マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
予想以上のアンケートの票に正直驚いています。
……ネタで入れた作者推しが居たのにはビビりました。私本気にしちゃいますよ!
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「ったく。あの遊城十代が、我が校の代表だナン~テ。あり得ないノ~ネ」
クロノス教諭は自身の気に入らないことが起きつつある状況に憤慨していた。
先日の学園代表決定戦。生粋のエリート第一主義である彼は、本音を言えば優秀とは言えイエローの生徒である三沢を推薦したくはなかった。
しかしブルーは二、三年生ならいざ知らず、今年の一年生はいささか不作と言って良い者達ばかり。確かに全体的に優秀ではあるが、イマイチあのにっくきドロップアウトボーイに対抗出来る者が居ない。
あるいは、ランク入れ替え戦の際にどこか吹っ切れたようだった万丈目なら心置きなく推薦できたのだが、肝心のその万丈目は無断で島を出て現在半ば退学扱い。これではどうしようもない。
仕方なく苦渋の選択で、じきにブルーへ昇格する可能性が高いと自らを納得させて三沢を推薦したものの、それも十代に敗れてしまった。
「ホントに決まってしまっタ~ノ? ノンノンノンノン! まだ
クロノス教諭はその奥の手である生徒を連れにある場所へ向かっていた。
その生徒の名は茂木もけ夫。数年前はブルーの生徒の中でも群を抜いて優秀な生徒だったが、ある時を境に彼の周りで不思議なことが起き始めた。
何故か彼とデュエルをした生徒が次々にやる気、あるいは闘志と言っても良いがそれを失い、遂には学園を辞める者まで出始めたのだ。
この異常事態に学園側も調査を開始するが、しかし根本的な原因は結局解明できなかった。彼の所持しているカードの精霊の力などと言う眉唾な話まで飛び交う始末だが、クロノス教諭はもちろんそんなオカルトは信じていない。
ただ、茂木のその力は彼に近寄らなければ発動せず、また特殊な防護服を身に付ければ防ぐことも出来た。なので学園側は茂木の力を研究するとともに、他の生徒とは別の専用寮を建ててそこに隔離していた。
クロノスはその茂木の力に目を付けた。茂木を十代と戦わせるように仕向けようと考えていたのだ。デュエル中に十代がやる気をなくせば、それを口実に代表をまた改めて決める口実になる。
「私にこの手を使わせるだナン~テ。すべてあのドロップアウトボーイのせいなノ~ネ」
ただし、出来れば使いたくない奥の手であったことは事実。いくつか理由があるが、その一つは下手をすれば周囲に被害が拡大する可能性があるため。なので使いたくない奥の手ではあったが、ことこうなってしまっては仕方がない。
そうしてブツクサ言いつつクロノス教諭は茂木の寮の入り口が隠されている場所に向かった。だが、
「しかし、なんで入り口がこんな所にあるノ~ネ?」
これが使いたくなかった二つ目の理由。なんと入り口が、学園内で飼われている鶏小屋に隠されているのだから厄介だ。
これでも貴族の流れを汲むメディチ家の人間が、何が悲しくて鶏小屋なんぞに乗り込まなければならないのか。おまけにそこの鶏達は気性が荒く、以前ここに来た時には襲い掛かってきた。中でも黄金の卵を産む金色の鶏は特に厄介だ。頭を重点的に狙ってくるし。
それもこれもやっぱりあのドロップアウトボーイのせいだと筋違いの怒りを沸々と滾らせながら、クロノス教諭は鶏小屋の中に入る。すると、
「「「コケ?」」」
一斉に中で思い思いに動いていた鶏達が、闖入者であるクロノス教諭の方をじっと見る。そして一拍の後に、
「「「コケェ~!!!」」」
黄金の毛並みの鶏の合図とともに、鶏達は一斉に突撃を開始する。
「痛っ! 痛い! 頭だけはやめテ~ノっ!」
執拗に何故か頭頂部を突きまくる鶏達に追い回されながら、何とか隠された入り口を開けるクロノス教諭。なおも纏わりついてくる鶏を一羽一羽外に放り出してから、どうにか扉を閉めてホッと一息吐く。
ちなみにここは正確には入り口ではなくその一つ手前。茂木と会うための準備をするための場所だ。
「ああもぅ。帰りもあの鶏達に襲われるかと思うとたまったもんじゃないノ~ネ。……おっ! これナノ~ネ!」
クロノス教諭はその部屋に置かれていた防護服を一着手に取り素早く身に付ける。これなしで会えば、それだけで下手をすると茂木の力の影響を受けかねない。
「さて、では……んなっ!?」
コツコツ。コツコツ。
まるで宇宙服のような姿になったクロノス教諭だが、頭を覆う透明な強化プラスチックをコツコツと何かが突く音に顔をしかめる。まださっきの鶏どもが残っていたか? だが一羽くらいなら返り討ちにするノ~ネ。そう思ってそれを見ると、
「……なんなノ~ネこれは?」
手に乗るサイズでつぶらな瞳の白い小鳥。何故か腹部だけ血のような赤い模様をしているが、それ以外はいたって可愛らしい小鳥だ。明らかに鶏ではない。
「どこかで見たことがあるような無いような……まあ良いでしょう。今は構っている暇ないノ~ネ」
さっきからずっと突き倒しているが、この強化プラスチックはそんな程度で砕けるようなものではない。なんで鶏小屋にこんなものが紛れ込んでいたかは知らないが、今は放っておいても良いだろう。
クロノス教諭はそのままずんずんと進んでいった。この先に眠る災厄を引っ張り出すために。
それを小鳥はパタパタと音を立てながら着いて行った。この罪人に罰を与えるために。
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「う~ん。どうしよう。こいつを入れるならこいつは要らないし、こいつを入れたら……」
間近に迫った学園対抗戦に向け、十代も教室で自分のデッキをもう一度組み直していた……のだけど、
「ここはウォータードラゴンを入れよう。炎属性には圧倒的に有利だ」
「エトワール・サイバーも入れるべきよ! 直接攻撃の破壊力が違うわ」
「デス・コアラも良いんだなあ!」
「あのぉ。僕のパワーボンドも」
「ああもうっ! うるさいうるさいっ!」
横から事あるごとに皆して自分のおススメをぶっこもうとしてくるので、流石の十代も辟易していた。
「ハハっ! モテモテだな十代!」
「そんなこと言ってる場合かよっ! もう邪魔すんなって」
「何も邪魔している訳じゃない。今度のデュエルは学園の名誉を賭けた戦い。俺達も一緒に戦うつもりで言ってるんだ」
苛立つ十代に対し、三沢は大真面目にそう返す。なるほど。その言葉はもっともだ。学園対抗戦となれば、代表選手こそ一人だがそのバックアップなども含めて皆で戦うっていうのは筋が通ってる。……ただ、
「冗談じゃない。学園のためなんかにデュエルするかよ。俺は楽しむためにやってるんだ」
「……まあ十代ならその方が良いかもな。むしろ下手にそういう重圧をかけた方がマズいんじゃないか?」
「おおっ! 分かってくれたか! 流石遊児だ」
十代がなんか喜んでいるが、これは単に俺個人の意見ってだけだからな。むしろ何か背負っている奴の方が強くなる場合もある。十代の場合は自由にさせた方が良いってだけの話だ。
「……って、そういう遊児は何してるんだ?」
「うん? ああ。今お前のデッキに合った幻想体のカードをリストアップしてるんだ。せっかくだから俺のもついでに二、三枚くらい入れてもらおうかなあ~! ……な~んて」
「げっ!? お前もかよっ!? これじゃあ落ち着いてデッキも組めないよっ!」
冗談だと言おうとしたのに、十代は遂にこの場からダッシュで逃げ出してしまった。まったく話は最後まで聞けっての!
それを追って走り出す翔達。手に手にカードを持っていることからまだ諦めていないらしい。……やれやれ。適当にデッキに入れたって、相性が悪ければむしろ戦力ダウンしかねないってのに。
「どうしたもんかねぇ。俺もこのバカ騒ぎに加わるべきか、ここはさっさと寮に戻るべきか」
個人的にはバカ騒ぎに加わりたい。なんだかんだ楽しそうだしな。だけどこの調子だと、下手したら十代がデッキを組めずに寮に帰ってくるなんてこともあり得る。
おそらくこの学園対抗戦はアニメで言うならちょっとした山場だ。この前の三沢との一件も踏まえて、おそらく一連のシリーズか何かだと思う。そんな大事の時にまともにデッキが組めないとあってはシャレにならん。
まあそこまでのことにはならないと思うが、俺が居ることによる影響が全く出ないとは限らないしな。
「……よし。じゃあここはさっさと部屋に」
『お~い久城君! ちょっと問題発生だよ!』
俺が寮に戻ろうと荷物を纏めた時、全然深刻そうじゃない口調でディーがふよふよと飛んできた。
「……もうこの流れは分かってるからな。どうせまた俺が居ない間に幻想体がまた精霊化したんだろ?」
『流石に慣れてきたね。まあぶっちゃけるとそうなんだけどさ』
ディーがどこかつまらなさそうな声で言う。こいつは俺をおちょくるのが趣味みたいな奴だからな。だがこっちもこれまで伊達に何回も驚かされている訳ではない。
「それで? 出てきたのは誰だ? この前大鳥が出てきたばっかりだからそうものすごいのは出てこないと思うが」
『うん。それなんだけど』
そこで少し間をおいて、ディーはとんでもないことを言い出した。
『出てきたのは
……なんで二体同時なんだよコンチキショウっ!
『あと二体とも悪や罪に反応する性質があってね。精霊化するなりふらっとどこかへ行っちゃってさ。今頃この学園の悪い人の所に向かっているんじゃないかな?』
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「ムッフフフ。これであのドロップアウトボーイともおさらばナノ~ネ!」
首尾よく茂木の興味を引き、十代がよく来るお気に入りの場所である本棟の屋上にて待ち構えさせることに成功したクロノス教諭。
あとはどうやって上手く鉢合わせさせようか考えていたところ、丁度向こうからやってきたので茂木がデュエルを申し込む。
自分の考えた筋書き通りに進んでいるのを陰から見てほくそ笑むクロノス教諭。そのクロノス教諭に罰を与えるべく、強化プラスチック越しに突っつき続けている小鳥こと罰鳥。
そして、
白い包帯のような何かでグルグルと覆い、両側面からは先だけ赤い白い羽が伸びている頭部。今にもぽっきりと折れそうな細い首。不気味なほどに痩せこけたダチョウのような身体。
目の前のモノが罪人か、そうでないか。それだけを確かめるべく、天秤を持つ三鳥の一羽は佇んでいた。
すでに天秤は傾いているというのに。
という訳で、クロノス先生がロックオンされました。
原作では本来罰鳥はパニックを起こした人を突っつくのですが、説明を読むとあくまで悪人を罰するために突いていると解釈できました。なので今作では、悪いことをした人の所に向かっていきます。
審判鳥も大まかな行動原理は同じです。悪や罪に反応しそれを裁く。……と言っても最初から天秤が傾いているという理不尽仕様ですが。
次も三日後投稿予定です。
最初にこの作品を読む時、原作である遊戯王とロボトミーコーポレーションのどちらを目当てにしましたか?
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遊戯王目当て
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ロボトミーコーポレーション目当て
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どちらも目当て
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どちらも知らなかった
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むしろ作者目当て