マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
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「出でよ! E・HEROフェザーマン! バーストレディ! クレイマン! スパークマン!」
十代がディスクにカードをセットする度に、彼の心強い仲間達がその姿を現す。……あれってもう半分くらい精霊化してないか? 大分前にレイと戦った時もそれっぽい感じだったし。
「うわぁ! 今日も皆メッチャクチャ格好良いな! 気合入れて、デュエルアカデミアノース校との対抗試合頑張ってくれよな」
そう。今日は学園対抗戦当日。十代は最後のデュエルディスクの調整のため、こうして点検用のデュエルリングでモンスター達を呼び出していたのだ。ちなみに俺は一応の付き添い。
「どうやらディスクに問題はなさそうだな。この大一番で、いざ勝負って時に整備不良でカードが発動しないってことになったら大変だからな」
「おいおい遊児。俺が日々の整備を怠ると思うか? 毎日ちゃんとチェックしてるっての」
十代はそんなことを言っているが、マンガ版ではデュエルディスクをフリスビー代わりにして遊ぶという暴挙をやらかしていたからな。こっちではそんなことは一度もないが、念のため注意しておかないと。
「ところで十代。機能チェックはそれくらいにして、そろそろ準備した方が良いんじゃないか? なにせ」
「アニキ~! こんな所に居たんすか! 久城君も! もう皆集まってるよ」
そこに翔が息せき切って走り込んできた。まあそろそろだとは思ってたけどな。
「集まってるって?」
「出迎えっすよ出迎え! ノース校代表団のお出迎えだよ!」
そう。デュエル開始はまだ先だが、向こうの代表団の出迎えやらそういったものも当然ある。このデュエルの根幹にあるのは互いの学園の友好を深めることだ。こういった交流も必要となる。
「あ~いっけね! 忘れてた。急げ翔! 遊児!」
そう言って慌てて走り出す十代を、翔は置いてかないでと急いで追いかける。俺も追いかけようとすると、そこにディーが急に出現した。
『さ~ていよいよ序盤の山場の一つに差し掛かったね。面白くなってきたよ~!』
「ああ。不本意ながら俺もそこは同感だよ。お前がそこまで言うなら名勝負が期待できそうだ。……ところで、相手は一体どんな奴なんだ?」
『ふふっ! それは見てのお楽しみって奴さ! ヒントを挙げるなら……君が知っている人ってことかな?』
俺が知っている? ……誰だろう? もしやマンガ版で見たキャラってことかな? まあ誰にせよ。ここまで来たら行ってみれば分かるか!
そうして俺も十代達を追って走り出した。
ノース校からの人員を出迎える場所は以前レイを見送った波止場。ってことは向こうは船で来るのかと考えていたら、
「うぉ~っ! すっげ~!」
「まさか船じゃなくて
出迎えの人達が集まる中、波止場に停まっていたのは船ではなく、水面から上部だけ出ている巨大な潜水艦だった。あんなの使わないと行けないってどんな学校だよ!?
いち早く艦から波止場に降り立った中年の男性が、鮫島校長と親しげに握手を交わす。
「おお! よくいらしたな市ノ瀬校長」
「しばしうちの悪童らがお世話をかけますが、よろしくお願いしますよ」
「いや、私の方こそ」
どうやらこの人が向こうの校長らしい。端から見た限りでは仲は悪くなさそうだ。……トップ同士が火花バチバチだと色々生徒側も苦労するからな。仲が良いに越したことはない。
「ところで……トメさんはお元気ですかな?」
「もちろん! トメさんはこの対抗試合には欠かせない人ですからな」
……訂正。今ほんの一瞬この二人の間に火花が散った。仲が悪いという訳ではなさそうだが、こと女性が絡むとそうではなくなるらしい。考えてみればトメさんもこの二人とそう齢は離れていなさそうだし、昔……多分今もだけど何かあるんだろうな。
そんな中、
「校長先生! 挨拶はその辺にしてさ、早く俺の相手紹介してよ!」
なんと空気を読めないのか読まないのか、十代がやる気満々で校長先生同士の話に割って入った。いや何やってんのあのデュエルバカ! クロノス教諭が怖い顔してそっちを見てるぞ。
「これ十代。行儀が悪い」
「でも、俺早く対戦相手に会いたくってさ」
「……そうか。君が噂の十代君か!」
鮫島校長にたしなめられる十代。だが市ノ瀬校長は特に気分を害した様子もなく、優しく十代に話しかける。
「よろしく! おっさんがノース校の校長先生?」
「これっ! 十代君」
おっさんは流石に無礼だと鮫島校長がさっきより強くたしなめるも、今のワクワクモードの十代はそれくらいじゃ止められない。すみません校長方。あとで俺が一発はたいてきますので。
「で誰なのさ? 俺と戦う相手は」
「
その聞き覚えのある声を聞いた時、俺はハッとしてその方向、潜水艦の方を見る。十代や他の者達も皆。今の声にはそれだけの人を惹き付ける何かがあった。
潜水艦の上に立っていたのは、どいつもこいつもどこか不良っぽい屈強な男達。そしてその最奥に立っている男こそ。
「ああっ!? 万丈目! 万丈目だ!」
「万丈目
俺の推しがそこに居た。
かつて着ていたデュエルアカデミアのブルーの制服を脱ぎ捨て、今着ているのは黒を基調にしたロングコート。所々ほつれてはいるが、その傷だらけのコートから見て取れるのは弱々しさなどではなく歴戦の戦士の風格。
ただ立っているだけなのにここまで伝わってくるこの感じ。間違いなく最後に会った時より強くなっているな。
「俺って……じゃあもしかして、俺のデュエルの相手って、万丈目かっ!?」
「だから万丈目さんだ」
頑なにそこは譲らない万丈目。意外と礼儀に厳しかったらしい。だが別段怒った様子も見せずひどく落ち着いている。
「おい一年。さっきから聞いていれば、サンダーさんのことを呼び捨てにしやがって」
「いっちょシメてやろうか」
「放っておけ」
むしろ万丈目の周囲にいる男達の方が十代に食って掛かろうとするが、万丈目が一言制止するだけで姿勢を正す。なんか完全に向こうの奴らを従えているぞ万丈目。
それも今の言葉からあの取り巻き達は一年生ではなく二年か三年生。つまり事実上デュエルアカデミアを出てからたった数か月のうちに、万丈目はノース校のトップにまで上り詰めたということになる。
毎年対抗試合をやるくらいだから、向こうのレベルも相当の物のはず。それをねじ伏せてくるとは流石万丈目だ。あと何でサンダー? ……ああ! さんがなまってサンダーね! なんかリングネームみたいだな。
「十代。こんなにも早くリベンジの機会が巡ってくるなんてな。それに……」
そこで万丈目は一瞬チラリとこちらの方に視線を向け、ほんの僅かにだけ口角を上げる。こちらも何も言わずただ軽く手を上げて返す。前みたいに戦う前からグロッキーっていうのはなさそうで安心した。
「……まあ良い。ここで貴様を完膚なきまでに叩きのめし、あの時の俺が受けた屈辱を雪いでやるとしよう」
「へへっ! 何だかよく分かんねえけど、お前とまたやれるなんて嬉しいぜ万丈目!」
互いに視線を交わす十代と万丈目。おおっ! これは燃える! このライバル同士の対峙はマンガ版を思い出すな!
マンガ版では十代と万丈目は二度本気でデュエルしている。その結果一度目は十代の勝利。二度目は本当に僅差で万丈目の勝利だった。つまり二人の実力は伯仲している。
もちろんここはマンガ版ではなくアニメ版の世界。当然流れも変わってくるだろう。もしかしたらマンガ版のように万丈目が勝つのかもしれないし、あるいは十代が主人公として勝つのかもしれない。だがどちらにせよ名勝負になるのは間違いない。
そう心躍る展開を期待していた時、
バララララっ!
突然空からデカい音が響き渡った。何事かと思い空を見ると、そこには一台のヘリの姿が。今のはあのヘリのローター音か!
「あれは!?」
「あのマークは……万丈目グループの」
よく見ると機体に大きく一文字『万』と書かれている。あれが万丈目の所のマークか。そうこうしている内に、まだ空中だというのにヘリのドアが開き、そこから二人の男が顔を出す。
「久しぶりだな準。元気でやっているのか?」
「長作兄さん。正司兄さん。……何しに来たんだ」
やはりというか二人の男は万丈目の兄弟らしい。万丈目が驚いた様子でヘリの音にも負けない声量で叫ぶ。というか兄弟揃って声がデカいな。スピーカー要らずだ。
「もちろん。お前の勝利を祝福するためにさ」
「あまり心配をかけるなよ準」
なるほど応援か! 確かにこういう晴れの舞台で身内が応援を兼ねて観戦しに来るのはよくあるし、そういうのは力になるからな。間違っちゃいない。
ただいきなりヘリで登場というのは如何なものか。見ろっ! ここに集まった人達が皆ポカ~ンとした顔をしているじゃないか。身内を応援したいというのは分かるけどもっと常識的にやってほしいものだ。
万丈目もさぞ応援される嬉しさや恥ずかしさやらの入り混じった複雑な顔を……おやっ!?
俺が見たその時、万丈目の顔に映るのは嬉しさでも恥ずかしさでもなく、どこか苦しみを湛えたものだった。……一体どうしたっていうんだ?
学園対抗戦編開幕です。
次回は三日後投稿予定です。
最初にこの作品を読む時、原作である遊戯王とロボトミーコーポレーションのどちらを目当てにしましたか?
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遊戯王目当て
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ロボトミーコーポレーション目当て
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どちらも目当て
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どちらも知らなかった
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むしろ作者目当て