マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
何だかんだこの話をそんなにも気に入ってくれている人が居るのは喜ばしい限りです。
これからもちょこちょこ書いていきますので、誰かの暇つぶしになれば幸いです。
◆◇◆◇◆◇◆◇
冬休みが終わり、帰省していた生徒達も続々と島に戻ってきた。それからまたテストや実技に備え、勉強やら何やらの日々である。
……良い。これだよこれ。やはりこういう平穏が一番だ。この前の闇のデュエルみたいなことはそうそうあってほしくはない。
『と思っている割には、自分からそういったことを調べようとしているんだね?』
「さらっと思考を読むんじゃないよディー」
目の前の机に並べられた書類に目を通しながら、横から茶々を入れるディーに文句を言う。
コイツときたら基本的に傍観者としてあるくせに、絶妙な所で口だけ出すものだから質が悪い。どうせなら手を貸してくれても良いのに。
まあ時々罪善さんにストレスを和らげてもらっているのでそこまで怒ってはいないが。……あとその分アイアンクローを時折ディーにかましていることもあるな。うん。
ちなみに今は授業も終わって自室で勉強中。……と言っても授業のことではなくて、この学園内に存在する怪談や噂話をだ。
「今日の分の宿題も終わったし、息抜きに調べ物をしているだけだよ」
『へぇ~? 息抜きにねぇ。……それにしても、よくあの高寺君達が言う事を聞いてくれたものだね』
そう。目の前の書類は、この前の高寺オカルトブラザーズが収集してきた物だ。流石にデュエルのオカルト面の研究を活動内容にしているだけあって、学園内であればネットよりも広く深い情報を仕入れてくれる。
「穏便に頼み込んだ成果だよ。
まあサイコ・ショッカーに生け贄にされかける所を助けた恩とか、寮の食堂の修理代諸々とか、そういったものをちらつかせはしたが、最終的に決めたのは向こうだ。
それに調査代としてそれなりの額のDPを前払いしている。そこまで悪い話でもない。今回の罰も含めてそれくらいはやってもらわないとな。
「俺だって
『そういうものかな? ……まあ良いさ。それで原作の流れの外の事件に出くわしてくれたらそれはそれで面白そうだしね!』
言ってろ! ……さて。ざっと目を通したが、やはりこれだけではどれが本物だかガセだか分からないな。こうなったら、
「レティシア。居るかい? ちょっと
『は~い!』
俺の声と同時に、元気良く返事をしながらレティシアが実体化する。だが以前と違うのは、その胸に何かを抱きかかえているということだ。それは、
『……何の用だ? 我が生け贄よ』
「そう怖い顔をするなよネク。……いや、
レティシアが持っていたのは、ダーク・ネクロフィアが抱きかかえていた赤子の人形。ただし壊れかけでは見た目がよろしくないので、簡単にだが布を当てたり色を塗り直したりして修繕している。
これならまあまあ可愛らしく見えるな。まさかヘルパーにおもちゃの修繕機能まであるとは知らなかった。……ヘルパーは掃除以外は本当に有能だ。
驚いたことに、あのダーク・ネクロフィアは実は
他の個体は見た目通りあのデカい方が本体らしいが、こっちは突然変異か知らないがこちら側に自我があり、腹話術の反対で小さい方がデカい方を動かしていたという。
『ぐっ! 何故私が仕事なぞっ!』
『ダメだよネクちゃん。ちゃんとお仕事しないと』
「文句言わない。約束したはずだぞ。
ダーク・ネクロフィア改めネクは顔を歪ませて威圧するが、レティシアに撫でられながら言ってもたんなる可愛い人形にしか見えない。
あの戦いの時、ダーク・ネクロフィアのカードはオオカミに装備されたままだった。そしてその状態でデュエルが終了したことにより、カードと魂の一部がこっちのデッキに引っかかってきたのだ。
それを魂の動きに敏感な葬儀さんが目ざとく見つけ、器となっていた赤子の人形(デカい方は完全に消滅していて修復不可だった)を回収して入れ直したという訳だ。……本人は俺に確認を取った後で消滅させるつもりだったらしいけどな。
こんな状態ではこいつも悪さは出来ない。かといってこのまま放り出してはなんとも後味が悪い。……それに人を生け贄になんてしようとしたからな。その分の罰も必要だ。
という訳で出した結論が、精霊関係の情報を提供する代わりに俺のエネルギーを少しずつ差し出すという物だった。カードも器となる人形もあるのだから、あとはエネルギーを入れればいずれは復活できるという話だ。
デカい方の身体までは面倒見切れないので自分で用意してもらう事になるが。
「ちゃんと仕事をすればその分エネルギーを流すから、あとは自力で復活しな。……それだけ溜まるのにいつまでかかるかは知らないけどな」
『くぅっ! 何たる屈辱。……復活したら真っ先に餌食にしてくれる』
『ネクちゃんっ! めっ!』
はっはっは。奴めレティシアに叱られてやんの! 何故かレティシアが赤子状態のネクを気に入った時にはどうしようかと思ったが、案外上手くいっているようで何よりだ。
「……それでだ。早速ネクに聞きたいんだが、この中で本当に精霊かそれに近い何かが絡んでいる話ってあるか? 知っている分だけで良いから教えてくれ」
もう少し見ていたいところだがそれでは話が進まない。俺は真面目な表情で書類をネクに見せた。
『…………これとこれ。あと……これも多分絡んでいるな。残りは知らん』
ネクは嫌々ながらもその小さな指で一つずつ指差していく。
どれどれ……ふむ。俺達が以前行った特待生寮と、森の奥にあるカードの墓場とされている枯れ井戸。それと翔が以前怪談話で言っていた北の断崖にあるという洞窟の入り江か。
特待生寮にそういうのがあるのは既に分かっている。あとは森の奥の枯れ井戸と洞窟だが。
「なるほど。……ディー。一つ聞くけど、これからの流れでこれらの場所は十代達と絡んでくるか?」
『う~ん。あんまり教えすぎるのもアレだけど……まあ良いか! 絡む場所もあるし絡まない場所もある……といった所かな』
ディーはクルクルと周りを回転しながらそういった。そうか。そこで少し考える。もしこれらの場所で何か問題が起こるとして、俺が何か手を出すべきだろうか?……おそらく答えはノーだ。
俺が今やることは、この場所に行くとかそういった話を十代達がした場合、なるべくそこに近づかないこと。むしろ俺が
仮に行くにしてもせいぜいどんな具合か確認するだけ。それ以上は
「分かった。じゃあこの枯れ井戸と洞窟の情報を重点的に調査してもらえるよう明日にでも高寺オカルトブラザーズに頼んでおくとするか。……現地に直接行かせるつもりはないけどな」
『あの三人じゃ、またうっかり変な精霊に絡まれたりするかもだしね!』
いや、そこまでは言わないけどさ。それにこっちが言わなくても、いくら何でもあれだけ痛い目を見たのにまた現地に乗り込んでいくなんてことは……無いよな?
「……ふぅ。ではひとまず今日はこのくらいで」
『割と良く調べたねぇ』
息抜きのつもりが大分時間が経ってしまった。僅かに固くなった目をほぐしながら、俺は立ち上がってグッと伸びをする。
手伝ってくれた精霊達も、皆どことなく疲れ気味だ。そこに、
コンコンコン!
「お~い遊児! 居るか? 居たら飯食いに行こうぜ!」
「そうっすよ久城君! 今日はなんとエビフライの日っすよ!」
扉をノックする音と共に、十代と翔の声が聞こえてきた。もうそんな時間か。精霊達もそれを聞いて静かに姿を消す。十代だけならまだしも翔も居るからな。
「ああ! 分かった。先に行っててくれ! 用意したら俺も行くから」
早く来いよという声を残し、そのまま階段を下りていく音が聞こえる。さて、俺も早く準備して夕食を食べに行かないとな。
広げていた書類を片付け、さっきの物以外の候補をまとめたメモを机の引き出しに仕舞い込む。準備と言っても後はあまりないし、そのまま扉を開けて食堂へ向かおうとした時、
『ねえ。ところでさ。……
俺の背に向けて、ディーがそうポツリともらした。……大徳寺先生か。
「……これは単に俺の推測というか直感だけどさ。あの人絶対これからの流れの重要人物だろ?」
『まあね。かなり重要な立ち位置』
ディーは隠す気が無いとばかりに答える。……考えてみればそうだよな。
こんなにキャラが濃い上にフラグをポンポン立てておいて、重要人物でなかったら逆におかしい。
あとサイコ・ショッカーの事件の時、大徳寺先生がデュエルの精霊を研究してるって高寺が言ってたからな。余計に重要フラグが立った。
「……ディーがこの前言っていた、本来ダーク・ネクロフィアを倒すはずだったのもおそらく大徳寺先生だ。そう考えるとおそらく俺がやったこともバッチリ見られてる。……それで向こうから話しかけてこないと来れば、
俺はディーに振り向いてニヤリと笑ってみせる。
「気が向いたら向こうから話しかけてくるさ。……もしかしたらこっちから話す必要が出てくるかもしれないけど、それまでは好きにさせてもらうとしようか」
まあそんな事になった時点で、逃れられない厄介ごとと一緒なのは間違いないだろうけどな。
人形(赤子の方)を拾いました。
口に出してはいませんが、ネクが助かったことで正直遊児はホッとしています。闇のデュエルとはいえ、相手が消えてしまうというのは結構精神的に来るものがありましたからね。
次回も明後日予定です。