マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 いよいよ冬休み到来っ!

 しかしそんな平穏は長くは続かないようで。




 


十代対サイコショッカー……そして

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 デュエルアカデミアは全寮制の学校ではあるが、当然冬休みなんかの長期休みも存在する。

 

 年越し、年明けを家族水入らずで過ごしたいという生徒も多く、冬休みは大抵の生徒が帰省するのが普通だ。そのため校内はガラガラ。だが、まあどこにでも()()は居る訳で、

 

「俺はクレイマンを攻撃表示で召喚っ!」

 

 お約束というか何というか、主人公である十代を始め、翔や隼人、あと何故か寮長の大徳寺先生は、居残り組としてここオシリスレッド寮の食堂に集まってワイワイやっていた。

 

 そして当然俺も居残りだ。だってこの世界の実家は一応あるにはあるけど形だけ。どうやら手入れはディーの方でやっているらしいが、中身は誰も住んでいないのだ。

 

 久々に家族の顔でも見たい気は無論有るが、流石に異世界から一時帰省というのは無理だろう。ここは単身赴任か何かだと思って我慢するとしよう。こっちはこっちで割と楽しいしな。

 

「クレイマンで攻撃っ!」

 

 十代曰くいつでもどこでもデュエルがやり放題という状況らしく、今も翔を相手にデュエルの真っ最中。それを俺や先生達は、のんびり餅を焼いて食べながら観戦している。

 

「熱っ! 熱っ!」

 

 隼人が早速焼けた餅を食べようとして、うっかり掌に落としてお手玉している。慌てなくても餅は逃げないってのに。

 

 休み前に購買でまとめ買いしたから、まだまだ餅も調味料もたんまりある。こういうほのぼのした休みもたまには、

 

 ガッシャ―ンっ!

 

 突如入口のガラス戸を押し破り、誰かが入ってくるなり倒れ込んだ。……もう平穏な一日は終わりかよっ!? せめて今焼いてる餅だけは食わせてくれっ!

 

 

 

 

 ダイナミックに入ってきたのはオベリスクブルーの生徒だった。満身創痍といった感じで酷く疲れているが、幸いガラスの破片で血塗れという事にはなっていないようだ。

 

 もう夜だし、外はさっきまで雪が降っていたくらいに寒いのに一体何があったんだ?

 

「さ、サイコショッカーが……僕を追いかけて」

「君は確か、オベリスクブルーの高寺君だにゃ?」

「大徳寺先生! 先生なら、デュエルの精霊を研究されてる大徳寺先生なら、きっと分かってくださいますね?」

 

 何かに怯えるように大徳寺先生に縋りつく高寺という生徒。っていうか大徳寺先生! デュエルの精霊なんか研究してたの!? それにしてはこれまでそんな素振りは見せなかったけど。

 

「あぁ。落ち着くのだにゃ高寺君。最初から、話してみるのだにゃ」

 

 何とか震える高寺を落ち着かせる大徳寺先生。そして高寺は、恐怖を押し殺しながらポツリポツリと自分の体験したことを話し始めた。

 

 それは冬休みに入る前のこと。高寺を会長としたデュエルのオカルト面を研究する高寺オカルトブラザーズというグループで、日頃の研究の成果を試すべくウィジャ盤を使って精霊を呼び出すという試みを行ったという。

 

 試みは成功した。ただしウィジャ盤からは“三体の生け贄を捧げよ。さすれば我は蘇る”という恐ろしいメッセージが語られたらしい。

 

「いけませんね。デュエルの精霊と心霊学を一緒にしてはダメなんだにゃあ」

 

 大徳寺先生が嘆いているが俺も同感だ。そういうのは遊び半分でやるととんでもないことになる。というか何故ウィジャ盤でサイコ・ショッカーを呼び出そうと考えた? どっちかというともっと適任が居るだろうに。

 

 そして高寺達は、ウィジャ盤の問いを()()()()生け贄だと考えて了承してしまう。その選択が恐怖の日々の始まりとなった。

 

「次の日、メンバーの一人向田の姿が見えなくなってしまったんだ。そして次の日には井坂が」

 

 最初は冬休みなので帰省したかと思い連絡したが、それぞれ家に帰っている様子は無し。

 

 恐ろしくなった高寺は今日のフェリーで帰ろうとしたが、船の中に黒い帽子とコートの男が居たという。チラリと隙間から見えたその顔は、カードのサイコ・ショッカーそっくりだったらしい。

 

 そして高寺は慌てて船に乗るのを止め、今までどうにか逃げ隠れしていたとのこと。……なんとも妙な話だな。

 

「なあ遊児。どう思う?」

 

 そこで十代が俺に話しかけてきた。精霊に関しては、日頃から一緒に居るので本当に居ても別におかしくはないと思う。……ただ、

 

「ここまでの話だけじゃまだなんとも。ただ何というか……()()()はある」

「違和感? なんだそりゃ?」

 

 それは……と俺が答えようとした時、

 

 パツンっ!

 

 急に音を立てて電灯が消えた。何だ何だっ!? 停電かな?

 

「ひゃああっ!?」

「翔! 隼人! しがみつくな潰れるっ!?」

「お、落ち着くのだにゃ!」

 

 突然の暗闇にパニックになる一同。そして暗闇に目が慣れてきた頃、入口に黒いコートと帽子を着けた男が現れた。

 

「お前は!?」

「サイコ・ショッカーっ!?」

 

 たった今高寺から聞いたばかりの風体の男が、高寺を小脇に挟んで抱えている。高寺は気を失っているのかピクリとも動かない。……確かに男のチラリと隙間から見える顔はサイコ・ショッカーのようだが。

 

「あっ!?」

「待てっ!」

 

 何も言わず高寺を抱えたまま走り去る男。十代が真っ先に追いかけて食堂を飛び出し、俺達も後を追って走る。……大徳寺先生とファラオも一緒だ。

 

 男は森の中へ入っていき、十代を先頭に俺達も突入。……この前の特待生寮への道とは違うみたいだ。

 

「アニキ~!」

「十代っ!」

 

 しばらく走っていると、やっと先頭の十代に追いついたので声をかける。どうやら追っている途中で男を見失ってしまったようだ。

 

 こんな暗い森の中じゃこれ以上追いかけるのは危険か? しかし目の前で攫われた高寺を放っておくわけにもなぁ。

 

「ニャアアアっ!」

「あっちだっ!」

 

 そこでファラオのヒゲが何かに反応する様に震えだし、その震えを頼りに進む十代。そして少し走って辿り着いたのは、周囲を金網で囲われた施設だった。

 

 内部にはいくつかの鉄塔が建っていて、不思議なことに入口が開いている。なんか凄そうな施設の割には不用心だな。

 

「気を付けるにゃ。ここは島全体に電気を送る送電施設にゃ。高圧電流が」

「あっ! 高寺っ!」

 

 先生の話の途中、十代が鉄塔の根元に倒れている高寺を発見。駆け寄ろうとすると鉄塔から目に見える程の電流が放たれ、十代を止めるように半透明のサイコ・ショッカーが出現する。

 

 精霊を見て慌てふためく俺と十代以外の面々。まあ普通は見る機会なんてないよな。……しかし大徳寺先生も見るのは初めてと言って驚いている所を見るに、どうやら普段から見えるって訳じゃなさそうだ。

 

「おいサイコ・ショッカーっ! 高寺達を返せ! そんなに蘇りたければ……俺を生け贄にしろっ!」

「アニキッ!?」

 

 おいおいいきなり何言ってんだ十代っ!? 翔達も唖然としているぞ。

 

『なるほど。君から発するパワー。波動。並みではない。三体目の生け贄には君の方がふさわしいかもしれん』

 

 お前も喋れるんかいっ!? まあ人型だから予想はしてたけどね!

 

「だが条件がある。俺とデュエルしろっ! お前が勝ったら俺は生け贄になる。だが、俺が勝ったら高寺と後の二人を返せっ!」

「オイちょっと待てっ! 十代! 勝手に決めんなっ! 負けたらえらいことになるんだぞっ!」

 

 いきなり自分の命をチップにするようなことを言いだす十代に待ったをかける。十代ときたら全部自分が勝てば解決だと考える節があるからな。だというのに、

 

「心配すんな遊児! 俺は負けねえよ! ……さあどうするサイコ・ショッカー?」

『良いでしょう。面白い。君を生け贄として召喚してみせよう』

 

 その言葉と共に、周囲の金網に沿うように電流が走る。ああもうっ! これでこの中からは外に出られなくなった。逃げ道を塞がれたぞ。

 

『……我が生け贄よ。君はもう逃げられん!』

「生け贄じゃねえっ! 俺はオシリスレッドの十代だっ!」

 

 用意してきたデュエルディスクを装着して吠える十代。こうなったらもう勝つしかない。

 

 こうして十代とデュエルの精霊の命懸けの戦いが始まった。

 

 

 

「「デュエルっ!!」」

 

 

 

 序盤から『怨念のキラードール』と『エクトプラズマ』のコンボで十代のLPを削っていくサイコ・ショッカー。

 

 それに対し、十代はなんと最初のターンで手札を全て伏せて次のターン、『悪夢の蜃気楼』と『非常食』のコンボで大量ドローを決めるというトリッキーな戦術で応戦する。

 

 その後も攻防は続き、今は単純なLPで言えば半分を切った十代の方が不利だが、場と手札のアドバンテージを見ればかなり優勢と言った所。この調子なら行けるか? そう思っていた矢先、十代の身体に異変が表れる。

 

「アニキっ! その身体っ!」

「何だこれはっ!?」

 

 なんと十代の足が、サイコ・ショッカーと同じく半透明に透き通っている。……まさかこれって!?

 

『フフフ。君のLPはあと半分。すなわち君の身体の半分が、私の復活のための生け贄となったのだよ』

「ふざけるな! 何が生け贄だ!」

「そうだぜ十代! 場はこっちの方が優勢だ! 一気に攻め立てろ!」

 

 十代は透き通っていく自分の身体をものともせず、得意の融合を使って上級モンスターを呼び出しガンガン攻めていく。

 

 途中相手が自分自身である『人造人間サイコ・ショッカー』を場に出したことで周囲が騒然としたが、大徳寺先生が言うにはあくまで十代が負けるまでは完全な復活ではないと勝負は続行。

 

 さらに『電脳増幅器』とのコンボで、十代の側だけ罠を使えないという逆境に追い込まれる。

 

「俺のターン。ドロー!」

 

 クリクリ~!

 

「ハネクリボーっ! そうか! 俺を励ましに。ありがとよ相棒!」

『精霊が!?』

「そうよ。コイツは俺の相棒。お前みたいに生け贄なんて必要ない! 心が通じていれば、いつだって会えるのさ!」

 

 何故か現れたハネクリボーを見て驚くサイコ・ショッカーに、十代が主人公らしく熱い瞳で叫ぶ。……まあいつだって会える奴はそこまで多くはないと思うけどな。俺だってディーから預かっているだけだし。

 

 そして十代はそこから電脳増幅器の効果を逆手に取ってサイコ・ショッカーの破壊に成功。

 

 その後往生際悪く気を失っていた高寺を操り、『リビングデッドの呼び声』で復活しようとするサイコ・ショッカーだが、十代が『神の宣告』で無効にすることで復活を阻止。

 

「眠れっ! サイコ・ショッカー!」

 

 最後の攻撃でサイコ・ショッカーのLPが0になると同時に、操られていた高寺から白い閃光が発生する。うわっ!? 眩しいっ!? 眩しさのあまり俺は腕で顔を覆う。

 

「あっ!?」

「これは!?」

 

 そして光は一気に膨らみ、そのままの勢いで俺達を包み込んだ。

 

 




 次回、独自設定タグがかなり仕事する予定です。

 多分次は明後日投稿予定です。

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