マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 まだまだ始まったばかりなので、じゃんじゃん皆様のご意見をお待ちしています。


VS遊戯デッキ 遊児対神楽坂 その三

 遊児 LP4300 手札1 モンスター 絶望の騎士 罰鳥 罪善さん 魔法・罠 エンサイクロペディア 業務終了

 神楽坂 LP4000 手札1 モンスター ブラック・マジシャン 魔法・罠0

 

 

 

 さて。今の神楽坂の様子から見るに……何か良いカードでも引いたか? さっきから神楽坂の引くカードがことごとくタイミングが良い。デッキの強さは当然として、本人のドロー力も相当なものだ。

 

「行くぜ! ブラック・マジシャンで、たった一つの罪と何百もの善を攻撃!」

「攻撃宣言時、絶望の騎士の効果発動! 場のモンスター1体の攻撃力・守備力を500アップし、一度だけ破壊を免れる。俺は罪善さんを選択!」

 

 絶望の騎士が祈りを捧げるとともに、どこからともなく数本の剣が出現して罪善さんを護るように展開。ブラック・マジシャンが放つ光弾を弾き返す。

 

「悪いけど、絶望の騎士が居る限り、そう簡単には破壊させないぜ。いくらブラック・マジシャンが相手と言ってもな」

「神の居ない今、ブラック・マジシャンは遊戯デッキのエースモンスター。抑えることができれば久城にも勝機がある」

 

 三沢が解説してくれているように、エースを動かせなければいくら強いデッキだろうと回らない。このまま抑えながら粘れれば勝ち筋はある。

 

「ふっ。絶望の騎士か。確かにそのカードの護りは強力だ。だが、このデッキはお前達の想像をはるかに超えている。神のカードが抜けた穴を十分に埋める程にな。俺は手札より速攻魔法『光と闇の洗礼』を発動!」

 

 なっ!? さっき引いたカードはそれかっ! なんてタイミングで!

 

 カードの発動と共に、ブラック・マジシャンを黒い靄が包み込む。

 

「このカードは、自分の場のブラック・マジシャンを生け贄に、自分の手札・墓地・デッキの中から『混沌の黒魔術師』を特殊召喚する!」

「混沌の黒魔術師って」

「伝説の魔術師(マジシャン)。最強レベルモンスターの一人」

「そうだ。貴様らは今から伝説を目にする。デッキからいでよ! 混沌の黒魔術師っ!」

 

 靄が晴れた時、そこにいたのはブラック・マジシャンとは似て非なる者だった。衣装が全体的に禍々しくなり、肌もやや青白くなっている。

 

「このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、墓地から魔法カード1枚を手札に加える。俺は死者転生を選択! そして混沌の黒魔術師の攻撃力は、ブラック・マジシャンを上回る2800ポイント!」

「マズイぞ。遊児の絶望の騎士を上回ったんだな!?」

「いや……()()()()()()!」

 

 隼人の言葉に十代が顔色を変えながら追加する。そういえば隼人や翔の前では、絶望の騎士の()()()()()を見せたことがなかったな。

 

「俺は混沌の黒魔術師で、()()()()()()()()()()()()()()()()! 食らえ。『滅びの呪文』!」

「えっ!? 絶望の騎士じゃなくて?」

 

 神楽坂の動きに翔は疑問の声を上げるが、この状況ではこっちの方がキツイ。

 

 ブラック・マジシャンの時よりも威力の上がった光弾が、絶望の騎士の剣の守護を貫いて罪善さんに直撃する。

 

 罪善さんは耐えきれず、そのまま光の粒子となって消滅した。スマン罪善さん。……まあ精霊として俺の傍に移動しただけだけど。

 

 そして、守護する対象を喪ったことで、絶望の騎士のデメリットが発動する。

 

「うそっ!? 絶望の騎士の様子が!?」

「なんか急に苦しみ出したんだな!」

 

 それまで祈りを捧げるように合わさっていた両手で顔を覆い、どこか慟哭するような動きをする。いかん。暴走の前兆だ!

 

「絶望の騎士の効果。このカードの効果が発動中に選択したカードが破壊された時、場の魔法・罠を全て破壊し、互いのLPを半分にする」

 

 もはや彼女のその姿は痛ましいものに変貌していた。前腕部と顔の左半分を覆う闇はより深く浸食し、黒い棘がいくつも体の内側からドレスを突き破って生えている。

 

 泣き叫ぶ絶望の騎士の剣が荒れ狂うように周りを飛び回り、俺の場のエンサイクロペディアと業務終了が破壊される。

 

 おぉ。カードがまとめて吹き飛ばされた。相手側に魔法も罠もないからこっちだけ一方的に辛い。

 

 そしてそれだけでは足らぬとばかりに、剣は俺と神楽坂にそれぞれ飛来する。服をかすめ、肌を切り裂き、腕に突き刺さる。……映像と分かってはいても痛い気がするな。

 

 遊児 LP4300→2150

 神楽坂 LP4000→2000

 

「うわっ! 前にも見たことあるけどエッグイなこれ」

「そして散々暴れまわった後、絶望の騎士は手札に戻る」

 

 彼女の剣の最後の標的は、護るべきものを護れなかった()()()()

 

 自らの剣を身体のあちこちに突き立てられ、絶望の騎士はまるで涙のような形の粒子をまき散らしながら消滅して俺の手札に戻る。だから演出が凝りすぎだっての。

 

「これが……絶望の騎士のデメリット」

「なんというか、その……おっかないんだな」

 

 翔と隼人も呆然としている。そうだよな。俺も最初に見たときはビビった。暴走の果てに最後なんか自決だもんな。下手なホラー映画より怖い。……というか、

 

「絶望の騎士の効果をよく知っていたな神楽坂。この効果を使ったのはほとんどないってのに」

 

 効果を知らなければ、あの状況では絶望の騎士をそのまま攻撃するのが普通だ。

 

 そしてディーとのチュートリアルデュエルの時にはそれなりに使ったが、学園生活の中ではまだ数回だけ。ソリッドビジョンでは一度しか使っていないので、知っている人の方が少ないはずだが。

 

「勿論知っている。その暴走の様子は以前タッグデュエルの時に見たからな」

「……なるほど。あの時居たのか」

 

 十代達と一緒に出たタッグデュエル大会。あのあとの大乱戦で、場所の空いた時に一度だけソリッドビジョンを使って俺もデュエルしている。

 

 あの時の相手がやたらモンスター破壊の手際が良い奴で、今回と同じく絶望の騎士が護り切れない時があった。結果として勝つことができたものの、あの時もひどい目に遭ったからな。

 

 その時は翔も隼人も疲れて先に部屋に戻っていたから、絶望の騎士のデメリットを知らなかったんだ。十代は最後まで戦っていたから当然見ていたけどな。

 

「あの時のデュエルは見事だった。だが相手が誰であろうと、この最強のデッキを手にした俺の前では結果は同じだ。……言ったはずだぜ。お前が俺に勝とうだなんて、千年早いってな」

 

 おっ! 今一瞬だけ武藤遊戯の姿が神楽坂にダブって見えた。今のセリフは本当に闇遊戯が言いそうな言葉だったものな。……だけど。

 

「それはどうかな? デュエルっていうのは、LPが0になるまで結果は分からないもんだぜ」

 

 

 

 

「マズいよ! 久城君の場が一気にボロボロに!?」

「神楽坂の場には攻撃力2800の混沌の黒魔術師。おまけに、今でこそ遊児の方がLPは上だが、神楽坂に自発的に与えたダメージは未だ0。こりゃあ……勝つにはちょいと難しい状況になってきたな」

「いや。遊児はまだ諦めた顔はしてないぜ」

「そうなんだな!」

 

 翔や三沢はやや悲観的なムードになっているが、十代や隼人はそうでもなさそうだな。……まあその通り俺はまだ全然諦めていないんだが。

 

「さて。互いに手札も場も少なくなったけど、勝負はこれからだな。俺のターン!」

 

 カードをドローし、手札を改めて確認する。また何とか絶望の騎士を呼び出したとしても、混沌の黒魔術師の攻撃力の前じゃ防ぎきれない。となると。

 

「俺はカードを1枚伏せ、罰鳥で神楽坂に攻撃! このカードは効果で直接攻撃が出来る!」

 

 白い小鳥がす~っと神楽坂の方に向かって飛び、そのままその額を嘴で突っつく。痛みはないはずだがとっさに顔を腕で庇う神楽坂。

 

 神楽坂 LP2000→1900

 

「くっ!? だが、たかが100ダメージだ」

「ああ。確かにたかが100のダメージだな。だけど、これで()()()()()()()()()な。どうだい三沢? これでもまだ諦めムードか?」

「……ふっ! ああ。さっきの言葉は訂正するよ。まだまだ勝負は分からないってな」

 

 たとえ僅かだろうが自分の力でダメージを与えた。それだけでも諦めを吹き飛ばすには十分だ。

 

「俺はこれでターンエンド。そしてまた罰鳥のカウンターが1つ減る」

 

 罰鳥 CC2→1

 

「さあどうする神楽坂? 罰鳥のカウンターが無くなった時の効果は知ってるよな? あの時絶望の騎士の効果を見ていたなら、当然その後のことも」

 

 罰鳥の効果。ターン終了時にクリフォトカウンターが0の時、場の最も攻撃力の高いモンスターを破壊する。この場合は当然混沌の黒魔術師だ。

 

 かと言って攻撃したら、罰鳥はそのモンスターを道連れに破壊する。どっちにせよこれで混沌の黒魔術師は倒すことができる。

 

「小賢しい真似を。俺のターン。ドロー! ……なに。簡単なことだ。攻撃したモンスターが破壊されるというなら、他のモンスターで攻撃するだけのこと。俺はこいつを召喚。『クリボー』!」

 

 クリクリ~!

 

 クリボー ATK300

 

「クリボーを普通に攻撃に参加させてくるのかよ!?」

「バトルだ! クリボーで罰鳥に攻撃!」

 

 クリボーが罰鳥に体当たりを決め、破壊されながらも罰鳥も負けじと効果発動! 腹の赤い模様が全身に拡がり、そのまま裂けて大きな口となりクリボーを一呑みにする。

 

 相打ちではあるがこれではあまり割に合わない。

 

「これでお前を守るモンスターは居なくなった。混沌の黒魔術師でダイレクトアタック!」

「させるかよっ! 罠発動! 『幻想体 血の風呂』。これをモンスター扱いで守備表示で特殊召喚だ」

 

 血の風呂 DEF1800

 

 がら空きの俺の場を守るように、血に塗れた不気味な浴槽が出現する。さあどうする?

 

「……攻撃は中止だ。俺はこれでターンエンド」

 

 やはりこれも知っていたか。血の風呂は出たターンに破壊されると、そのまま相手を道連れにするカード。……幻想体ってそういう奴が地味に多いんだよな。

 

「今攻撃せずとも、このターンが終わればそのカードの効果はなくなる。次のターンで潰せばいい」

「あっちゃ~。これで上手くいけば久城君の血の風呂で混沌の黒魔術師を墓地に送れたのに」

「やるな神楽坂。遊児のカードの特徴を、全てではないがよく掴んでいる」

 

 しかしこの状況は正直辛い。相手のカードも着実に減らしてはいるが、混沌の黒魔術師に主導権を握られていることに変わりはない。

 

 もし相手にもう1体攻め手が追加されたら、それだけでこっちの布陣は崩壊しかねない。その前に、

 

「巻き返せるカードよ来てくれ。ドロー! ……これだ! 俺は魔法カード『人ならざるモノからのギフト』を発動! 手札の幻想体を1枚捨て、カードを3枚ドローする。俺は絶望の騎士を捨てて3ドロー!」

 

 ただしもし引いた中に幻想体が1枚もなければ、デメリットによりそれまでの手札も合わせて全て捨てなくてはならない。そうなったらさらにこっちが劣勢になるので、俺は気合を入れて3枚引く。

 

「……引いたカードの中から幻想体を1枚公開しないと、俺は手札を全て捨てるリスクがある。そして今引いた中から公開するのは、『幻想体 魔法少女 貪欲の王』」

 

 俺が神楽坂に見せるのは、前部が透けた黄金の卵の中に封印された少女のカード。

 

 暴走がどれも怖い魔法少女の中でも、さらにとびっきりの暴れ馬。だけど、

 

「この状況、こいつでひっくり返してやろうじゃないの!」

 




 今回最後に出た貪欲の王は、厳密には場に出たわけではないので能力はまだ書きません。次回をお楽しみに。

 次も明後日投稿予定です。

読者の皆様が主に楽しみにしているのはどれですか?

  • 遊戯王のデュエル描写
  • ロボトミーの幻想体の様子
  • 遊児とそれぞれの原作キャラの絡み
  • どれも同じくらい楽しみ

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