はいつでも動けるように羽ばたいて滞空。審判鳥は何も言わずに天秤を持ち上げる。

 

『むっ!?』

 

 それを聞いて悪霊が顔をしかめる。

 

 あくまでコイツの目的は、本棟にあるこれまでのセブンスターズのアイテム。コイツにとって一番困るのは、ここで手間取ってアイテムが島外に移送されてしまう事だ。

 

 ただでさえここで幻想体相手に時間を掛けた以上、さらに足止めを喰らうのは困る筈。

 

『ちっ!? ならば……ラビエルっ!』

「おっとそうはさせるかっ! 審判鳥っ!」

 

 ラビエルに命じ、俺達を無視して強引に出立しようとした悪霊だが、そこに審判鳥のロープがまた絡みつく。

 

「逃がさないぜ。いくらお前は幽霊だから実体を解いて逃げられるとしても、ラビエルの方はそう簡単にはいかないだろ?」

 

 さっき幻魔が復活した時の事を考えるに、ラビエルのカードによる実体化と闇のアイテムによる制御はそれぞれ僅かなラグがある。

 

 そして審判鳥のロープは対象の罪に応じて強度等が変動する。ここまで散々森を荒らした結果、悪霊とラビエルに対するロープの強度は非常に高い。俺の見立てではラビエルであっても引きちぎるのに多少の溜めが必要なレベルには。

 

 無理やり拘束を解こうとするなら悪霊本体を狙うし、ラビエルをいったん戻して再実体化させるなら、闇のアイテムで制御するその一瞬が隙になる。

 

「さあどうする? そこから降りてデュエルを受けるのか、或いはこのままラビエルに命じて一戦交えるかっ!」

 

 ……と強気に一戦交えると言ったものの、これでは悪霊は何とか出来てもラビエルがそのまま残ってしまう。まがりなりにも制御している悪霊が消えると、ラビエルがどう動くか分からないので出来ればリアル大乱闘は避けたいのが本音だ。

 

『……むぅ』

 

 悪霊は何故か、自分達を縛る審判鳥よりも満身創痍のココロをチラチラ見つつ思案し始める。自分でボロボロにしたくせにまるで何かを恐れているように。

 

 

『フフフ。情けない事』

『何だと?』

 

 

 そこに俺の肩に乗ったコウモリ姿のカミューラが小さく嗤い、耳聡く聞きつけた悪霊が声を上げる。

 

『これを情けないと言わずになんというのかしら? いかに万全でないとはいえ、仮にも幻魔は一族の復興を果たす事も出来るだけの強大な力。それを従えたのに憎むべき人間と戦おうともしないなんて』

『黙れ依り代風情がっ!? 貴様に何が』

『分かるわよ。アナタ()()の考えている事はね』

 

 敢えて言葉を被せたかと思うと、カミューラはバサリと一度大きく羽ばたきわざわざ俺の頭に乗って悪霊を見上げる。……いや、()()()。まるで互いの立ち位置など関係がないと言わんばかりに。

 

『わざわざ私の身体に潜んで機を窺い、目的の為なら(しもべ)を平然と使い捨て、憎むべき人間の一人である天上院吹雪の身体すら依り代として使う節操のなさ。口では大願の為だのと言っておきながら、幻魔を従えて尚自身の保身の事ばかり。アナタのような者をなんて呼び習わすか知っているかしら? ……()()()()()()()()。少し賢くなって良かったわねぇ?』

 

 うわぁ。人の頭の上で盛大に煽ってらっしゃるよカミューラ。微塵も力の大半を持って行かれたと感じさせないその態度は、どっちが優勢だか分からなくなる。

 

 しかし、煽られた方にとってはたまったものじゃない。

 

『おのれ依り代の分際でよくもっ!? 良いだろう。デュエルを受けてやろうではないかっ!』

『何ですってぇ? よく聞こえないわねぇ。そんな所でぼそぼそ喋ってないで、とっとと降りてきなさいな。……あ~なるほど。小者のくせに高い所に登ったから怖くて降りれないの? 本来逆だけどエスコートしてあげましょうか?』

『余計なお世話だっ! 貴様もう許さん。無力な姿に成り下がったからと見逃してやればつけ上がりおって。デュエルの後で八つ裂きにしてくれるっ!』

 

 そう言って青白い顔を真っ赤に染め、大きなコウモリの羽を広げてラビエルの肩から降りてくる悪霊。

 

『こんな所かしらね。あとは任せるわ』

「散々煽って丸投げかよっ!? まあデュエルに持ち込んでくれたのは助かるけどさ」

『今の私で戦いになると思って? お膳立ては済ませたから、さっさとデュエルで奴を弱らせて。そうすれば多少は私も干渉出来るわ』

 

 そう言い残してカミューラは、巻き添えを食わないよう離れた木に留まる。それと入れ替わるように悪霊は地面に降り立つと、腕から黒い靄と共にデュエルディスクを出現させる。

 

『さあ。さっさと始めるぞ。当然闇のデュエルでなぁっ!』

 

 闇のデュエルはやりたくないが、この状況では仕方ないか。

 

「その条件で受けて立つっ! 罪善さんっ!」

 

 カタカタっ!

 

 俺の合図の下、罪善さんが実体化して周囲に光を放った。これで僅かではあるが、闇のデュエルのリアルダメージと幻魔の精気吸収を抑えられるはずだ。

 

『嫌な光だ。吐き気がする』

「悪いが幻魔の対策をさせてもらうぜ。……さあ。やろうかっ!」

 

 俺は罪善さんとまだ体力充分の三鳥以外の幻想体達にカードに戻ってもらい、ディスクにデッキをセットする。

 

 

 

「『デュエルっ!!』」

 

 

 

 こうして、この長い長い一日の最後のデュエルが始まった。

 




 ……申し訳ない。本来ならこの話でデュエルシーンが入る予定でしたが、予想以上にデュエル前の会話フェイズに筆が乗って微妙な文字数になったのでここで切ります。

 ちなみにカミューラですが、身体から悪霊が抜けて精神が落ち着いているため、原作よりちょっぴりだけマイルドな性格になっています。その代わり悪霊に対しては原作よりも口撃にキレが出るといった感じです。
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