マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 今回は少し短めです。

 また、一部ロボトミーネタではなく図書館ネタが混じっています。




 もう夢の中編は終わりだと言ったな? あれは嘘だ。


閑話 幻想体ドリームツアーの裏話

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 駆けていく。

 

 管理人が夢の出口に向かってまっすぐに。

 

 それを静かに見送る幻想体達は、全員大なり小なり下心はあれどそこには好意があった。

 

 キュートちゃんからは遊んでくれて餌をくれそうな飼い主として。

 

 羊からは微かに自身の()()()()()()を漂わせる相手として。

 

 兵隊からは自分が汚れてでも守るべき優しき心の持ち主として。そして、

 

『どうやら、無事管理人は現実世界に帰還できたようね』

 

 出口が静かに閉じるのを見届けると、妖精は少し安心したようにふぅと息を吐く。すると、

 

『……ふわぁ。むにゃ』

『わおんっ!』

 

 管理人が元の世界に戻ったのを理解したのか、羊とキュートちゃんも一声挙げてどこかへと消えていく。危険だろうが能力があろうが基本は動物。こういう時はあっさりだ。

 

『では、私たちも帰投するであります。今回は管理人殿をお守り出来て何よりでありました。お二人もケンカせずに早く帰るのでありますよ! 敬礼っ!』

 

 そう言って、ピンクの兵隊は相変わらずのニッコリ笑顔でどこか窘めるように敬礼して去っていった。

 

 最後に残ったペスト医師と妖精の二人だったが、その間にはほんの僅かにだけ険悪なムードが漂う。

 

『しかし意外でしたね。私はてっきり、あなたは管理人の帰還を阻もうとするかと思っていたのですが。目の前で極上のご馳走が去っていくのを黙って見届けるとはらしくない』

『失礼ね。私はこう見えて美食家(グルメ)なの。極上の肉を素材そのままに食らいつくのも悪くはないけれど、下準備をしてより美味しくなるのを待つのも良い物よ。アナタに()()()()()までもなく、今は手を出すつもりはなかったわ』

『……だと良いのですが』

 

 そう。同行してからずっと、ペスト医師は妖精の動きから目を離さなかった。それは妖精もまた自身と同じく、()()()()()と言われる危険な存在である事を知っていたからだ。

 

 

 

 

 『幻想体 妖精の祭典』はリスクレベルZAYIN(一番下)である。だがそれは妖精本体が一切元居た世界の収容室から抜け出さず、専ら眷属のミニ妖精を目当ての職員(食事)のケアに当てるだけだからである。

 

 職員が肉体的にも精神的にも健康を保っていれば、ミニ妖精も慌てて食らいつくなんて不作法は働かない。それに妖精本体もわざわざ職員を喰らわずとも、収容室に職員が専用の食事を運んでご機嫌を取ってくるのだから問題はなかった。

 

 しかし、いくら愛着を持たれやすいよう美しい姿に変じていようとも、いくら美食家を気取ろうとも、妖精の本性は食欲に忠実な(ケダモノ)である。

 

 滅多に起こり得る事ではないが、仮に長い期間世話もされず食事にもありつけないなどという事があった場合、妖精は狂暴な獣の本性を曝け出して獲物を自ら探し出す。

 

 その際のリスクレベルは単騎で推定HE以上。眷属のミニ妖精を指揮する事も考えると、場合によってはWAWまで届きかねない。つまりは精神状態で危険度の変動する、立派なランク詐欺幻想体である。……もっとも、先ほどまでこの場に居た幻想体も大体そんなようなものだが。

 

『そんな事を言って、そちらこそどうなのかしら? 貴方が管理人に御執心なのは明白。わざわざ本体から影だけをこの上層に発生させ、手間暇かけて()()()()()()()()()迷子の管理人を拾い上げるなんてね』

『医者が怪我人の下へ行くのを誰が咎めましょうか? 少々労力が要る上遠い道のりでしたけどね』

 

 その言葉を、ペスト医師は軽く肩を竦めて受け流す。

 

 妖精が語ったように、ペスト医師が深層にて遊児と出会ったのは決して偶々ではない。

 

 いち早く夢の世界にやってきた事を察知し、それまでに少しずつ溜め込んでいた力をそれなりに消費してまで遊児と合流したのだ。

 

『幸い管理人の精神安定は間に合いましたし、本人の精神耐性もそれなりにあるようで助かりました。それに短い時間ではありましたが、二人で共に旅をするというのも中々に良い物でしたよ』

 

 徹頭徹尾、ペスト医師は今回遊児の側に立って動いた。常にその身と心が傷つかぬよう案じ、その手を取って進み続けた。

 

 唯一危険要素である妖精の同行を敢えて認めたのは、一緒にピンクの兵隊が同行を求めたため。

 

 黒ならざるピンクであれば管理人を害する可能性は非常に低く、その防御性能は絶望の騎士にも劣らない。そんな兵隊と自分が居れば、仮に妖精が遊児を捕食しようと動いたとしてもどうにかなる。

 

 残るキュートちゃんと羊は、ペスト医師が見た限り機嫌さえ損ねなければ無害なもの。つまり全て遊児の安全を最低限常に確保した上での行動だった。

 

 ええ。実に有意義な時間でしたよと、探る様な妖精に対してペスト医師は穏やかに微笑む。

 

 そう。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『……そう。まあ良いわ。でも心する事ね。あれは私の獲物。私のご馳走。さっき彼の背を押した時に何か()()()()ようだけど、()()()()()()()()()()。下手に人の獲物を横からかっさらって、飢えた獣に食い殺されないよう精々注意する事ね』

 

 妖精はくるりと身を翻すと、最後に僅かにだけ目つきを鋭くさせながら言い残して消えていった。

 

 

 

 

『人の獲物……ですか。それはある意味こちらのセリフなのですがね』

 

 近くに誰も居なくなった出口の前で、ペスト医師は誰に聞かせる訳でもなくそう呟いて懐から何かを取り出す。

 

 それは、古めかしい時計の文字盤のようなものだった。しかし時計にしては針が一つのみ。しかも針は動く事なく、現在二時の辺りを指している。

 

 そして不思議な事に、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それを見て、ペスト医師はどこか慈愛のような表情を浮かべる。

 

『ああ。どうかご無事で管理人。あなたに洗礼を。あなたに祝福を。あなたに救済を。……そして』

 

 その時、ペスト医師の黒翼が一瞬だけ()()に色を変える。

 

 

 

 

『いつの日か、目覚めて(われ)を迎えるのだぞ。我が最初にして最後の使徒よ』

 




 悲報! 遊児。幻想体達から色々こっそり仕込まれている模様。なおどれもこれも一応善意(下心有り)のバフ扱いの様子。

 ペスト医師『私自身が出られませんから、代わりに祝福を少し重ねておきました。何か問題でも?』

 妖精『素材の鮮度を保つのは大事よ。傷の治りが早くなるように少しだけね』

 兵隊『私たちも、ご命令とあらばすぐにでも保護するでありますよ!』

 セイさん『……何か嫌な予感がするわね。遊児が起きたら私も加護を掛け直した方が良いかも』

 罪善さん カタカタっ!



 ……ちょっと掛けられ過ぎかもしれない。
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