マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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代表決定戦と怪しい男 その六

 

「シニョール。シニョーラ。お待たせしたノ~ネ! 只今から、学園代表決定デュエルを始めるノ~ネ!」

 

 司会進行役としてクロノス先生が、特設リングの中央にてそう宣言する。ポーズまで決めてノリノリだ。

 

「ラーイエローからは三沢大地。……そしてオシリスレッドからは、遊城十代っと」

 

 ちょっと先生! いくら嫌いだからって十代の方を適当に言わないでくれよ。

 

「その顔だと、出来たのか?」

「ああ。楽しみにしていろ。お前を倒す七番目のデッキを」

「俺だって負けないぜ!」

 

 そして戦う当の二人は、互いにもう闘志満々と言ったところ。やる気がないよりは大いに結構だ。

 

「アニキ~! 頑張って~!」

「きばれ~十代!」

「二人とも頑張れよ~!」

 

 ちなみに俺と翔、隼人は観客席にて応援だ。観客席は満杯とまでは言わないがかなり盛況。やはり学園の代表を決める戦いとなると皆関心があるらしい。

 

「もう久城君ってば。ここはアニキの応援をしてよ」

「だって三沢も知らない仲じゃないしな。以前食事をご馳走になったこともあるし、なので両方応援だ」

「遊児らしいんだな。……それにしても、国崎さんどこ行ったんだろうな?」

 

 そう。昨日の夜を最後に、国崎さんは姿を消していた。俺を警戒しているということはないだろうが、どうせなら朝食でも食べていけばよかったのにな。

 

「おっと。そろそろ始まるみたいだぞ!」

 

 二人がデュエルディスクを構える。いよいよだ。俺の見立てでは二人の実力は大差なし。ただ十代には持ち前の強運と主人公補正が。三沢には十代のデータを研究してきたという強みがある。さてどうなることやら。

 

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 遊城十代対三沢大地

 

 

 

 始まりは三沢がモンスター一体を召喚するだけで終わるという静かな滑り出し。そこからは互いにモンスターとライフの削りあいに突入したのだが、

 

「魔法カード『ボンディング-H2O』を発動! ウォーター・ドラゴンを特殊召喚!」

 

 三沢がオキシゲドンと二体のハイドロゲドンを生け贄に、エースモンスターであるウォーター・ドラゴンを出して場にプレッシャーを与えたことにより、一気に流れが動き出す。

 

「流石だな。だけどまだこれからだ。お前が三体のモンスターを生け贄にエースモンスターを呼んだのなら、俺もお前の全力に応えてやるぜ!」

 

 この展開。おそらく十代は手札に融合でも握ってるな。ここで十八番の融合を決めてまた戦局をひっくり返そうって所か。

 

 アニメならここで反撃のBGMでも流れる所だろう。だが、気になるのは三沢の伏せているカード。

 

「魔法カード『融合』発動! 場のスパークマン。そして手札のフェザーマン、バブルマンを融合させ、テンペスターを召喚するぜ!」

「その時を待っていたぞ! 罠カードオープン。『封魔の呪印』! このカードは、手札から一枚魔法カードを捨てることで発動。相手の魔法カードを無効にし破壊する!」

 

 これにより融合は無効となり、ウォーター・ドラゴンにぶつけるはずだったテンペスターは不発に終わる。

 

 なるほど。これが三沢の十代対策か。融合回収などで融合を手札に戻しても、封魔の呪印の効果でもう融合のカードはこのデュエル中使えない。

 

 十代のデッキの要は融合。個々のモンスターを対処するよりも、根本の融合召喚自体を防いだ方が早いと判断したわけか。

 

「そんな。アニキの融合コンボが破られるなんて」

 

 これはかなり厳しい戦いになってきたな。さあどうする十代?

 

 

 

「どうだ? お前に対抗するために構築した俺の七番目のデッキは?」

「ああ。これ以上ないくらい楽しいぜ。そこまで考えてくれたデッキを、どうやって打ち破ろうかと思うと、ワクワクする!」

 

 流石十代。こんな逆境に立たされても怯むどころかむしろ楽しんでる。そしてその言葉は決してハッタリなどではなかった。

 

「俺のHEROが融合だけだと思ったら大間違いだぜ。HEROの真の力は、魔法・罠・モンスターの全ての連携から繰り出される多彩なコンボにある」

 

 その言葉通り、十代はバブルマンの召喚による二枚ドローを皮切りに、融合無しでもウォーター・ドラゴンに食い下がっていく。そんな中、

 

 あれは……国崎さんか。

 

 デュエルの最中チラリと他の席に目を向けると、席の片隅に国崎さんが居るのが見えた。その身体は立ち上がって今にも帰りそうなのに、その視線は十代の戦いをじっと見つめている。

 

「……翔、隼人。スマン。俺ちょっと席を外す」

「えっ! 今良い所なのに? ……早く戻っておいでよ」

 

 なんだろうな。少しだけ国崎さんのことが気になった。なので俺は少し席を外し、国崎さんの方に移動する。後ろから近づくと、国崎さんは何か葛藤しているようだった。

 

「……いや。こんな事してる場合じゃねえだろ。早くこの特ダネを持って」

「こんにちは」

「わっ!?」

 

 普通に話しかけただけなのに、国崎さんはポケットに咄嗟に手をやりながら驚いた。……この様子だと何か情報を掴んだかな? これは学園のセキュリティが甘いというべきか、この人の腕が良いというべきか。

 

「な、なんだお前か」

「なんだは無いでしょうに。来てくれたんですね」

「……まあな。ちょっとした気まぐれだよ」

 

 国崎さんは気まずそうに顔を逸らしながらも、視線は相変わらずデュエルに向いたままだ。素直じゃないな。

 

「たかがデュエルに……なに熱くなってんだか」

 

 どこか冷めた様子で、それでいてほんの少し苦みと寂しさを漂わせる顔でそう言う国崎さん。この顔を俺は知っている。

 

 俺がまだ子供の頃、同じような顔をした人が居た。その人は毎週ショップの大会に出るくらい熱心なプレイヤーだったが、その顔を見た数日後からぱったりとショップに顔を出さなくなった。

 

 噂によると、その人は大会には出るもののほとんど勝つことが出来ず、それが嫌になって止めたのではないかということだ。

 

 結局本当の理由は分からない。噂通り勝てないことが嫌になったのかもしれないし、引っ越しか何かをしたのかもしれない。単に飽きただけなのかもしれないし、それ以外の理由なのかも。でも、あのどこか寂しそうな顔は忘れられない。

 

「たかが……ですか。確かにそうかもしれませんね」

 

 実際この世界はデュエルがとても盛んだ。しかしそれだけで食っていけるいわゆるプロと言われる人はそう多くない。

 

 この学校の生徒とて、卒業後全てがその道に行けるわけではない。おそらくなれるのはほんの一握りの人のみ。それ以外は夢破れ、何か別の道を行くのだろう。

 

 そういう意味ではデュエルに熱くなるというのは、国崎さんにとっては将来性のあまり感じられないことなのかもしれない。でも、

 

「でも、少なくともアイツらはどこまでも真剣に取り組んでいます。この一戦一戦を全力で楽しんで、全力で勝利のために手を模索しています。今だって」

「バカな! 勝っている三沢はともかく、こんな大一番で負けそうな十代がそんなわけないだろう! 楽しんで見えるのだってただの空元気さ。内心もう諦める寸前に決まってる」

「……それはどうでしょうか?」

 

 諦める? それこそ十代に一番似合わない言葉だな。まあ百聞は一見に如かず。この戦いを見守るとしようか。

 

 

 

 

「フィールド魔法『スカイスクレイパー』!」

 

 出たっ! E・HEROが自分より強い相手と戦闘する時、攻撃力が1000アップするというパワーカード! 元の世界ではHEROから攻撃した時のみだったのに、こっちでは相手からの攻撃でも発動する厄介なカードになっている。

 

「…………」

 

 国崎さんはこの瞬間、スカイスクレイパーを見て何か考えているようだった。昨日部屋でも見ていたし、もしかしたら思い入れがあるのかもしれない。

 

 十代はこれによって強化したエッジマンでウォーター・ドラゴンを撃破! しかし三沢もただではやられず、味方が破壊された時に使える罠『ラスト・マグネット』をエッジマンに装備させて攻撃力をダウンさせる。そして、

 

「俺のターン! 俺は手札から儀式魔法『リトマスの死儀式』を発動! 『リトマスの死の剣士』を儀式召喚する!」

 

 これこそ三沢の七番目のデッキのもう一体のエース。このカードは攻撃力0だが、戦闘破壊出来ず罠も受け付けない厄介なモンスター。そして場に罠がある限り、攻撃力が3000となる。

 

 ラスト・マグネットがあることで死の剣士は攻撃力が上がり、逆に攻撃力の下がったエッジマンではスカイスクレイパーの援護をもってしても届かず撃破され、

 

「そして手札から魔法カード『巨竜の羽ばたき』発動!」

 

 おまけとばかりに三沢は場の魔法・罠を一掃するカードを発動! その後カードを一枚伏せてターンを終了する。

 

「さ、流石に十代に打つ手はないだろ。もう諦めるよな?」

 

 国崎さんがそう漏らすのも不思議じゃない。三沢のターンで十代の場はがら空き。おまけに手札もたった一枚ときた。対して三沢はLPこそもう500を切っているが、罠さえあれば攻撃力が3000まで跳ね上がるリトマスの死の剣士が残っている。

 

 おそらくあの伏せカードはこの流れだと罠カード。十代がモンスターを出したとしても、リトマスの死の剣士を強化して返り討ちにするという腹積もりだろう。

 

 まさしく絶体絶命大ピンチ。常人なら顔がこわばり絶望の影が差すだろう。だが、

 

「楽しいな三沢。こんなワクワクするデュエルはないぜ!」

「アイツ……笑ってやがる」

 

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「俺の全力を傾けた七番目のデッキだ。お前も全てを賭けてこいっ!」

「おうっ! 俺の全てを賭けて……ドローっ!」

 

 その後十代は怒涛の追い上げを見せた。リトマスの死の剣士は戦闘で倒せないモンスター。だが、その特性上どうしても場に罠がなくてはならない。そこを突き、『ワイルドマン』と『サイクロンブーメラン』のコンボを発動!

 

 自分がダメージを受けることを覚悟の上で攻撃を仕掛け、効果により場の魔法・罠を全て破壊。効果ダメージを与えることでギリギリ三沢のライフを削り切ったのだ。

 

 

 デュエル終了。十代WIN!

 

 

「やった! 良いぞ十代! アイツ勝ちやがった!」

 

 国崎さんの喜びようは凄いものだった。拳を握りしめ、大きくガッツポーズを決める様は、とてもさっきたかがデュエルなどと言い放った人とは思えない。

 

「へぇ~大した喜びようですね。さっきまであんなこと言ってたのに」

「うぐっ! そ、それはだな」

「気まぐれで見たたかがデュエルで? そういえば昨日はデュエルなんて好きじゃないとかも言ってましたよねぇ?」

 

 俺はニヤニヤと笑いながら国崎さんを追い込む。……ヤバい。これ結構楽しい。ディーが俺をおちょくる気持ちが少しだけ分かるな。

 

「ぐっ……分かった! 分かったって! ……負けたよ。悪かった。アイツらがあんなに熱くなれるデュエルを貶して」

 

 そう言うと、国崎さんはどこか憑き物が落ちたような落ち着いた表情で俺に頭を下げた。

 

 よく分からないが、今のデュエルを見て国崎さんの中でも何かしら思う所があったのだろう。まあさっきまでの顔よりかはマシになったから良かった。

 

 さてと。じゃあそろそろ十代のお祝いに行くとするか!

 





 代表決定戦決着です! 次回は今回の事の顛末と、ちょこっとだけこれからの伏線を張っていこうと思います。

 次回は三日後投稿予定です。

最初にこの作品を読む時、原作である遊戯王とロボトミーコーポレーションのどちらを目当てにしましたか?

  • 遊戯王目当て
  • ロボトミーコーポレーション目当て
  • どちらも目当て
  • どちらも知らなかった
  • むしろ作者目当て
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