マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
「お願いするノ~ネ! どうか、此度のスター発掘計画にアナ~タを推薦させてほしいノ~ネ!」
「そんな、頭を上げてくださいクロノス先生っ!?」
俺は目の前で普段とはかけ離れた態度をとるクロノス先生に慌てて声をかけていた。
突然自分を推薦したいから一度話し合いたいと、授業の終わりに面談用の教室に呼び出されてすぐコレは流石に予想外だった。
「はぁ。その、まずどうして俺をそのスター発掘計画に推薦を? 言っては何ですが俺はそんな大した生徒ではありません」
これが本当に疑問だったのだが、クロノス先生は「謙遜する事は無いノ~ネ」と一つずつ理由を口にしていく。
「まず成績は間違いなく優秀なのね。筆記科目においてはレッドの上澄み……というより学園全体で上位に食い込んでまス~ノ。十分イエロー……ノン。ブルーに上がってもやっていけるノ~ネ」
それはどちらかというと、元の世界で昔カードをやっていた時の知識で下駄を履いているからなんですよ先生。
「実技についても問題なし。君の使う幻想体デッキは非常に珍しく比較が難しいのでス~ガ、少なくとも実力はあるとこの実技担当最高責任者たるワタ~シが認めます」
「いえ、それは単にこのデッキの力が強いだけで」
「強いデッキを扱えるのもまたデュエリストの実力なノ~ネ」
これは関しては少し否定しづらい。実際デッキを回す事自体はともかく、幻想体達と普通の生徒が付き合っていけるかとなると厳しい気がする。十代や万丈目や茂木なら行けるだろうが。
「さらに言えばシニョール久城は授業態度も生活態度も良好。欠席もほとんどなく、シニョール十代を始め同僚の生徒の素行をよく窘めていると聞き及んでいまス~ノ。おかげでシニョール十代が以前より居眠りが少なくなったと佐藤先生も喜んでいまシ~タ」
「授業に関しては生徒の本分ですから褒められるような事では。あと十代はもっと叱り飛ばしても良いと思いますよ。下手に気遣うより「寝るな馬鹿」と一言かました方がアイツは素直に聞きます」
実際響先生は授業中、十代が居眠りしてたらわざと起こさないようにぎりぎりまで近づいて、教科書で叩き起こしてはくすくすと笑ってる。佐藤先生も下手に腫れ物を扱うみたいな態度をとるんじゃなくてそれくらいやった方が良い。
あと授業はディーとの最初の約束がこの学園を卒業する事だからな。授業はきちんと出ないと始まらないのだ。
「ほほ~う。なるほど。その辺りは佐藤先生にも伝えておくノ~ネ。ですが、教師陣がアナ~タを高く評価しているのは間違いありません。あのナポレオン教頭も含めてね。そして」
最後にと前置きをして、クロノス先生は少し険しい顔をして続けた。
「バランサーとしてセブンスターズに潜入し、学園と生徒の被害を未然に防いだ。そして……身体を張ってワタ~シを庇った。これに関しては正直に言って心が二つあるノ~ネ。子供が危ない事をするんじゃないという気持ちと、よく頑張りましたと言いたい気持ちが」
「それは……本当に褒められるような事じゃありませんから」
今にして思えば、もっと良いやり方もあったのだろう。
ただ……
以前万丈目が三沢のデッキを捨てようとした時も、大徳寺先生が余命残り僅かだと打ち明けてくれた時も、クロノス先生がラビエルの攻撃にさらされそうになった時も。
なんとなくここで何もせずに居たら後悔すると思った。だから助けようと、何でも良いから動こうと思った。
そんな自分本位で行き当たりばったりな自分が、褒められるような者である筈はない。
「自身が危ない事をしたと分かっているのなら、あとワタ~シの言う事は一つなノ~ネ。あの時助けてくれてありがとう。シニョール久城」
「だから頭を上げてくださいってクロノス先生っ!?」
「あの時ワタ~シを庇ったせいでシニョール久城はしばらく意識不明になり、結果期末試験も正当な評価を受けられずにレッドのまま進級。今回の推薦はシニョールへの個人的な詫びも兼ねているノ~ネ。どうか受け入れてほしいノ~ネ」
まいった。まさかクロノス先生がそこまで以前の事を気にかけていたなんて。ただ、
「……一つだけ確認を。噂では現在エリート教育を推し進めるべく、ナポレオン教頭主導でオシリスレッド寮を廃止しようという動きが進んでいるとか。もし今までの話が只の建前で、俺を推薦する事でレッド寮取り潰しの足掛かりにする事が目的だというのなら」
「なっ!? ノンノンノンっ!? 誓ってこれまでの話は本心なノ~ネっ!? それに……
少しだけ疑惑の視線を向けると、クロノス先生は何故か冷や汗をかきながら個人的な意見を話してくれた。
エリート教育を進める事自体はナポレオン教頭と意を同じくしているが、クロノス先生的にはレッド寮は残すべきだと思っていると。
「確かに多くのレッド生はドロップアウトボーイ達なノ~ネ。這い上がろうという気概を持たず、只々安穏とした日々を送る事だけに執心する生徒達。しか~し……それは必ずしも生徒だけの責任とは言えませン~ノ」
勉強しても成績が伸びない。デュエルに勝てない。だからもうやる気が出ない。
それだけなら努力が足りない個人の怠慢とも取れる。しかし、
「アナ~タのように怪我や病気でレッドのままの者や、シニョール万丈目のように複雑な事情があってレッドに移籍した者。シニョール十代……は実技はともかく授業態度が悪いので妥当ですが、才能はあるのに別の欠点で台無しになっている者。そして、
隼人の事を口に出す時、少しだけクロノス先生の顔が何かを思い出すように感慨深そうになった。俺は直接見ていないが、隼人がI2社でもやっていけるかクロノス先生がデュエルで試したらしいからな。気にしていたのだろう。
「ワタ~シがこの一年で学んだ事は、人は良くも悪くも変わる事が出来るという事。我々教師に出来る事は、なるべく寄り添いながら正しい方向に変われるきっかけを与える事。そしてその土台を授業を通して生徒自身に作ってもらう事。それくらいで良いし、それくらいしか出来ないノ~ネ」
「では、スター発掘計画の推薦をレッド寮から何人も選んだのは」
「他の二寮に比べて一番きっかけを与えやすかったカ~ラ。と言ってもレッド寮からだけ選ぶ訳ではないし、響先生にもその点は了承を得ているノ~ネ。ナポレオン教頭的にはレッド寮廃止の邪魔になるシニョール十代の周囲を崩したいという狙いがありそうでス~ガ。それに」
クロノス先生はそこで一度言葉を切ると、ニヒッと少しだけ下心のある悪い顔をする。
「ワタ~シとしてはスターを発掘出来るのならどの寮からでも構いはしませン~ノ。最終的にブルーに上げればそれを見出したワタ~シの手柄。いずれ鮫島校長が帰ってきた時にデカい顔が出来まス~ノっ!」
うわぁ俗っぽい。凄い良い事を言っていたのに一発で台無しに。ただ……うん。やはりクロノス先生はこっちの方がらしいかな。
「も、勿論シニョール久城にも良い話なノ~ネっ!? 推薦する以上内申も良くなるし、レッド寮からスターが出ればそれだけレッド寮も再評価されるノ~ネ。そうなればナポレオン教頭も無理に廃止案を通すのは難しくなるノ~ネっ!」
「……急な話なので、一日か二日考える時間をください」
受けても良いかなと思う自分が居る。しかし万が一、まずないとは思うがこれが十代達への罠だった場合を考えて、一度皆を交えて相談してみても良いだろう。
「分かりました。色よい返事を期待しているノ~ネ! ニュフフっ! 早速デュエルの予定を組まなくては」
「デュエル? ああ成程」
先に推薦された万丈目も翔も、まずパフォーマンスを兼ねてデュエルで周囲に実力を見せるという流れから入っていた。俺もどうやら例外ではないらしい。
少し興味があって、もし仮に俺が推薦を受けたら対戦相手は誰になるのかと尋ねると、クロノス先生は笑って
「
これはまた、厳しい戦いになりそうだ。
はい。原作では推薦されなかった三沢と、そもそも居なかった遊児も今作では推薦されます。折角学園側からイベントを用意してくれるんだから使わない手はないよね!