マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 さて、無事に勝負に勝った遊児ですが、ことはそう簡単に終わらないようで。


 それと今回もあとがきに登場した幻想体の情報を載せておきます。宜しければどうぞ。



 前話の大鳥と森の効果のタイミングにズレがあったため、テキストの効果を一部ダメージステップ時から攻撃宣言時に修正しました。読者の皆様にはご迷惑をおかけいたします。



代表決定戦と怪しい男 その四

 勝負がついたことで、さあっと音を立ててソリッドビジョンである深く暗い森が消え去る。出ていた葬儀さんと大鳥も姿を消し……いや。二体とも半透明の精霊状態になっただけでそこに居るな。

 

 取巻はがっくりと膝をついて項垂れている。……まああんなに自信満々だったのにこっちに1ダメージも与えられず(コストは払ったが)、自分のターンに2ターンキルを喰らったわけだから多少プライドに傷が付いたかもしれないな。

 

 だが勝負は勝負。おまけにそっちから吹っ掛けてきた上に友人を馬鹿にした分ということで甘んじて受けてもらおう。

 

「この勝負。しっかりと……まあソリッドビジョンの隙間からだったけど見させてもらったにゃ」

「大徳寺先生」

 

 草を踏みしめて大徳寺先生が歩いてくる。確かにさっきは視界が悪かったからな。立ち合いを頼んだというのにそれはまずかった。

 

「何とか勝てましたよ」

「そうかにゃ? 結構余裕がありそうだったんだけどにゃ。でも、これでブルーの生徒達も納得が」

「いいや納得いかないね」

 

 その声はもう一人の万丈目の取り巻きから発せられたものだった。そいつは項垂れていた取巻を押しのけて代わりにデュエルディスクを構える。

 

「途中から急に視界が悪くなって何も見えなくてな。だが、あの状況で圧倒的に優勢だったはずの取巻が負けるだなんて納得できないな。それはこいつらも同じことだ。……なぁ?」

 

 そいつが他のブルー生徒にそう呼びかけると、他の奴らも呼応するようにデュエルディスクを展開する。

 

「君達。今の勝負は確かにこの久城君が」

「先生。……どうやら話し合いで解決する問題じゃなさそうですよ」

「久城君」

 

 こいつらの何人かがニヤニヤ笑いを浮かべていることから、おそらく取巻が本当に負けたことは分かった上でこう言っている。つまりはいちゃもんを付けている訳だ。

 

 肝心の十代の前哨戦である俺に負けたとあってはブルー生徒の名折れ。なので多少無理やりにでも今の勝負を無かったことにしたい。考えているのは大体そんなところだろう。

 

 大徳寺先生という立会人がそう証言しているのにも関わらず強行するのなら、いざとなったらオシリスレッドの寮長だから贔屓をしたとでも言い出すのかもしれない。

 

 おまけに代表一人の話だったはずなのに、全員がデュエルディスクを構えてやる気満々ときたものだ。この調子だと次勝ってもまた何か言ってくるのは確実。

 

 

 

 まったく嘆かわしい。これで本当に万丈目やカイザーと同じくブルーを名乗れんのか? 

 

 

 

 俺は一歩前に進み出て再びデュエルディスクを構える。さっきの勝負はすぐに終わったので気力・体力は共に十分。……行けるな。

 

「良いだろう。そっちがその気ならとことんやってやる」

 

 話し合いをするつもりすらないというのなら。則るべきルールを破り、貫くべき最低限の筋をかなぐり捨て、それでもなお自分達の小さなプライドを守ろうと動くのなら。後に残るのはただの意地の張り合いだ。

 

「こっちはルールを違えるつもりはない。俺に勝った奴が明日の朝一番で十代に挑む。異論はないな?」

 

 相手が先にルールを破ったからと言って、こちらまでルールを破ることはない。俺がやるべきことは変わらず、ただこいつらと全力でぶつかるのみ。

 

 人数差? 関係ないね。俺の心を折りたいなら、ディーぐらいの奴と百連戦マラソンデュエルでもさせるんだな。……そうなったら流石に受けないけど。

 

「さあ。お前らの気が済むまで付き合ってやる。……かかってこいやこの野郎ぉぉっ!!」

 

 俺は勢いよくカードをドローした。

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 いやはや。凄まじいな。久城君の実力を見極めるべく、私の下に直訴しに来たブルーの生徒達をこれ幸いと久城君と戦うようそれとなく誘導してみたが。

 

「『幻想体 魔法少女 憎しみの女王』の効果発動! 相手モンスターを戦闘で破壊した時、カードを1枚ドローする。ドローしたカードが幻想体モンスターだったら再度攻撃できる。ドローっ! ……来たぜ! 俺が引いたのは『幻想体 幸せなテディ』。よってもう一度攻撃権を得る。ダイレクトアタックでトドメだっ!」

「ぐわああっ!?」

 

 彼らの戦いはもう二時間に及んでいた。ブルーの生徒達はもはや最後に残っていたプライドすら捨て、一度負けた者であっても再び挑んでは返り討ちにあっている。

 

「……はあ。次ぃっ! かかってこいっ!」

 

 普段の常に落ち着いたものとは少し違う口調。おそらくこちらの方が久城君の素なのだろう。荒々しくも力強く、それでいて相手の動きを読んでそれに対応する冷静さは損なわれていない。

 

 対して相手側にはもう半ば自棄になっている者もいる。息は荒く、心も乱れ、それはプレイングにも表れていた。平静であっても難しいのに、こうなってはいよいよ久城君に勝つことは困難だろう。

 

「これ以上は見なくても結果は決まったかにゃ」

 

 おっと。つい言葉が漏れてしまった。しかし一応立会人を任された以上、結果は読めているが見届けないわけにはいかない。

 

「『幻想体 三鳥 大鳥』でダイレクトアタックっ!」

「うわああっ!?」

 

 ほらまた一人。徹底的に叩きのめされ、もうあれは完全に戦意を失っている。まだ諦めようとしない……というより負けを受け入れられない生徒はあと僅か。じきにこの戦いも終わるだろう。

 

 やはり久城君は私の思った通りの逸材だった。

 

 同じく逸材である十代君と同様。カードの精霊を従え、強き精神と善良な魂、そして高いデュエルタクティクスを兼ね備えた者。

 

 この二人ならあるいは……()()()を。

 

「…………生。大徳寺先生?」

「ふにゃっ!? な、何かにゃ久城君?」

「まったく。いくら長いからって立会人がぼ~っとしないでくださいよ。……これで一応終わりのようです」

 

 その言葉に周囲を見渡すと、そこは死屍累々という言葉がぴったりだった。ブルーの生徒達は全員力なく立ち尽くすか倒れ伏すか、とにかくもう誰も戦意は残っていないようだ。

 

「何なんだ……何なんだよお前はっ!? エリートである俺達が……こんな」

 

 どうにか立ち直った取巻君が、まるで恐ろしいものでも見るかのように久城君を凝視する。まあ分からなくもない。

 

 結局久城君は一度たりとも負けることはなかった。無論負けそうになったことはあったし、長く戦って疲労の色も表情に濃く出ている。

 

 だがそのたった一人が凄まじい闘志でもって自分達をねじ伏せていったことは間違いなく、しかもそれが自分達が蔑んでいるオシリスレッドなのだから、もうブルーの生徒達からすれば悪夢以外の何物でもないだろう。

 

「ただのオシリスレッドの久城遊児だよ。……さあ。まだやるのか? お前達がオベリスクブルーのエリートとして、()()()()()()()として、こんなことをしている今の自分にまだ胸を張れるっていうのなら、ぶっ倒れるまでまた相手をしてやるよ」

「………………いや。もう良い」

 

 取巻君は小さく首を横に振った。

 

「そっか。では気が済んだのなら帰りな。こんな所で倒れてたら疲れも取れやしない。自分の部屋で休むこったね」

「……ああ」

 

 取巻君は最初に負けたためか少しだけ余力があり、倒れていた生徒に手を貸して一人ずつ起き上がらせていく。全員疲労困憊といった様子だが、この調子なら何とか寮に戻るぐらいは出来そうだ。

 

 生徒達は最後に久城君の方を見て、どこか怯えた様に一人、また一人とブルー寮の方に歩いて行った。その背中には、勢い込んでオシリスレッド寮に乗り込んできた時の自信はもう欠片も見当たらなかった。

 

「……一つ言って良いか?」

 

 最後に残っていた取巻君がその場を去ろうとした時、久城君がそう呼びかけた。取巻君はそのまま足を止めて力なく振り向く。

 

「万丈目は決して金やコネの力だけでのし上がってきた訳じゃない。お前ならそれは分かっている筈だろ? 万丈目とつるんで間近で見ていたお前なら」

「…………」

「それと引き分けた三沢が弱いなんてことはないし、十代も当然そうだ。ランクだけで全てが決まるんなら、なおのこと一番上のブルーはそういう実力のある奴らのことを認めるべきじゃないのかよ? ……俺の言いたいことはこれで終わりだ。呼び止めてすまなかったな」

「…………ちっ!」

 

 取巻君は小さく舌打ちをしながらまた振り向き、そのままよろよろとブルー寮へ帰っていった。……今の言葉が何かしら心に届けば良いのだが。仮にも私は教育者だ。未来ある若者達には、健やかに育ってほしいものだ。

 

 

 

 

「…………はぁ。疲れた」

 

 久城君は大きく息を吐くと、そのまま近くの木に寄りかかって座り込んだ。

 

「お疲れ様。今回はすまなかったにゃ」

「ホントですよ。もう本気でキツかったんですから」

「……それにしても大したもんだにゃ~! ブルーの生徒相手にあそこまでやれるなんてにゃ!」

 

 私が掛け値なしの称賛の声を上げると、久城君はゆっくりと首を横に振る。

 

「それは相手がはなっからこっちを格下だと考えて舐めていたからですよ。もしそういうの無しで全力で来てたら危なかった場面も何度かありました」

「いいや。それでもぼくは久城君が勝つと思っているにゃ。君の実力はそれだけのものにゃ」

「ありがとうございます。……さて、俺はもう少しここで休んでから戻りますから、大徳寺先生は先に帰っていてください」

「そうさせてもらうにゃ。久城君も早く帰るんにゃよ」

 

 今回の事で、久城君の実力がかなりはっきりしたのは大きな収穫だった。……しかし、まだ足りない。()()()()()()()()()……まだ。

 

 これからもこの二人には試練を課さなくてはならない。身も心も鍛え上げるための試練を。……私にはもう、あまり時間は残されていないのだから。

 

 

 

「あっ!? そういえば大徳寺先生! 一回どころかあんなに沢山戦ったわけだから、これはもう特別DPとか相当期待しちゃってもいいんですよね? それぐらいはこっちにもメリットがあってしかるべきですよね?」

 

 ……その前に申請作業が大変そうだなこれは。

 




 原作では何事もなく過ぎるこの一日ですが、考えてみたら絶対十代の選出に他の生徒から反発があったと思うんですよね。

 なので今作では、反発があったけど大徳寺先生辺りが抑えていた。しかし遊児が居ることから、彼を試すべく大徳寺先生が敢えて抑えずにそちらに誘導したという流れになっています。

 結構あの人暗躍してそうなんですよね。




 以降は幻想体の説明となります。


『幻想体 三鳥 大鳥』

 星6 ATK2200 DEF2200 鳥獣族 炎

 効果
 ①このカードの召喚、特殊召喚、リバース時、このカードにクリフォトカウンターを5個乗せる。
 ②このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードにPEカウンターを4個乗せる。
 ③フィールド上のモンスターが墓地に送られる度、このカードのクリフォトカウンターを1つ取り除く。
 ④相手の攻撃宣言時に発動可能。攻撃対象をこのカードに移し替えてダメージ計算を行う。
 ⑤相手バトルフェイズ時、このカードが場に居る限り、攻撃可能なモンスターは全て攻撃しなければならない。
 ⑥自分のターン終了時、このカードにクリフォトカウンターが乗っていない場合、このカードを破壊する。その後場のカードを1枚破壊し、そのコントローラーに1000ダメージを与える。

 深く暗い森の守護者にして三鳥の一羽。

 当初森に現れたとされる『怪物』から住人を守るべく巡回していたが、“『怪物』に惨たらしく殺される前に自分が安らかに死なせてあげた方が救いになる”という歪んだ思考に囚われ、やがて自らが『怪物』に成り果てる。

 葬儀と同じく善意から悪行を成す者。ただし精霊化したのがまだ『怪物』に成り果てる前のタイミングだったため、今は正しく森の守護者として行動している。

 『怪物』に堕ちるか守護者として踏み止まるかはこれからの遊児次第。



『深く暗い森』

 フィールド魔法

 効果
 ①互いのプレイヤーは自分の場の最も攻撃力の低いモンスターからしか攻撃宣言を行えない。
 ②獣、鳥獣、獣戦士族以外のモンスターの攻撃宣言時、エンドフェイズまで攻撃力が600ダウンする。
 ③自分の場に『幻想体 三鳥』が居る時、自分のターン中①、②の効果は無効となる。
 ④??????(『怪物』が出ている時のみ使用可能)

 三鳥が棲んでいた森。

 かつてそこは多くの命で満ちていたのだろう。しかしもうそこに居るのは、歪み果てて守るべき者を失った孤独な『怪物』ただ一羽のみ。

 今日もまた『怪物』は森を巡回する。殺して救うべきものを探して。




 次回は三日後投稿予定です。
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