マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 注意! 今回独自設定がかなり仕事します。


遊児対悪霊 その四 対峙する幻魔と怪物

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

『……そう。これは、ある深くて暗くて黒い森。その森を守ろうとした三匹の鳥。そして、その森で産まれた()()の物語』

 

 思い出すのは、かつてオールドレディの読み聞かせで知ったある物語。

 

『昔々、沢山の生き物達が住まう森の中に、とある三匹の鳥が居た。鳥達は森がずっと幸せで心穏やかに過ごせる場所であるよう願い続けていたのさ』

 

 しかし、とそう続けた瞬間オールドレディの言い回しが変わる。

 

『ある時、森に旅人であり予言者でもある者が現れこう告げた。“やがてこの森に悲劇が訪れる。怪物が現れ全てを飲み込み、森は悪行と罪に染まるだろう”と。三匹の鳥達はその予言を聞き、いずれ来るかもしれない怪物に備え、各自で森を守るために動き出したのさ』

 

 さらにオールドレディはその三匹の行いを語った。

 

 ある鳥は森のあちこちを見回る事で秩序を乱す悪を監視し、ある鳥は手に持つ黄金の天秤で罪を測り、ある鳥は罪人にそのくちばしで罰を与えたと。

 

『でも、始まりがどれだけ正しい思いでも、いつしかそれは捻じれ歪んでいく。監視によって自由は無くなり、天秤は公平でなくなり、罰はより苛烈になっていく。そうして森はいつしか温かみを失い、争いと不和に染まっていった』

 

 そんな中、遂に三匹の鳥達は決断する。

 

『僕達だけじゃ森を守り切れない』

『でも、自分達以外に森を守れる者は居ない』

『なら、私達が力を合わせれば、もっと強くなれるだろう』

 

 

 

 そして、森に怪物が現れた。

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

『ら、ラビエルの効果発動。相手がモンスターを場に出した事により、幻魔トークンを守備表示で特殊召喚。……化け物めっ!?』

 

 悪霊はどうにか効果を発動しながらも、それを見て知らず知らずに怯えていた。

 

 

 幻想体 三鳥合身 終末鳥 ATK3500 星10 鳥獣族→悪魔族

 

 

 幻魔ほどではないが、それに迫る黒々とした巨体。しかし実体化したその姿はとても尋常なものではなかった。

 

 地を這う胴体と長い長い巨腕、そしてそこから伸びるかぎ爪は所々包帯に覆われ、頭部は逆に包帯の解けた審判鳥の物。

 

 胸元辺りから真っ赤な罰鳥のくちばしがバクバクと開閉し、食い千切るべき罪人を今か今かと待ち構える。

 

 そして背部に大きな黒い翼が生えているが、その表面には大鳥の複眼がびっしりと浮き出ている。

 

 控えめに言って、見る者の恐怖を煽りまくる合成獣めいた姿だった。誰だって怯える。呼び出した俺だって怖い。……ただ、狂乱の色はほとんど見えなかった。

 

 怒りもある。敵意もある。しかしそれはけっして無差別ではなく、あくまで森の敵と見做したラビエルと悪霊にのみ向けられていた。

 

 グオオオオオン。

 

 まずは小手調べとばかりに、ラビエルが咆哮と共に精気吸収を終末鳥に仕掛ける。これまでの無差別に少しずつ吸収していくものではなく、たった一体に集中したものを。

 

 罪善さんでも抑えきれず、並の精霊なら一分も持たずに干からびるようなそれを、

 

 キュオオオオオンっ!

 

 終末鳥は森中に響けとばかりの咆哮で返し、精気吸収を軽く弾き飛ばす。

 

 どうやら幻魔と言えど、同格以上やそれに近い相手からは精気吸収は出来ないらしい。

 

「……ぐっ!?」

 

 だがその代わり、俺の身体から急激に力が抜けていくような感覚に襲われる。これは……以前セイさんが暴走したココロを止めようと全力全開で力を使った時と同じ。

 

 なるほど。これがディーの言う所のリスクレベルALEPHか。ただ実体化して軽く動いただけでこれだけの力を使うなんてな。長くは保ちそうにないぞ。

 

「終末鳥は融合モンスターだが通常の融合召喚ができない。代わりに場に深く暗い森と三鳥が揃っている時、融合召喚扱いで融合デッキから特殊召喚し、場の三鳥をこのカードに重ねる」

 

 俺の前には、さっきの三鳥を模した三つの卵が鎮座している。これと森こそが終末鳥の要だ。

 

「終末鳥が場に出た時、手札を全て捨てなくてはならないが元々俺の手札は0。さあ行くぞ! バトルだ。終末鳥でヴァンパイア・バッツに攻撃。当然だが深く暗い森のデバフは受け付けない」

 

 森への侵入者の攻撃力を下げる効果は、元々の住人である終末鳥には通じない。終末鳥はその長い腕を大きく振り上げる。これが通れば悪霊のLPは0だ。

 

『ちょっとっ!? そんな高攻撃力で攻撃したら私の僕達がっ!?』

「分かってる。終末鳥っ!」

 

 カミューラが悲鳴じみた声を上げるが、終末鳥は振り上げた腕をその巨体に似合わずゆったりとした動きでコウモリ達に伸ばしていった。短い間とはいえ、コウモリ達もこの森で過ごしたいわば住人だ。終末鳥からすれば手心を加えるべき相手だろう。

 

 そしてその手がコウモリ達に届く直前、

 

『させるかっ! 罠発動! 『死のデッキ破壊ウイルス』。ヴァンパイア・バッツを生け贄に捧げ、お前の場と手札、そして相手のターンで数えて3ターンの間ドローした攻撃力1500以上のモンスターを破壊する!』

 

 粒子となって消えるコウモリ達の身体から紫色の霧が噴き出し、周囲一帯にまき散らされる。これは……。

 

『本来は幻魔トークンを生け贄に想定していたが、サクリファイス・エスケープ代わりに僕達を使わせてもらった。ハハハハハ! 折角苦労して呼び出した化け物もこれで一巻の終わり。無駄な努力をご苦労だったなっ!』

『……アナタ。どこまで僕達を弄べば気が済むのっ!』

 

 カミューラの怒声にも悪霊は素知らぬ顔。しかし死のデッキ破壊ウイルスか。しかも時代的にエラッタ前の物とはえげつない。だが、

 

「残念だったな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。バウンスは別だがね」

『ハハハ……は?』

 

 高笑いしていた悪霊は、毒霧の中でも揺らぐ事のない終末鳥の姿を見て唖然とする。

 

「攻撃対象が消えた事で巻き戻しが発生。攻撃対象を幻魔トークンに変更して再度攻撃だっ!」

 

 今度は手心を加える必要もなく、大きく振りかぶった腕を全力で叩きつけてトークンを粉砕する。そのパワーと来たらラビエルのそれと大差ない。

 

「バトルフェイズ終了時、戦闘を行った終末鳥にPEカウンターが5個乗る。そしてメインフェイズ2にエンケファリン生成の効果発動。終末鳥のレベルの半分である5個を乗せる」

 

 終末鳥 PE5

 エンケファリン生成 PE5

 

「エンサイクロペディアの効果発動! エンケファリン生成のPEカウンターを5つ使い、デッキからレベル4以下の幻想体を特殊召喚する。俺は『幻想体 死んだ蝶の葬儀』を守備表示で特殊召喚し、クリフォトカウンターを二つ乗せる」

『ならば、こちらもラビエルの効果により幻魔トークンを特殊召喚』

 

 エンケファリン生成 PE5→0

 

 死んだ蝶の葬儀 DEF1300 CC2

 

 葬儀さんが俺の場に現れた事により、悪霊も負けじとトークンを増やす。ターン数制限がないのは厄介だ。……だが、今この場においては悪手となる。

 

「俺はこのタイミングで終末鳥の効果発動。審判鳥。力を借りるぜ」

 

 終末鳥の手に、審判鳥の黄金の天秤が握られる。

 

「一ターンに一度、相手の守備表示モンスターを全て破壊し、その数×400のダメージを与える。『ジャッジメント』っ!」

 

 悪霊の場には守備表示のトークンが二体。それぞれのトークンが審判鳥のロープに縛り上げられそのまま破壊される。

 

『むおおっ!?』

 

 悪霊 LP1900→1100

 

「俺はこれでターン終了。そこで葬儀さんと終末鳥がそれぞれ効果発動。葬儀さんはカウンターを減らすだけだが、終末鳥は互いのターン終了時に重なっている三鳥を一枚選び、墓地へ送らなければならない。俺は審判鳥のカードを墓地へ」

 

 重なっていた審判鳥が離れた瞬間、三つの卵の一つにヒビが入る。

 

『なるほど。読めたぞその化け物の弱点が。つまりはあと二ターン持ちこたえれば、化け物は勝手に壊れていくという訳だ』

「……ああ。全ての三鳥が無くなった時、終末鳥は自壊する。深く暗い森が無くなっても同様だ」

 

 バウンス以外まともに受け付けない終末鳥だが、この通り弱点ははっきりしている。地道に時間を掛けて三鳥を削るか森を破壊するかだ。

 

「さあ。そっちのターンだ」

 

 

 

 悪霊 LP1100 手札1 モンスター 幻魔皇ラビエル 魔法・罠 闇の呪縛 DNA改造手術(悪魔族)

 遊児 LP2300 手札0 モンスター 終末鳥 死んだ蝶の葬儀 魔法・罠 エンサイクロペディア エンケファリン生成 深く暗い森

 

 

『我らのターン。ドロー。……ククク。分かっているのだぞバランサーよ。貴様の小賢しい策の事はな』

 

 悪霊は何が面白いのかそう言ってほくそ笑む。

 

『次のターン、そこの蝶男を放置すればラビエルの攻撃力は500ダウンする。そうすれば攻撃力はそこの化け物と並び、戦闘すれば破壊耐性を持つそいつが勝つ。なら蝶男を先に潰すのが定石。……だが、()()()()()()()()()()()

「……へぇ」

 

 俺はそのまま続きを促す。

 

『先ほどの効果は墓地へ送った審判鳥のものに酷似していた。つまり終末鳥は重なっている三鳥の効果を疑似的に得ているという事。そう。大鳥の攻撃強制と、罰鳥の効果破壊能力もな』

 

 流石に気づかれたか。普通に葬儀さんに攻撃するようであれば、そのまま攻撃を終末鳥に誘導してカウンターを決めていたんだがな。

 

『つまりこの場での最適解は……これだ。()()()()()()()()()()()()()()ターンを終了する。何をしているラビエル。さっさと守備表示にならんかっ!』

 

 幻魔皇ラビエル DEF4000

 

 拳を構えて戦う気満々だったラビエルは、一瞬悪霊をちらりと見て防御の構えに変更する。……明らかに気分を害してるんだけど。

 

 そしてターン終了宣言により、俺は終末鳥から罰鳥のカードを墓地へ。それによりまた別の卵にヒビが入る。さらに、

 

「……くっ!? ……はぁ……はぁ」

 

 カタカタっ!?

 

「……はぁ……大丈夫だ。罪善さん」

『どうやら終末鳥の実体化は相当な消費を伴うらしいな。ただ待っているだけで化け物もバランサーも弱っていくとは楽な物よ。審判鳥を最初に落としたのは失敗だったなぁ?』

 

 疲労でつい膝を突く俺を見て、悪霊はニヤニヤと嗤う。おろおろとする罪善さんだが、あくまでラビエルからの精気吸収を防ぎ続けるのに集中してくれていて助かる。

 

 しかし悪霊の言う通り、俺が倒れるのが先かそれとも()()()()()()()()のが先か。

 

「さて。根競べだな」

 

 勝つにせよ負けるにせよ、決着の時は近いだろうが。

 




 という訳で、終末鳥対幻魔の怪獣大決戦が始まりました。

 読んだら分かると思いますが、終末鳥は時間制限がある代わりにかなり能力を盛っています。防御カードがないと場を散々荒らすだけ荒らして帰っていくタイプです。効果の詳細は決着がついてからという事で。

 次回悪霊戦決着予定。いかなる結末を迎えるのかお楽しみに。
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