マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 久々のデュエル回なので、自分でもうまく書けたかどうかわかりません。

 どこか間違っていたり気になる所があれば、優しくかつはっきりと教えていただければ幸いです。


代表決定戦と怪しい男 その三

「「デュエル!!」」

 

 遊児 LP4000

 取巻 LP4000

 

 ヒュルリと風が俺達の間を吹き抜ける中、デュエルは俺の先攻で始まった。

 

「俺のターン。ドロー! 俺は手札から『幻想体 死んだ蝶の葬儀』を攻撃表示で召喚。効果によりクリフォトカウンターを二つ乗せる」

 

 死んだ蝶の葬儀 星4 ATK1500 CC2

 

 俺の場に蝶の頭を持つ喪服の男が出現する。そして、それと同時に俺の傍らに同じく葬儀さんが半透明で現れる。どうやらソリッドビジョンと精霊は別々に動けるらしいな。

 

『……管理人よ。どうやらイラついているようだな』

「ああ。正直アイツらにかなりむかっ腹が立ってる。……もうホントの俺はいい齢だってのにな。このカッとなる気質は自分でも嫌になる」

『個人的に言わせてもらえば、そうやって感情を出すことができるというのは好ましいものだと思うな。……それと一つ助言を。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 俺はその言葉に少しだけ落ち着きを取り戻す。……そうだな。小さな子供にこんな辛気臭い顔をずっと見せるわけにはいかないよな。

 

「おいっ! 長考もほどほどにしろよオシリスレッド。どうせいくら考えても勝てやしないんだからな」

 

 取巻のヤジで怒りが再燃しかけるが、レティシアの顔を思い出して落ち着く。……よし。まずはこの手で行くか。

 

「そして俺は魔法カード『幻想体脱走』を発動! LP1000をコストに、自分の場の幻想体を1体選択し、そのカードより二つまでレベルの高い幻想体をデッキから攻撃表示で特殊召喚する。このカードを使ったターンは相手に戦闘ダメージを与えられないが、1ターン目だから関係ないな。俺はレベル4の葬儀さんを選択し、デッキからレベル6の『幻想体 三鳥 大鳥』を攻撃表示で特殊召喚する」

 

 遊児 LP4000→3000

 

 大鳥 星6 ATK2200 DEF2200 鳥獣族 炎 CC5

 

 ズシン。ズシンと音を立てて、俺の場にランタンを掲げる巨体の黒い毛玉のような鳥が顕現する。

 

「……なんだアレは?」

「ば、化け物だ!」

 

 ランタンの明かりでユラユラと映る姿を見て、何故か他のブルー生徒がビビっている。化け物とは失敬な。確かに見た目は夜に見たら少し怖いが、これでも森の平和を守る守護者だぞ。

 

「ふ、ふん。そんなこけ脅しに誰がビビるか」

 

 いやビビってんじゃん取巻。声が震えてるぞ。……あとあの大鳥なんか映像じゃなくて本物臭いな。取巻を凝視しているし、うっかりパトロールの最中に呼び出しちゃったかもしれん。……暴れないでね。

 

「大鳥が召喚されたことにより、クリフォトカウンターを5個乗せる。そして俺はフィールド魔法『深く暗い森』を発動」

 

 そのカードを発動した瞬間……何も起こらなかった。()()()()()()()()()()()

 

 それもそのはず、元々この場は多少開けているとは言え少し歩けば森の中程度に自然が豊富。しかも夜なので辺りも見えづらく、注意してみなければ分からない。

 

「……ハ、ハハハハハっ! 何が出てくるかと思えば不発か。流石落ちこぼれのオシリスレッド。メンテナンスを怠っていたらしいな」

「な、なんだ。驚かせやがって」

「そんなんだから落ちこぼれなんだ。さっさと止めちまえっ!」

 

 どうやら誰も発動していることに気づいていないらしい。……ここまで来ると怒りを通り越して呆れるな。

 

「俺はこのままカードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

 さあ。どう動く?

 

 

 

 

「ターンエンドだな? では俺のターンだ。お前に格の違いを見せてやる。ドロー!」

 

 取巻は引いたカードを見てニヤリと笑う。

 

「これは良いカードを引いた。俺は手札から強欲な壺を発動。デッキから二枚ドローする。……ハハッ! これは良いや!」

 

 初手から手札補充を行い、七枚になった手札を見て取巻は上機嫌に高笑いを上げる。

 

「断言するぜオシリスレッド。お前に次のターンは来ない。このターンで勝負をつけてやるぜ」

「……どうやらよほど手札が良いみたいだな。なら見せてもらおうか」

「言われるまでもない。俺は手札から魔法カード『増援』を発動! デッキから『切り込み隊長』を手札に加えてそのまま召喚する』

 

 切り込み隊長 ATK1200

 

 デッキから戦士族をサーチするカードにより手札に加え、そのまま召喚されたのは、いかにも歴戦の戦士といった風格の双剣を携えた騎士。そしてこのカードが召喚されたということは、

 

「切り込み隊長の効果発動! 召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスター一体を特殊召喚する。俺は手札からもう一体、切り込み隊長を攻撃表示で特殊召喚!」

 

 取巻の場に二体目の切り込み隊長が出現する。やるな。初手で二体揃えてきたか。

 

「切り込み隊長がモンスターゾーンに存在する限り、相手は他の戦士族モンスターを攻撃対象に選択できない。そして俺の場には二体の切り込み隊長。これがどういうことかいかにオシリスレッドでも分かるよなぁ?」

「互いが互いを守るから、俺はどちらにも攻撃できないってことだろ?」

「その通り。これが俺の切り込み隊長ロックだ!」

 

 自信満々にそう言い放つ取巻。俺のってお前の専売特許じゃないだろうに。戦士軸のデッキとかで割とよく見るぞ。

 

「まだ終わりじゃないぞオシリスレッド。俺は魔法カード『二重召喚』を発動! これにより俺はこのターンもう一度召喚が出来る。そしてなんと……三体目の切り込み隊長を攻撃表示で召喚だ!」

「何?」

 

 場に出現する三体目の切り込み隊長。これは地味に驚いた。強欲な壺と増援があったとはいえ、初手で三体並べるのは結構運が良い。その点は素直に凄いと思う。しかしこれだけ居るとどれが隊長だか分からないな。

 

 だが確かにロックが盤石にはかかったが、これではこのターンで決めるには火力が足らないだろうに。

 

「続けていくぜっ! 俺は召喚した切り込み隊長の効果発動! 手札から『コマンド・ナイト』を攻撃表示で特殊召喚だ!」

 

 コマンド・ナイト ATK1200

 

 最後に現れたのは、どこか中性的な見た目をした女騎士だった。……なるほど。ここでコマンド・ナイトか。このカードが場に居る限り、自分の戦士族モンスターの攻撃力は400アップする。全体の攻撃力を底上げする気か。

 

 コマンド・ナイト ATK1200→1600

 切り込み隊長 ATK1200→1600

 

「そしてこれがトドメの一枚! 俺は手札から装備魔法『団結の力』をコマンドナイトに装備。このカードを装備したモンスターの攻撃力・守備力は、自分フィールド上の表側表示モンスターの数×800アップする。俺の場の表側表示のモンスターは4体。よってコマンド・ナイトの攻撃力・守備力は、3200アップ!」

 

 コマンド・ナイト ATK1600→4800 DEF1900→5100

 

 仲間の力を得て、コマンド・ナイトの力が急激に増大する。

 

「出たっ! 取巻の十八番! モンスター効果でロックをかけながら、モンスターを強化して一気に押し込む」

「これはもう勝負は決まったな。……まあ最初から結果の見えてた勝負だったがな」

 

 取巻を含め、ブルー生徒達はもう戦勝ムードだ。確かに攻撃力5000近いモンスターに加え、効果により攻撃も出来ない。これなら余裕なのも頷ける。だが、まだ俺の場には、

 

「うんっ!? そういえばお前の場にはまだ伏せカードがあったな。大したことは出来ないと思うが……念には念だ。俺は手札から速攻魔法『サイクロン』を発動。お前の伏せカードを破壊する」

 

 取巻の最後の手札から放たれた突風が俺の伏せカードを吹き飛ばす。そこにあったのは『幻想体 3月27日のシェルター』。

 

「小癪な真似を。これで破壊を免れようって腹だったか。戦闘ダメージも0になるから、このターンは凌げるってわけだ。……だが、これでお前を守る伏せカードもなくなったな」

 

 取巻が嫌な感じで嗤う。これは自分の勝利を確信した嗤い。相手を踏みにじり、打ち砕くことの愉悦の笑み。

 

「バトルだ! 俺はコマンド・ナイトで大鳥に攻撃! ぶっ潰せっ!」

 

 女騎士は主人の言葉に従い大鳥を攻撃…………()()()()()

 

「……なんだ? おい。攻撃。攻撃だ! まさか……こんな時に故障か?」

「いや。デュエルディスクは正常に作動しているさ。コマンド・ナイトはただ効果で攻撃できないだけだ」

「何だと? 一体どういう……ひっ!?」

 

 そこでようやく取巻は気づく。いつの間にか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ソリッドビジョンとは言え森の密度は濃く、他のブルー生徒の姿すらまともに見えないほどだ。一応対戦相手である俺達は互いに見えているようだが。

 

「やっと気づいたか。勝ちを目の前にしたからって油断しすぎだな」

「何だこれは? 一体何が?」

「何がって、だからカードの効果だよ。お前がさっき不発と断じた深く暗い森の効果のな」

 

 深く暗い森の効果。それは、()()()()()()

 

「この森が展開している限り、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ああ。森の住人たる三鳥が味方に居ればその限りじゃないけどな」

 

 それは入った者を惑わす森。住民の協力がなければまともに進むこともできない難所。そして、

 

「ちぃっ! なら仕方ない。切り込み隊長で死んだ蝶の葬儀に攻撃を」

「それも出来ないな。大鳥の効果発動!」

 

 俺の号令と共に、大鳥の周囲が闇に包まれる。当然近くに居た葬儀さんの姿も闇に隠される。

 

「なっ!? 相手の姿が見えない!」

「大鳥の効果。相手の攻撃宣言時、その対象を大鳥に移し替えることができる。……さあ。森への侵入者はどうなるかな?」

 

 切り込み隊長は主人の指示で闇に突入するが、当然視界は悪くまともに相手は見えない。そこに、

 

 グルアアア! グシュアッ!

 

 一瞬の出来事だった。闇から突如現れた大鳥によって、切り込み隊長はその命脈を絶たれる。本人さえももしかしたら自分がやられたことに気づいていなかったかもしれない。

 

「ああ。一つ言い忘れていたが、深く暗い森の中では獣、鳥獣、獣戦士族以外のモンスターは攻撃宣言時、エンドフェイズまで攻撃力が600ダウンする。この森で侵入者がまともに動けると思うなよ」

 

 切り込み隊長 ATK1600→1000

 

 取巻 LP4000→2800

 

「ぐぅっ! ……くそ。仕方ない。俺はこれでターンエンドを」

「させるかよっ! 大鳥のもう一つの効果。大鳥が居る限り、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 大鳥は静かにランタンを掲げた。そこから放たれるのはユラユラと妖しく揺らめく光。それを見た取巻のモンスター達は、全て瞳を虚ろにして武器を構える。

 

「なっ!? ま、待てっ!」

「待つわけあるかっ! さあ。ここがお前達の死地だ!」

 

 大鳥の効果によって攻撃を強制される切り込み隊長達は、一人また一人と自分から大鳥の牙に飛び込んでいく。まるで燃え盛る火に飛び込んでいく蛾のように。

 

 取巻 LP2800→1600→400

 

「切り込み隊長が全滅したことで、コマンド・ナイトの装備した団結の力の効果も落ちる。……やっと手が届いたぞ」

 

 コマンド・ナイト ATK4800→2400

 

 仲間を喪い力を失った女騎士は、虚ろな瞳のままでふらふらと森の中へ突き進む。その手に持つ剣は頼りなく揺れ、攻撃したものと見なされて森の木々に絡めとられ、ツタに巻きつかれていく。

 

 コマンド・ナイト ATK2400→1800

 

 いつの間にか、コマンド・ナイトの前に大鳥が佇んでいた。コマンド・ナイトは力なく大鳥の持つランタンの前で棒立ちになり、大鳥はその様をじっと見つめながらゆっくりとそのクチバシを開き、

 

「やめ、やめろぉぉっ!!」

「…………トドメだ」

 

 ガブッッ!!

 

 カランと剣が落ちる音と共に、女騎士の姿は消え失せていた。あとに残るは森を脅かす者を排除した守護者と、散っていった騎士達の死を悼むかのように静かに胸に手を当てる哀悼者のみ。

 

 取巻 LP400→0

 

 

 

 デュエル終了。遊児WIN!

 

 

 

「やはり万丈目には及ばないな。……アイツなら例えもっと危機的状況だって、不敵な笑みを浮かべながら切り抜けてみせるだろうさ。それが俺の推しだ」

 

 俺はそう言って取巻に背を向け……一つ気が付いたことがあったのでついでに言っておくことにした。

 

 

 

「ああ。そう言えば、一つだけお前の言う通りだったよ。確かに()()()()()()()はこなかったな」

 




 勝利っ! なのですが、なんだか最後の方がやや悪役というかホラーチックになってしまった気がします。……考えてみたら幻想体って基本悪役でホラーでした。

 大鳥と森のカードの説明はまた次回ということで。揃うと結構凶悪な効果です。

 次回も明後日投稿予定です。

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