マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 さて、デュエルは終了しましたが、まだ終わりではありません。



 注意! 12月16日。前話のデュエルシーンを一部修正いたしました。

 当初カミューラがラストターンでフィールド魔法を使おうとして不発に終わるという流れでしたが、ならその前のターンに使っていれば深く暗い森の張り替えからの終末鳥の墓地送りに繋げられて、残ったラビエルでぎりぎりごり押しが出来たのではないかという判断からです。

 既に読まれた読者様にはご不便をおかけいたします。これからもお読み頂ければ幸いです。


夜明けの別れ

 

『あァ……アアアアァっ!?』

 

 デュエルが決着した瞬間、悪霊に異変が起き始めた。闇のデュエルの代償か、全身から闇が粒子のように放出・拡散して空間に溶けていく。

 

 人型のコウモリのようだった姿も次第に輪郭を失い、元の朧げな姿へと変わっていく。だが、

 

『……れない。このままで終ワレるものかぁっ!?』

 

 悪霊は最後の手段とばかりに、幻魔を制御していたチョーカーを取り出して掲げる。するとチョーカーから出る光が身体の崩壊を押し留め、精神も抑制したのか口調も少しだけ落ち着いた物に戻った。

 

『この闇のアイテムに残る力を全て取り込めば、まだこの身体を保つことが』

 

 

『させると思って?』

 

 

 その時、サッと黒い影が目の前を横切り、悪霊からチョーカーとディスクに入っていたデッキを奪い去る。今の今までずっと機を窺っていたカミューラだ。

 

 カミューラはコウモリの姿で器用にチョーカーを首に引っ掛け、次の瞬間光り輝いて元の妖艶な美女の姿に戻る。

 

「確かに返してもらったわよ。ついでに今アナタが起動させるために注ぎ込んだ分の力も迷惑料にね」

『なっ!? おのれ依り代風情がァっ!?』

「ふん。その依り代風情が居なくては精神を保てない無様な残骸に言われてもねぇ?」

 

 加速度的に崩壊の早まった悪霊を見て、カミューラはおほほと嘲る様に嗤う。そして、

 

「ところで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? 抑えを失った取り立て人が今か今かと待っているわよ?」

『何っ? ……があっ!?』

 

 一瞬呆けた悪霊を、どこからともなく巨大な手が掴み上げる。そう。これまでずっと嫌々従ってきたラビエルだった。

 

 力を認めて従った訳でもなく、あくまで以前力を認めた影丸のアイテムを持っていたから義理で従っていただけ。

 

 それがこれまで散々こき使われ、デュエルでも微妙に望まぬ運用をされ、おまけにぼろ負けする体たらく。ラビエルの怒りももっともだ。

 

 もはや実体化して契約(魂の取り立て)を履行する事に微塵の躊躇も慈悲もなく、敗北者の後ろに幻魔の扉も出現して即座に開門。

 

 あとは中に哀れな生け贄を放り込むだけという所で、悪霊は崩れゆきながらも声を上げる。

 

『ま、待てっ!? やめろっ!? 我ら以外に誰がヴァンパイア一族の復興を成すというのだっ!? 我らをこの時代まで保つための依り代ごときに出来るとでも』

「やるわよ。私は」

 

 カミューラのその言葉には、見苦しく喚く悪霊すら黙らせるほどの気迫があった。

 

「確かに私はただの依り代としてしか期待されていなかったのかもしれない。けどね……少なくとも私はアナタとは違い、()()()()()()()()()()()()

『……っ!?』

「人間への怒りも恨みも忘れない。忘れられるものかっ! ……でも、一族の復興の為に本当に必要ならば、私はその怒りを飲み込んででも事を成し遂げる。それこそが我らヴァンパイア一族の誇り。私のやり方よっ!」

 

 そう啖呵を切るカミューラの瞳は決意に燃えていた。これまで悪霊が取り憑いていた時とはまた違う力ある瞳。それを見て悪霊は、果たしてどう思ったのか。

 

 グオオオオオン。

 

 それは結局想像する事しか出来ない。話はここまでと言わんばかりに、ラビエルが悪霊を扉の中に投げ込んだからだ。

 

 扉がバタンと閉じる瞬間の悪霊の顔はなんとも言えない物だった。

 

 まるでこの世の全てを恨むような、もしくはこの一瞬後に消え去る自分に絶望したかのような。或いは……。

 

「……だから、安心してまた穏やかに眠りなさい。遥かな過去、そして私が目覚めさせる未来まで」

 

 或いは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そんな幾つもの感情が混ぜ合わさったかのような不思議な顔だった。

 

 

 

 

 扉の契約を履行した後、ラビエルは俺達を少し見てからそのまま消えて行った。

 

 また実体化からの精気吸収で第二ラウンドを始められたらどうしたものかと思ったが、仮の持ち主であった悪霊が消えた事で一応収まりがついたらしい。

 

「……終わったな」

 

 吸血鬼一族としての会話に口を挟めず見守っていた俺だが、区切りがついて大きく息を吐く。

 

「そのようね。お人好しのバランサーならあの瞬間、()()()()()()()()かと思ったわ。もしそうなれば私が直接扉に放り込むつもりだったのだけど、意外に薄情なのね」

「まさか。俺はそんなにお人好しじゃないんでね。敵も味方も助けるなんて器用な事出来るかよ。それに相手は元々悪霊。助ける道理はないね」

 

 俺をどういう風に見ているんだと、カミューラに対してニヤリと笑ってみせる。

 

 俺はヒーローでも聖人でもない。特に今回みたいな負けたらヤバい闇のデュエルで手加減できるものでもないし、その結果のペナルティから相手を助けようだなんて余力もない。これまでだってそうだ。

 

 強いて言えばネクの一件はそれっぽい事をしたかもしれないが、アレはあくまで全て終わった後でネクが勝手に生還してきたから取引しただけだしな。助けようと思って助けた訳じゃない。

 

 ……まあ最低限デュエルの中断を提示するくらいが関の山だ。それも本人に断られたんじゃどうしようもないしな。

 

「カミューラこそ良かったのか? 一応あれもごちゃごちゃしてたけど一族の思念的な物だろ?」

「あんなのが誇りあるヴァンパイア一族の総意であるわけないじゃない。あれはただの妄念。自分達を一族だと思い込んだどこぞの悪霊よ。そうに違いないわ」

「へぇ……それにしては別れの言葉はどこか切なげだったが?」

「さっきのは奴を言い包める為の方便よ。そんな事も見抜けないなんて、デュエルの腕はともかく嘘を見抜く目は節穴かしら?」

 

 マズいな。軽く意趣返しで揶揄ったら、普通に悪口も付けて返された。口喧嘩では勝てんな。

 

 俺は降参とばかりにそれ以上は何も言わずに軽く両手を上げる。それを見て、これ以上この話題を続けるのを止めるカミューラ。それから少しの間互いに何も言わない時間が続き、

 

「……それで、これからどうする気だ?」

 

 そろそろ聞いておかなければと、俺は本題を切り出した。何故なら、

 

「そうね。例えばこんなのはどう? 丁度ここには幻魔のカードが有り、多少なりとも言う事を聞かせられるアイテムもある。ならばあの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。或いは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……とか」

 

 そう目の前のカミューラが悪い顔をして、デッキから一枚のカードを引き抜きつつ語ったからだ。

 

 実際今の時点でそれをされたらとても困る。本棟に向かうなら幻魔がまた十代達に猛威を振るうし、ここで逃げられるとそれはそれで後が怖い。

 

 食い止めようにも俺の身体は限界。幻想体達も皆して幻魔との戦いで疲労困憊だ。さっきから三鳥や罪善さん、セイさんも出てこない事がその証拠だ。

 

 俺達の間に僅かに緊迫した雰囲気が流れる。あとは幻魔のカードに再び力を注ぎこめばまたラビエルが出てきてしまう。……だが、

 

 

「さあ僕達よ。我が下に戻りなさいっ!」

 

 

 カミューラがデッキから取り出したのは、ラビエルではなくヴァンパイア・バッツのカード。

 

 それに力を注ぎこむ事で、悪霊に取り込まれていたコウモリ達が群れを成して主人の下に帰還する。

 

 キイキイっ! キイキイっ!

 

「ふふっ。……何を呆けた顔をしているの? もしかして今ここで幻魔をまた呼び出すとでも思った? これだから下等な人間は考えが浅いというのよ」

 

 カミューラは柔らかい笑みをコウモリ達に向けた後、俺に向けてクスクスと笑う。

 

「そもそも今の私は幻魔を呼び出せても従えるだけの力は残っていない。それもチョーカーの補助があってやっと。そんな状態で出してもさっきの悪霊の二の舞。やる訳がないじゃない。それに」

 

 シュッ。

 

 カミューラはまたデッキからカードを引いてこちらに投げ渡す。それは今度こそ幻魔皇ラビエルのカードと、何故か一緒に幻魔の扉のカードも。

 

「それも返すわ。持って行けば?」

「なんだ。えらく素直だな」

「どのみち今は持っていても使えないもの。おまけに持って逃げたとすれば、当然鍵の守り手を始めとしたデュエリスト達が追いかけてくるでしょう? 今は戦いよりも回復が最優先。ならそれがない方が身軽というものよ。幻魔の扉はまあついでにね。……ああ。チョーカーは貰っていくわ。今外すと人の姿を保てないから」

 

 サアっ!

 

 さっきから少しずつ朝日が輝きを増し、光を嫌ってカミューラは一歩森の中へ下がる。より暗く深い闇の中へと。

 

「そうか。じゃあ一応聞いておくが、これからおとなしく出頭するつもりはあるか? 今なら悪霊に半分操られていたって事と、幻魔をおとなしく返したって事でそれなりに情状酌量されるかもだぜ?」

「はっ! 冗談言わないで頂戴。多少の意識誘導はあったにしても、これまでの事は私の意思でやった事。これまでも、これからも、私がいかなる手段を用いても一族の復興を目指すことに変わりはないわ。それに……」

 

 そこでカミューラは一度言葉を切り、自身の身体を少しずつ黒い霧に変化させながら続けた。

 

「私は幻魔を完全に諦めた訳じゃない。一度回復するため身を隠し、()()()()()()()()()()()()()()()()つもりだけど、もしそれも見当たらずに幻魔を制御する力と手段が手に入ったその時は……また奪いに来るからそのつもりで」

「ああ。じゃあその別の方法が見つかったら教えてくれ。なるべく平和的に済む方法なら手を貸してやるよ。これでもバランサー(調整役)なんでね」

 

 俺はそう言ってカミューラに手を振る。

 

 ……何でだろうな? カミューラは敵なんだけど、何が何でも倒さなきゃいけないという風にはどうにも思えなかった。目的もあくまで一族の復興が第一で、人類への怒り諸々は後回しらしいし。

 

 なんだかんだバランサーとセブンスターズとして長い付き合いになったのもあるし、一時的にとはいえ共闘したのもあるか。我ながら絆されやすいなと少し驚いている。

 

 あとただでさえ回復が必要なのに、コウモリ達を優先して助けた事も理由かな? あれにはレティシアや三鳥もにっこりだろう。

 

「生意気な。でもまぁ、利用できると思ったなら連絡してあげるわ。……じゃあねバランサー。精々その時まで無様に生き残っている事ね。行くわよ僕達」

 

 キイキイっ!

 

 完全に黒い霧となって森の奥に消えていくカミューラと、こちらに一度礼をしてそれを追うコウモリ達。

 

 俺はただ静かに、朝日が昇る中そいつらを見送った。そして、

 

「久城っ! 無事だったかっ!」

 

 日に照らされながら、後から追ってきたのだろう万丈目。それにカイザーに肩を貸されて歩く吹雪さんがこちらに向かってくるのを見ながら、

 

「よぉ! 万丈目。無事……だった……か」

 

 ……あれ?

 

 

 ばたっ!?

 

 

 急に目の前が真っ暗になり、俺はその場で意識を失って崩れ落ちた。

 




 はい。カミューラ生存ルートに入りました。まあ原作でも幻魔が倒れた時点で扉から解放されている筈なんですけどね。

 悪霊が抜けた事により、少しだけ原作よりきれいなカミューラになっています。ただ本人も言うように、あくまで影響は意識誘導程度であり基本の性格はあまり変わっていないという設定です。少しだけ手段を選ぶのと部下思いになったぐらいですかね。

 最後に遊児が倒れたのは……まあ当然としか言いようがないですね。大分これまで無理をしてましたから。

 それと次回ですが、忙しい年の暮れという事で続きは来年からを予定しております。遊児はこれからどうなってしまうのか。少々やきもきしてお待ちいただければと。
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