マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 気合の一日二話連続投稿っ!

 流石に少し疲れました。次話は下手すると明後日どころか三日後になるかもしれません。




 注意! 基本は原作沿いなこのシリーズですが、今回少しだけ内容が異なります。



入れ替え戦 万丈目対三沢 彼なりのケジメ

 入れ替え戦当日。

 

「遅いノ~ネ。シニョール三沢」

「とっくに尻尾を巻いて逃げ出したのかと思ったぜ」

 

 三沢の入れ替え戦に付き添う形となった俺や十代達が会場に着くと、そこには対戦相手である万丈目と立会人のクロノス先生が既に待っていた。

 

「すみません。ギリギリまでデッキを調整していたら遅くなってしまって」

 

 三沢の使うデッキは昨日のものではない。しかしそれはデッキが無くなったからではなく、元々あのデッキは調整用のもので三沢本来のデッキは別にあるからだ。

 

 俺も三沢が制服の下のベストに六つも各属性のデッキを仕込んでいたのには驚いた。どれで行くかは万丈目に会ってから決めると、最後まで全てのデッキを調整していたのだから遅れそうになるのは当然だ。

 

「ふん。お前達も来たのか。まあ良い。そこで黙って見ているがいい。俺様が完膚なきまでに三沢を叩きのめすその瞬間をな」

 

 どうやら万丈目の調子は元に戻ったようだ。自信満々に胸を張って不敵な笑みを浮かべる様は、まさしく主人公のライバルと言うにふさわしい風格だ。

 

 ……まあそれは、今日の朝三沢の調整用デッキが元の場所に戻っていた時点で分かっていたことだけどな。

 

 万丈目は一瞬俺の方をチラリと見て、そのまま何も言わずに三沢の方に向き直る。目の前の相手に集中しているようで結構だ。

 

「それで三沢君。結局あの六つのデッキのどれで戦うか決まったの?」

「六つのデッキだと? そんな虚仮脅し。この俺の()()()()で焼き尽くしてくれるわ!」

 

 翔が三沢に投げかけた言葉に反応し、自らのデッキを勢いよく掲げる万丈目の瞳は、三沢を自身の立場を奪おうとする恨むべき敵ではなく、純粋に力を競うべき相手として見ていた。

 

「ふっ。決まった。お前を倒すデッキは……これだっ! これが虚仮脅しのデッキなのか、すぐに分かるぜ万丈目」

 

 三沢はそう言って制服の前を開くと、ベストからデッキの一つを取り出して自分のデュエルディスクにセットする。こっちも準備万端ってとこか。

 

「間に合ったようだな」

「そのようね。……万丈目君は昨日の夜のこともあったから少し不安だったけど、杞憂だったみたい」

 

 あとから明日香とカイザーも観客としてやってくる。二人の会話を聞くに、どうやら昨日の万丈目の様子を見ていたらしい。もし俺が止めていなかったら、万丈目はこの二人に止められていたのかもしれない。……余計なことをしたかな?

 

『いよいよだねぇ。ポップコーンでも用意すればよかったかな?』

「映画見るんじゃないんだから。……良いのかよ? 十代もそこに居るぞ?」

『大丈夫。ほらっ! 皆三沢君達に集中しているから。騒がなければ問題ないよ。……ハネクリボーも反応しないギリギリの出力にしているしね』

 

 やや下がったところから見物していると、ディーがそんなお気楽なことを言いながらふよふよと浮いている。他の幻想体達も空気を読んで出るのを控えているというのにまったく。

 

『おやっ! そろそろ始まるみたいだよ!』

 

 ディーの言葉通り、三沢と万丈目はそれぞれ所定の位置に着いた。互いにデュエルディスクを展開して油断なく構えている。……すると、急に万丈目が構えを解いた。何かあったのかな?

 

「……先に言っておく。この試合、()()()()()()()()()()()()()()()()覚悟だ」

「なっ!?」

 

 突如飛び出した万丈目の発言に一同騒然。というか何言ってんだ万丈目はっ!?

 

「おいこの馬鹿! 自棄でも起こしたのかっ! 負けたってあくまでイエローに落ちるだけなんだぞ。わざわざ学校を辞める必要なんて」

「フッ。別に自棄など起こしていない。……これは俺なりのケジメだ」

 

 一瞬自暴自棄にでもなったかと外から声をかけたが、静かに返す万丈目の声は冷静だった。

 

「俺はこの学園のトップに上り詰める。そのためには相手が三沢だろうが、十代だろうが……そこに居るカイザー亮だろうが、俺は負けるつもりは無い」

 

 万丈目は自分の越えるべき相手、現学園最強のカイザーを指差す。カイザーはそれを無礼だと怒ることもなく、強者としての余裕でそれを迎える。

 

「だというのに、こんな所で負けるようであればトップになどなれはしない。……心配するな。俺は負けん! 特に()()()()()()()()()()。……待たせたな三沢」

「ほう。俺はカイザーの前の障害物扱いか? そう簡単に勝てると思うなよ!」

 

 再び気迫タップリに構え直す万丈目。三沢も今の言葉でむしろ手加減などする気もないとばかりに闘志が漲っている。

 

「おい遊児。この戦いどう見る?」

「……さあな。ただ、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 十代の問いに、俺が今言えるだけのことを返す。この戦い、どっちが勝ってもおかしくない。

 

 

 

 

「ではこれより、シニョール三沢とシニョール万丈目によるデュエルを始めるノ~ネ!」

「行くぞ三沢っ!」

「来いっ! 万丈目っ!」

 

 

 

「「デュエルっ!!」」

 

 

 

 三沢対万丈目の戦いは熾烈を極めた。

 

 万丈目が自身の受けたダメージを相手にも与える地獄戦士(ヘルソルジャー)を軸に、効果ダメージでじわじわと三沢にダメージを蓄積させていくのに対し、三沢はどうやら水デッキを選んだらしくハイドロゲドンやオキシゲドンといったモンスターを展開して迎え撃つ。

 

 そしてデュエルもいよいよ終盤。互いのLPが1000を切った頃、一気に勝負を決めるべく先に動いたのは万丈目の方だった。

 

「俺のターン。……()()()()()()()()()()、攻撃力2000の地獄戦士と残った手札全てを生け贄に、『火炎魔人ヘル・バーナー』を召喚する! フハハハハっ!」

 

 万丈目が高笑いと共に多大なコストを払って呼び出したのは、攻撃力2800の上級モンスター。さらに相手モンスターの数だけ攻撃力を上げるという効果により、攻撃力3400まで跳ね上がる。

 

 ヘル・バーナーか。だけどあれって確か名前は炎獄魔人じゃなかったっけ? アニメ版だと少し違うのかね? っと、今はそんな場合じゃなかった。

 

 ヘル・バーナーの猛攻を三沢は伏せカードで何とか凌ぐ。手札を全て使って必殺の構えで行った万丈目だが、これを防がれたのは痛いぞ。

 

 三沢の場には2体のハイドロゲドンとオキシゲドン。もし三沢の手に()()()()()()あったらヘルバーナーが瞬殺される。

 

「しぶとい奴め。……しかし、次のターンで確実にお前は終わりだ」

「次のターンがあるとすればなっ! 俺のターン。……俺は魔法カード『ボンディング-H2O』を発動!」

 

 やっぱりか! 三沢の場のモンスターを生け贄に、ウォーター・ドラゴンが特殊召喚される。このカードは完全な炎属性メタ。ヘル・バーナーはウォーター・ドラゴンが居る限り攻撃力が0になる。マズいぞ万丈目!

 

「ウォーター・ドラゴンの攻撃! アクア・パニッシャー!」

 

 ウォーター・ドラゴンから放たれる水流が、ヘル・バーナーを押し流すべく襲い掛かる。この瞬間、この場にいる全ての者が三沢の勝利を確信しただろう。

 

 

 

 だが、万丈目の瞳はまだ闘志を無くしてはいなかった。

 

 

 

「俺は負けんっ! ()()()() 破壊輪っ!」

「何だとっ!?」

 

 爆弾の付いた輪が、万丈目の言葉と共に水龍に絡みつく。まだこの時代は破壊輪の効果のエラッタ前。つまりウォーター・ドラゴンを破壊すれば()()()()()ダメージを受ける。

 

「ウォーター・ドラゴンを選択。()()()()()()()()()だと言っただろう。お前がどれだけ水で炎を鎮火しようが、地獄へはお前も道連れだぁっ!」

 

 万丈目はヘル・バーナーを出す時、この展開を予想していたのだろう。だから破壊輪を伏せておいた。万が一攻撃を凌がれて逆襲にあったとしても、このカードで何が何でも三沢のLPを削り切るために。

 

「3、2、1、爆破っ!」

「くっ!? ぐあああっ!」

 

 水龍が爆破され、その攻撃力分のダメージを与える地獄への爆炎が互いのLPを全て削り切った。

 

 

 三沢対万丈目 両者LP0によりドロー。

 

 

 

 

 翌日。

 

「さらば。デュエルアカデミア」

 

 早朝。まだ熱心な部活動以外の一般生徒が眠っている頃合いに、本棟をどこか感慨深く見つめる万丈目の姿があった。

 

 肩から荷物を提げるその様子は、まるで今からどこかへ出かけようかという雰囲気で。

 

 そのまま歩き出そうとしたところ、道の途中に見送りが立っているのを見つける。……と言っても気になってやって来た俺なんだけどな。朝早いからまだ眠いよ。

 

「……やっぱり学園を出るのか? あの試合、引き分けという事でクロノス先生も多少は評価を改めたはずだ。ブルーへの残留はほぼ確定だぜ?」

「ああ。だが、俺はあの試合で()()()()()()。つまりはそれが今の俺の実力だ。……忌々しいことにな」

 

 万丈目は悔しそうに拳を握りしめる。確かに試合前、万丈目は勝てなかったらこの学園を去ると宣言していた。それは引き分けでも適応されるらしい。……妙な所で律義なんだから。

 

「良いのか? ここで消えたら絶対ラーイエローと引き分けたから逃げたって話になるぜ。三沢という強者ではなくラーイエローという格下相手にという意味で。……他のブルー生徒とかに確実に陰口を叩かれるが」

 

 それはほぼ間違いないだろう。以前の万丈目への仕打ちを見ればそれは明らかだ。居ない者に反論は出来ないとばかりにこぞってあることないこと噂するだろう。なのに、

 

「構わない。言いたいことは勝手に言わせておけ。俺は必ず戻ってきて、そいつらを黙らせてやる。……今に見てろよ。このままじゃ終わらないからな」

 

 そう力強く宣言する万丈目は、どこか吹っ切れたという感じだった。……ただ逃げるんだったらまたビンタして引き留めるつもりだったが、これなら問題ないだろう。

 

「そっか。……じゃあ、どうせなら無茶苦茶強くなって戻って来いよ! それまで俺はこの学園でのんびり待っててやるから」

 

 俺がゆっくりと拳を前に突き出すと、万丈目はどこかシニカルに笑いながら同じく拳を返す。

 

「ああ。言われるまでもない。……ファンを待たせるようでは万丈目一族の名折れだからな」

 

 互いの拳を一度ゴンっとぶつけ合い、万丈目はそのまま海岸に向かって歩いていき、自家用の船で学園を去っていった。

 

 ……待ってるからな。万丈目。

 




 入れ替え戦編完結!

 なんとなく察する人が居るかもしれませんが、今の万丈目は少しだけマンガ版の方の性格に寄っています。遊児曰くクールで孤高の方ですね。

 まあおジャマと絡むとギャグ寄りになるのは変わりませんが。




 今回の話は結構作者の個人的嗜好が出てしまったので、人が読みたいと思う物というより自分が書きたいと思う物を優先してしまった感があります。

 なので賛否両論は読者の方々に委ねたいと思います。率直な反応を頂ければ幸いです。

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