マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
今さらになりますが、らいこう様から拙作の推薦を頂きました! 初めての推薦に感謝感謝です!
これからも書いていきますので、皆様に楽しんでもらえれば幸いです。
「俺は罠カード『異次元トンネルミラーゲート』を発動! バトル中のモンスターを入れ替え、戦闘を続行させる!」
俺が十代達の所に戻ると、いよいよデュエルは佳境に入ったという所だった。
力には力ではなく、むしろ相手の力を利用して勝つ。それが攻撃力3000まで膨れ上がったもけもけへの十代の一手。
十代のバブルマンから茂木のもけもけへの攻撃は、そっくりそのまま入れ替わって十代のもけもけから茂木のバブルマンへの攻撃に変化する。
「よっしゃー! もけもけウェーブで攻撃!」
十代の手持ちとなったもけもけは、怒れるもけもけの効果で真っ赤に染まりながら戦いに向けて雄たけびを上げた。
「えっ!? もけもけがあんなにやる気を出している? ……うわああっ!?」
そうしてどこか驚いた様子の茂木のLPを、もけもけの攻撃が削り切った。
デュエル終了。十代WIN!
「やったな十代! 最後の方だけだけど見てたぞ」
「おうよ! ……って最後だけかよっ!? まあ良いけどな」
俺は手を上げながら十代に駆け寄る。俺だって全部見たかったんだけどな。色々あったんだから仕方がないのだ。そして衝撃でそのまま座り込んだ茂木に、十代がゆっくりと歩み寄った。
「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ。お前も結構熱くなってたしよ!」
「……ふふっ! これでも楽じゃないんだ。力を抜くのもね」
十代の言葉に、茂木は少しだけどこかスッキリしたような顔でそう返す。俺には茂木の気持ちはよく分からない。ただ、茂木には茂木の悩みというのがあるのだろう。
「分かるぜ。デュエルってすっごく楽しいからな。へへっ!」
「たまには君のように勝負にこだわるのも良いもんだな。でも今は、頑張り過ぎたんで眠くなってきちゃった。そこの君には悪いけど、話はまた後でね。……お休み」
そう言うと茂木は、なんとそのまま後ろに倒れ込んでいびきをかき始めた。この早寝の手際。某昼寝の天才並かもしれない。
「え~っ!? おいっ!? ……お前らも。……えぇ~~っ!?」
後ろを見れば、当然だが翔達もまだ眠ったまま。陰に居るので見えないがクロノス先生も気絶しているし、十代はこれどうするんだよとばかりに困り声を響かせた。
「まあ、たまにはこうして青空の下で昼寝ってのも良いんじゃないか? この通り場所はたっぷり空いてるし、俺も酷く疲れたしな」
俺は近くの壁に背中を預けてふぅ~っと一息つく。正直身体はガタガタでしんどい。しばらくこうして動きたくない気分だ。
「……そうだな。楽しいデュエルをやって良い気分で昼寝するってのも悪くないかもな。俺も寝るか!」
遂に十代も腕を枕にしてその場にごろりと横になる。そして誰も起きていなかった……なんてミステリー染みたタイトルがつきそうな風景だ。
そのまま目を閉じ、良い具合にウトウトし始めた時、
「……なあ? 寝る前に一つ聞かせてくれよ。あそこに居る鳥みたいな奴は結局どうなったんだ? クロノス先生を狙っていたんだろ?」
十代からそんな声が飛んできた。ああ……アレね! 俺は薄目を開け、今はもうすっかりおとなしくなった審判鳥を視界に映す。
「やっぱバレてたか。……大丈夫。ひとまずは安全だよ。あとでまとめて話すから……今は……寝かせてくれ」
「おいっ! おい遊児っ!?」
十代の言葉がどこか遠ざかっていくように感じながら、俺の意識はそこで途切れた。
「ふわあ~~!」
その日の夜、俺は自分の部屋で大きな大きな欠伸をした。
『おやおや~! あれだけ眠ったのにまだ眠いのかい?』
ディーがからかうようにそう言ってくるが、自分でもびっくりするぐらい爆睡してしまったので間違ってはいない。
なにせいち早く起きた三沢達に起こされた時にはもう夕暮れで、慌てて皆で寮に戻った時にはもう真っ暗になっていたからな。すっかり夜も遅くなったから、十代に諸々のことを話すのは明日になったぐらいだ。
「むしろ寝過ぎて頭がぼんやりしてる。ヘルパー! すまないけどコーヒーを……っと。今は無理だったな」
今はヘルパーは部屋の隅で外せない作業をしている。それが終わるまでは他の用は頼めない。疲れているだろうがもう少し頑張ってくれ。
『それにしても今日は大変だったねぇ。他の幻想体達が皆カードに戻って休むくらいの激戦だった。まあ僕としては中々に見ごたえのあるものが見れて悪くなかったけどさ』
「楽しんでくれて何よりだよこの野郎っ!」
今日の審判鳥の一件は本当に大変だった。もうあんなキツイのはコリゴリだ。唯一の救いは、
あの時、天秤が狂っているなら何か重りを乗せて釣り合わせたら良いという半ば自棄の発想だったのだが、それが見事に決まった時は自分でも驚いた。何事もやってみるものだ。
ちなみに審判鳥は今精霊化してこの部屋に居る。昼間はあれだけ手こずった相手だが、痩せこけた身体をさらに小さくして部屋で待機している様はどこかユーモラスだ。
『
「それなら最初から天秤をしっかり整備しとけよって話だけどな。最初からあんなに傾いてたんじゃ欠陥品も良いとこだ……おっ!?」
そうぼやいていると、作業をしていたヘルパーがこちらにやってくる。どうやら出来たみたいだ。
〈リペアプロセス完了! 残存エネルギー10%を切りました。スタンバイモードに移行します。お手伝いが必要なら呼んでね〉
ヘルパーも疲れていたらしい。俺に
『それにしても、まさかこんなことまで出来るとはね。これには僕も驚いたよ』
俺の手にあるのは、審判鳥が持っていた黄金の天秤。だがもう傾いてなどなく、テーブルに置くとピッタリと秤が水平になっている。
ネクやテディの前例があるように、ヘルパーはカードの精霊であっても修繕が可能だ。だが今回は本人ではなく持ち物。しかも自分より格上のWAWクラスだ。流石に出来るかどうか分からなかったのだが、出来てしまったのだから凄い。……ホントになんでこれで掃除だけはダメなんだ?
「審判鳥。出来たぞ! これでもう無茶苦茶な判決は出ないはずだ!」
俺の言葉に反応し、審判鳥がのっそりとその頭部をこちらに向ける。相変わらず布で覆われているのでよく分からないが、どうやらこちらを向いてはいるらしい。
そのままゆっくりと実体化すると、そっとこちらに手を差し出してくる。……手に乗せろってことかな?
「ほらっ! これに懲りたら定期的に天秤を整備しろよな? 自分で出来ないならヘルパーにやり方を教えてもらうなり大鳥達に手伝ってもらうなり方法はあるから」
そう言って俺が天秤を手に乗せると、審判鳥はそのままゆっくり頷いてフッと消えていった。
『……本当に良かったのかい? 審判鳥も罰鳥も手元に置かず森に行かせて』
「良いんだよ。手元に置いても戦力過多だし、どのみちWAWクラスを完全に制御するのは無理だ。なら仲間同士で一緒に居させた方がまだ安定するかもだろ?」
ディーが俺を試すようにそんなことを言う。分かってるくせしてそういうこと言うんだからコイツは。
まず大鳥は今回相手が審判鳥だから手伝ってくれたようで、審判鳥が落ち着いた瞬間勝手に精霊化して森に帰ってしまったしな。基本言うことを聞くかどうかは幻想体の自由意志だ。
なので審判鳥にも予め、大鳥と同じく森で良くないモノ退治と迷った人の護衛を頼んでおいた。森に関わることなので、これは審判鳥も断る理由がなく普通に承諾してくれたな。
懸念があるとすればまたWAWクラス以上のカードが精霊化した場合だが、その場合戦闘になったら周囲がヤバいのでそもそも戦闘は避ける方針だ。よっぽど相手が話の通じない奴じゃない限りは大鳥や審判鳥を呼ぶ必要はない。
最後に罰鳥だが、こいつに関しては基本カードと同じでこっちから攻撃しなければ比較的安全らしい。実際クロノス先生を散々突っついたけど、頭を軽く怪我させるだけに留めたしな。他の二体に比べたら可愛いもんだ。
こっちは手元においてもなんとか制御できそうだが、他の二体を安定させるために一緒に行かせることにした。一番見た目が普通の鳥っぽいから誰かに見られても安心だしな。
『…………それはそれで良いか。
なんか不穏なこと言ってんなコイツっ!? 条件って何っ? なんかあるのっ!? あれ以上凄い奴が出てきたらもうどうしようもないぞ。
『おっと。口が滑ったね。まあそれは今は良いじゃない? それより未来の事を考えようじゃないか。……明日どうしようか?』
なんか釈然としないな。しかし、ディーの言う通り明日はいくつかやることがある。十代に今回の一件を話すこと。茂木と一度じっくり話し合いをすること。そして、
「……決まってるさ。クロノス先生とはきっちり
自分のやらかしかけたことには責任を取ってもらう。俺の友人を無理やり退学させようとしてタダで済むと思うなよ。
もけもけパニックはこれで終了です。ただ茂木にはこれからまだ出番があります。あんな濃いキャラをそう簡単に終わらせませんよ。
次回は三日後投稿予定です。
最初にこの作品を読む時、原作である遊戯王とロボトミーコーポレーションのどちらを目当てにしましたか?
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遊戯王目当て
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ロボトミーコーポレーション目当て
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どちらも目当て
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どちらも知らなかった
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むしろ作者目当て