マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 ふぅ。タッグデュエルは普段の倍どころか3倍は頭を使う気がします。

 何か明らかにルール上おかしかったり、描写が変だと思ったら教えてもらえれば幸いです。

 次回の投稿も明後日予定です。



 それと今回もあとがきに登場した幻想体の情報を載せておきます。宜しければどうぞ!




タッグデュエル 遊児・隼人対十代・翔 その三

 遊児・隼人 LP6400

 十代・翔 LP5500

 

 翔 ドリルロイド 伏せ1 手札3

 隼人 ビッグ・コアラ 伏せ1 手札1

 十代 サンダー・ジャイアント 伏せ2 手札0

 遊児 歌う機械 伏せ0 手札4

 

 

 

 さあてどうやって進めるか。俺はたった今ドローしたカードを見る。『幻想体 魔法少女 貪欲の王』。攻撃力だけで見れば間違いなく場で一番だ。このカードを出せば一気に場を制圧することが出来る。

 

 ただこのカードの厄介な点として、効果でこのカードより攻撃力の低いモンスターをエンドフェイズ時に全て破壊してしまう。これは敵味方問わずなので、隼人のモンスターまで一緒に破壊されてしまう訳だ。

 

 そうなれば次のターン隼人の場はがら空き。返しのターンで手痛い反撃を受ける可能性が有る。

 

「……ここはサポートに回るとするか。俺は永続魔法『エンサイクロペディア』を発動! これは1ターンに1度、場のPEカウンターを任意の数使用することで効果が変わる。俺は歌う機械のPEカウンターを3つ消費して効果発動!」

 

 俺の場にタブレットのような物が出現し、その画面に何かが映し出される。

 

「3つ使用時の効果。俺の墓地のレベル4以下の幻想体を1体、攻撃表示で特殊召喚する。俺は墓地の『幻想体 空虚な夢』を特殊召喚する」

 

 タブレットに空虚な夢が映し出されたかと思うと、そのまま俺の場に特殊召喚される。だがこのままでは終わらない。

 

「そして、俺は歌う機械と空虚な夢を生け贄に、『幻想体 魔法少女 絶望の騎士』を守備表示で召喚する」

 

 絶望の騎士 星7 ATK1900 DEF2600 魔法使い族 闇

 

 音楽を奏でる肉挽き機と、他者を夢に誘う羊。その2体を生け贄に現れたのは、どこか悲しみを漂わせた異形の少女だった。

 

 髪の先が黒く染まった青色の長髪。そして髪と同色のドレスにはどこか星空を思わせる装飾がされていてとても美しく、背中には白く透き通ったマントを靡かせている。

 

 頭部にはスペードの形を組み合わせたようなティアラを着け、ドレスの胸元には同じくスペードの意匠が施されている。

 

 瞳を閉じて祈るように両手を合わせる様子は、そこだけ見れば持ち前の美しさと相まって、聖女と見間違えるほどの神聖さを醸し出していた。

 

 だが、顔の左半分と両腕の前腕部を覆う刺々しい黒き闇と、残った右半分の眼の下にある涙の形の痣。そして絶え間なく流れる黒い涙が、神聖さを打ち消すほどの悲哀を感じさせる。

 

「……これが、絶望の騎士か」

 

 このカードもテーブルデュエルはともかく、こうして立体映像で見るのは初めてだ。その姿に俺はどこか悲しみを感じると共に、何故か無条件に()()()()()()()()()()()と思える何かがあった。

 

 そう言えばこの世界に来た最初の日に、ディーに選ばされたカードの1枚に入っていたな。今着けているペンダントの意匠の一つにもなっているしそのせいだろうか?

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ。……隼人。サポートはこっちに任せて、ガンガン攻めてくれ!」

「分かったんだな遊児!」

 

 さあて。後は向こうがどう動くかだな。

 

 

 

 

「僕のターン。ドロー」

 

 翔がデッキからドローし、そのまま引いたカードを見て動きを止める。この様子だと、どうやら()()()()()を引いたみたいだな。

 

「……翔」

 

 隼人も勘づいたのか、小さく翔の名を呟く。決勝戦までの戦いの中で、俺が見た限り翔は一度もあのカードを使っていない。ここが正念場だぞ。

 

「……アニキ。僕は」

「おっと翔。相談は無しだぜ! ルール説明でもあっただろ」

 

 翔が十代に何か尋ねようとしたが、当の十代がそれを拒む。……十代も当然分かっているのだろう。今翔を助ければ、これからも同じようなことになる。誰かの許可が無くてはカードが使えないなんてことじゃいけない。

 

「だけど、俺から言えることは1つだ。……翔。お前の思う通りに全力でぶちかませ! それでどんな結果になったって、最後は笑ってデュエルを楽しもうぜ!」

「アニキ…………うん! 分かったよ! 僕はもう迷わないっ!」

 

 ……はぁ。十代の奴め。なんだかんだ甘いんだから。ただ、これで翔も覚悟を決めたみたいだな。

 

「僕は手札から魔法カード『パワー・ボンド』を発動! 手札のスチームロイドとジャイロイドを融合して、スチームジャイロイドを融合召喚っ!」

 

 手札の2枚を融合して翔の場に現れたのは、以前俺と戦った時に見た大きなプロペラの付いた機関車のようなモンスター。だが、あの時とは違うのは、

 

「パワー・ボンドの効果。このカードの効果で融合したモンスターの攻撃力は、元々の攻撃力分上がる」

 

 スチームジャイロイド ATK2200→4400

 

「よっしゃー! 良いぞ翔!」

「攻撃力4400っ!? やったんだな翔!」

 

 十代は笑顔で、隼人は驚きながらも翔のことを称賛する。やはり二人とも同室という事で気にかけていたからな。……ただこれで一気に形勢が向こうに傾いた。

 

「おいおい。パワー・ボンドのデメリットを忘れてないか翔? このターンのエンドフェイズ時、効果で上がった分のダメージを受けることを」

「分かってるさ。だけど、僕とアニキのLPはまだ5000以上有る。LPに余裕のある今ならデメリットも耐えられる!」

 

 俺がちょっと意地悪に聞くと、翔はちゃんと冷静に答えを返した。……よしよし。ただ考え無しに出したってわけじゃなさそうだな。

 

 このデュエルはタッグパートナーとの共通LP制。その分LPは多く設定されている。つまりそれだけデメリットに耐えられる訳だ。

 

 加えて今は中盤。まだLPに余裕が有り、なおかつ一気に押し込める程度にこっちのLPが減りつつある。つまり今が出すには絶好のタイミング!

 

「さらに、僕は伏せていた魔法カード『サイクロン』を発動! 隼人君の伏せカードを破壊する!」

「うわっ!」

 

 今の今まで翔の場に伏せてあったカード『サイクロン』が、隼人の伏せカード『リビングデッドの呼び声』を破壊する。

 

 ずっと伏せていたのは先にこっちが壊そうとするタイミングにチェーンする為だろうが、ここで使ったってことは一気に仕掛ける気か!

 

「そしてドリルロイドを攻撃表示に変更。行くぞっ! 僕はスチームジャイロイドで、隼人君のビッグ・コアラを攻撃!」

 

 スチームジャイロイドが翔の号令を聞き、巨大なコアラに向かって突撃する。

 

 確かに今の隼人の場にはビッグ・コアラのみ。伏せカードも潰して攻撃を防ぐものもなく、ビッグ・コアラを倒せばドリルロイドでさらなる追撃も可能だろう。一対一だったらほぼ間違いなく最善手だ。

 

 だが、一つ忘れちゃいないか? タッグデュエルだからこそそっちもデメリットが減ったように、タッグデュエルだからこそこっちもやれることがあるってことをさ。

 

「俺はその瞬間、絶望の騎士の効果発動!」

「えっ!?」

「なにっ!」

 

 翔と十代が驚いた表情を見せる。隼人は意外に落ち着いているな。味方も驚かすつもりだったんだが……まあ良いさ。

 

「相手の攻撃宣言時、このカード以外の場のモンスター1体を選択できる。そのカードは次のターンまで攻撃力と守備力が500アップし、1度だけ破壊されない」

「なんだって!?」

 

 ビッグ・コアラ ATK2700→3200

 

 その瞬間絶望の騎士の傍らから数本の剣が突如出現し、そのままビッグ・コアラを守るように円陣を組んで展開される。

 

 スチームジャイロイドが突撃を仕掛けるも、剣に阻まれビッグ・コアラまで届かない。

 

「くっ! 絶望の騎士にそんな能力があったなんて。だけど、ダメージは受けてもらうよ」

「うあっ!?」

 

 ビッグ・コアラは無事だったものの、スチームジャイロイドを受け止めた剣の1本が弾き飛ばされ隼人に直撃。映像ではあるが肩口を切り裂いていく。

 

 遊児・隼人 LP6400→5200

 

「なら今度は絶望の騎士を倒すだけだ。ドリルロイドで絶望の騎士を攻撃!」

 

 今度はドリルを模した機械が絶望の騎士目掛けて突っ込んでくる。確かドリルロイドの効果は、守備表示のモンスターとバトルする時その相手を効果で破壊するもの。それなら。

 

「リバースカードオープン! 『鎮圧行動』! 幻想体が場に居る時、場のモンスター1体の効果を次のターンまで無効にする。ドリルロイドの効果は無効だ!」

 

 しかし効果が無くなってもドリルロイドの攻撃は止まらない。そのまま絶望の騎士を貫こうとするが、再び騎士の傍らに現れた剣に行く手を阻まれ逆に全身を傷だらけにされてしまう。

 

 十代・翔 LP5500→4500

 

 カードの封印を解けたは良いが、ちょっと勝負を焦ったな翔。効果を知らなかったとはいえ、絶望の騎士のことが頭から抜けていたのは良くなかった。

 

 そして翔のバトルフェイズが終わったことにより、戦闘を行った絶望の騎士にPEカウンターが4つ乗る。

 

 絶望の騎士 PE4

 

「……僕はこれでターンエンド。この瞬間、パワー・ボンドのデメリット、スチームジャイロイドの上がった攻撃力分のダメージを受ける」

 

 十代・翔 LP4500→2300

 

「うぅ~。ゴメンよアニキ。折角パワー・ボンドを使ったのに、ほとんどダメージを与えられなかったばかりかLPも大きく削られて」

「いや。確かにちょっとだけピンチになったけど、それ以上に翔。お前がパワー・ボンドの封印を解いてここぞという所で使えるようになったのは大きいぜ! それにまだ攻撃力4400の強力モンスターだって場に残ってる。まだまだ勝負はこれからだぜ!」

「アニキ……ありがとう」

 

 翔は少し気落ちしかけたようだが、十代の言葉に再び立ち直ったようだ。まだやや十代が精神的支柱になっている感が有るが、これなら明日の制裁タッグデュエルも何とかなるかもしれないな。

 

 ただ、落ち着いて考えてみると決して今の状況は良いとは言えない。

 

 LPこそ一気に差をつけたが、翔の場には相変わらず攻撃力4400のモンスターが居座っている。さっきは何とか防げたとは言え、あれの攻撃をまともに受けたら一気に形勢がまたひっくり返る。

 

「よし。次は俺の番なんだな!」

 

 だというのに、隼人は気合十分にデッキからドローするべく指を伸ばす。その態度には一切の恐れがないように見える。

 

「なあ隼人。そっちの場はビッグ・コアラのみ。手札もたった1枚。相手の方がフィールドだけで見たら思いっきり優勢だ。それなのに怖くないのか?」

「怖くない訳じゃないんだな。でも」

 

 そこで隼人は少しだけ考え、俺に向かって力強く腕をあげて見せる。

 

「遊児が宣言通り俺をサポートしてモンスターを守ってくれた。なら俺に出来ることは、気合を入れてガンガン攻めることだけなんだな!」

 

 ……俺の相方が予想以上に頼もしくて嬉しい限りだ。

 




 という訳で、プレイヤーからの人気も(多分)高い幻想体、絶望の騎士の登場です。

 彼女はディーの占いにもあったように、少し先で色々と関わりがあります。今回はちょっとだけ顔見せという感じです。

 おそらく次話でタッグデュエル編は終了ですかね。




 ここからは幻想体紹介となります。

『幻想体 魔法少女 絶望の騎士』

 星7 ATK1900 DEF2600 魔法使い族 闇

 ①このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードにPEカウンターを4個乗せる。
 ②1ターンに1度発動可能。自分以外のフィールド上のモンスター1体を選択する。そのカードは次のターンまで攻撃力・守備力が500アップし、1度だけ戦闘、効果で破壊されない。この効果は相手の攻撃宣言時にも使用可能。この効果を使ったターン、このカードは攻撃できない。
 ③②の効果が発動中に選択したモンスターが破壊された時、フィールド上の魔法、罠を全て破壊し、互いのLPを半分にする。その後このカードは手札に戻る。
 ④③の効果発動時、自分フィールド上に『幻想体 魔法少女 憎しみの女王』か『幻想体 魔法少女 貪欲の王』が居る場合無効に出来る。

 憎しみの女王、貪欲の王と同じ魔法少女の一人。誰かを守ることに憑りつかれた悲しき騎士。

 他二人に比べて滅多なことで怒らず、職員を守る能力は非常に優秀。見た目も中々に美しいと個人的に好きな幻想体の1体。

 ただし万が一ブチ切れた場合、具体的に言うと守るべき人を守れなかった場合修羅と化す。普段落ち着いた人ほど怒ると怖い。

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