マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 祝! 日間ランキング初めて載りました! ……すぐ消えたけど。

 まあ少しとはいえ載ったことでUAも急上昇。なんと累計10万UAの大台に乗ることが出来ました。

 これも読者の皆様のおかげです。これからもちょこちょこ書いていきますので、皆様の暇つぶしになれば幸いです。


代表決定戦と怪しい男 その五

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「…………よし。行くか」

 

 困り顔で帰路につく大徳寺先生を見送ると、俺は少し休んでマシになった身体を無理やり起こす。

 

『おやおや。もう行くのかい? もっとのんびりしていけば良いのに』

「十代達のことも気になるしな。ああは言ったけど、十代は良いがむしろ翔辺りが緊張して当日寝不足で遅刻するなんてことありそうだ。さっさと戻って確認する。……ところで、今までどこ行ってたんだディー?」

『いやまあ、さっきまでの久城君はちょっと近寄り難かったからね。落ち着くまで様子見を』

 

 いつもなら途中で茶々を入れてくるディーなのに、今回は今頃になってやってきた。……そんなに怖かったかな?

 

『それはもう。流石の僕もおちょくるのに気合が要るレベルだったね』

「だからナチュラルに考えを読むなっての! ……言っとくけど別に本気でアイツらに怒っちゃいなかったからな。割とムカッとしただけで」

『あれで本気じゃなかったんだね。……分かった。本気で怒ったら次は僕も覚悟を決めておちょくりに行くよ!』

「だからそもそもそれを止めろって……何だ?」

 

 そこをグイグイと誰かに袖を引っ張られた。見ると、大鳥がクチバシを器用に使って袖を引いている。罪善さんといい大鳥といい喋れない幻想体は皆こうなのか?

 

「どうした大鳥……っておわっ!?」

 

 急に腕を取って上に放り投げられ、そのまま大鳥の背中に落下する。……やっぱちょっとゴワゴワするな。乗せてくれるのは良いけどせめて鞍的な何かが欲しい……って実体化してる!?

 

 グルルルル。

 

『管理人よ。どうやら大鳥がまた森にて何かを察知したらしい。良くないモノのみなら単騎で向かう所を君を乗せたということは』

「何かあるってことだよな」

 

 俺の返事に葬儀さんが静かに頷く。せめて俺も大鳥の言葉のニュアンスくらいは掴めるようになりたいよ。

 

「……はあ。明日に備えて早く寝たいってのにもう」

『そうブツクサ言いながらも行く気満々じゃないか。素直じゃないねぇ』

「わざわざ大鳥が俺を連れて行こうとするくらいだからな。その分くらいは付き合おうってだけだ。……さあ。行こうか」

 

 そう一声かけると、大鳥はまた軽く鳴いて俺を乗せたまま森へ歩き出す。ディーや葬儀さんも一緒だ。頼むから簡単な件であってくれよ!

 

 

 

 

 ズシン。ズシンと大鳥の足音が夜の静寂を破っていく。あ~。これマズったかも。確かに大鳥に乗った方が俺が走るより断然早いし夜の森の中でも安全だけど、音が出るから意外に隠密には向かない。

 

 大鳥の暗闇を展開すれば音もある程度遮断できるみたいだけど、そうすると何でもかんでも吸い寄せかねないからな。うっかり森に入った無関係の人が吸い寄せられでもしたら大変だ。

 

 というかそれを大鳥がしない時点で、少なくとも良くないモノ系統ではない。それだったら速攻で暗闇を展開してそれを一網打尽にしてる。じゃあ一体何が。

 

 グルァっ!

 

『およっ! どうやらこの近くみたいだね』

 

 森の草木をかき分けて突き進んでいた大鳥が急に速度を落とし、それに気づいたディーが声をかける。

 

「おわっと!? 急に降ろさないでくれよ! ……で? どこだここ?」

『ふむ。どうやら管理人にとってまたもや来たくない場所のようだぞ』

「来たくないって……またここかよっ!」

 

 葬儀さんの言葉に周りを見渡すと、森を抜けた少し先に見えるのはもう三度目になる特待生寮の姿。……もう来たくなかったよ。なんでここ来る度に面倒ごとがあるんだよっ!

 

『久城君。こっちこっち。なにやら面白ゲフンゲフン……厄介なことになっているみたいだよ』

 

 ディーがふよふよと近くの茂みに隠れながらこっちを呼ぶ。……今面白そうって言わなかったか?  まあ良い。大鳥と葬儀さんがスッと精霊化するのを確認し、そっと俺も茂みに隠れて外を窺う。

 

 そこからは丁度特待生寮の入り口が見えた。以前見た立ち入り禁止の看板と鎖が、風に揺られてユラユラと揺れている。そして、

 

「あれは……明日香? それと誰かもう一人いるな。……誰だ?」

 

 大鳥のランタンが消えて夜の闇に包まれているが、少しずつこっちも目が慣れてきた。どうにか見えてきたのは門の前に立つ明日香ともう一人。そちらは立ち姿から男のようだが、こちらに背を向けているので顔が見えない。

 

『おや~っ!? もしかしてこんな場所で深夜の密会? 良いねぇ青春だねぇ!』

「もしそうなら邪魔したくはないけど、場所が場所だしな」

 

 明らかに楽しんでいる様子のディーがアレだが、こっちとしても人の恋路を邪魔するような野暮なことはしたくない。しかしここは良くないモノが時折湧き出る危険地帯。ちょっと様子を見て長引くようであれば注意するか。

 

 俺はそのまま二人の会話を聴き取るべく耳をそばだてる。……これは必要なことだからだ。けっして野次馬根性からではないからね。そして聞こえてきたのは、

 

「ここで、何人もの生徒が行方不明になってるんだってね? 君はその居なくなった生徒と関係が?」

 

 うんっ!? どっかで聞いたことがある声だ。あと行方不明って……。

 

「そんなことを聞いてどうするの?」

「いやあ。ちょっと興味があってね」

「余計なことしないで」

 

 明日香の機嫌は明らかに悪そうだ。表情は険しく、相手を咎めるように睨みつけている。

 

「関係無い人にかき回されては迷惑なの。さっさと自分の寮にお帰りなさい」

 

 そう言い残して、明日香はその場を去っていった。……これってどう聴いてもカップルとかそういう類の会話じゃないよな。

 

「お~怖っ! ……ここで諦めてたまるかよ。せっかく良い金になる特ダネなんだから」

 

 男は軽く鼻を鳴らしてそう呟くと、懐からカメラらしき物を取り出してパシャパシャと寮を撮影し始める。……仕方ない。行くとするか。

 

 敢えて隠さずにガサガサと音を立てると、男は音に反応してこちらを向く。

 

「だ、誰だっ!?」

「……どうも。こんな夜更けですが良い天気ですね。月も出てるし星も良く見える。そうは思いませんか()()()()

 

 

 

 

 堂々と俺が出ていくとその男、国崎さんはこちらを見て驚いているようだった。ちなみにディーは空気を読んで茂みに隠れたままだ。見えないとは思うが念のためな。

 

「お前は……確か久城だったか?」

「はい。その久城です。そちらは夜の散歩ですか?」

「あ、ああ。そうなんだ。眠れなくてちょっと」

「ちょっと()()()()()()()?」

 

 その言葉に国崎さんは片手に持っていたカメラを咄嗟に背中に隠す。今さら隠さなくても。

 

「まあ薄々勘づいてましたけど。国崎さんここの生徒じゃないでしょ? ここに何年も居る友人に話を聞いたけど見たことが無いらしいし、そのカメラ……プロ仕様の高級品ですよね? 普通の学生が持つにしては本格的すぎるし、趣味にしてもそんな金持ちには見えない」

 

 カメラのことは正直根拠はない。こんな暗い中でじっくり見れないしな。だけどカマをかけたらどうやら当たっていたようで狼狽える国崎さん。

 

「いや……これは、その」

「となるとあと考えられるのは、どこぞのスパイか……ジャーナリスト」

 

 おっ! ジャーナリストでちょこっと反応があったな。OK。スパイとかだったらちょっと物騒なことになるかと思ったが、まだそれなら話し合いが出来そうだ。

 

「…………そうだ。俺はこの学園の外から来た。この学園で多くの行方不明者が出ているという噂を聞いてな。その噂の真偽を確かめに来たんだ」

「なるほど。ジャーナリストにとって噂は飯のタネ。それが金になると踏めば何処へでも行くってことですか」

「そういうことだ。……どうする? 俺の事を学園側に報告するか?」

 

 国崎さんはこちらを油断なく見据える。答えによってはそのまま逃げだすかもしれないし、場合によってはこっちの口を封じようとするかもしれない。……まあ後者は最悪の場合だけどな。そちらを選ぶようならこっちも反撃はするが。だけど、

 

「いいえ。特に報告する気はありませんよ。写真撮影も止めはしないのでご自由に」

「……報告しないのか?」

「やり方は知らないけど、せっかく乗り込んできたんですから噂の真偽を確かめるくらいなら別に。まあさっきの明日香みたいに、下手に首を突っ込むと嫌な気分になる人もいるのでやりすぎは避けてほしいですが」

 

 これに関してはこっちは首を突っ込むつもりはない。特待生寮の情報が手に入るようであれば協力するという手もあるけど、いくらなんでも来たばかりの人がそう簡単に分かるとは思えないしな。

 

 ジャーナリストということで調べた事実を公表する可能性もあるにはあるが……そこはどうせ学園側もセキュリティーがしっかりしている筈だ。少なくとも情報の隠蔽が出来る何者かが居ることは確かみたいだしな。

 

 ならこちらからはやりすぎないよう釘を刺す程度で十分。あとは勝手に調べ物をして勝手に帰るだろう。……そうだ!

 

「国崎さんがいつまでこの島に滞在するのかは知りませんが、出来れば明日の十代の代表決定戦は見ておいた方が良いと思いますよ。多分一見の価値ありです。……じゃ! 俺は明日に備えてもう戻って寝ます。お休みなさい」

「……ああ。お休み」

 

 俺はそう言い残して特待生寮を後にした。国崎さんは……どうやら着いてきていないみたいだな。こっそり流れを見守っていたディーが、ひゅっと俺の横に飛んでくる。

 

『お疲れ様~! ちょっと僕としては報告しないと言ったのは意外だったかな』

「そんなに意外か? 言うまでもないってだけさ。……それに、一応同じ釜の飯を食った仲だろ。あんまり突き出したりとかはしたくない」

『君って結構そういう所あるよね。なんだかんだ仲間意識を持つと甘いというか面倒見が良いというか』

 

 ただほっとくのも気になるってだけだよと返しながら、俺は歩きながら横で精霊化して着いてきている大鳥に呼び掛ける。

 

「大鳥。すまないけど、さっきの国崎さんが森を出るまで見守ってあげてくれないか。場所が場所だし、何か出てこないとも限らない。その後は休むも次の巡回に行くも自由だから」

 

 グルっ!

 

 そのまま大鳥は姿を消した。国崎さんの傍に張り付きに行ったのだろう。こっちは他の幻想体達が居るし付き添いは十分だ。

 

『やっぱり甘いじゃないか! わざわざ乗せて行ってもらう予定の大鳥に頼むなんて』

「ほっとけよ。ちょっとうっかりして忘れてたんだよ! ……ふわ~ぁ。今度こそ部屋に戻ってぐっすり寝てやるからな」

『フッフッフ。大欠伸だね。それじゃあここは一つ、君が寝る前に横で眠れなくなるほど怖い話を』

「…………」

『分かった分かったって! やらないよ! やらないからその顔止めて~!』

 

 そうして何とか俺はオシリスレッド寮に辿り着き、十代達がちゃんと寝ていることを確認して部屋に戻り、ベッドに飛び込んですぐに意識を失った。

 

 

 

 

 いよいよ代表決定戦が始まる。

 




 国崎さん割と嫌いじゃないんですよね。

 ウェットスーツにボンベを準備して海中から乗り込んでくる衝撃的な登場のくせして、現地での制服を準備してなくて仕方なくオシリスレッドの制服を無断借用するうっかりとか。

 原作では出演はこの話のみですが、こっちではもう少し出張ってもらう予定です。あんまり多くはないですが。

 次回は二日後予定です。

最初にこの作品を読む時、原作である遊戯王とロボトミーコーポレーションのどちらを目当てにしましたか?

  • 遊戯王目当て
  • ロボトミーコーポレーション目当て
  • どちらも目当て
  • どちらも知らなかった
  • むしろ作者目当て

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