マンガ版ＧＸしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版ＧＸ世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作：黒月天星
また使用した幻想体の能力と感想をあとがきにまとめておきますので、よろしければご一読ください。
『頑張ってね久城君！ こんな序盤でやられてしまったらつまらないからね』
カタカタ！
ディーはいつも通りにどこか気楽に、罪善さんは俺達の周りを囲む幽体を牽制しながら応援してくれる。おう！ 任せておけよ！
『精霊を従える者か。ますます我らの生け贄にふさわしい』
「従えるっていうか力を借してもらってるって感じだけどな。……それと生け贄になんかなる気は無いんで諦めな。……行くぞっ！」
「「デュエルっ！！」」
遊児 LP４０００
ダーク・ネクロフィア LP４０００
『では、先手は私が貰う。ドロー！』
セットされたデッキからカードが飛び出し、ネクロフィアの手に収まる。くっ……なんかカッコイイなそれ！
『私は手札から『怨念のキラードール』を攻撃表示で召喚。そして手札から、永続魔法『エクトプラズマ』を発動！』
相手の場に出現したのは斧を持った不気味な人形。そして続けて出されたのは、ターンの終わりにモンスターを強制的に生け贄にしてその攻撃力の半分のダメージを与える永続魔法。
この流れは……なるほど。
「さっきサイコ・ショッカーが使ってたのは元々アンタのデッキだったって訳か」
『ああ。これは自分が動けない代わりにサイコ・ショッカーに貸していたデッキ。……もちろんサイコ・ショッカーのカードは抜いてあるが』
さっきの十代とサイコ・ショッカーのデュエル。道理でサイコ・ショッカーが使うにしては闇属性にも機械族にもシナジーが無いと思った。完全に内容はオカルト物だったからな。
『更にカードを１枚伏せて、私は魔法カード『手札抹殺』を発動！ 互いの手札を全て捨て、その分だけ互いにドローする。私は２枚捨てて２枚ドロー！』
「俺は５枚捨てて５枚ドローだ」
初手からでは対策の仕様もない。手札を全て交換する。……さっきと比べると可もなく不可もなくと言った所か。
『私はこれでターンエンドだ。この瞬間エクトプラズマの効果発動。キラードールを生け贄に、相手プレイヤーにその攻撃力の半分、８００のダメージを与える』
エクトプラズマのカードが光ったかと思うと、キラードールが周囲の奴らと同じ幽体となって俺に襲い掛かってきた！
「うぐっ！？」
幽体が俺の身体をすり抜けた瞬間、急激に身体から力が抜ける感覚があった。それと同時に俺の足の先が僅かに透き通る。そこも十代のと同じかよ。
遊児LP４０００→３２００
『まずは８００LP。その分だけお前は生け贄となったのだ。……残り３２００。どこまで保つかな？』
「……確かに、これはキツイな」
こんなのを何度も受けたらたまらない。……だが、幸い薄くなったとは言え足の感覚はある。まだまだ行けるな。
それにしても十代め。さっきもそうだけど、こういう危ないデュエルを周りに相談もせずホイホイ受けるんじゃないよ！ このデュエルが終わったらその分も言ってやらないとな。
「俺のターン。ドロー！ 俺は手札からフィールド魔法『ロボトミーコーポレーション』を発動！」
カードの発動と共に場に展開されるのは、生命の樹を逆さまにしたような施設。その部屋の一つに陣取り、俺は手札を再度確認する。
場にエクトプラズマがある以上、単純に攻撃力の高いモンスターを出していくのが定石。出来ればロボトミーコーポレーションの効果でコストを減らして一気に出したいところだが、
「……俺は手札から『オールアラウンドヘルパー』を攻撃表示で召喚！ クリフォトカウンターを二つ乗せる」
〈あなたのお供、ヘルパーロボットだよ！〉
オールアラウンドヘルパー 星４ 機械族 地 ATK１８００ DEF１７００ CC2
俺の場に現れたのは、ここ最近おなじみとなったヘルパーロボット。……丁度レベル５も６もさっき捨てられてしまったんだから仕方がない。
「ヘルパーでダーク・ネクロフィアにダイレクトアタックだ！ 行けっ！ ヘルパー！」
〈汚染が検出されました。クリーニングプロセスを開始します〉
攻撃宣言と共にヘルパーが変形を開始する。一度脚部が白い楕円形の胴体に引っ込み、代わりに上下左右から計四本の刃物の取り付けられたアームが飛び出した。
……怖っ！？ アレが掃除を命じた時の姿か？ 完全に掃除と書いて抹殺って読む類の奴だよ！ いつもと変わらぬ笑顔が逆に不気味だ。
〈対象確認。
ダーク・ネクロフィアを認識したヘルパーは、刃物のアームを器用に使って高速回転しながら突進していく。あんなのに巻き込まれたらひとたまりもない。だが、
『罠発動！ 『リビングデッドの呼び声』。墓地の『ジャイアントウィルス』を攻撃表示で特殊召喚する』
しまった！ さっき手札抹殺で墓地に送っていたのか！？ 突如毒々しい見た目の巨大なウィルスが、ダーク・ネクロフィアの壁になるように出現する。
ジャイアントウィルスは戦闘で破壊すると、相手に５００ダメージを与えた上でデッキから同じカードを呼び出すという厄介なカード。このまま行けば戦闘ダメージを与えることは出来ても、代わりに向こうの増援が来てしまう。
「……攻撃は中止だ。戻れヘルパーっ！」
〈了解。スタンバイ状態に移行します〉
俺の命令を素直に聞き、ヘルパーはアームを引っ込めてそのまま帰還する。……本来実体化した状態なら掃除と聞くとこのまましばらく暴れ続けるというディーの話だが、カードで使う分にはまだ抑えが効くらしい。
「メインフェイズ２。俺はカードを２枚伏せてターン終了だ。……この時エクトプラズマの効果発動！ ヘルパーを生け贄に、その攻撃力の半分の９００ダメージを受けてもらうぜ！ 行けヘルパー！」
〈了解。突撃します〉
ヘルパーは機械だけどエクトプラズマの効果で幽体になれるのかという懸念はあったが、そこはしっかりとカードの仕様が勝って半透明の幽体に。そのままダーク・ネクロフィアに突っ込んでLPをしっかり削っていく。
ダーク・ネクロフィア LP４０００→３１００
『ぐ、ぬうぅ』
「どうだっ！ 少しは勝手に生け贄なんかにしようとしている人の痛みが分かったかよ？ 今ならまだ痛み分けってことで勝負を無しにしても良いぜ」
『……生け贄風情が調子に乗るなっ！ 私のターンドロー！ スタンバイフェイズ時、先ほどエクトプラズマの効果で生け贄となった怨念のキラードールが復活する』
一応停戦を呼び掛けたのだが、ダーク・ネクロフィアは僅かに苛立った様子でカードを手札に加え、墓地よりキラードールが効果で特殊召喚される。エクトプラズマとのコンボはこれだから嫌なんだ。
『私はジャイアントウィルスを生け贄に『死霊伯爵』を攻撃表示で召喚する』
死霊伯爵 ATK２０００
ウィルスを生け贄に現れたのは、仕立ての良い服にレイピアを携えたどこか貴族風の死霊。確か効果のないノーマルモンスターだったはずだ。
あのままジャイアントウィルスを出しておけば、効果ダメージと増援のことで俺は攻撃の際に少し考えざるを得ない。
それなのにわざわざジャイアントウィルスを生け贄にしてまで出すってことは……一気に決めに来る気か。
『怨念のキラードールで、我が生け贄に攻撃！』
俺の場にモンスターは居ない。強引にでも攻めるなら今だと考えたのだろう。……だが、こっちの伏せカードを忘れちゃいないか？
「だから生け贄になんかなるかっての！ 罠発動！ 『幻想体 血の風呂』。このカードは相手の攻撃宣言時、モンスターとして守備表示で特殊召喚できる」
幻想体 血の風呂 星３ ＡＴＫ４００ ＤＥＦ１８００ アンデット族 水
斧で切りかかるキラードールの攻撃に対して俺の場に現れたのは、全体を皮膚のような物で覆われ、中を大量の血で満たされた浴槽だった。
それだけでも恐ろしいのに、備え付けられている人の手首のようなシャワーヘッドから絶えず血が滴り落ち、おまけに浴槽の側面には大きな目が二つ瞳を閉じた状態で並んでいる。
こう言っては何だが、不気味さではこっちの幻想体だって負けてはいないぞ！
『うわぁ～。傍から見るとどっちが悪役だか分からないフィールドだね』
「それを言うんじゃないよディー。……さあどうするダーク・ネクロフィア？」
血の風呂の方が守備力はキラードールより上だ。このまま行けば返り討ち。なので、
『……キラードールの攻撃は中止する。ならば死霊伯爵で血の風呂に攻撃！』
「当然そう来るわな。だけどただでやられると思うなよ！ 血の風呂の効果発動！」
死霊伯爵のレイピアが浴槽に突き刺さった瞬間、血の風呂の閉ざされた瞳がぎょろりと見開かれて死霊伯爵を見据える。
「血の風呂が特殊召喚されたターンに戦闘で破壊された時、攻撃したモンスターを墓地へ送る。死霊伯爵を墓地へ！」
血の風呂の中から何本もの腕が突如伸び、死霊伯爵を掴んで一気に引きずり込んでしまう。そして死霊伯爵の腕だけが助けを求めるかのように浴槽から外に出たかと思うと、そのまま血の風呂ごと砕け散った。……予想より見た目がエグイな。
「その後、効果により俺の場のカードにPEカウンターを２つ乗せる。乗せる先はロボトミーコーポレーションだ」
ロボトミーコーポレーション PE２
『ぐっ！？ メインフェイズ２。私は手札から『暗黒の扉』を発動』
相手の場に出されたのは、バトルフェイズにモンスター１体でしか攻撃できなくなるカード。なるほど。ロックをかけてじわじわエクトプラズマで削ろうって作戦か。
『私はカードを１枚伏せてターンエンド。エクトプラズマの効果により、怨念のキラードールを生け贄に捧げる。食らうがいい』
「うおっ！？」
遊児 LP３２００→２４００
再びのキラードールによる幽体アタックで、今度は腰の辺りまで半透明になってきた。それに比例して脱力感が強くなってくる。……これは早いところ決着をつけないとマズいな。
『おやおや久城君。大分ピンチになってきたんじゃないのかい？』
「分かってるっての！ 俺のターン。ドロー！ 俺は場のロボトミーコーポレーションの効果を発動！ スタンバイフェイズにデッキから３枚めくり、幻想体と名の付くカードがあれば１枚選んで手札に加えることが出来る」
相変わらずのディーの言葉にどこか落ち着きながら、俺は気合を入れてデッキから３枚めくり確認する。……よし。これだ！
「俺は『幻想体 大きくて悪いオオカミ』を手札に加える。残りはデッキに戻してシャッフルだ」
相手に確認のため見せるのは、二本足で立つどこかユーモラスな姿のオオカミの絵柄のカード。
さあて。立体映像で見るのは初めてだが、一つ暴れてもらおうか。
オオカミ出現フラグ入りました。と言っても今回は使用してはいないのであとがきには載せませんが。
次回も明後日投稿予定です。
以降は幻想体の紹介となります。
『幻想体 オールアラウンドヘルパー』
星４ ＡＴＫ１８００ ＤＥＦ１７００ 機械族 地
効果
①このカードの召喚、特殊召喚、リバース時、このカードにクリフォトカウンターを２個乗せる。
②このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードにＰＥカウンターを３個乗せる。
③自分のターン終了時、カードに乗っているクリフォトカウンターを一つ取り除く。
④自分のターン終了時、このカードにクリフォトカウンターが乗っていない場合、フィールド上の裏側表示のカード１枚を破壊し、このカードにクリフォトカウンターを２個乗せる。破壊する対象が居ない場合このカードを破壊する。
万能型家事ロボット。ただし掃除を頼むと殺人ロボットに早変わり。
どうやら量産型らしいけれど、レガシー版によるとこの機体は特別だとかなんとか。良い意味で特別だと良いけど、悪い意味で特別だったらホラーである。
実はデュエルで描写されるのはこれが初めてのヘルパー君。地味に星４にしては武闘派の性能。
『幻想体 血の風呂』
永続罠
効果
①相手の攻撃宣言時発動可能。このカードを（星３ ＡＴＫ４００ ＤＥＦ１８００ アンデット族 水）モンスター扱いで、守備表示で特殊召喚する。
②特殊召喚されたターン、このカードが戦闘で破壊された時、攻撃した相手モンスターを墓地に送り、その後自分フィールド上のカード１枚にＰＥカウンターを２個乗せる。
③このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードにＰＥカウンターを２個乗せる。
時々職員を引きずり込む風呂。地味に取り込んだ職員が多ければ多いほど得られるエネルギーが多くなるという側面も。
ストーリーを読んでいくと、リストカットによる自殺などの暗示がある地味に怖い幻想体。