マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 注意! 今回の話は短めです。


悲劇は静かに機を伺う

 

「アニキっ!?」

「十代っ!?」

 

 LPが0になり、がっくりと膝を突く十代に慌てて駆けよる俺と翔。もしや気づかぬ内に何か影響でも出たのだろうか? だが、

 

「…………ぁぁああああっ! 悔しいな。もうちょっとだったのに」

 

 そのままごろんと両腕を上げながら倒れ込んでジタバタする様を見て、俺は内心ホッとする。良かった。特に影響はないみたいだな。

 

 ザッザッザ。

 

 そこにデイビットが歩いてくるのを見て翔が身構えるが、十代は平然としたまま。そして、

 

 ニィッ!

 

「ミーと引き分けるとは中々やるじゃないか。レッドボーイ」

「へへっ! だろ? そっちもやるじゃん。アメリカンボーイ」

 

 ガシッ!

 

 皮肉気に笑いながら差し伸べられたデイビットの手を、十代もどこか好戦的に笑いながら掴んで起き上がる。

 

「しっかしまさかサターンにあんな効果があるなんてな。イグニションもその為のカードかよ」

「まあね。サターンとあれを組み合わせる事で、相手は下手に自分のLPを削る事もモンスターを減らす事も躊躇わざるを得ない。そうしてまごついた所を強化したサターンで……ボンっ! 今回はそっちが普通に効果破壊で引き分けに持ち込んだからそうはならなかったがね」

「引き分けになるって知ってたら戦闘破壊に切り替えてたってのっ! もう一回やろうぜもう一回! 今度こそ白黒はっきりつけてやる!」

「おっと。それは勘弁だ。今日は本当に来たばかりで疲れてるんでね」

 

 未だ戦意が衰えない十代に対し、デイビットはそう言ってこちらをちらりと見る。はいはい。止めろって言うんだろ。

 

「十代。デイビットの言う通りだ。流石にこんな夜にこれ以上の連戦は認められない」

「何だよぉ。バランサーの時みたいな台詞を言いやがる。分かった分かったって。どうせ同じ寮なんだし今日はここまでな。あと……これからよろしくなデイビット! またデュエルしようぜ」

「ああ。まっ……その内に。じゃあMr.遊児。ミーは一足先に部屋に戻ってるからナ」

 

 そのまま軽く手を上げてさっさと歩きだすデイビットに対し、俺は「ああ。後から行く」とだけ静かに返した。

 

 

 

 

「それで? ()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 デイビットが去ってから数分後。少しついでに森の様子を窺ってから寮へと戻る帰り道、十代が翔に気づかれないようこそっと話しかけてくる。

 

「気づいていたのか」

「おいおい。それこそ自分で気づいてなかったのか? お前歓迎会の時からずっとピリピリしてたんだぜ。万丈目も気づいてたな」

「じゃあ、こんな夜に突然部屋にやってきたのは俺の事を心配して」

「いや。そこは単にデイビットとデュエルしたかっただけ。どっちかっていうと心配してたのは万丈目の方な」

 

 そんなあっけらかんとした態度にガクッとしながらも、その底抜けの明るさについ笑ってしまう。

 

「おっ! やっと笑ったな。この所姿を見せねぇけど、多分レティシアもその方が良いって言うと思うぜ」

 

 十代も二カッと笑い返しながら、そのまま前を向いてポツリと語る。

 

「デュエルじゃ誰も嘘は吐けない。アイツのデュエルは搦め手こそあったけどまっすぐだった。悪い奴じゃないぜ」

「ああ。……信じるよ」

 

 十代の人を見る目は割と確かだ。そう。デイビットは悪人じゃない。少々デフォルトで相手を煽ったり口の悪い所はあるが、逆に言えばそれだけ。

 

 精神汚染を受けているようでもないし、サターンも闇に侵食されていない。それが分かった今なら多分……素直に握手も出来ると思う。

 

 だが、見てしまったんだ。デュエルに集中していた十代や素養のない翔が気付かなかったアレを。

 

 ハネクリボーが場に出た時、デイビット自身は特に無反応だったが、そのイヤリングからとんでもない濃度の闇が噴き出そうとして……一瞬後に何事もなかったかのように戻っていった所を。

 

「デイビットは悪い奴じゃないけれど……()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 ギギィ……パタン。

 

「……ふぅ」

 

 一足先に部屋に戻ったデイビットは、椅子に腰かけると身体の疲労を吐き出すようにそっとため息を吐いた。

 

 転入初日で慌ただしかったという事もある。しかし、

 

 

『クククっ。そこそこ苦戦したようだな。デイビット』

「ああ。まさかあそこまで食らいついてくるとはね。流石三幻魔を倒した鍵の守り手の一人ってだけはある」

 

 

 イヤリングからふわりと立ち上る黒い靄。それが喋り掛けてくるという異常事態に、デイビットは軽くトントンとイヤリングを指で叩きながら返した。

 

『何だ。しばらく様子見の筈がわざわざデュエルを受けたのはその為か。自分の獲物を横取りした相手の実力が見たかったと』

「横取りとかそんな風には思ってないね。寧ろ仕事を減らしてくれてありがとうと言いたいぐらいだ。まあ実力を見たかったってのは間違いじゃないが」

 

 デイビットは荷物からノートパソコンを取り出しカタカタと何か操作する。すると画面に、セブンスターズ事件の関係者達のプロフィールが表示された。

 

『分かっているな? 今回のお前達の役目は』

「ターゲットの監視。そして失われたプラネットシリーズの回収だろ? 分かってるって。だがそれ以外にも楽しみは必要さ。それに、()()()()()()()()()()()()()()()()他のプラネットシリーズ……サターン達も、こうして使ってやらなきゃ勿体ない」

 

 ポンっと自らのデッキを軽く叩くデイビットに対し、黒い靄は少しだけ沈黙し、

 

『楽しみ……か。良いだろう。退屈と倦怠はオレの最も嫌うもの。任務を忘れぬなら多少の遊びは許してやろう』

「そうこなくっちゃ!」

 

 デイビットは破顔しながらグッと腕を伸ばしてストレッチを始め、ふと何か気づいたように黒い靄に問いかける。

 

「それはそうと、今日のアンタやけに上機嫌だな。普段ならこっちの提案なんか無視する癖に」

『上機嫌? クククっ……まあな』

 

 黒い靄は抑えきれないとばかりに肩を震わせるような仕草をして笑う。そしてたった一言だけ返して、出てきた時と同じようにイヤリングの中に帰っていった。そう。

 

 

 

 

 『“白き羽の精霊”。かつて失ったオレの心臓の()()()。偶然とはいえ長年別口で探していた物の一つが見つかったのだ。オレとて上機嫌にもなるさ』と。

 




 はい。がっつり某悲劇はこの世界線にも存在しています。

 ただし漫画版と比べて独自解釈マシマシ。漫画版ではなくアニメ版ルートを通った結果、少し向こうの陣営も変化しています。




 来週は私用によりお休みします。読者様方には少々お待ちいただければと思います。
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