マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
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「あれ? アニキどこ行くんすか?」
俺が扉を開けようとすると、机で本を読んでいた翔が声をかけてきた。隼人は久々にデッキの構築をすると言って、さっきから自分のベッドにカードを並べて集中している。
「おお。ちょっと遊児のとこまでな」
「久城君の? 用があるならさっきの夕食の時に言えば良いのに」
「それが、あまり他の人には聞かせられない話らしくてさ。出来れば翔や隼人は連れてこないでくれってよ」
内緒話、しかもこんな時間になんて遊児にしては珍しいことだ。だから俺も少し気になっている。
「ふ~ん。なんか仲間外れみたいでやな感じっすね」
「まあそう言うなって! てなわけでちょっと行ってくる」
「あっ! ちょっと待ってよアニキ。……これ。ついでに届けてほしいんだ。昨日ノートを見せてくれたお礼にって」
翔は俺に菓子の袋を投げ渡す。そう言えば昨日、翔が俺とは違う授業を遊児と一緒に受けて、たまたま宿題を忘れたのを咄嗟に遊児に宿題を写させてもらって助かったって言ってたな。
……遊児は次は自分でやれよって怒ってたらしいけど。
「あいよ! それじゃあ行ってくる!」
俺は扉を開けて外に出て、そのまま静かに遊児の部屋に向かう。もう夜だし、あんまり騒ぐと流石に他の奴らに迷惑だからな。
コンコンコン。
「遊児。俺だ十代だ。言われた通り一人で来たぞ」
……おかしいな。反応がない。呼び出したのは向こうなんだから来るのは分かっているはずなんだが。
聞こえてないのかともう一度ノックして少し待ってみたが、やはり返事はなかった。なんなんだよ一体?
「しゃあねぇ。戻るか」
なんか急用でも出来たのかもしれない。ここはひとまず出直そうと振り返った時、
『カギ、開いてるよ! 入らないの?』
「おわっ!?」
急に呼びかけられて驚く。俺のすぐ後ろに、小さな女の子が立っていた。こんな子さっきまで居なかったはずだけどな?
ちょっとお高い人形が着てるみたいな、フリフリの多い赤いドレス。同じ色のやっぱりフリフリのついた帽子を被り、髪飾りなのか両耳の後ろに少し大きめの鈴を着けている。
その子は腕に赤ん坊のような人形を抱いて、どこか不思議そうな顔をしてこっちを見ている。誰だこの子? ……いや待てよ! 確か三沢が部屋に泊まりに来た時、遊児の横に立っていた事があったな。ってことはハネクリボーと同じ精霊か?
「え~っと。遊児の……この部屋に居る奴の知り合いか?」
『うん! レティシアっていうの! よろしくお兄ちゃん!』
「ああ! 俺は十代。遊城十代だ。よろしく!」
レティシアが手を差し出してきたので、俺もそれを握り返す。……普通に触れるな。って言ってもハネクリボーだって俺に触れるか。
クリクリ~!
そんなことを考えていたら、ちょうどそのハネクリボーがデッキから出てきた。ハネクリボーはレティシアをじっと見てはいるが、特に警戒みたいなことはしていないようだ。
『わあ! あなたもモフモフだあっ! フフッ! 良い子良い子!』
レティシアもしっかりハネクリボーが見えているようで、人形を片手で抱いたままハネクリボーをその小さな手で撫でる。ハネクリボーもまんざらではないようで、特に嫌な顔もせずに撫でられっぱなしだ。
『……ふんっ!』
気のせいか、レティシアの抱いている人形が何か言ったような気がした。……精霊の持ってる人形だしそういうこともあるのか?
『~♪ あっ! いけないいけない。もし遊児お兄ちゃんが居ない間に来たら、部屋に通してお出迎えしなさいって言われてたんだった!』
「つまり、レティシアはお留守番か?」
『そうなの! さあ十代お兄ちゃん。中へどうぞ!』
そう言いながらレティシアは、遊児の部屋の扉を開けて中に入っていく。
カードの精霊が出迎えてくれるってことは……つまりこの前の罪善さんが急に船に向かって突撃していったアレとかの説明をしてくれるってことか? そういうことなら翔とか隼人は呼ばないよな。
「へへっ! なんかワクワクすんじゃねえの!」
クリクリ~!
さあて一体何が出てくるか? 俺はハネクリボーと共にレティシアを追って部屋に入っていった。
『どうぞ十代お兄ちゃん! 座って座って!』
「ああ! ありがとうな」
レティシアに促されて椅子に座り、俺は室内を見渡す。部屋ごとの間取りはどこも同じはずなのに、荷物の置き方なんかが違うだけで俺達の部屋とはまるで別物って感じがするな。
『遊児お兄ちゃんが帰るまでもう少しかかるから、それまで私とお話しよっ!』
レティシアは一番下のベッドにポスンと腰を下ろし、ニコニコと笑いながらそう口にする。
「お話? まあ良いけどさ。……そうだ! これ、食うか?」
そういえば翔から菓子を預かってるんだった! ただ待ってるってのもアレだし、遊児の分を残しておけばちょっと摘まむくらいなら良いだろ!
俺は菓子の袋を開けて中のスナック菓子をとり出す。
『お菓子っ! ありがとう!』
チリンチリンと髪飾りの鈴を鳴らしながら、レティシアは大喜びでスナック菓子を一つ手に取り口に放り込んだ。サクサクという音が口の中から聞こえる。
『美味しいっ!』
「そうか! 喜んでくれて嬉しいぜ! どんどん食えよ!」
俺も負けじと放り込み、食べながら何でもない雑談を楽しむ。
レティシアは本当に何でもない話でも楽しそうにニコニコしながら聞き、それを見ていると俺もどこかほっこりとした気持ちになって自然と笑顔になっていた。
『ふふっ! 十代お兄ちゃんもとっても笑顔なの! ……これなら私の
後の方はよく聞き取れなかったが、まあ大したことじゃないだろう。そうしてあれよあれよという間に、菓子はいつの間にか半分くらいになっていた。
「おっと。もうあとこんだけか。残りは遊児の奴の分に取っておこうな」
『うん。とっても美味しかったよ! ありがとね十代お兄ちゃん!』
「おう! しかし菓子ばっかり食べてたら喉が渇いたな。何か飲み物でも」
取りに行こうと椅子から立ち上がろうとした時、フッと視界の隅に妙なモノが現れた。
それはデカくて白い卵のような形の機械だった。表面にはつぶらな赤い目と笑顔をイメージした口がついていて、金属のアームが二本身体の両脇から伸びている。
下の方から伸びる二本の長い脚は車輪になっていて、それを器用に操りながらこの何かは俺の前にやってきた。
「おわっ!? なんだ?」
『大丈夫! ヘルパーちゃんだよ。飲み物って言ったから反応したみたい』
クリクリ~。
突然で驚いたが、ハネクリボーが反応していることからどうやらコイツも精霊らしい。一体遊児のとこには何体精霊が居るんだ?
〈ピピっ! 飲み物。了解。クッキングプロセスを開始します〉
ヘルパーはそうどこか金属質な声を上げると、何かの駆動音を身体の中から響かせながら首を上下左右に軽く振る。
そしてしばらくすると、身体の横から小さな筒のようなものが飛び出し、そこから良い香りのする黒い液体が流れだした。香りからしてコーヒーだな。
〈コーヒー抽出完了。美味しいコーヒーをどうぞ!〉
どこから取り出したのか、ヘルパーは紙コップをアームで器用に持ちながら液体を注いでいき、ある程度注がれたかと思うとそのコップを俺に向けて差し出してくる。
「俺にくれるのか?」
ヘルパーは何も言わず、ただ湯気を立てるコーヒーを差し出し続けるのみだ。俺はゆっくりと紙コップを受け取り、軽く息を吹いて冷ましながら少し口に含む。……熱い。だけどどこかホッとする味だ。
俺はあんまりコーヒーは好きじゃないけど、これならたまには飲んでみたいと思える。
「……ふぅ。ヘルパーだっけか? 美味いコーヒーをありがとよ」
〈あなたのお供、ヘルパーロボットだよ! 次は何をお手伝いしようかな?〉
『ヘルパーちゃんはもう大丈夫だよって言わないとずっと近くにいるよ』
そうなのか。じゃあ休ませてやらないとな。
「ヘルパー。俺はもう大丈夫だ。なんかあったらまた呼ぶから休んでくれ」
〈了解。スタンバイモードに移行します。お手伝いが必要なら呼んでね〉
そう言うとヘルパーは、現れた時と同じようにフッと姿を消した。……この辺りはやはり精霊なんだなって思う。
「……そうだ! レティシアは飲まないのか? コーヒーがダメなら他の何かを取ってくるけど?」
『私はコーヒー苦手なの。お砂糖とミルクをたっぷり入れないと飲めないんだもん。……だからこっちのジュースを飲むの!』
レティシアはいつの間にか、どこか見覚えのある缶ジュースを両手で持ってコクコクと飲んでいた。あれこの前の送別会で遊児が皆に振舞った奴だ! まだ余ってたらしいな!
俺達がこうして一服していると、外から聞き覚えのある声が聞こえてきた。……遊児だな。やっと帰ってきたのか!
と言ってももうこの時点で結構驚かされたからな。これ以上のことはあんまりないだろう。
俺はそんなことを思いながら、少しだけ冷めてきたコーヒーをズズッと飲んだ。
このあともう少し驚かされます。次回からはまた遊児の視点に戻りますね。
次話もまた三日後投稿予定です。
また感想、お気に入り、評価など反応を返していただけると、急な仕事に負けないやる気がどんどん出てくるので助かります。
読者の皆様が主に楽しみにしているのはどれですか?
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遊戯王のデュエル描写
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ロボトミーの幻想体の様子
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遊児とそれぞれの原作キャラの絡み
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どれも同じくらい楽しみ