マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
「うおおおおっ! スッゲ~!」
「プラネットシリーズ……やはりか」
ドックン!
十代が現れたサターンに興奮しているが、こっちは当たってほしくなかった予想が当たりたまらずポツリと漏らす。気のせいか心臓の鼓動も早くなった気がするな。
確かプラネットシリーズは漫画版において、十代の持つジ・アース以外黒幕の手によって闇の力で汚染され、対戦するデュエリストの闘志を吸収する幻魔に近い特性を持っていた筈。
最悪罪善さんの出番かと身構えたのだが……サターンからはその兆候はまるで感じられない。
「ねぇ久城君。プラネットシリーズって?」
「えっ!? ああ……昔ある高名なカードデザイナーが作った、世界に一つしかないカード群の名前だよ。太陽系の星をそれぞれモチーフにしているのが特徴で、紅葉さんが使っていたジ・アースもその一つだ」
尋ねてくる翔にどこまで話したものか悩んだが、あくまで表面的な事を教えるに留めた。流石に黒幕が自身の復活の為に作らせたとかの裏設定は避ける。
「何? つまり紅葉さんのジ・アースと同格かよっ!? ……くうううっ! あんなスゲ~カードと同じような相手と戦えるなんてわくわくすんじゃねぇの!」
まあ、さりげなく聞き耳を立てていた十代からすれば表面的な説明だけで十分だったのだろう。
寧ろちょっと闘志を吸ってもらった方が良いのではないかと言わんばかりのテンションでサターン、そしてそれを従えるデイビットに対し構えを取る。
「オイオイMr.遊児。人が楽しみにしていた説明シーンを横からかっさらうんじゃないぜ。こういうのはムードが大事なんだムードが。……まあ良い。デュエル再開だ」
やれやれと大仰に肩を竦めながら、デイビットは自慢の土星の巨人に号令をかける。
「バトルフェイズ。サターン。ワイルドマンを粉砕しろっ! 『アンガー・ハンマー』っ!」
ドゴンっ!
サターンがその場で両腕を前に突き出したかと思うと、なんとそのまま外れミサイルのように飛び出した。ロケットパンチだっ!
「させねぇっ! リバースカードオープン! 『ヒーローバリア』! サターンの攻撃を無効にする」
ガキィンっ!
直撃する直前、障壁がワイルドマンを守り拳をギリギリで弾き返す。
「ふぅ。危ない危ない」
「防ぐとは生意気な事を。ミーはこれでターンエンドだ。さあどうするレッドボーイ」
「どうするだって? 決まってる。そのデカブツをぶっ倒してやるのさ! 俺のターン!」
挑発するようなデイビットの言葉に、十代は少しも臆する事なくデッキからドローし、
「行くぜ。俺は魔法カード『融合』を発動! 場のワイルドマンと手札のエッジマンを融合し、『E・HEROワイルドジャギーマン』を融合召喚!」
ワイルドジャギーマン ATK2600
「勿論このままじゃまだサターンには及ばない。だから……更にフィールド魔法『摩天楼-スカイスクレイパー-』を発動!」
ゴゴゴッと音を立て、周囲一帯からビル群がせり上がってきた。ヒーローが戦う舞台であるスカイスクレイパーがある事で、戦闘時のみHEROは攻撃力が1000上昇する恩恵を受ける。
「やった! これならアニキのモンスターの攻撃力がサターンを上回る!」
「バトル。そこでワイルドジャギーマンの効果。このカードは相手モンスター全てに一回ずつ攻撃出来るんだ! まずは守備表示のクオンティティーに攻撃。『インフィニティ・エッジ・スライサー』っ!」
「何だとっ!?」
ワイルドジャギーマンの腕甲から生えた刃。それが射出されクオンティティーに突き刺さり破壊する。
「そしてこっちが本命。続けてワイルドジャギーマンでサターンに攻撃だ! このタイミングでスカイスクレイパーの効果」
ワイルドジャギーマン ATK2600→3600
ザンっ!
デイビット LP4000→3200
野生溢れる戦士の振るう大剣が土星の巨人を両断し、その破片がデイビットにダメージを通した。
「しゃあっ! サターン撃破! へへっ。なんだ案外楽勝じゃん!」
「油断するな十代。デイビットの顔を見ろよ」
本当はいけないのだが、公式戦ではなく野良デュエルという事でたまらず横から口を出す。エースがやられたというのに、デイビットはまだ余裕の表情だ。
「分かってるって。だから……ここでダメ押しの一手だ。俺は速攻魔法『融合解除』を発動!」
上手い! まだバトルフェイズ中である以上、ここでエッジマンとワイルドマンに戻っても攻撃は可能。デイビットの場ががら空きな今、この攻撃が全て通れば十代が勝つ……のだが、
「…………ん? あれ?」
発動しなかった。それどころか、ワイルドジャギーマンが何故か急に破壊される。これは……なるほど。デイビットの伏せカードはアレか。
「なんでだ? どうしてワイルドジャギーマンが破壊されて」
「クククっ。流石にここで融合解除をされるとミーの負けになるんでね。止めさせてもらったのさ。コイツでな」
不敵に笑うデイビットの場では、ずっと伏せられていた一枚のカードがオープンしていた。それは、
「速攻魔法『イグニション』。これは相手が魔法・罠カードを発動した時、その効果を“フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する”に変更するのさっ!」
「それって
翔が憤慨しているが、そういう効果ってだけで別にルール上は問題はない。それに、
「そうか。今場に居るモンスターは俺のワイルドジャギーマンだけ。だから自動的に破壊されたのか」
「ああ。これでも使うタイミングには苦労したんだぜ。下手な場面で使えばミーのモンスターを破壊するだけで終わるからな」
そう。イグニションはどんな魔法や罠でも効果を書き換えられる強力なカードだが、場にモンスターが居なければ使えないし、自分の場にモンスターが居れば当然相手はそのモンスターを破壊してくる。
「そう簡単に勝たせてはくれないよな。ならメインフェイズ2。俺は魔法カード『戦士の生還』を発動! 墓地のワイルドマンを手札に加えてそのまま守備表示で召喚。ターンエンドだ」
ワイルドマン DEF1600
良いぞ十代。デイビットの手札にはさっきのクオリティーがある。下手に攻撃表示で出したらまた自爆特攻からのクオンティティー軍団に繋げられて立て直されるからな。一気に押し切れる算段が付くまでは下手に攻めない方が良い。
デイビット LP3200 手札1 モンスター なし 魔法・罠 なし
十代 LP4000 手札0 モンスター ワイルドマン 魔法・罠 スカイスクレイパー
「ミーのターン。ドロー」
「頑張れ~アニキっ! さっきのプラネットシリーズってカードはやっつけたんだし、LPも盤面もこっちの方が有利っすよ!」
「そいつは少し見積もりが甘いな
クオリティー ATK1200
「やっぱり出たか。だけどワイルドマンは守備表示。自爆特攻は出来ないぜ」
「いいや。ミーの狙いはこっちさ。ミーは魔法カード『プロトタイプ・チェンジ』を発動っ! 自分の場の機械族モンスターを生け贄に、墓地の機械族モンスターを特殊召喚する。クオリティーを生け贄に捧げ、再びミーの場に舞い戻れサターンっ!」
The big SATURN ATK2800
「うおっ!? またサターンが出てきやがったっ!?」
「今回クオリティーは破壊ではないのでクオンティティーは復活出来ない。だがサターンが居れば充分だ。バトルフェイズっ! サターン。今度こそワイルドマンを叩き潰せっ!」
それは先ほどの場面の焼き直し。しかし違うのはもうワイルドマンを守るカードはない。おまけに、
「更にミーは手札から速攻魔法『アフターレフェクト・オブ・インパクト』を発動! 選択した機械族モンスターはこのターン貫通効果を得る。当然対象はサターンだ」
「くっ!? スカイスクレイパーの効果で上がるのは攻撃力だけ。守備力までは上がらない」
先ほどの鬱憤を晴らさんとばかりに、まずサターンの左腕がアッパー気味にワイルドマンを宙に打ち上げる。そして身動きが取れない所をもう片方の腕がロケットパンチとなって追撃。そのまま地面に叩きつけられたワイルドマンはあえなく破壊された。
十代 LP4000→2800
「ターンエンド。攻撃表示で出さなかったのが裏目に出たな。そうすれば少しはダメージも減っただろうに。……ククッ。さ~て。さっきオーディエンスはなんて言ったかな? LPも盤面もこっちが有利? 果たして今はどうかな?」
デイビットが意地悪く笑うが確かにその通り。十代の手札はなく、場もがら空き。LPも逆転され、絶体絶命大ピンチ。だが、
「……へへっ! 流石海外のデュエリストに紅葉さんのジ・アースと同じプラネットシリーズ。ぶっ倒し甲斐があるってもんだぜ! ドローっ!」
こんな時でも不敵に笑えるのが、ウチの天下無敵のデュエル馬鹿なんだよな。
十代LP2800。……本人は分かってないけど危険域ですね!