マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
今回も割と独自設定が仕事します。
しかし、格好つけて言ったもののどうしたものだろうか。俺は審判鳥と対峙しながらも内心頭を抱えていた。
状況を整理すると、まずそこの壁に寄りかかって気絶しているクロノス先生は今命の危機に瀕している。防護服の内側に何重にもロープが巻かれており、目の前の審判鳥の意思一つでクロノス先生の全身を締め上げる。
審判鳥と罰鳥は罪や悪に反応するという話だから、今回茂木を引っ張り出して十代と戦わせるなんてことをやらかしたクロノス先生に反応するというのはまだ分かる。
しかし片方の罰鳥が突っつきまくって終わらせたのに対し、こっちの罰は全身ロープによる締め上げっていくら何でも過剰すぎる。だからこうして向かい合っているという訳だ。
戦う? 今のこの状況で? 出来ればそれは避けたい。
こっちの戦力は大鳥を筆頭に罪善さん、そしてテディの三体のみ。数こそ多いがカードのパラメータなどから考えると、対抗できるのは大鳥のみ。しかもそれも多分対抗できるだけで、三体がかりで何とか勝てるといった所か。下手をしたら押し負ける。
その上俺というお荷物と、クロノス先生という要救助者が居るとなると戦いになったら非常にマズイ。
「……なあ? こっちとしても戦いたくはないんだ。ここは素直にこのロープを外してはもらえないだろうか?」
なるべく穏便に進めようとそう話しかけるが、審判鳥は返事どころか身じろぎもしない。クロノス先生に巻きついたロープも見える限りでは消えた様子はない。ホントにどうしたもんか。そう考えていると、何の前触れもなく急に審判鳥が動いた。
カタンっ!
実体化して提げていた黄金の天秤を右腕で掲げ、その瞬間クロノス先生に巻かれたロープの一部が実体化する。いきなりかよっ!
「大鳥っ!」
グルァっ!
俺の合図とともに大鳥が飛び出した。その瞳は赤く染まり、審判鳥とクロノス先生の間の
その機を逃さず続いて走り出したのはテディ。ぬいぐるみらしからぬ俊敏さで審判鳥に近づき、その腕をぶんぶんと振り回して掬い上げるように審判鳥の顔面を強かに殴りつけた。
頭部が包帯状の物でぐるぐると覆われているのではっきりとは分からないが、あの腕力で殴られたら少しは効いていると思いたい。このまま協力して何とか抑え込めれば。
カタン!
審判鳥が天秤を掲げた。またクロノス先生のロープを実体化させる気か? 天秤はキラリと光り輝き、
「……うっ!?」
咄嗟に手で口を押さえる。なんかものすごくキモチワルイ。ガクッとその場に膝を突き、必死に喉の奥からせり上がってくるものに耐える。……何だコレは?
必死に周りを見ると、審判鳥の掲げている天秤から放たれる水色の光が俺やテディ達を照らしている。くそっ! これが原因か。
カタカタっ!
そこへ俺の前に罪善さんが立ちはだかり、相手の光から壁になるとともに自身の光を俺に放つ。……なんかさっきよりキモチワルイのが収まってきた。
「ありがとう罪善さん。助かったよ!」
お礼を言うと、罪善さんは何でもないとばかりに首を振る。しかしなんだ今のは? これが審判鳥の力か? 範囲攻撃持ちなんてキツ過ぎるぞ!
見るとテディは明らかにさっきより動きが鈍っており、そこを審判鳥のもう片方の腕で払いのけられた。大鳥も光を受けているようだが、まだこちらはそこまで動きが鈍っている様子はない。
「しかし、幻想体のテディでもあの有り様なのに、なんで俺が耐えられたんだ?」
いくら何でも俺の身体は幻想体のようにタフじゃない。下手すりゃこの一撃で意識を刈り取られていてもおかしくないのになんで……うんっ!?
見ると俺のペンダントも同じく微かに光を放っている。どうやらこれがダメージを軽減してくれたみたいだ。ディー本人はともかくくれたペンダントは良い仕事をするな。
「もけもけ1号、2号、3号で攻撃!」
「罠発動! 『ヒーローバリア』!」
離れた場所ではデュエルが再開したみたいだ。もけもけ三体の攻撃を十代は罠カード『ヒーローバリア』で一度は凌ぐものの、残りの攻撃でヒーロー達は全て破壊される。
幸いなことに今の審判鳥の攻撃は、離れた所に居る二人には届いていないようだ。こんなのが届いたらデュエルどころじゃないだろうからな。
向こうもピンチのようだが、正直こっちもピンチなんだよな。俺は冷や汗をかきながらなんとか足に力を入れて立ち上がろうとする。だけど、なかなか力が入らない。
「ぐぅっ!?」
「そうだよ力を抜いて。どうでも良いじゃない? デュエルなんて」
聞こえてくるのは茂木のどこか穏やかで優しい言葉。どうやら十代も同じくよれよれらしい。
……俺、何やってるんだろうな? なんでこんな酷い目に遭ってまでクロノス先生を助けようとしてるんだろな?
元々目の前の審判鳥も罰鳥も、悪行を成したクロノス先生に反応していただけだ。罰を与え終わったらそれでいずれ二体ともカードの下に戻ってきただろう。
罰を受けるのはあくまでクロノス先生の自業自得だ。隔離されていた茂木を連れ出し、十代と戦わせる。それは十代を茂木の力で脱力化、最終的には退学にまで追い込もうということ。決して教師が生徒にして良いことのはずがない。
ならもうこのまま茂木の言う通り力を抜いて、審判鳥の審判を待った方が良いのではないか?
向こうだってまだロープを全身に巻きつけただけだ。締め上げるにしてもそこまで強い力じゃない可能性もある。放っておいても助かるかもしれない。
そうして俺は腕の力を抜き、
「っんなろっ!」
「……俺のターン」
「あれおかしいな? なんでまだやる気があるんだ?」
「あったりまえだろ! こんな楽しいことやってるのに、欠伸してる暇なんかないっつ~の!」
聞こえてくる声からすると、どうやら十代も立ち上がったらしいな。まああっちはデュエルをすることへの楽しさから立ち上がれたみたいだけど、こっちはそんな良い理由じゃない。
正直このままぶっ倒れて楽になりたいさ。痛いのも苦しいのも真っ平御免だし、こんな物騒な奴と戦いたくなんてない。
……けど、けどな。目の前で知り合いが死ぬかもしれないのに、このままぶっ倒れてたら
身体は痛くないかもしれない。でもどんな言い訳を並べたって、俺は絶対この時動かなかったことをあとで後悔する。その後悔がこれからもずっと付き纏うくらいなら、
「なら……ここで気合入れて立ち上がった方がまだマシってもんだろがっ!」
まだ笑ってる膝をパシっと打ち、俺は再び戦いの様子を見守る。幸いさっきの技は連発出来ないらしく、大鳥とテディが二体がかりで審判鳥を何とか抑え込んでいる状況。
罪善さんは俺の護衛で動けないし、あと一歩決め手に欠ける。それに肝心の審判鳥がなんでこんな行動をとろうとするのかよく分からない。
『ふ~む。どうやら審判鳥のことで悩んでいるみたいだ……あぎゃっ!?』
今までどこ行ってたんだディーひとまずツラ貸してもらおうかと、俺は流れるように現れたディーを鷲掴みにし、いちいち話してる暇もないので無言で催促する。いざとなったらこいつは俺の心も読めるだろうからな。
『せめて無言はヤメテ~! ……分かった分かった! ヒントくらいは出すよ! と言っても……君ももうなんとなく察しているかもしれないね。あの審判鳥を見て何か気になることはないかい?』
ディーのその言葉に、俺はもう一度審判鳥を観察する。……気になる所と言ったら二つ。
「目を布で塞いでいることと、天秤が最初から傾いているってことか?」
『そういうこと! 特に天秤の方が問題だね。あれのせいで正しく罪を量ることが出来ないでいる。つまり審判鳥の理不尽な判決を止めるには?』
「……何となく分かった気がする」
俺はディーから手を放し、今にも崩れ落ちそうな身体に活を入れる。それを見て罪善さんが何か言いたそうにカタカタと骨を鳴らす。
「すまないな罪善さん。多分心配してくれているんだと思うけど、もう少しだけ無茶をするよ」
さて、もうひと踏ん張りするとするか!
「大鳥っ! テディっ! 少しの間で良いからそのまま審判鳥を押さえててくれっ!」
俺はそう叫びながら、罪善さんを伴って審判鳥に向けて走り出した。
審判鳥はそこで向かってくる俺に気づき、再びさっきのように右腕で天秤を掲げる。また範囲攻撃か! でもな……来るって分かってるんなら何とかなるんだよっ!
「罪善さんっ!」
俺の合図とともに罪善さんが前に出、そのまま天秤の光を受け止める。だが心なしか罪善さんも動きが弱々しくなってきた。ゴメン罪善さん。もう少しだけ耐えてくれ!
グルァっ!
なおも天秤を掲げようとする審判鳥の腕に、大鳥が鋭い牙で食らいつく。審判鳥は天秤を取り落しこそしなかったものの、一瞬動きが止まった。そこをテディがもう片方の腕に組みついて動きを封じる。
テディはまだともかくとして、大鳥も素直に言うことを聞いてくれるのは疑問だが大いに助かる。あと審判鳥までの距離はわずか。あと少しで、
「…………えっ!」
その時、審判鳥は最後のあがきに出た。わざと見えるように空中にロープを実体化させたのだ。ロープは何本も伸び、その先にあるのはクロノス先生の身体。この土壇場でそっちを狙うかよっ!?
どうする? このまま行けば何とか審判鳥の懐に飛び込める。しかし放っておいたらクロノス先生がヤバい。ロープが音を立てて引き絞られる。ああもう迷ってる暇はないか!
「大鳥っ! 頼む!」
俺が頼むのとほぼ同時。むしろ頼むより一瞬早かったかもしれない。大鳥は食らいついていた審判鳥の腕を放し、標的をクロノス先生を縛っているロープへと変える。
嚙み合わされる大鳥の牙とブツリと音を立てて千切れるロープ。これでクロノス先生は大丈夫だ。だけど、
グルァっ!?
その一瞬の隙を突かれ、大鳥の牙から自由になった審判鳥が再び天秤を翳す。するとまたどこからともなく現れたロープが大鳥とテディの手足に絡みついた。大鳥を拘束し、自分にしがみつくテディを無理やり引き剥がそうってことか!
俺はその間を縫って審判鳥の所へ走り込む。あとはあの天秤をどうにかするだけ。そうすれば、
「……あっ!?」
ガクッ!
チクショウ足がもつれた。なんと審判鳥のど真ん前で。
それは本当に一瞬の事。すぐに踏ん張りを効かせて体勢を立て直す。でも審判鳥が俺を迎撃するには十分すぎるほどの間だ。
「罪善さんっ!?」
俺を守ろうとした罪善さんを手で払いのけ、審判鳥は俺に向かって天秤を翳す。そこから水色の光が俺を……。
パァンっ!
『管理人っ! 今だっ!』
その声の方向を見ると、そこに映るのは指をピストルのように伸ばした葬儀さん。そして、その後を車輪を出して激走するヘルパーと、それに乗ってこちらに手を振るレティシアの姿。……皆来てくれたのか!
『遊児お兄ちゃん! 受け取ってっ!』
レティシアがその子供らしい見た目とは打って変わって強い肩で、こちらに投げ渡してきたのは幻想体の予備のカードを収めたデッキケース。そして俺はそれをキャッチし、
「ありがとなっ! ……審判鳥。お前に一つ言いたいことがある。公平な審判やんならまず道具から見直せやあァァっ!」
そのままの勢いでずっと上がりっぱなしの天秤の片方に叩きつけた。
本来ならこの話で終わらせるつもりだったのですが、予想以上に幻想体同士のバトルが難産でした。もう少しだけ続きます。
次話は明後日投稿予定です。
最初にこの作品を読む時、原作である遊戯王とロボトミーコーポレーションのどちらを目当てにしましたか?
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遊戯王目当て
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ロボトミーコーポレーション目当て
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どちらも目当て
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どちらも知らなかった
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むしろ作者目当て