マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
「選ぶ前にいくつか聞いて良いか? まず……え~っと何て呼べば良い? “元”神様って呼ぶのもなんか妙というかしっくりこないというか」
『色んな人が色んな呼び名で僕を呼んだからねぇ。神とか悪魔とか魔王とか化け物とか……まあここ最近はディ―と名乗っているね。フィーリングで決めた名前だけど結構気に入っているんだ』
神はまだ良いとして悪魔とか魔王って……まるっきり正反対だな。
「何か物騒な呼び名ばっかだけど今は置いとこう。……じゃあディー。まず二つ目の方の課題って何だ?」
『それは選ぶまで内緒さ! その方が面白そうだろ?』
「面白い面白くないの問題じゃないんだけどな。……次だ。何でこんな事を? いやまあ選択肢を貰えるだけでありがたいとは思うんだけどさ。俺なんかしたっけ? そんなに信心深くも無いぞ」
『正直な話……適当に選んだよ』
「適当かよっ!」
またアッハッハと笑うこいつに、もうなんだかツッコミ疲れて来たよ俺は。まともに相手をすると疲れるタイプだ。
『実を言うと、最近いくつもの世界の神様がうっかりミスをして、死ぬはずのない人を死なせてしまうなんて事案が多発していてね。ミスをなかったことにするべくこっそりその死者を別の世界に送ったりしている訳なんだけど、そうなるとその世界の魂の勘定が合わなくなるんだよ。だから緊急措置として、ひとまず別の死ぬはずの人間を代わりに延命させたり、魂が足らない世界に多い世界から送ったりするわけだね』
そんなうっかりミスが多発するというのは考えたくないな。どこの世界か知らないが神様ちゃんと仕事しようよ。
「なるほどな。……じゃあ俺は元々これで死ぬはずだったのか?」
『そうだね。だけどそもそもこの話は、近々死ぬ運命にある人にしかしないことにしているんだ。この世界でもさっき言ったようなことが起きていてね。今なら生者の枠が空いているんだよ。助かるチャンスって訳さ!』
「……ちょっと待った。じゃあ何でまた異世界転生の選択肢もあるんだ? 余計勘定が合わなくなるんじゃないか?」
『そっちは完全に僕の趣味。送った人の人生を観察するのがマイブームでね。それにどのみちこの世界には声をかけるべき人は沢山いる。今更数人追加したって帳尻を合わせるのは簡単なのさ。ただ、君以外にもこれまで何人か声をかけたんだけど、誰も彼も皆して異世界転生を選ぶんだよ。趣味がはかどるのは良いんだけど……そんなに自分の育ってきた世界が嫌なのかね』
自分の趣味で人を異世界に送るとのたまったディーに心の警戒アラートが鳴りまくるが、その後の言葉には少しだけ寂しげな感じがした。
「そりゃあ単純に考えたら、異世界転生の方が割が良いだろうな。……でだ。ひとまず今までのことを考えた上で選択肢を選ばせてもらうとだけど」
そこで俺は一拍おいた。ディーも口を閉じて俺の答えを静かに見守る。と言っても最初から答えなんてほぼ決まっているが。
片や今までの人生を手放して、異世界にて新しい人生を送る。何らかのチートを貰い、金、女、名誉にはほぼ困らない、成功のほぼ約束された人生。
もう一つは課題の内容すら分からない。課題に失敗したらそれまでで、成功したとしても命が助かるだけ、それ以外に何か貰えるという訳でもなく、この世界でまたこれまで通りの人生を送ることになる。
やはり考えるまでもないな。
「……
『……少し意外だな。なんで一つ目を選ばなかったの?』
ディーは少し驚いた様子だった。自分で選択肢を出しておいて驚くなよ。
「何でってシンプルな話だよ。転生も何も、
『…………アッハッハッハ。なるほどなるほど。確かに君の言う通りだ。君はまだ死にかけているだけで死んではいないんだものね。……この状況になっても生きることを諦めないか』
当たり前のことを言ったはずなのに何故か笑われた。そんなに大笑いするようなことだろうか? まあ良いけど。
「それじゃあ選んだという事で、早いところ課題の内容を教えてくれ。こうなったらさっさと終わらせて無事奇跡の生還を果たしてやるよ。新聞に載るくらい派手な奴をな」
『その意気は大いに結構。実に期待が持てるね』
ディ―がひとしきり笑い終わるのを見計らい、俺は早速課題の催促をする。とはいうものの課題とはいったい何をやらされるんだ? 目の前で口元だけニヤニヤと笑うディーが、簡単な課題を出してくれるというのは楽観的過ぎるだろうな。
『では君に出す課題だけど……実はまだ決めてないんだ!』
「決めてないんかいっ!?」
俺はバランスを崩してずっこけそうになる。こらそこの“元”神様。おどけてテヘペロしたって駄目だからな。
『元々今回の件はかなり辻褄合わせな所があるからねぇ。ぶっちゃけた話タダで人を延命させても良いんだけど、それじゃあ流石に神としての威厳やら何やらに関わる。だから各自に適当な課題と言うか試練を与えて、成功したら助けてあげようってことなんだよね。多分その方がありがたみを感じて信仰に繋がるとか思ったんじゃないのかな? 僕は“元”神様だから関係はないんだけどね』
「そりゃまた微妙に恩着せがましいことで。じゃあここは一つほどほどに簡単な奴にしてくれよ。八十日間世界一周とかどうだ?」
『昔ならともかく今じゃ金さえあれば簡単だからねそれ。そういうのじゃなくてもっと僕が楽しめそうな…………おやっ?』
微妙に難題と言えない難題を提案するも却下され、じゃあどうしたものかと思案する中、ふとディーが止まっている俺の身体を見て何かに気づくと、そのまま動けない俺の服の中に手を入れる。
「わっ!? ちょ、ちょっとやめろっ!」
俺意識だけだから動けないのにっ! そしてそのままゴソゴソとまさぐると、服の内ポケットから
『おやおや~? いけないヒトだね久城君は。仕事中にこ~んなのを持ってくるなんて』
「……別に良いだろ。休憩中に本を読んだって」
実を言うと、俺はこう見えて子供の頃遊戯王カードゲームにはまっていた。きっかけは5D's編をテレビで見た時だったかな。レースしながらカードをやるというぶっとんだ話に、子供心に憧れたものだ。
そこから小遣いをカードに費やし、近所の友人達とよく家で決闘に勤しんだ。ここ数年はあまりやれていなかったが、最近久しぶりに近くのカードショップに顔を出して遊戯王熱が再燃した。
『久々に昔のデッキを引っ張り出して勝負を挑んでみたが、やはり数年のブランクは大きくボロ負け。ブランクを埋めるためにひとまずマンガ版をまとめ買いしなんと一日で読破と。ちなみに無印とGXのみ買ったのは何故?』
「その二つはアニメで見たことが無かったから予習がてらな。ショップで最後に戦ったのはHERO軸だったのもあるし、無印とGXは密接に繋がっているというのも小耳に挟んで……って、自然に途中から人の考えを読むんじゃないっ!」
今にして思えば、その一気読みがたたって足を滑らせたのかもしれない。流石に休みだからって合わせて40冊以上だったからな。疲れが残ったんだ。次からは控えめにしよう。
『いやぁゴメンゴメン。ってことはカードデッキも持ってきているのかい?』
「流石にそれは家の自室にある。会社でやる相手もいないしな」
居たら休憩時間にやるくらいはあるかも知れないが、生憎そういう相手は居なかった。残念だ。
『…………よし。良いこと考えた。君への課題はそれでいこう!』
「それでって……まさか公式大会に出て優勝しろとでも言うつもりか? 言っとくけどブランクを差し引いても難しいぞそれは」
ショップの大会ですら昔に比べてハイレベルになっているんだ。今の公式大会はまさしく人外魔境か何かだと言える。そんなとこに俺が出ても一回戦で多分負けるぞ。良くて二回戦がやっとだ。
『いやいやそんな事は頼まないよ。今から君にやってもらうのは……一種のシミュレーションだ』
「シミュレーション?」
『そう。な~に心配しないでよ。ブランクが消し飛ぶくらいにカード漬けの毎日を体験してもらうから』
「カード漬けって……何か嫌な予感しかしないんだけど」
『まあ百聞は一見に如かず。習うより慣れろ。という事で……じゃあさっそく行ってみようっ!』
「ちょっと待……」
何か不吉な感じがして咄嗟に止めようとしたが、止めるための手も足も動かない。そして制止するより早くディーが指をパチリと鳴らしたかと思うと、俺の意識は暗闇に包まれた。
そして次に気がついた時、
「な、なんじゃこりゃあぁっ!?」
目の前に頭蓋骨が浮かんでいた。俺は地獄に来てしまったのだろうか?
遂にというかやっとというか、いよいよGX世界に出発です。デュエル描写の方はもう少しだけお待ちいただけると助かります。
けっこう見切り発車で出発したこの話ですが、面白いと思われたら何か反応を返してくれると嬉しいです。
次話は……明日中に投稿予定ということで。
ロボトミキャラの中で精霊として出てほしいキャラは?(すでに確定しているキャラは省きました)
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