マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 注意! カードの効果は、OCG版とアニメ版で違うものについては個人的に良さそうな方を使用します。


閑話 人形達の戦い その三

 

 ダーク・ネクロフィア ATK2200

 

『……はっ! 三枚も墓地から除外して何を出すかと思えば、攻撃力たった2200? どんなモンスターか知らないけれど、それじゃドールキメラを倒すどころか傷一つ付けられないわ』

 

 呼び出された我が依り代を見てアリスはそう嘲笑する。しかし、

 

『ほぉ~。そうかそうか。()()()()()()()()()()()()()()()! なあレティシアよ』

『へっ!? ……そ、そう? ふっふっふ! それは残念だね。このダーク・ネクロフィアはと~っても強いモンスターなんだよ! これならその怖~いお人形さんだってちょちょいのちょいなんだから!』

 

 軽く目配せすると、レティシアもこっちの意図を酌んだのか便乗して自信ありげに笑う。さあどう出る?

 

 アリスは少しだけ目を細めてダーク・ネクロフィアを見つめ、

 

『へぇ~。そんなに強いの? なら……こうすれば良いわよねぇ? あたしはそのカードの特殊召喚時にリバースカードオープン! 罠カード『激流葬』! これで場の全てのモンスターを破壊するわ』

『むっ!?』

 

 どこからともなく押し寄せてきた大水が、場のモンスター達を押し流していく。しかし、

 

『ドールキメラの効果。デッキからドールパーツ・レッドとゴールドを墓地へ送り破壊されない。あはは。どう? そのカードが厄介なモンスターだったとしても破壊してしまえば意味はないわ。そして更にドールキメラの攻撃力がアップ』

 

 ドールキメラ ATK2400→3200

 

『……私は手札から私自身を守備表示で召喚するよ』

 

 幻想体 小さな魔女 レティシア DEF600

 

 レティシアは顔を伏せ、か細い声でそっと自身の依り代を場に召喚する。

 

『必死ね。でも頼みの切り札は破壊され、壁モンスターもドールハウスの効果で直接攻撃出来るドールキメラの前では無意味。さあ! 今度こそ絶望の淵に沈む時よ! アハハハハ』

 

 

 

『…………ふ、フハハハハハっ! まさかこうもあっさり引っかかるとはな!』

『ふふふ! イタズラ大成功だね!』

 

 

 

 アリスの哄笑を、耐えられないとばかりに私とレティシアの大笑でかき消してやる。

 

 最悪自爆特攻させる算段だったが、効果を知らなそうだったので敢えて強そうに言ってみればこの通り。都合よく伏せカードを切ってくれて何よりだ。まあレティシアがその後自分自身を呼び出すまでは想定外だったが。

 

『我が依り代を破壊してくれてどうもありがとう。破壊される事で効果が発動するのが、ドールキメラの専売特許だと思うなよ? レティシア!』

『うん! 私はこれでターンエンド。そして、墓地のダーク・ネクロフィアの効果発動だよ!』

『何をしてもドールキメラは不死……なっ!?』

 

 アリスもさぞ驚いただろう。何故なら、墓地よりゆらりと湧き出た我が依り代の幽体が、ドールキメラに纏わりつきこちらの場へと引きずり込んだのだから。

 

『そんな。ドールキメラが……』

『ダーク・ネクロフィアの効果。相手によって破壊されたターンのエンドフェイズ。相手モンスターの装備カードとなりそのコントロールを得る。ご自慢のドールキメラは今私の軍門に降ったのだっ!』

 

 不死身の相手をなんとかする方法。

 

 それはずばり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 理論上デッキのドールパーツが無くなるまで破壊し続ければ倒せるが、そんな脳筋な手段を取るバカはそう居ないだろうし私には合わん。

 

 なら取るべきは後者。最初から私の狙いは、墓地に素材を溜めて我が依り代を呼び出してからのコントロール奪取よ。

 

『ふぅ。どうだ我が運び手よ。私の手にかかれば、不死身のデカブツだろうが何だろうがこの通りだ』

『凄い凄い! さっすがネクちゃんだよ!』

 

 レティシアがこちらをキラキラとした尊敬の眼差しで見つめてくる。称賛されるというのも悪くはないな。そこに、

 

『……本当、凄いわねアナタ達。あたしには、出来なかったから』

 

 これまでとは少し違う、アリスの静かな声が響き渡る。

 

 その目は先ほどまでの淀んだ物ではなく、どこか陰りを持ちつつも少しだけ輝きを取り戻していた。

 

 

 

 

 ドールキメラがこちらの場に移った事で、多少ではあるが絡みついていた邪気の影響が消えたのだろう。

 

 少しだけ落ち着いた風のアリスが語ったのは、何故こんな事になったのかの独白だった。

 

 自分はこのアカデミアに安置されていたビスクドールであり、いつの間にか精霊化してからも生徒達の事を見守っていた事。

 

 ある日、心無い生徒の一人がデュエルで負けた腹いせに自分のカードを粗末に扱い、そのカードが悪霊と化して自身のボディに入り込んできた事。

 

 いつしか自分も精神汚染を受け、多くのデュエリスト達を憎むようになっていった事などだ。

 

『か、可哀そうだよ。辛かったんだねアリスお姉ちゃん』

『そうか? 結局の所その悪霊……ドールキメラの精神汚染を防げなかったのはコイツの力不足だと思うがな』

『そうね。アナタの言う通りよお人形さん。だから……これから責任を取るわ。デュエルを再開しましょう』

 

 アリスはそれだけ言うと、ゆらりとデュエルディスクを構え直す。ただ、

 

『うぅ~。ネクちゃん』

『ああ。分かっている。……奴め。()()()()()()()()()()()()()()()

 

 確かに他者への悪意は抜けている。だが、強いて言うなら自分への悪意。或いは自責の念とでも言おうか。それが残っている。そんな奴がやろうとする事など……手に取るように分かる。

 

『まだアナタ達のエンドフェイズだったわね。あたしは伏せてあったカード『リビングデッドの呼び声』を発動し、墓地のさまよいのビスクドール-アリスを特殊召喚』

 

 さまよいのビスクドール-アリス ATK300

 

『更に墓地にあるドールハンマーの効果。このカードが墓地にある状態で自分のモンスターの墓地からの蘇生に成功した時、このカードを手札に加える事が出来る。ただしこの効果を使ったターンドロー効果の方は使えない』

 

 ビスクドールアリスの復活に呼応し、ドールハンマーも手札に戻る。相手ターンでも回収出来るとは中々優秀なカードだ。そして相手のエンドフェイズに使う事で、ターンをまたぎ即座に使える状態に持っていくとはな。

 

『そして……あたしのターン。ドロー』

 

 

 

 アリス LP800 手札4 モンスター さまよいのビスクドール-アリス 魔法・罠 呪われたドールハウス 蘇りし魂 リビングデッドの呼び声 伏せ1

 レティシア LP1100 手札2 モンスター ドールキメラ  幻想体 小さな魔女 レティシア 魔法・罠ダーク・ネクロフィア(装備扱い) 伏せ1

 

 

 

『バトルフェイズ。さまよいのビスクドール-アリスで、ドールキメラに攻撃』

 

 ずっと守りを固めていたビスクドールアリスは、主人の命で恐ろしき怪物へと歩みを進める。普通に考えればただのビスクドールに勝ち目はない。だが、

 

 ドールキメラ ATK0

 

『え~っ!? 怖いお人形さんの攻撃力が0になってるよっ!?』

『当然だな。私のデッキにも墓地にもドールパーツは存在しない。なら攻撃力が上がる筈もなく不死身でもない』

 

 バシィっ!

 

 鋭く響くのはビスクドールアリスの平手打ちの音。ドールキメラの頭部の一つはその衝撃で外れ、残った胴体共々音を立てて崩壊、消滅する。装備されていた我が依り代も道連れだ。

 

 レティシア LP1100→800

 

『メインフェイズ2。あたしは手札からカードを一枚伏せて、ドールハンマーを再び発動。さまよいのビスクドール-アリスを破壊し二枚ドロー……する時、更にリバースカードオープン』

 

 それは、ずっとアリスの場に伏せられていたが使われなかったカード。悪霊たるドールキメラが使う事を許さなかったカード。

 

『罠カード『解き放たれた呪い』。これはさまよいのビスクドール-アリスが破壊された時発動可能。場のカードを全て破壊し、お互いに破壊された自身のカードの数×300ポイントのダメージを受ける』

『でもでもっ!? そんな事したらアリスお姉ちゃんはっ!?』

 

 そう。()()()()()()

 

 私とレティシアの場のカードはドールキメラが倒された事で残り二枚。対してアリスの場には今伏せたカードも含め三枚。アリスだけがLPが0になり敗北する。

 

『言ったでしょう? 責任を取るって。これでもう、生徒達を傷つける事はない』

 

 そう言ってアリスは悲しげに微笑み、カードから放たれる光が少しずつ場を覆っていく。この効果処理が終わった時、アリスの負けが確定する。

 

 このまま放っておけばいい。自分から勝負を放棄してくれるとは楽な話だ。……だが、

 

 

 

『そんなの、そんなのダメだよっ! リバースカードオープンっ!』

 

 

 

 残念だったなアリスよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『永続罠『死霊の盾』。1ターンに1度、カードを破壊する効果を相手が発動した時、私の墓地から悪魔族・アンデット族モンスター1体を除外して、その発動を無効に出来るんだよ。墓地の『地縛霊』さんを除外して、解き放たれた呪いを無効にするよっ!』

 

 まったく。本当に念の為に温存していた、相手の攻撃も無効に出来る防御カードを相手の為に使うとは。広がっていく光が死霊達の壁に押し止められ、そのまま小さくなって消えていく。

 

『…………何故?』 

 

 アリスのその呟きは、幾つもの意味があったのだろう。

 

 何故そんな事をするのか?

 

 何故このままなら勝てるのに自分を止めるのか?

 

 何故……このままあたしを消えさせてくれないのかと。

 

 だがそれら全てに対し、我が運び手はたった一言で切り返す。

 

 

 

『だって、まだ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 そう。それはいかにも子供らしく無邪気で、無垢で、少しばかり残酷で傲慢な、善意の押し付け。

 

 だが、それでこそレティシア。我が運び手なのだから困ったものだ。

 




 一番最初の構想では、ここでアリスがドールキメラを破壊せずに解き放たれる呪いを発動して両者LP0でノックアウト。その際受けるダメージはネクがちょこちょこ溜めていたエネルギーを代価にまとめて引き受けて、ボロボロになりながら半分ギャグ調で終わるという流れでした。

 ただ……実際に書いている途中曇りまくって自分だけ犠牲になろうとするアリスを幻視し、もしそうなったら絶対レティシアが止めに入るなと思い直してこういう形になりました。

 次回、急遽出来上がった、少女に幼女と人形が笑顔を取り戻すための1ターンです。
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