マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 やっとGX世界突入です。




 たった二日でお気に入り二十人……だと!? 遊戯王の力すげえ! 皆様の期待が胸に重いっ!


第一章 やってきましたGX世界
うちの精霊は骸骨でした


「なっ!? ななっ!?」

 

 俺は驚いて尻もちをつき、そのまま謎の頭蓋骨から距離を取るべく後ずさりする。だが頭蓋骨はカタカタと音を鳴らすだけで、その場にふよふよと浮いたまま動こうとはしなかった。

 

 ひとまずは襲ってこないと判断するが油断はできない。何せ宙に浮く頭蓋骨ってどんなホラーだよまったくもう。……って、俺の身体動くじゃんっ!? だけど何か違和感があるような。

 

『やあやあ無事に着いたみたいだね。良かった良かった』

「ディーか? どこに居るんだ?」

 

 どこからか声はすれども姿は見えず。俺は目の前の頭蓋骨に軽く注意しながらも周りを見渡す。

 

 ここは……どこかの室内だろうか? 見える範囲ではやや年代物のブラウン管テレビに三段ベッド。壁際に設置された机が二つに本棚、流しやコンロもあるな。試しに弄って見るとちゃんと水も火も出る。あとは窓と外に通しているらしき扉。何となく大学時代の学生寮を思わせるな。

 

 そんな風に思っていると、頭蓋骨の後ろからフワフワと白い光の球が飛んできた。何だこれ?

 

『ふっふっふ。僕だよ僕! こっちには直接は入れないからね。代わりにこの格好で失礼するよ。それと良い勘してるね。その通り。そこはオシリスレッド寮の一室だよ』

 

 光の球からディーの声がする。なんか蛍みたいだな……って!?

 

「オシリスレッドって……あのオシリスレッドかっ!? GXの十代とかが所属しているあのっ!?」

 

 さらっとまた考えを読まれたのは置いておいて、聞き覚えのある言葉が出たことに驚きを隠せない。あと知らない人が見たら完全に独り言をブツブツ言っている危ない人だよな俺。大丈夫かな。

 

『その通り。要点だけ説明すると、君は今遊戯王GXの世界に居る。……と言っても本物に限りなく似たシミュレーションの世界だけどね』

「シミュレーションって……これがか?」

 

 俺は机に手を乗せてみる。この滑らかな木の感触……とてもシミュレーションとは思えない。しかし思い返してみると、確かに以前読んだ中にこのような室内の様子が描かれていた記憶もある。

 

『こんなことを考えたことはないかな? もしあの時、あの場所であんなことがあったらとか。君は言わばそういうIFの世界を体験しているのさ。ちなみに今回の条件付けは“もし遊戯王GXの世界に君という異分子が存在したら”というものだよ』

 

 どこぞの青い猫型ロボットがそういう道具を持っていた気がするな。

 

「まあシミュレーションだというのは信じよう。前提として信じなきゃ何も始まらないものな。……それで? 俺はここで何をすれば良いんだ?」

『まあ僕としては()()君を観察できればそれで良いんだけど……分かりやすい目標は確かに必要だね。ではここはシンプルに“このデュエルアカデミアを卒業する”としておこうか。あくまでここを卒業なので退学や転校は失敗扱い。留学や留年なら状況によって判断する……といった所でどうだい?』

 

 また無茶苦茶なことを言ってきたよコイツは。

 

「あのなぁ。俺は二十四歳。今年で二十五だぞ。おじさんとは言わないけど学校に通うにはちょっと年がいってないか?」

『おやおや~! 気付いてないのかな? 今の君は二十四なんかじゃないとも!』

「えっ? …………まさかっ!?」

 

 鏡っ! 鏡は無いかっ! ざっと探したが見つからないのでブラウン管テレビで代用。見づらいけれど一応は分かる。……それに映っていたのは、明らかに少し若くなっている俺の姿だった。

 

 軽く毛先が跳ねた黒色の癖っ毛に、丸みを帯びてやや童顔と言われていた顔。背も少し縮んでいるようで百六十いかないぐらいか。成長期が遅くて、百七十近くまで伸びたのは高校三年ぐらいだったからな。もうちょっと早く伸びてほしかったと当時は思ったものだ。

 

『シミュレーションだといったろ? 流石に肉体年齢くらい弄ってあるさ。おおよそ十五歳くらいに設定してある』

「……まいった。一気に十歳近く若返るとかそんなのアリか?」

『若返るくらい死の運命を変えるのに比べたらなんてことはないと思うんだけどね。さあ。次に行こうか。机の引き出しを開けてほしい』

 

 もう少し呆然自失の状態で居たかったのだが、ディーにせっつかれてふらふらと引き出しを開ける。そこには一つのデッキケースが入っていた。……俺の使っていた奴に似ているのはディーの配慮だろうか? 中を開けてカードを確認する。

 

 俺の使っていたのはジャンク系を中心としたシンクロ主体のデッキ。昔作ったのを最近の環境に合わせて改良したものだ。シミュレーションとは言え自分のデッキを使えるものだと考えていたのだが。

 

「……俺の使っていたデッキじゃないな。何だこれ? ……“幻想体(アブノーマリティ)”?」

『君が使っていたシンクロ系はちょっと未来のものだからね。今下手に使うと問題になる。なので代わりのデッキを用意したよ』

 

 中に入っていたのは俺の知らないカテゴリのデッキだった。まあ俺もブランクが長いから、知らないカテゴリが有っても不思議じゃないが。

 

 しかしエクストラデッキが一枚もない所を見ると、余程古いか専用構築が必要なデッキか? 帝デッキのようにむしろエクストラデッキがない方が強い場合もあるしな。

 

『知らないのは当然だね。だってそれは別の世界のキャラクターを元にしたデッキだもの。いわゆるオリテーマという奴さ。君にはそれを使ってもらう』

「なるほど……ってそれはそれでマズいんじゃないか? 未来のカードと別の世界のカードでどっちがマズいかは別として、つまりはこの世界でこれだけしかないレアカードってことだろ? 色々と問題なんじゃ?」

『そこに関しては問題ないよ。実際作品内で世界に数枚しかないカードが出てきても、強盗に力づくで盗られるなんてことはほとんどなかっただろう? この場所はそれだけセキュリティがしっかりしているってことさ』

 

 確かにマンガで読んだ限りでは、GXの主要メンバーの何人かが持っていたプラネットシリーズなんかはそれぞれ世界で一枚のはずなのに普通に使われていた。無印では大規模なカード強盗集団が居たが、それも基本はアンティルールによるものだったからな。だけど、

 

「デュエルで奪われそうになるってのは多々あった気がするけどな。……じゃなくて、俺が言いたいのは目を付けられるんじゃないかってことっ! 卒業するだけなら別に目立たなくても良いだろうに」

 

 奪われたりはしないかもしれないが、奇異な目で見られたり噂になることは充分あり得る。目立つのが嫌って訳じゃないが、誰かに纏わりつかれるのは御免だ。

 

『心配性だね君も。大丈夫。ただ珍しいカードを持っているだけじゃ問題にはならないよ。まあ卒業するためにはデュエルは必須だから、嫌でも周りに注目されるけどね』

「ディー。……楽しんでるだろ」

『まあね!』

 

 ……いかん。コイツが性格が悪い愉快犯なのは、これまでの言動から分かり切っていたことじゃないか。気を落ち着けなければ。

 

「……ちなみに新しくデッキを作ってそっちを使う事は?」

『汎用カード数枚の入れ替え程度ならともかく、別のカテゴリを使う事は認められないなぁ。こっちの方が面白……ゲフンゲフン。いや、こちらの方が課題としてふさわしいからね』

 

 今面白そうって言わなかったかこの野郎っ! 現実でも相手によって微妙なデッキの調整が必要になるってのにデッキ縛りとか。

 

『まあまあ落ち着いて。前向きに考えようよ。これでどんな相手にも対応できるようになったら、その技術は現実世界に戻っても役に立つんじゃないかな?』

「ここでしか使えないオリテーマだけどな。……それはそうと、そろそろ放っておくのも限界だから聞くけどさ。この頭蓋骨はいったい何なんだ?」

 

 さっきから話している最中も、じ~っと俺の方を見つめている。特に何かしてくるわけではないが、見た目が見た目なのでどうにも気になる。

 

『そうだった。まず彼を紹介しないとね。彼の名前は『幻想体(アブノーマリティ) たった一つの罪と何百もの善』。通称罪善(つみぜん)さん。()()()()()()()()()

「カードの精霊……ってこれがっ!?」

 

 カードの精霊っていうとアレだろっ! GX世界で言うなら十代にはハネクリボー。万丈目には()()()()()だろ。いわゆる物語の重要なキーカードだ。だというのに。俺は一度じっくりとその罪善さんを見つめる。

 

 宙に浮かぶ頭蓋骨。一言で表すとそれだが、よく見れば意匠は割と細かい。下部の折れた十字架に磔……というか貫かれていて、額の辺りには赤い茨のような冠が巻き付いている。あと骸骨なのだから瞳が無いのは当然だが、その中を覗き込んでも全く奥が見えない。暗闇そのものと言っても良い。

 

「これがカードの精霊って……ちょっとキワモノ過ぎないか?」

『そうかな? 見た目はともかく幻想体の中では一、二を争うほど優しく安全だよ彼は。その証拠に、君は彼と会ってすぐに落ち着きを取り戻したろう? 彼の近くに居るだけで、ある程度精神を落ち着かせる力があるんだよ』

 

 そう言えば最初こそ警戒したが、すぐに()()()()()()()()()()()程度に落ち着いた。普通は宙に浮く頭蓋骨なんて見たらそれだけでパニックものなのに。今もひどく落ち着いているのはどうやらこの罪善さんの力らしい。

 

『それに罪善さん一人でパニックを起こしてたらこの先やっていけないよ。何しろ()()()()()()()()()()()()()んだからね』

「…………ホントか?」

『ホントホント。そしてほとんどが罪善さんみたく優しくはないね』

「……なんてこったい」

 

 カードの精霊って物語のキーカードだろ。それが何で何十枚も俺の所に集まってるんだよっ!? 俺は衝撃の事実に愕然とする。

 

『まあ一つずつ紹介するのも手間だからね。……どうだろう? ここは紹介も兼ねて、腕慣らしに一つやって見るというのは?』

「やってみるって……何を?」

『ここまできたらやることは決まっているだろう? ……デュエルだよ!』

 

 その言葉と共に、デッキケースに入っていたカードがふわりと浮かび上がって俺の下に飛んできた。

 

 どうやらこの世界での初戦の相手は“元”神様になったらしい。

 




 ほんと見た目によらずとことん善人なんですよ罪善さんは。お世話に失敗しても滅多に怒らないし、成功すれば味方の精神力を回復してくれるし。

 次回チュートリアル編です。あくまでカードの動きを見るためのものなので本格的ではありませんが、初デュエルですよ。内容は拙いかもしれませんが、ご期待ください。

 ただ私事により、次話の投稿は明後日予定となります。少々お待ちくださいませ。



 あとアンケート。予想以上に蝶の人気が凄くてビックリです。私もあのやられた時のエフェクト結構好みですが。

ロボトミキャラの中で精霊として出てほしいキャラは?(すでに確定しているキャラは省きました)

  • 蓋の空いたウェルチアース
  • 今日は恥ずかしがり屋
  • 空虚な夢
  • キュートちゃん
  • 死んだ蝶の葬儀
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