マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
及び、独自設定タグが仕事します。
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周囲に人の居ない荒野にて行われるそれは、まさしく死闘だった。
『アッハッハッハッハ!』
片や満たされぬ渇望の赴くままに、世界を喰らわんとする黄金の魚。それは口の中から狂ったような笑い声を響かせながら進撃する。
普通なら止められる者などほとんど居ないその突撃だが、
『ハアアアアァっ!』
大地に無数に突き立てられた細剣の壁が、押し留めるのではなく少しずつ角度をずらす事で力を分散。
それを繰り返す事で、かろうじて生きた災厄を食い止めていた。
これを成したのは一人の魔法少女。悲しみを纏った青い騎士にして聖女である。
『……止まれっ! 止まりなさい
じりじりと剣の壁を削られる中、青い騎士は必死に叫ぶが黄金の魚は止まる事はない。
一当たりする度に幾本もの剣は折られ、飛ばされ、或いは喰われていく。
『もう戦いは終わったっ!? 荒ぶる必要なんてないのっ!?』
『アッハッハッ……
突如として笑い声は止み、僅かに見える黄金魚の口の中から金髪褐色の少女が顔だけ出して語りだす。
その言葉からは隠し切れぬ狂気が見え隠れしているが、ほんの僅かにだけ理性の光が残る姿に青い騎士は和解の可能性を見る。だが、それはすぐに誤りだと気が付いた。
『戦いは終わった。もう私ら魔法少女はお役御免さ。けどさぁ……ならもう私らも好き勝手やっても良いよな? 平和。平和っ! ああ良いね平和っ! 最高だ! 世界が平和になったからこそ、次は
『何を言って』
『分かってんだろう? 私ら魔法少女は皆世界の為に戦っていたんじゃない。
ガツンっ!
剣が砕け散る。
『あの
ガツンっ!
また一つ、剣が砕け散る。
『違っ……私は、そんな個人的な理由で』
『誤魔化すなよ。それに理由はどうあれそれはそれで立派な願いさ。でもさぁ……私の願いはそんなご立派な物じゃない。ただ
『リーダー……アナタは』
そんな会話の最中であっても、ぎしぎしと剣の結界は嫌な音を立てる。少しでも青い騎士が気を抜けば、その瞬間全て食い散らかされてしまうかのように。
『なぁ? 分かるだろう? もう
ピシッ……バキンっ!
その言葉を最後に、遂に剣の結界は崩壊する。そして、
『ふざけないで』
砕けた剣の全ての破片が、そのまま刃の嵐となって黄金の魚に襲い掛かった。これには黄金の魚もたまらず、僅かにだけ進撃が収まる。
『そんな手前勝手な理由で、世界を壊すというのなら……リーダー。もうアナタは私の敵よ』
『はっ! そう来なくっちゃな』
そう敵対宣言する青い騎士の表情はどこか悲壮さを感じさせて、それに気づいた黄金の魚は対照的にどこか楽しそうに語る。
『世界を喰らおうとする私の貪欲と、たとえ元仲間を殺してでも世界を守ろうとするお前の願い。派手にぶつけ合うとしようや。……なあっ!』
それを最後に、黄金の魚は再び完全なる狂気にその身を委ねる。
『アッハッハッハッハ!』
『消えろっ! 死んでしまえっ! アナタが世界を喰らわんとする化け物になり果てたのなら、私が引導を渡してあげるっ!』
そうして二人の魔法少女……いや、一人の魔法少女と一体の怪物が交錯した。
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『…………人。管理人っ!? 我が使徒っ!? しっかりするのです』
「……んっ!? へぶっ!?」
気が付けば、俺はペスト医師に顔をビンタされて叩き起こされていた。
今まで見ていたのは、どうやら貪欲の王とセイさんこと絶望の騎士の夢だったらしい。同じ魔法少女だから何かしら関係があるとは思っていたが、あのワンシーンだけ見る限り非常に険悪だったな。
『ああ。良かった。幸い割れたシャボンは二つだけで済んだようですね。……まったく。いくら休めたからと言って、油断して一人進もうとするから足元を掬われるのですよ。管理人はもう少し周囲に気を配るべきです』
「……ゴメン。これは本当にゴメン。完全に俺のミスだわ」
どこかホッとしながらも、少し怒ったように諭すペスト医師に俺は何も言えない。
もしこれがさっきまでの深層だったら。もし割れたのが二つだけじゃなかったら。俺はもっと酷い目に遭っていただろう。
深層を抜け、中層もそれなりに進んでいた事から、俺は知らず知らずの内に油断していたらしい。ここはそんな甘い所じゃないのにだ。
「もうここを出るまで油断しない。だから、もう一度力を貸してくれないか?」
『その意気です管理人。良いでしょう。では……また参りましょう』
そうしてペスト医師の差し出した手を掴むと、俺達は再び上層へ向けて歩み始めた。
上層。それは最も夢と現実の境が薄い場所。
ここまで来るとペスト医師曰く幻想体達もリスクレベルの低いモノが大半であり、深層や中層に比べれば危険度は格段に下がるという。
しかし補足するのなら、いくら危険度は低かろうが数は最も多いという。つまりシャボンがそれこそ壁のようにぎっちり詰まっている場所すらあり得るという事だ。
先ほど酷い目に遭ったばかりの俺は油断せず、たとえ大量のシャボンが立ちはだかろうが絶対に突破して目を覚まして見せると強い覚悟を決め、
最初上層に到達するなり複数体に飛び掛かられ、俺の人生もここで終わりかと一瞬死を覚悟したのも束の間、実態は大歓迎である。
『ふむ。これは興味深いな』
いやそこっ!? 何一歩引いた所で観察してるのかなペスト医師っ!?
「ちょっ!? ちょっと離れてっ!? 離してってのっ!?」
とりあえずくっついてきた者達を引っぺがし、一体ずつ確認する。
「え~っと。まず貴女は『幻想体 妖精の祭典』で」
『ええ。その通りよ私の愛しき
まずは穏やかに微笑んで愛らしく漂う人間大の妖精に声をかける。……今なんか俺の呼び名にとんでもないルビが振られた気がするんだけどっ!?
『ホホホ。なんでもないわなんでも。それより怪我なんかしていないかしら? そういうのは早め早めに処置しなければ。肉は鮮度が命ですからね』
やっぱり俺の事食う気満々じゃないかコイツっ!? 以前攻撃モーションを見たから、ケアしつつ相手を捕食しようと企んでいる事は知ってるんだぞ!
「次……『幻想体 キュートちゃん』。あはは。可愛いなコイツっ!」
『わんっ! わんっ! ……くぅ~ん』
今度はさっきから足元にじゃれついてくるつぶらな瞳の小さな白い子犬キュートちゃん。がじがじとズボンの裾を齧っている所がまた愛らしい。
だがコイツもこう見えて危険生物。以前葬儀さんに聞いた所、一日に10㎏以上の食事をする大喰らいで、腹ペコになると野獣になって大暴れするとか。
「そして『幻想体 空虚な夢』。コイツ夢の中でも寝てるぞ」
『……むにゃぁ』
それは宙に浮かびながら眠る羊。身体の色が紫だったり毛の中から変な目玉が覗いてたりする点を除けば、まあわりかし怖そうには見えない。あととてもふわふわだ。
しかしディーが言うには、近くに居る奴を無差別に眠らせるらしい。茂木とどこか似た能力持ちで案外気が合うかもな。
ここまではまあ良い。実体化こそしていないが、なんとなく能力やらは見た事がある。でも……
最後に居たのは、一言で表すなら
宙に浮かぶ人間大のピンク色のハート。その中に、小柄な薄桃色の軍服を着てゴーグルを付けた兵隊が浮かんでいるのだ。
……何だろうコイツ? カードでも見た事がないのでイマイチ良く分からない。ここに居るって事はZAYINかTETH級だとは思うんだけど。
「あ~。君の名前は?」
『はっ! 個体名『幻想体
俺の呼びかけに、ピンクの兵隊はニコニコ笑いながらビシッとした敬礼でそう返した。
悲報。遊児またもやランク詐欺幻想体に懐かれる。
今回出てきた幻想体達は、全員管理人に対して好意的(美味そうという意味も含む)です。まあ好意的=安全でも安心でもないのが幻想体達のヤバい所なのですが。
貪欲の王と絶望の騎士の戦いは独自設定です。二人が戦ったというのは原作でほのめかされているのですが、内容は不明だったのでこの作品ではこんな感じだったのではないかと推測します。まあ夢ですしね。