マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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幻想体ドリームツアーにようこそ その四

 

 さて。どうしたものか。俺の前には何故か起きている数体の幻想体達。しかも一部下心有りとは言え、皆してこっちに友好的だ。

 

 いやそもそもだ。なんで皆して起きているんだ? それを言ったらペスト医師もだし、夢の世界なのに起きているって表現が正しいかは分からないが。そう尋ねると、

 

『おそらくだが管理人。ここが上層……最も夢と現実の境が薄い場所だからではないだろうか? ()()()()()()()()()()()()()()()()と言い換えても良い。つまり』

「……精霊化しかけている奴らって事か」

 

 ペスト医師の言葉に、俺は以前ウェルチアースや葬儀さんが精霊化した時の事を思い出す。あの時は知らない内にカードに力が溜まっていた結果だった。それと同じか。

 

 今日俺は悪霊戦で力を限界まで絞り出した。しかしそれまでに既に流れ込んだ分の力は間違いなくあって、それに刺激されたのがこいつらと。

 

 妖精の祭典は分かる。レベル1だから必要な力は少ない筈だ。

 

 キュートちゃんと空虚な夢も分かる。こいつらは以前葬儀さん達が実体化した時も候補になっていた。その時に溜まった分が少し残っていたとすれば辻褄も合う。しかし……。

 

「それにしちゃあペスト医師とピンクの兵隊のカードは俺持ってないよ?」

『ああ。正確に言えば、カードはディーがあなたに渡していないだけで存在するのです。そちらに流れ込んでいると考えてもらえれば。……もっとも、()()()()()完全な顕現をディーがそう簡単に許すとは思えませんが』

 

 えっ!? 私や兵隊のって……このニコニコして害のなさそうな兵隊もディーが警戒するくらいヤバい奴なのっ!? 俺はそ~っと兵隊の方に視線を向けるが、相変わらず兵隊はにっこり笑って敬礼を続けている。

 

 あからさまに食欲が根本にある妖精やキュートちゃん、睡眠欲が根本にある空虚な夢と違い、ペスト医師と同じく行動原理が見た目からは読みづらい。なので、軽くどんな奴かと尋ねてみると、

 

『はっ! ()()()の使命は、人間の優しきピンク色の心を守る事であります。その為にこうして同じくピンク色の服を纏い、人間の心に溶け込むのであります』

『人間の優しい心を守るためならば、私たちは喜んで悪い心に立ち向かい、代わりに暗く黒く汚れていくのであります』

 

 ……良く分からないが、人間に好意的なのは間違いないらしい。セイさんと同じく誰かを守る系の幻想体のようだ。

 

 しかし()()()()()()()というフレーズが少しだけ気になった。こういう場合のお約束として、最初は良いが頼りすぎると碌な目に遭わない。多分ディーが警戒しているのはその部分だろう。

 

 まあ結論として、有用だがもしかしたら危ない奴という感じだな。君子危うきに近寄らず。という訳で、

 

「じゃ! 俺はそろそろ失礼するよ。皆良い夢見ろよ! 行こうペスト医師」

 

 ガシッ。

 

『つれない事を言わないでちょうだい管理人。出口へ向かうのでしょう? 一緒に行くわ』

 

 げっ!? 自然に笑って別れようとしたら、普通に妖精に肩を掴まれたんだけど。それと妖精この見た目で力つよっ!?

 

 見ればキュートちゃんは服の裾に齧りついて離さないし、空虚な夢こと羊と兵隊はいつの間にか俺の両横に移動している。ほぼ全方位囲まれたんですけどっ!?

 

「い、いや~。そんな悪いって。皆はこのままもうしばらくぐっすりと」

『それは寂しいわね。寂しくて寂しくて……()()()()()()()()()()()()()()

 

 そう言って妖精はぺろりと舌なめずりをする。……これはガチだ。夢の中だろうが何だろうが、もし今断ろうものなら物理的に食べられる。

 

 助けを求めて他の面子を見るも、羊は寝ていて表情が分かりづらいし、キュートちゃんはむしろ連れてけとばかりに尻尾を振りながらつぶらな瞳を向けてくる。おまけに、

 

『管理人。折角ですので、出口まで彼ら彼女らに協力を頼んでは如何ですか?』

『管理人殿っ! ご命令をでありますっ!』

 

 ペスト医師は何故か乗り気だし、兵隊なんか寧ろ命令待ち。いやお前らが暫定一番ヤバい奴らだからねっ!?

 

 くっ……全員好意的なのに誰も味方が居ない。こうなったら、

 

「ああもうっ!? 分かったっ! 分かりましたっ! ……出口まで一緒に行こう」

『そうでなくてはね。安心なさい。貴方が食べ頃になるまで、大切にケアしてあげるから』

 

 そう穏やかな顔で物騒な事を言う妖精。いやだから怖いんだってっ!?

 

 

 

 

 こうしてペスト医師に加え、半ば脅されて妖精、キュートちゃんに羊、兵隊が同行する事となった。

 

 するとどうだろう? 上層のシャボン玉の数は多いのだが、さっきから一つも俺の方に寄ってこない。何故なら全部、届く前に幻想体達が散らしたり離れた所で割ったりしているからだ。

 

『お行きなさい』

『わんっ! わふぅっ!』

 

 今もシャボンが近くまで寄る前に妖精が小さな妖精を生み出して突撃させ、遠くではキュートちゃんがシャボンに食らいつこうと飛び跳ねている。こっちは見た目だけならなんかほっこりするな。

 

『……むにゃ。ぐぅ』

 

 羊はさっきから寝たままついてきている。しかし何故か羊の周囲のシャボンがまるっと動きが遅くなっていた。まるで眠っているかのように。……そこも無差別に眠るんかい。そして、

 

『優しい心を守るであります! 悪い心をやっつけるであります!』

『さあこっちです。どんどん進んで』

 

 暫定一番ヤバいタッグが、普通に道を切り開く大活躍。兵隊は長銃を構えてシャボンを銃撃しつつこちらの盾となり、その空いた隙間隙間をペスト医師が確保しつつ前進していく。

 

 このように幻想体達の同行により、移動はすこぶる楽になった。時折妖精がこちらを獲物を見る目で見ているので胃が痛いが、一応進みの速さという意味では大いにプラスだ。

 

 そうして進み続ける事しばらく、

 

『おお! 見てください管理人! あれが出口。現実との境ですよ。あそこを通れば現実の管理人も目が覚めるでしょう』

 

 ペスト医師が指さす先、そこには白い光の幕のような物が存在していた。しかし、何故かその周りにはシャボンが一つも飛んでいない。

 

 いや、良く見れば近づいたシャボンは全て()()()()()()

 

『見て分かる通り、あそこに()()()()()()()()は近づけません。ディーの施した世界の境を隔てるフィルターがあるからです。そして……どうやらお迎えのようですよ』

 

 その言葉に良く光の幕の先を見ると、

 

『お~い! どこだ()()()()()よっ!』

 

 何故かネクが、命綱のようなコードを付けたままこちらへふよふよ泳いで……浮かんで? まあとにかくやってくるのが見えた。

 

「ネクっ!? なんでこんな所に?」

『なんでというのはこっちのセリフだっ!? いい加減早く目を覚ませっ! もう何日も眠り続けてレティシアが曇りっぱなしなんだっ!?』

 

 げぇっ!? もう現実ではそんなに時間が経っていたのかっ!?

 

 ネクもレティシアには少しだけ甘いからな。業を煮やしてこうやって迎えに来てくれたらしい。

 

『ほらっ! 早くこっちに来い。引っ張り上げる』

「分かったっ! 皆ごめん。俺急いで行かなきゃっ!」

 

 俺は最後に羊の雲みたいな毛を軽く堪能し、すり寄ってきたキュートちゃんを優しく撫でると、ここまでついてきてくれた幻想体達に頭を下げる。

 

 まあ非常に怪しかったり懐かれたり脅されたりと癖の強い面々だったが、ここまで助けてくれたのは間違いないからな。

 

『ホホホ。気にする事ないわ。これは言わば下準備。調理はじっくり時間を掛けるものだもの。……私が外に出るまで、誰にも食べられないでね。愛しき私の管理人(ごちそう)よ』

 

 だから怖いってホントっ!? 何故かペスト医師を一瞬ちらりと見て、妖精は最後まで食欲のままにそう語った。

 

『御用とあらば、いつでも私たちをお呼びください。必ずやお役に立って見せるであります!』

「こちらも一応ディーに会ったらカードがないか聞いとくよ。その時はよろしく」

 

 兵隊に合わせてこちらも敬礼して返すと、兵隊はどこか嬉しそうな顔をする。こういうノリも好きなようで何よりだ。実はなんかヤバい奴のようだが、どう危ないかディーかオールドレディ辺りに後で聞いてみようか。そして、

 

「ペスト医師。今回は最初から最後まで世話になったな。ありがとうよ」

 

 今も胡散臭さは変わらないのだが、それでもペスト医師は一度たりともこちらを傷つけようとか害そうとかはしなかった。寧ろずっと協力的で、その分くらいは信用しても良いかなとは思っている。

 

『いえいえ。管理人が無事に帰還できるようでなによりです。……ああ! 一応の忠告ですが、少々お耳を拝借』

 

 ちょいちょいと手招きするので、なんだなんだと近づいて耳を貸す。すると、

 

『今回の一件は偶然とはいえ、ここへはあまり来ない方が良いかと。今回は()()私がすぐ近くに居たから良いものの、管理人一人ではとても危険です。たとえば……そう。罪善辺りにでも頼めば、そう簡単に夢で繋がらぬよう防御も出来ましょう。良く頼み込んでおく事ですね』

「ああ。またこんな事になったら大変だしな。頼んでおくよ」

『よろしい。さあっ! 迎えがさっきからお待ちかねですよ!』

 

 ペスト医師は俺を送り出すように背中を軽く叩き、そのまま手をひらひらとさせる。

 

『別れは済んだか? ならさっさと行くぞっ! 掴まれっ!』

「おうっ!」

 

 俺は最後に大きく手を振ると、ネクの方に向けて走り出した。

 




 最後少々駆け足になりましたが、これでひとまず夢の中編は終わりとなります。ひとまずはね。

 なお、今回最初から最後まで協力者に徹していたため、遊児のペスト医師への好感度がちょっぴり上昇しています。……本質はともかく、猫を被り続ける限り他者にとって紛れもなく彼は善なのです。




 この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。評価を保留されている読者様。

 ブックマーク、評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!
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