マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

25 / 235
 長かったタッグデュエル編も、遂にこの話で終了です。

 ちょっぴりキャラ崩壊しているかもしれませんが、遊児が来たことで多少影響を受けたからだと思って頂ければ。




タッグデュエル 遊児・隼人対十代・翔 その四

 

 遊児・隼人 LP4500

 十代・翔 LP2300

 

 翔 スチームジャイロイド ドリルロイド 伏せ0 手札1

 隼人 ビッグ・コアラ 伏せ0 手札1

 十代 サンダー・ジャイアント 伏せ2 手札0

 遊児 絶望の騎士 エンサイクロペディア 伏せ0 手札1

 

 

 

 

 ビッグ・コアラ ATK3200→2700

 

 隼人のターンになったことで、ビッグ・コアラの攻撃力は元に戻る。だがそれはあまり問題じゃなさそうだな。

 

「行くぞ! 俺のターン。ドローっ! 俺は魔法カード『融合』を発動!」

 

 隼人はドローしたカードを確認すると、そのまま一気に押し切るべく行動を始める。この状況で融合召喚を行うとすれば出す奴は決まっているな。

 

「俺はビッグ・コアラと、手札のデス・カンガルーを融合! 『マスター・オブ・OZ』を融合召喚するんだな!」

 

 マスター・オブ・OZ ATK4200

 

 場の巨大なコアラと手札のボクサーチックなカンガルーを融合して呼び出されたのは、以前父親との一戦の前に十代から託された攻撃力4200の強力モンスター。

 

 先のデス・カンガルーと合わせて、十代・翔との絆を象徴するカードでもある。

 

「このカードは……」

「ああ。そうなんだな翔。燻ってた俺がここまで来られたのも、全部お前達のおかげなんだな。だからこそ、これまでの感謝を込めてこのカードで決めるんだな! 俺はマスター・オブ・OZでサンダー・ジャイアントに攻撃」

 

 オーストラリアの覇者が雷の巨人に突進する。そして、

 

「そこで俺は絶望の騎士の効果発動! もう効果は言わなくても分かってるよな? 対象は当然マスター・オブ・OZ」

 

 その瞬間、絶望の騎士から放たれた剣の加護が、マスター・オブ・OZを強化する。

 

 マスター・オブ・OZ ATK4200→4700

 

 おまけに1度だけ破壊耐性も付いているので、仮に十代がミラーフォースか何か伏せていたとしても防ぐことが出来る。

 

 そしてサンダー・ジャイアントの攻撃力は2400。これが通ればダメージは十代達のLP2300をピッタリ削り切る。俺達の勝ちだ。

 

「行けぇ隼人! これで決めろっ!」

「うおおおっ! エアーズ・ロッキーっ!」

 

 マスター・オブ・OZの必殺の右ストレートがサンダー・ジャイアントの目前に迫り……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。これはっ!?

 

「俺は罠カード『攻撃の無力化』を発動していたのさ。攻撃宣言時に絶望の騎士の効果と同時にな。……悪いけど、こっちも弟分の前で簡単にやられるわけにはいかないんでね」

「アニキ! 良かった!」

 

 十代が軽く冷や汗を拭いながらニヤリと笑い、翔がほっと安堵の息を漏らす。やはり原作主人公。ここまで来てもまだ粘るか。

 

「俺はこれでターンエンドなんだな。……ゴメンな遊児。決めきれなかったんだな」

「隼人。最後の最後でロマンに走ったろ? 今の攻撃はドリルロイドに攻撃すればより確実だったろうに、俺のサポートも見越してわざわざLPピッタリのサンダー・ジャイアントの方に。向こうが攻撃力を増減するカードとかだったら少し危なかったぞ!」

「それも含めてゴメンなんだな。でも……こうして防がれたけど、なんか嬉しいって感じなんだな」

 

 隼人は謝りながら、それでいてどこか楽しげに言う。その気持ちは分からないでもない。俺達は今、思いっきりデュエルを楽しんでいる。できるならもっと戦っていたいとも。

 

「十代っ! 翔っ! 一つ聞くけどな、そっちは今デュエルを楽しんでるか?」

「おうっ! もちろんだぜ! こんなワクワクするデュエルは久しぶりだ。なあ翔?」

「えっ!? ……そうだね。僕も、多分楽しいって思ってる」

 

 俺が声をかけると、二人は思い思いの反応を返す。十代は当然として、翔も負けるかもという不安はあるけど確実に楽しいという気持ちもあるみたいだ。

 

 闇のデュエルだのなんだのという物騒な物じゃなく、純粋にゲームとして楽しむ戦い。やはりデュエルはこうじゃないと!

 

「こんな楽しいデュエルだが、そろそろ終わりに近づいてきたみたいだ。さっきは決めきれなかったけど次で決める!」

「それはどうかな? デュエルってのはLPが1でも残っている限りまだ分からないんだぜ!」

 

 隼人の場にはマスター・オブ・OZが居る。そして俺の場には、自分以外のモンスターの攻撃力を上げて破壊から守る絶望の騎士が控えている。

 

 対して十代の場にはサンダー・ジャイアントと伏せカードが1枚。翔の場には攻撃力4400のスチームジャイロイドとドリルロイド。

 

 互いの手札もほぼ底をついた状況。だが、次の十代のターンを凌げれば、絶望の騎士のPEカウンターを使って一気にモンスターを展開、手札の貪欲の王を召喚してさらにプレッシャーをかけられる。ドローカードによってはそのまま決められるかもしれない。

 

 つまり次の十代の行動が、このデュエルの勝敗を大きく左右する。

 

 

 

 

 そして、運命の十代のターン。

 

「俺のターン……ドローっ!! 俺は魔法カード『強欲な壺』を発動! カードを2枚ドローし、このカードを破壊する」

 

 このタイミングで強欲な壺っ!? 流石十代。ギリギリで厄介なカードを引いてきたな。……あと引いた後壺が破壊されるのは確か古いテキストだったかな。アニメ版だとそっちが優先されるらしい。

 

「……翔。お前のモンスターを使わせてもらうぜ!」

「うん! やっちゃえアニキ!」

「俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、E・HEROエッジマンを攻撃表示で召喚するぜ!」

 

 エッジマン ATK2600

 

 十代の場に、黄金に輝く全身に鋭い刃を纏ったヒーローが出現する。だが、

 

「どういうつもりなんだな? エッジマンの攻撃力は2600。今生け贄にしたスチームジャイロイドより攻撃力は低いんだな。なのになんでわざわざ」

 

 十代の顔を見れば、何か仕掛けてこようとしているのは分かる。しかしエッジマンだけじゃマスター・オブ・OZどころか絶望の騎士も突破は出来……いや待てよ! エッジマン?

 

 俺は十代の場の伏せカードを見る。デュエル開始からずっと伏せられたままだったあのカード。ずっと使わないから温存しているのかと思っていたが、もしそれが()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()だけだとしたら?

 

「俺は魔法カード『受け継がれる力』を発動! サンダー・ジャイアントを墓地に送り、その攻撃力をエッジマンに加える!」

 

 エッジマン ATK2600→5000

 

「攻撃力5000っ!?」

 

 エッジマンがサンダー・ジャイアントの雷光を身に纏い、より輝きを強くする。……これはマズイな。

 

「行くぜ! エッジマンで、絶望の騎士を攻撃! パワー・エッジ・アタック!」

「ぐっ!? 絶望の騎士は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だが、それでも効果は使わせてもらう! マスター・オブ・OZの攻撃力をアップし、破壊耐性を付ける」

 

 マスター・オブ・OZ ATK4200→4700

 

 加護を与えた後、剣を飛ばして絶望の騎士も迎撃するものの、エッジマンもまた全身が刃。飛来する剣をものともせず、そのまま絶望の騎士をすれ違いざまに切り裂いた。

 

 絶望の騎士は黒い涙を流しながら、軽く天を仰ぎ見る様に消滅する。……なんか演出が他のより凝ってるのは気のせいだろうか?

 

「エッジマンには貫通効果がある。守備力を超えた分の戦闘ダメージを受けてもらうぜ」

 

 遊児・隼人 LP4500→2100

 

「……だけど、もうこれで十代の場に攻撃できるモンスターは居ない。翔の場もがら空きになったし、次のターン遊児がモンスターを出せばまだ勝負は分からないんだな!」

 

 隼人が俺を鼓舞する様に言う。だが、もし俺の読みが正しければ……。

 

「俺はこれでターン終了だ。この瞬間エッジマンの攻撃力は元に戻る」

 

 エッジマン ATK5000→2600

 

「そして俺のターン。この時絶望の騎士の加護が消え……()()()()()()()()O()Z()()()()()()()()()

「そう。俺はその瞬間を待っていたんだ! 罠カード発動! 『エッジハンマー』っ!」

 

 何でわざわざ攻撃力の劣るエッジマンを召喚したのか。答えは至極簡単。エッジマンじゃないと使えないカードがあったからだ。

 

「エッジハンマーは、エッジマンを生け贄に捧げることで発動できる罠カード。相手の場のモンスター1体を破壊する。対象にするのはマスター・オブ・OZ!」

「ま、マスター・オブ・OZがっ!?」

 

 纏った雷光は失われたが、代わりに黄金のハンマーを握りしめたエッジマンが捨て身の突撃を仕掛けてマスター・オブ・OZを破壊する。そして、

 

「その後、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手プレイヤーに与える」

「「うわああっ!?」」

 

 エッジマンの持っていたハンマーが、持ち主が居なくなってもなお回転しながら俺達に向かって飛んできて、そのまま衝撃と共に俺達のLPを削り切った。

 

 遊児・隼人 LP2100→0

 

 

 

 デュエル終了。十代・翔WIN!

 

 

 

「……長く激しい戦いでしたが、遂に決着ですっ! 購買部主催タッグデュエル大会。優勝は、遊城十代君と丸藤翔君のペアですっ!」

「「「うおおおっ!!」」」

 

 デュエルが終わり、セイコさんの締めと共に、成り行きを固唾をのんで見守っていた観客達が一斉に歓声を上げる。それだけの激闘だったのだから当然だな。むしろ良くこんなノリの良い奴らが試合中に静かにしていたもんだ。

 

「ガッチャっ! すっっげぇ楽しいデュエルだったぜ! 遊児! 隼人!」

「ああ。こっちも久々に燃えるデュエルだった」

「こっちもなんだな! 負けたのは少し悔しいけど、それでも力を振り絞って戦えたんだな!」

「僕もだよ! このデュエルで、パワー・ボンドの使い方が少しは分かったような気がする」

 

 俺達は互いの健闘を讃え合う。互いに全力で戦った後は、中々に清々しい気分になるもんだ。

 

「今のデュエル凄かったぜ!」

「お前らホントにオシリスレッドかよ!? この調子ならラーイエローに上がれんじゃないの?」

「幻想体なんて見たことねぇ。金なら出すから俺に譲ってくれっ!」

「おい。デュエルしろよ!」

 

 観客達から思い思いにそんな賛辞(後半はなんか違う気がするが)を受けながら、俺達はデュエルスペースから下りてトメさんの所に向かう。優勝者と上位入賞者(この大会では準優勝まで)には賞品が送られるのだ。

 

「おめでとうねあんた達。はいっ! このコードを各自のタブレットに入力すれば、それぞれDPが入るからね」

「ありがとうございます! トメさん!」

 

 俺個人としてはあまり使わないが、有って困るような物でもない。ありがたく賞品のDPを頂いておく。

 

「うわぁ! どうしようアニキ。何に使おうか?」

「ここはやっぱり新作パックに突っ込もうぜ! 何が出るか楽しみじゃねえか!」

「俺は……ひとまず貯めておくんだな!」

 

 皆それぞれ使い道を考えているようで結構な話だ。俺も使い道が思いつくまでは貯金かな。……っと、忘れる所だった。

 

「それで十代、翔。明日の制裁タッグデュエルに向けて経験はしっかり積めたのか?」

「……多分だけどね。これなら少しは緊張せずに済みそうだよ」

「おう! ばっちりだぜ!」

 

 さっきの動きを見ているからあまり心配はないが、肝心の目的が出来てなかったらシャレにならないからな。これで一安心だ。

 

「よし。じゃああとは明日に備えてしっかり休むだけだな。早いとこ寮に帰ろう」

「あっ! ちょっと待てって遊児! ……見ろよ周りを」

 

 十代の言葉に周囲を見回すと……なんとさっきまで観客だった奴らが手に手にデッキを持って俺達を取り囲んでいる。

 

「どうやら皆、今の俺達のデュエルを見て火が付いちまったみたいだぜ」

「うわぁ……どうするのアニキ!? この状況?」

 

 翔は流石にこの人数に囲まれると怖いのか十代の後ろに隠れる。隼人も軽く後退り。俺も一応身構えてみるが、これはどうしたもんか。

 

 そんな中、翔が十代に状況打開の策を訊ねると、十代は俺に任せろとばかりに胸を張る。何か手があるのか十代!

 

「決まってんだろ……皆まとめてデュエルだ!」

 

 え~っ!? 結局力技かよっ!? 相手は少なくとも20人は居るぞ。さっき予選で戦った奴も何人か居るじゃないか。お前らまたやるのかっ!

 

「はぁ。……分かった。やるよやりますよ。そうでもしないと収まらないって言うなら受けて立つよまったくもう」

 

 俺も仕方なく一歩前に出てデッキを構える。流石にこれだけの人数はソリッドビジョンでやるだけのスペースはない。テーブルデュエルになるな。

 

「そうこなくっちゃ! 翔と隼人はどうする? 疲れたなら休んでるか?」

「うん。ちょっと休んでる。少ししたら僕もまた戦うから」

「俺も少し休憩なんだな。というか、今あれだけデュエルしてまだ戦える十代と遊児が普通じゃないんだな」

 

 俺をこのデュエル馬鹿と同じカテゴリに加えないでくれるか隼人! 俺だって結構疲れてるっての。……ただな、

 

「正直な話、デュエルが楽しかったのとはまた別に、やっぱり負けて悔しいってのも確かにあるんだよ。なので……丁度憂さ晴らしをしたかったところだこの野郎っ! どいつもこいつもかかってこいやっ!」

 

 こんなもの、ディーとのチュートリアルデュエル百連戦に比べればどうってことはないっ! 

 

「おっしゃ~! 行くぜ遊児っ!」

「おうとも! 先に倒れるんじゃないぞ十代!」

 

 俺と十代は、購買部大会第二ラウンドへ突入した。

 

 

 

 

 翌日。

 

 

 

 

「何でこんな時に限って皆爆睡してんだよっ!」

「仕方ないだろっ! 結局昨日タッグの次はソロのデュエル大会になるくらい盛り上がって、そのまま寮に戻って倒れるように寝たんだから!」

「はぁっ。はぁっ。……とにかく急いで! このままじゃ不戦敗になっちゃうっすっ!」

「い、急ぐんだなあ!」

 

 俺達は最大の敵(遅刻寸前)と直面していた。……ちっくしょう! だから早く帰ろうって言ったんだ! 次にこういう事があったら絶対余裕もって休んでやっからな~!

 

 

 

 

 ちなみに何とか時間ギリギリで間に合い、無印のマンガで見たことあるようなカンフー兄弟を無事に十代と翔が撃破して退学の話は無しになった。

 

 まあ十代が代わりにレポートを大量に提出する羽目になったのは些細なことだな。うん。

 





 まず、ここまで読んで頂いた読者様に感謝を。

 長い……戦いでした。本当はその三で終わらせる予定だったのですが、何だかんだ互いの熱さを書いている内にその四まで続いてしまいました。

 何か俺達の戦いはこれからだみたいな感じになっていますが、本作はまだまだ続きますのでこれからもお付き合いください。




 次も明後日投稿予定です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。