マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
投稿した前話を見返したところ、効果に多少食い違いが見られたので絶望の騎士の効果を一部修正いたしました。
これからはなるべくこういった効果の食い違いが無いように努力いたしますので、これからもご一読いただければ幸いです。
なお、今回も登場した幻想体の能力と所感をあとがきに記載します。よろしければどうぞ。
遊児 LP2150 手札4 モンスター 血の風呂 魔法・罠0
神楽坂 LP1900 手札1 モンスター 混沌の黒魔術師 魔法・罠0
「この状況をひっくり返すだと? お前にできるのか?」
「やれなきゃどのみち負けは濃厚。なら、やってみせるさ。俺は手札からフィールド魔法『ロボトミーコーポレーション』を発動!」
試すような神楽坂に対し啖呵を切り、俺はフィールド魔法を発動。それと共に、足元に巨大な逆向きの生命の樹を模した施設が展開される。
「何っ? フィールドが妙な施設に」
「見たか! これが久城君のフィールドさっ!」
なぜか翔が誇らしげに言う。幸いなことに、あの時このカードは使っていなかったから神楽坂も能力は知らないようで驚いている。今がチャンスだな。
「このカードの効果により、幻想体の召喚に必要な生け贄が一つ減る。俺は血の風呂を生け贄にレベル7、『幻想体 魔法少女 貪欲の王』を攻撃表示で召喚!」
貪欲の王 星7 ATK2800 DEF1500 魔法使い族 闇
血に塗れた風呂を生け贄にして召喚されたのは、大の大人がすっぽり入ってもまだ余裕のあるほど巨大な黄金の卵。そしてその前部から透けて見える琥珀の結晶と、その中にまるで眠っているかのように漂っている少女だった。
褐色の肌に白い長髪。黄色をメインカラーとした動きやすさを重視したドレスに身を包み、髪と同じく白いネックレスとブレスレットが褐色の肌に合っている。
「攻撃力2800だとっ!? 混沌の黒魔術師と同じ!?」
「スゴイスゴイ! だけど貪欲の王? 初めて見るカードだ」
「ああ。俺もだ」
このカードには皆して首を傾げている。それはそうだ。このカードは扱いづらさ故、これまで人前で1度も使ったことがないのだから。
「貪欲の王の効果。場に出た時、このカードにクリフォトカウンターが1つ乗る。そして他の幻想体と同じくターン終了時にカウンターが1つ減り、0の時効果が発動する」
貪欲の王 CC1
1しか乗らないんじゃ、実質毎ターン暴走するようなカードだからな。おちおち場に出せないんだよこれ。
「ではバトルだ! ただし貪欲の王は効果により、攻撃の度に手札か自分の場のカードを1枚墓地に送らなければならない。なので手札から1枚墓地に送り、貪欲の王で混沌の黒魔術師に攻撃!」
その上、攻撃の度にコストが要るんだから実に面倒だ。だがその分の働きはする。
貪欲の王の前に、以前憎しみの女王が展開したのとよく似た魔法陣が発動! そこへ琥珀部分から光が放たれ、魔法陣を通して混沌の黒魔術師に向けて照射される。
対する混沌の黒魔術師も、光弾を向かってくる光に向けて発射。攻撃力が同じなので互いの攻撃が中間で留まっている。
「何っ!? 相打ち狙いか!」
「いや。違うな! 貪欲の王の効果。自身が攻撃したダメージステップ時、その攻撃力はエンドフェイズまで500アップする。よって貪欲の王の攻撃力は3300まで上昇する!」
「攻撃力3300だとっ!?」
それに呼応するように貪欲の王から放たれる光が強まり、光弾を吞み込んでそのまま混沌の黒魔術師に直撃。伝説の魔術師は粒子となって消滅する。
神楽坂 LP1900→1400
「なっ!? 混沌の黒魔術師がっ!?」
「よっしゃ~! 良いぞ遊児! 混沌の黒魔術師を倒したぜ!」
「見事だ。まさか伝説の魔術師を打ち破るとは」
あ~。十代に三沢。実は喜ぶのはちょっとだけ早いんだよこれが。
「戦闘を行ったことにより、貪欲の王にPEカウンターが4つ乗る。そしてメインフェイズ2。俺はカードを1枚伏せてターンエンド。それにより貪欲の王の攻撃力は元に戻り、クリフォトカウンターが1つ減る」
貪欲の王 ATK3300→2800 PE4 CC1→0
カウンターが0になったことにより、当然
貪欲の王の琥珀部分にピシッとヒビが入り、そのままドンドン黄金の卵部分にまで拡がっていく。まるで中から何かが孵化するかのように。
「……なんか貪欲の王の様子がおかしいんだな?」
「まさか! さっきの絶望の騎士の時と同じっ!?」
「そうだ。貪欲の王の効果。自分のターン終了時にカウンターが0の場合、場のこのカードより攻撃力の低いモンスターと裏側表示のモンスターを全て破壊。そして互いのプレイヤーに1000ダメージを与えた後、またクリフォトカウンターが1つ乗る」
ついに卵が割れ、琥珀の結晶が砕け散った瞬間、
そして卵はそのまま姿を変貌させる。巨大な口にそれとは似つかわしくない小さな目と足。姿だけならどこか黄金の魚のようにも見える巨躯の怪物へと。
アッハッハッハッハ!
化け魚の巨大な口の中。何者をも嚙み砕き呑み込むであろう鋭い牙のその奥には、少女の首から上だけが生えて狂気に満ちた笑い声をあげていた。
「…………何アレ?」
「映像では俺も初めて見たけど、こうなるのかよ」
翔がそう呟いた言葉は、この場にいる俺以外の全員が思っているであろう言葉だ。
……正直俺自身も絶望の騎士のことから覚悟はしていたが、まさかソリッドビジョンだとここまで精神を削ってくる姿になるとは思っていなかった。
残る憎しみの女王も多分こんな感じだろうけど、なんか映像で見るのが怖くなってきたな。
貪欲の王はそのまま周囲に琥珀色の光をまき散らしながらその巨躯で暴れまわり、俺と神楽坂に1000ダメージを与えた後、やっと大人しくなって元の卵の状態に戻る。
遊児 LP2150→1150
神楽坂 LP1400→400
「何とか落ち着いたか。……さあてどうする神楽坂? さっきとは立場が逆転したぜ」
「ふっ! それはどうかな?」
言ってくれるな。さっきの俺の言葉をそのまま返してきたか。それじゃあここは一つお手並み拝見といくか。
「この程度で、俺のデッキを破れると思うなよ。俺のターン。ドロー! 俺はカードを1枚伏せて魔法カード『天よりの宝札』を発動! 互いのプレイヤーは、手札が6枚になるようカードを引く」
げっ!? 漫画版で最強のドローカードじゃないか!? 実際にあるカードとは全然違う効果だけど、よりによって漫画版の性能かよ! 俺の『人ならざるモノからのギフト』なんかよりよっぽどチートだぞそれっ!
互いに手札は0なため、一気に6枚ドローとなる。これ下手するとこのターンで決着がつくぞ。
「俺は『ワタポン』を特殊召喚。このカードは魔法・罠・モンスター効果でデッキから手札に加わった時、場に特殊召喚できる」
神楽坂の場に、白い綿毛のようなモンスターが出現する。カード効果によるドローで手札に加えたんだから条件は満たしているな。
「そして、ワタポンを生け贄にいでよ! 『ブラック・マジシャン・ガール』!」
「ブラック・マジシャン・ガールだとっ!?」
そしてワタポンを生け贄に現れたのは、ブラック・マジシャンの唯一の弟子とされる女魔術師。その可愛らしさとサポートカードの多さから、今でも多くのプレイヤーが愛用しているカードだ。
ただこの世界においては、どうやら武藤遊戯のデッキにしか入っていない超激レアカードらしい。師匠よりレアリティが高いな。
「ブラック・マジシャン・ガールは、墓地にあるブラック・マジシャン1体につき、300ポイント攻撃力アップ」
ブラック・マジシャン・ガール ATK2000→2300
パチンっ!
「……僕、久城君には勝ってもらいたいけど、彼女だけは応援しちゃおうかなぁ」
「バカっ! 何言ってんだ!」
「だって、ブラマジガールは遊戯さんのデッキにしか入ってないし、今夜限りの恋かもしれないんだよっ!」
登場時の彼女のウィンク一つでもう翔はメロメロだ。この前の憎しみの女王でも似たような感じになってたし、翔って可愛い系に弱いんだよな。
「そしてお前はこのターン、このデッキの本当の力を思い知ることになるぜ。俺は墓地より、闇属性と光属性のモンスターを1体ずつ取り除き」
「えっ!? 墓地から闇と光のモンスターを?」
「何? この特殊な召喚条件は?」
十代達は首を傾げているが、三沢だけは何か思い当たったようだ。この条件で出せて遊戯デッキに入っていそうなカードと言ったら、
「この召喚条件で呼び出すモンスター。その1枚は、あまりの強さと凶悪な効果ゆえに公式大会では禁止カードとなった『
「そう。このカードこそがこのデッキの真のエース。いでよ『カオス・ソルジャー 開闢の使者』っ!」
カオス・ソルジャー ATK3000
墓地のバフォメットとワタポンを除外して呼び出されたのは、明らかにこれまでのカードとは格の違う威圧感を放つ全身鎧を纏った超戦士。
おいおい。この土壇場でコイツかよ!? シャレにならないぞ。だがこの瞬間、神楽坂はそのまま攻撃せず少しだけ考え込んでいるようだった。俺の伏せカードを警戒しているらしい。
カオス・ソルジャーには攻撃権を放棄する代わり、相手モンスターを1体除外する効果がある。そしてもう一つ、戦闘でモンスターを破壊した場合もう一度攻撃できる効果も。
普通に攻撃しても破壊は可能だ。だがもし攻撃反応型の罠だったら返り討ちに遭う可能性がある。
ではもし効果で除外した場合、残ったブラック・マジシャン・ガールで直接攻撃すればLPを削り切れるが、またさっきみたいにモンスターを特殊召喚するタイプだったらトドメまで持っていけない。といったところを考えているのだろうか?
そして神楽坂の出した結論は、
「受けてみるがいい。最強戦士の攻撃を! ゆけっ! カオス・ソルジャー! 『開闢双破斬』!」
攻撃反応型ではなく特殊召喚型と読んでの攻撃だった。特殊召喚型であれば、貪欲の王を倒してそのまま連続攻撃に繋げられるからだ。そして俺の伏せていたカードは、
「速攻魔法発動! 『管理人の弾丸 シールド弾』。選択した幻想体は一度だけ破壊されない。貪欲の王を選択!」
「破壊耐性の方だったか。だがダメージは受けてもらう!」
超戦士の剣閃が幾つも貪欲の王を切り裂き、黄金の卵の外殻を削っていく。そしてその破片が俺にまで飛び、僅かにだがダメージを受ける。
遊児 LP1150→950
「ぐうっ!? ……ふぅ。戦闘で破壊していないので、カオス・ソルジャーは連続攻撃が出来ない。首の皮1枚繋がったぜ。正直除外の方で来られたら負けていた。貪欲の王が戦闘を行ったことにより、バトルフェイズ終了時にPEカウンターがさらに4つ乗る」
貪欲の王 PE4→8
「運の良い奴め。俺はメインフェイズ2にカードを1枚伏せ、伏せていた死者転生を発動! そしてそれにチェーンして手札から速攻魔法『非常食』を発動!」
神楽坂はトドメを刺しきれなかったと見るや素早く迎撃態勢を整える。
「非常食の効果で、死者転生と伏せカードを墓地に送り2000ポイント回復。さらに死者転生の効果により、手札を1枚捨てて墓地よりクリボーを手札に加える」
神楽坂 LP400→2400
やるな。1ターンで手札を全部消費して鉄壁の布陣にしてきた。これで次のターンを乗り切ろうって腹か。
「俺はこれでターンエンド。次のターンで俺を倒しきれなければ、その貪欲の王の効果によって1000ダメージを受けてお前の負けだ」
「なるほど。確かに何もしなかったらそうなるだろうな。……だが、
これはデュエルだけにかかわらずだが、物事には幾つもの決定的な判断を迫られる勝負所がある。
今のターン俺を仕留めきれるかどうか。このデュエルで言ったら勝負所は間違いなくさっきのことだったのだろう。
……そして、神楽坂は選択を誤った。もしこれが遊戯だったらどちらを選んでいたかなんてタラればを言うつもりはない。だが、
「少なくとも、相手の自滅に頼って勝ちを狙おうなんてセコイやり方は、
俺は勢いよくドローしたカードを確認し、頭の中で勝利への道筋を並べだす。
さあ。これで終わりにしようじゃないか。
次回神楽坂戦決着! 次話は明後日投稿予定です。
以降は幻想体の説明になります。
『幻想体 魔法少女 貪欲の王』
星7 ATK2800 DEF1500 魔法使い族 闇
効果
①このカードの召喚、特殊召喚、リバース時、このカードにクリフォトカウンターを1個乗せる。
②このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードにPEカウンターを4個乗せる。
③このカードの攻撃宣言の際に、自分はこのカード以外の自分フィールドのカードか、手札を1枚墓地に送らなければならない。
④このカードが攻撃したダメージステップ時、その攻撃力はエンドフェイズまで500アップする
⑤自分のターン終了時、カードに乗っているクリフォトカウンターを1つ取り除く。
⑥自分のターン終了時、このカードにクリフォトカウンターが乗っていない場合、フィールド上のこのカードより攻撃力の低いモンスターと、裏側表示のモンスターを全て破壊する。その後、互いのプレイヤーに1000ダメージを与え、このカードにクリフォトカウンターを1個乗せる。
⑦⑥の効果発動時、自分フィールド上に『幻想体 魔法少女 憎しみの女王』か『幻想体 魔法少女 絶望の騎士』が居る場合無効に出来る。
別名強欲の王とも呼ばれている幻想体にして魔法少女。
自らの欲望を制御できず、護るべき世界を喰らう怪物に成り果てた者。
攻撃力の高さだけなら幻想体の中でも上位だが、常に満たされぬ空腹に悩まされている燃費の悪い腹ペコ少女。
化け魚モードの時は、正面に居る者を敵味方問わず食らいついていくので近寄りたくない。……ただし基本真っすぐにしか行けないので背中はがら空き。
読者の皆様が主に楽しみにしているのはどれですか?
-
遊戯王のデュエル描写
-
ロボトミーの幻想体の様子
-
遊児とそれぞれの原作キャラの絡み
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どれも同じくらい楽しみ