マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 お久しぶりです!

 閑話や掲示板回を除けば約二年半ぶりの本編です!

 今回はデュエル描写はないのですが、新章始まりのイメージだけでも楽しんでいただければ幸いです。



第三章 二年生編
転じて入るは不死鳥と……


 

 早朝。森の中にて。

 

 タッタッタッタ!

 

 爽やかな空気を浴びながら、俺はランニングコースを走る。道さえ逸れなければ迷う事はないし、最悪森を巡回している三鳥を呼べば森の入口までは送ってもらえる。

 

 さて。何故急に早朝ランニングなど始めたかというと……()()()()である。

 

 

 トットットット!

 

『わんっ! わんっ! わふぅ!』

「こら。キュートちゃんっ! コースを逸れるなっ!」

 

 

 前方を駆ける白いモフモフが蝶々に気を取られる所を、俺は慌ててリードを引いて止める。

 

 そう。このつぶらな瞳の愛くるしい子犬の名前はキュートちゃん。以前夢の中に居た幻想体だ。

 

 俺の精霊使いの力は弱まっているが、勝手に力が流れ込んで幻想体が精霊化、実体化するのはまた話が別だ。少し前、突然キュートちゃんが実体化した時は流石に驚いた。

 

 だが幸い、ディーの見立てでは実体化はそう長くは保てず、気が済むまで付き合えば勝手に精霊状態に戻るという。

 

 少々大食らい(葬儀さんが以前言っていた一日数キロ食べるというのはあくまで本体の話で、影法師のキュートちゃんは精々大型犬並か少し上の食欲)で散歩を毎日欠かせないが、それさえ守ればただの可愛い子犬だ。……暴走さえしなければ。

 

『く~ん!』

『遊児お兄ちゃん。ちょっとくらいなら良いんじゃないかな? キュートちゃんもあんなに楽しそうだし』

『我が生け贄よ。一回こうなったレティシアはしつこいぞ! なにせ私の実体験だからな』

「……仕方ないな。じゃあこの先の開けた所まで行ったら少し休もうか」

 

 キュートちゃんとレティシアの上目遣いのおねだり(プラスにやにやするネク)に、俺はため息をついて妥協する。

 

 森の中ならそう人に会う事もないので、余裕がある時はレティシアやテディも時々実体化して付き合ってくれる。ありがたい事だ。

 

 少し行った場所でレティシアとキュートちゃんが簡単なボール遊びをし、ついでに巡回していた罰鳥がネクを追い回すのを見ながら少し休憩。そしてしばらくしたらまた走り出し寮に戻る。これが、ここ最近の穏やかな日課だ。

 

 だが、そろそろ話の動き出す頃合いだろう。今日は新入生がやってくるのだから。

 

 

 

 

 新学期を迎え、俺達は二年生となった。

 

 入ったばかりの一年生や、卒業後の進路に向けて本腰を入れだす三年生とは違い、二年生というのは一番良い意味で余裕のある時期だ。

 

 それに進級はしたが昇格はしていない。相変わらず俺や十代や翔、万丈目はオシリスレッドのままだ。よく授業中に居眠りする十代やそれに付き合う翔はともかく、万丈目がオシリスレッドのままというのは微妙に解せないが……まあそこはアニメ的に言えば脚本の都合という奴だろう。

 

 十代と翔は二年生になって先輩になるのだと少々浮足立っているが、俺は特に変わったとは思わない。ディーとの約束通り今までのように、デュエルアカデミアの卒業を目指すだけだ。

 

 そんなある日の事。キュートちゃんの散歩も終わり、今日一日新入生の受け入れ準備の為授業も休み。自室でのんびりしていると突然翔がやってきた。

 

「何? 十代が新入生に呼び出された?」

「そうなんすよ久城君。どうも寮の裏手の海岸でデュエルするみたいなんすけど、一緒に見に行かない?」

「ふ~む。新入生ねぇ」

 

 俺は翔の言葉に少し考える。

 

 新入生が先輩に挑戦する事自体はデュエルアカデミアでは珍しくない。目と目があったらまずデュエル……とまでは言わないが、それでも挨拶代わりにデュエルするくらいここでは普通の事だ。

 

 問題なのは、十代にいきなり新入生が挑戦するという構図。つまり……これは多分アニメで言うお約束。新たなレギュラーキャラの顔見せ回と見た。見てみたい所ではあるが、

 

「行きましょうよ久城君。明日香さんや万丈目君も見に行くって言ってたっすよ」

「う~ん。すまないな翔。これからちょっと出かけなきゃいけないんだ」

「ええ~っ!? なんだか間が悪いっすねぇ。まあ良いっすけど」

 

 そうして海岸に向かう翔と別れ、俺はある場所へと向かう。

 

 そこはオシリスレッド寮の片隅。かつて大徳寺先生が使っていた寮長の部屋にして、

 

「……ふぅ。悪いわね久城君。手伝ってもらって」

「いえ。これからお世話になる人への点数稼ぎみたいなものですからお気になさらず」

「あらそう? なら……もっとたっぷりこき使ってあげようかしら?」

 

 目の前で揶揄うようにそう朗らかに笑う女教師。新しくこの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()先生の部屋である。

 

 

 

 

 大徳寺先生が退職し、オシリスレッドの寮長は空席となった。では誰が代わりにその席に着くかという話になるが、ここで少し問題が発生する。正直な話、やりたがる人が居なかったのだ。

 

 オシリスレッドは対外的に見て最下級のクラス。他の二寮に比べて様々な点で不便だ。設備もやや老朽化しているし、本棟までの距離も遠い。おまけに問題のある生徒も多い。

 

 尻込みする教師陣が多く、猫のファラオを暫定寮長にするという呆れた案まで出る始末。そこに立候補したのが響先生だ。といってもブルー女子寮の鮎川先生の補佐も兼任だが。

 

 「復帰明けは少し大変な方が丁度良いですよ。問題児? ……ふふっ! 紅葉で慣れてますから」と実に頼もしい啖呵を切り、こうして大徳寺先生の使っていた部屋を片付け入寮作業に入っていたのだ。

 

 俺が手伝っているのは点数稼ぎという事もあるが、一応大徳寺先生が部屋に何かしらの仕掛けや特殊なアイテムを残していた場合の備え。まずないとは思うが、錬金術的な何かがあったら精霊使いでないと少し危ない。……もっとも俺の力は弱まっているし、響先生も精霊使いらしいのであくまで手伝い程度だが。

 

「よし。これはこっちで良いですか?」

「ええ。そこに置いて。それにしても……懐かしいわね」

 

 荷物の整理中、突然響先生は目を細めて何かを思い出すようにそう口にする。

 

「響先生はここの卒業生とかだったりするんですか?」

「いいえ。でも教師になりたての頃、大徳寺先生には良くお世話になったの。この机で一緒にお茶を飲みながら授業の相談をしたりね」

「それは……少し分かる気がしますね」

 

 大徳寺先生は間違いなく立派な人だった。

 

 普段は飄々として捉えどころがなく、生徒にご飯をたかるなどダメな所が目立つ人だったけど、生徒を気にかけ自分の身体を張れる人でもあった。

 

「なんと言うのかしらね。あの人の前だと、良い意味で力を抜けたの。『響先生。先生だからっていつもそんな肩肘張っていては疲れますのにゃ。ぼくを見てみるのにゃ。ほらっ! こ~んなにのんびりしてますのにゃ。疲れたらまず休む。リラックスしてからの方が効率が良いのですにゃ~よ』なんて。わざわざ目の前でごろ寝して見せてね。私ったら思わず笑っちゃって」

 

 そんな響先生の思い出話を聞きながら、俺は横目で部屋の外を見る。そこにはふわぁと欠伸をするファラオ。そして、こちらに向けて人差し指を口に当てるジェスチャーをする大徳寺先生(地描霊)が立っていた。

 

(いい加減響先生には話したらどうです?)

(話しづらいのにゃ。内緒にしてほしいのにゃ)

 

 まあ死んだ筈が幽霊になってここに居ますとは言いづらいけど、響先生も視える方の人なのだから隠れなくても良いと思うんだけどな。というか居るなら片づけを手伝ってくれよ大徳寺先生っ!

 

 

 

 

 そんなこんなで無事入寮準備も整い、響先生の寮長就任挨拶及び新入生歓迎会の時間となったのだが、

 

「何? エドって……あのエド・フェニックス? プロデュエリストの?」

「そうなんだよ。今年からこの学園に入るんだってさ」

 

 食堂で十代が昼間呼び出された相手の名前を聞いて俺は面食らう。

 

 エド・フェニックスと言えば雑誌にも名前が載っている新進気鋭のプロデュエリスト。しかし俺が驚いているのはそれだけではない。

 

 エドは漫画版の世界において終盤に登場する人物の一人であり、あの吹雪さんを多少の横槍こそあったが打倒するほどの実力者だ。さらに言えば、エドの父親がデザインしたカード群プラネットシリーズも作品内で大きな役割を果たす。

 

 そんな人物が推定レギュラー入りする所を見逃すとはしまったな。どういう人物か知れればこれから先の流れを先読みできたかもしれないのに。

 

「ふんっ。何を悩んでいるか知らんが、どうせ入学したのならまた学園内で会う機会もあるのだろう? 俺のファンともあろうものがそう動じるな」

「そうっすよ久城君。それよりもうすぐ歓迎会っすよ! 普段よりご馳走っす!」

「……ああ。そうだな万丈目。翔。今はまずこっちだ」

 

 食卓の上に並ぶのは、普段より量も種類も豊富なメニュー。新入生達よ。他のニ寮のそれに比べれば質素かもしれないが、少なくとも味の方は保証するぜ。

 

「は~いちゅうも~く! 食事を始める前にほんのちょこっとだけ時間を頂戴ね」

 

 そこに、ついさっき自己紹介を終えた響先生の声が響き渡った。

 

 ざわついていた生徒達も、その一声でスッと落ち着く。この辺り大徳寺先生とは違うな。まあさっきの自己紹介で響先生にぽ~っとなっていた生徒も多かったし、綺麗なお姉さんの前では良い子にしなくてはね。

 

「実は今日、アメリカアカデミアから留学生を受け入れる事になったの。彼は三年生だけど、ここが初めてなのは新入生の皆と同じ。二年、三年生の皆も、これを機に別のアカデミアの技術を取り入れるつもりで仲良くしてね。……良いわよ! 入ってちょうだい」

「おう。やっとミーの出番ですね」

 

 パチンと響先生が指を鳴らすのを合図に、どこか陽気そうな声と共に一人の青年が入ってくる。

 

 白い軍服のような制服を身に纏い、軽く逆立った金髪。そしてどこか陽気さと自信と僅かな高慢さを併せ持つ表情のその青年を、俺は知っている。

 

 

「ハ~イ! アメリカアカデミアから来ました。()()()()()()()()と言います。堅苦しいのは苦手なんで、まあよろしくお願いしま~ス!」

「…………なっ!?」

 

 

 彼の耳に着けたイヤリングが、きらりと一瞬黒く輝いた気がした。

 




 はい。新キャラの響先生とデイビット君です。ここはアニメ版世界だけど、漫画版のキャラが出ちゃいけない決まりはないよね?

 響先生と大徳寺先生のあれこれは完全に独自設定です。生真面目系新任教師とダラダラ系ベテランのコンビでふと情景が浮かんでしまったのでつい。

 あとデイビットのイヤリングには当然“奴”の欠片がちょっぴり混ざっています。





 さて。こうして新章に入ったのですが、流石にこれまでのように毎週更新ではなく不定期更新となります。いつもの時間に出ていなければ、今週はない日なのだなと思っていただきたく。

 そんな調子ではありますが、これからも楽しんでもらえれば幸いです。
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