マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 読者の皆様お待たせしました。初デュエルです。

 ちなみに作者のプレイングセンスは並以下です。おまけに最後にカードを触ったのが1年近く前という体たらく。

 作中のデュエル描写も「この描写ちょっと変じゃないか」とか「そこちょっとルールと違う」というものが多々見られるかもしれませんが、アニメ版ならこんな挙動もあり得るかもと寛大な心でお許しいただければ幸いです。




 これは余談ですが、あとがきに使われた幻想体の簡単な説明と個人的な印象を乗せておきます。興味のある方はご一読ください。



ディーとのチュートリアルデュエル その一

『では早速やってみよう。そこに座って』

「ああ。……ところで時間は大丈夫か? さっきから時計が全然動いていないんだけど」

 

 机は壁際なのでデュエルに使いづらく、代わりに床に胡坐をかいてデッキを置いたのだが、壁にかかっている時計を見ると針が一切動いていない。壊れているのかと思ったが、すぐに目の前の奴が多少時間を操作できることを思い出す。

 

『今は言わばチュートリアルだからね。そこの扉を開けた瞬間からシミュレーションはスタートする。その前にじっくりデッキの調整をしようじゃないか』

「あんまりじっくりはしたくないけどな」

 

 俺はデッキを手に取り、内容をざっと確認した後シャッフルする。……しかし見ては見たものの、かなりややこしいデッキだぞこれは。

 

 ディーの光球の前にも不意にデッキが出現した。……というかその状態でデュエルすんのっ!?

 

『今回はチュートリアルという事で、こちらも同じデッキを用いたミラーマッチだ。ただあくまでコピーだから、精霊として実体化できるのはそっちのカードだけだけどね』

 

 つまり俺の横で浮いている罪善さんが二体も三体も現れたりはしないってことか。もうあまり怖くはないけど、インパクトのある顔が多いのは心臓に悪いので助かる。

 

「ミラーマッチか。ルールは?」

『基本はGX世界に準拠する。つまり』

「……LP4000で表側守備表示もアリってことか」

 

 現実では無理だが、作中ではモンスターを表側守備表示で出すシーンが多々見られた。それが可能となると、モンスターを出す際の戦略が少し変わってくる。

 

『普通に裏側守備で出すのも当然アリだ。他にもGX世界ならではのルールがあるので注意してね。じゃあ……始めようか』

 

 そうディーが言った瞬間、背筋を一瞬寒気が襲う。どうやらやる気になったってことか。……最近まともにカードに触れていなかった俺だが、それでもこれだけは分かる。

 

 目の前にいる奴は、紛れもなくヤバい奴だと。

 

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 遊児 LP4000

 ディー LP4000

 

 

 

 

 作中よろしくノリでデュエル宣言したが結構楽しいな。ちなみに今回のデュエルは立体映像(ソリットビジョン)ではなく普通のテーブル(床だけど)デュエルだ。ちょっと残念。

 

『先手は僕がもらうよ! 当然GX世界準拠なので初手ドローは有りだ。ドロー!』

 

 光球の前にデッキから五枚、加えてさらに一枚浮かび上がる。あっ! そういうやり方なのね。

 

『僕は手札から『幻想体 キュートちゃん』を攻撃表示で召喚するよ』

 

 キュートちゃん 星2 獣族 地 ATK1000 DEF800

 

 場に出されたのは、白いモフモフとした可愛らしい子犬だ。絵柄だけだがさぞ映像で出たら愛らしいのだろうな。

 

『キュートちゃんの効果発動。召喚、特殊召喚、リバースした時、このカードにクリフォトカウンターを二つ乗せる』

 

 見るからに禍々しい色のカウンターが二つ、キュートちゃんのカードの上に乗せられた。

 

『さっきデッキをざっと確認したから分かると思うけど、“幻想体”の大半はフィールドに出た時このクリフォトカウンターが幾つか乗る。カウンターはカード毎に特定条件で減少し、自分のターン終了時にカウンターが無いと効果が発動。大概はデメリットだね』

「全てそう……って訳でもなさそうだけどな」

『その通り。まあ戦いながら説明しよう。……さらに僕はフィールド魔法『ロボトミーコーポレーション』を発動するよ!』

 

 次に場に出されたのは、逆さまの生命の樹(セフィロト)を模した形の巨大な施設だった。セフィロトの小径の部分はそれぞれまたいくつかの部屋に分かれ、全体ではどれだけの部屋があるのか分からない。

 

『このカードは四つ効果がある。まあ最後の一つは実質デメリットなんだけどね』

「だがこのデュエルはミラーマッチ。つまり俺の幻想体もそのフィールド魔法の影響を受ける」

『そういう事! 当然君のデッキにも同じカードがある。これから上手く使ってね! ……僕はカードを二枚伏せてターン終了』

 

 ターン終了と同時にキュートちゃんのクリフォトカウンターが一つ減る。どうやら自分のターン終了毎に一つ減るらしいな。

 

 キュートちゃん CC2→1

 

 ディー LP4000 モンスター1 ロボトミーコーポレーション 伏せ2 手札2

 

『さあ。君のターンだ』

「言われるまでもないさ。俺のターン。ドロー! そしてここで『ロボトミーコーポレーション』の一つ目の効果を発動する」

 

『おや。よくテキストを見てたね。一つ目の効果は自分スタンバイフェイズにデッキから三枚めくり、その中に幻想体があれば一枚手札に加えることが出来る効果。これは僕が使うタイミングを間違えたかな?』

 

 よく言うよ。さっきからの動きは皆、()()()()()()()のプレイングだろうに。そうでもなかったらわざわざキュートちゃんを攻撃表示で出すかっての。表側守備でも出せるってのに。

 

 フィールド魔法だって、俺が効果に気づいて使うか試してたんだろう。まったく白々しい。

 

「俺はカードを三枚めくり……これだ。『幻想体 雪の女王』を手札に加える。そして『ロボトミーコーポレーション』の二つ目の効果。このカードがある限り、幻想体の召喚に必要なリリースは1体少なくなる。よって星5の雪の女王をそのまま攻撃表示で召喚する」

 

 雪の女王 星5 ATK1900 DEF2000 魔法使い族 水

 

 俺のフィールド上に、黒いドレスの上に白いローブを纏った女性らしきモンスターが召喚される。らしきというのは絵柄的にその肉体は透明で見えず、顔の部分には仮面と王冠が浮かんでいるだけだからだ。これ映像で出たらどんな風になるんだろうか?

 

『一応言っておくけど、この世界ではリリースではなく生け贄だからね』

「そうだった。次から気を付ける。ちなみにこのカードにはクリフォトカウンター云々は記載されていない。……幻想体の全てがクリフォトカウンター持ちって訳じゃないみたいだな」

『あくまで()()だからね。それでどうする? そのまま攻撃するかい?』

「いや。ここで雪の女王の効果を発動だ」

 

 雪の女王は1ターンに1度、相手フィールド上のこのカード以下の攻撃力のモンスター1体を除外し、このカードの攻撃力を300上げる効果がある。ただし、

 

「俺はキュートちゃんを指定する。ただしこの効果は、相手は1000LPを払う事で無効にできる。どうする?」

『止められるけど……雪の女王が戦闘で破壊された場合効果で除外されたモンスターは帰ってくる。それを狙って今回は止めないでおくよ』

「分かった。では効果によりキュートちゃんを除外。その後雪の女王の攻撃力は300アップだ」

 

 雪の女王ATK1900→2200

 

「バトルフェイズ。雪の女王でダイレクトアタックだ」

『ほうっ! 普通に殴ってきたね。では……こちらも普通に受けようかな』

「なにっ!?」

 

 ディーはダイレクトアタックを受け、一気にLPが半分を切る。

 

 ディー LP4000→1800

 

「二枚も伏せてあるから何かしら仕込んでいると思ったが」

『いやいや。深読みしないでよ。僕もそんなにカードが強い訳じゃないんだから』

 

 明らかに怪しい。実際ディーの声にはまだ余裕が感じられる。

 

「まあ良いさ。こっちはこっちで手を進めるだけだ。雪の女王の効果。このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードにPEカウンターを3個乗せる」

 

 雪の女王のカードに、黄色と緑の配色のカウンターが乗る。

 

『PEカウンター。これも幻想体特有のカウンターだね。幻想体共通の効果で、戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカウンターを得る。数は幻想体によって違うけどね。そしてPEカウンターを消費することで使えるカードもある』

「説明どうも。……メインフェイズ2。俺は手札から永続魔法『エンサイクロペディア』を発動。効果は使うPEカウンターの数によって変わるが、俺は二つ使って効果発動。1ターンに1度、手札のレベル4以下の幻想体を特殊召喚する。俺は手札の『幻想体 宇宙の欠片』を守備表示で特殊召喚だ」

 

 雪の女王のPEカウンターが二つ減り、代わりに手札から子供が描いた落書きのような不定形のモンスターを特殊召喚する。

 

 姿をあえて例えるなら、黒い球体に四本の触手のような手足があり、身体にハートのような模様が幾つか散りばめられているといった所か。ぴょこんと上部に突き出ているハート形の付属物が何とも微妙だ。

 

 宇宙の欠片 星2 ATK1000 DEF1200 天使族 光

 

「これも場に出た時クリフォトカウンターを二つ乗せる。そしてカードを二枚伏せ、ターン終了だ。ターン終了時に効果により、宇宙の欠片のクリフォトカウンターは一つ減る」

 

 よし。ブランクの割には良い流れだ。後攻2ターン目で相手のLPを半分以下に削り、フィールドもこっちの方が優勢。宇宙の欠片は戦闘時に相手に500の効果ダメージを与える効果があるし、相手も下手には攻撃できない。

 

 向こうが教えながらだから全力じゃないのは分かるけど、次のターンもこのまま一気に、

 

『このまま一気に押し切ろう……とか思っていないかな?』

 

 ディーにまさに今思っていたことをズバリ言い当てられ、心でも読まれたかと一瞬ゾワッとする。

 

『別にインチキはしてないよ。ゲームでそういうズルは興が削がれるからね。ただ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?』

 

 それはどういう事かと聞き返す前に、ディーの場の伏せカードがオープンされる。

 

『宇宙の欠片の効果にチェーンして永続罠。『クリフォト暴走』を発動。1ターンに1度、フィールド上のカード1枚を選択し、乗っているクリフォトカウンターを全て取り除く。僕が選択するのは宇宙の欠片だよ』

 

 その瞬間、宇宙の欠片のカウンターが全て消失する。マズイっ! このタイミングは。

 

『そしてターン終了時にカウンターが無いため、当然宇宙の欠片の効果が強制的に発動する』

 

 宇宙の欠片の効果。自分のターン終了時、このカードにクリフォトカウンターが乗っていない場合、互いのプレイヤーに800ダメージを与え、その後またクリフォトカウンターを二つ乗せる。

 

 遊児LP4000→3200

 ディーLP1800→1000

 

『ダメだよ久城君油断しちゃ。幻想体にとってターン終了時こそが一番危ない時なんだから。当然このタイミングで自身の効果でカウンターが0になっても効果が発動する訳だからね。気を付けるように』

「くっ! ……ああ。確かにデメリットには気を付けないとな。だけど800くらいまだまだ余裕だな。むしろそっちの方がもう後がないんじゃないか?」

 

 ディーの残りLPは1000。もう下手をすると効果ダメージか何かで倒れるんじゃないかってぐらいの瀬戸際だ。だというのに、

 

『1000あれば充分さ。僕のターン。ドロー! 久城君こそ折角のチュートリアルなんだ。……このターンで終わってくれないでよね』

 

 目の前の“元”神様は、自身が負ける気などまるで無いようにふふんと笑ってみせた。

 




 今回登場した幻想体の説明

『幻想体 キュートちゃん』

 星2 ATK1000 DEF800 獣族 地

 効果
 ①このカードの召喚、特殊召喚、リバース時、このカードにクリフォトカウンターを2個乗せる。
 ②このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードにPEカウンターを2個乗せる。
 ③自分のターン終了時、カードに乗っているクリフォトカウンターを1つ取り除く。
 ④自分のターン終了時、このカードにクリフォトカウンターが乗っていない場合、このカード以外のフィールド上の最も攻撃力の低い表側表示モンスターを破壊する。対象が居ない場合このカードを破壊する。


 白くてふわっふわの子犬。とても可愛らしい。ただ……腹ペコで脱走する時だけはご用心。ヒ〇グマがリ〇グマになるぐらい変わる。




『幻想体 雪の女王』

 星5 ATK1900 DEF2000 魔法使い族 水

 効果
 ①このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードにPEカウンターを3個乗せる。
 ②1ターンに1度、相手フィールド上のこのカード以下の攻撃力の表側表示モンスター1体を除外し、攻撃力を300アップする。相手プレイヤーはLPを1000払うことでこの効果を無効にできる。
 ③このカードが戦闘で破壊された時、効果で除外したモンスターは除外した時の表示形式でフィールドに戻る。
 ④自分フィールド上に『幻想体 火の鳥』が召喚、特殊召喚、リバースされた時、このカードを破壊し、互いに1000ダメージを受ける。


 意外に武闘派の女王様。剣もガンガン振るう。タイマン勝負に勝つとプレゼントをくれる気前の良さ。……ただし何故か火の鳥と相性最悪。




『幻想体 宇宙の欠片』

 星2 ATK1000 DEF1200 天使族 光

 効果
 ①このカードの召喚、特殊召喚、リバース時、このカードにクリフォトカウンターを2個乗せる。
 ②このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードにPEカウンターを2個乗せる。
 ③このカードが戦闘を行う時、相手プレイヤーに500ダメージを与える。
 ④自分のターン終了時、カードに乗っているクリフォトカウンターを1つ取り除く。
 ⑤自分のターン終了時、このカードにクリフォトカウンターが乗っていない場合、互いのプレイヤーに800ダメージを与える。その後このカードにクリフォトカウンターを2個乗せる。


 不定形の宇宙人。今の身体は子供の絵をモデルにしたもの。人間に好意的ではあるけれど、仲良くするには狂気に陥る必要があるから困りもの。

ロボトミキャラの中で精霊として出てほしいキャラは?(すでに確定しているキャラは省きました)

  • 蓋の空いたウェルチアース
  • 今日は恥ずかしがり屋
  • 空虚な夢
  • キュートちゃん
  • 死んだ蝶の葬儀

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