マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
また、基本は原作沿いなこのシリーズですが今回かなり内容が異なります。場合によってはこんなことも起こりえたかもしれないということで、温かい目で見守っていただければ幸いです。
タグに原作キャラ強化を追記いたしました。
十代 LP2700 手札3 モンスター なし 魔法・罠 伏せ1
万丈目 LP2100 手札0 モンスター アームド・ドラゴンLV7 魔法・罠 リビングデッドの呼び声 アームド・チェンジャー 伏せ1
「手札から、『戦士の生還』を発動! 俺は墓地から戦士族モンスター一体を選択して手札に加える。俺が手札に戻すのは、E・HEROフェザーマン」
十代が墓地から呼び戻したのはフェザーマン。そして手札にはさっきフレンドッグで戻した融合とバーストレディのカード。と来れば次の流れは十代の十八番。
「そして、フェザーマンとバーストレディを手札融合! いでよ! 『E・HEROフレイムウィングマン』!」
フレイムウィングマン ATK2100
予想通り、十代の場に炎と風の力を纏うヒーローが出現する。
「バカな! そんな奴を呼び出してどうする? 俺のアームド・ドラゴンLV7の攻撃力は2800。倒すことは出来んっ!」
そう怒鳴るように言う万丈目だが、声がほんの僅かに震えている。万丈目もまた頭の片隅にちらついているのだ。……この局面で十代がこのモンスターを出したこと。それこそが十代が逆転を狙っているという証であると。
「いいや。既に俺の必殺のコンボは完成しているぜ。行くぜ。罠発動! 『ミラクル・キッズ』」
そして十代がオープンした伏せカードは、墓地のヒーロー・キッズ一枚につき400ポイント相手の攻撃力を下げるカード。ヒーロー・キッズ達の幻影が、アームド・ドラゴンに纏わりついてその力を封じる。
アームド・ドラゴンLV7 ATK2800→1600
「くっ!?」
万丈目もこの先の流れを悟ったのだろう。その顔は非常に険しい。
「これで俺の勝ちだっ! 行けっ! フレイムウィングマン。『フレイムシュート』!」
「マズいマズイ!? カットだカット~っ!」
十代の号令でフレイムウィングマンの腕から炎が放たれ、万丈目の敗北を察してテレビ中継が慌てて中断される。
おまけに万丈目本人も何故か闘志を失いかけているようだった。
十代のフレイムウィングマンには、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える効果がある。万丈目のLPは残り2100。このまま行けばフレイムウィングマンの効果でLPは尽きる……
「万丈目……それで良いのかよ?」
そうポツリと漏らしたその言葉は、観客達の声援にかき消されていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
(負ける? 俺はまた負けるのか?)
十代がミラクル・キッズを発動させた時、万丈目の心に過ぎったのは
敗北への不安。敗北することで兄達から見放されるのではないか。また以前のように、他の生徒から陰口を叩かれるようなことになるのではないかと思う恐怖。それはいつも万丈目の心の奥底に燻っていた。
だからいつも自分を鼓舞し続けた。
だがもうそれもここで終わる。フレイムウィングマンの攻撃が到達した時点で万丈目の負けは確定する。
さらに万丈目は視線の端で目にした。観客席で苛立たし気にこちらを見、席から立ち上がって帰り支度をしている兄二人の姿を。
勝利こそ最低条件。勝って当然。それが出来なければ落ちこぼれ。落ちこぼれなどに用はないと、そう考えていることが手に取るように分かる二人を。
ならもう諦めても良いのではないか? 兄さん達にも見限られ、どうせもうすぐ終わりだ。万丈目の瞳から光が消えかける。後はもう俯いて力なく倒れ込んでしまえば良い。そうすれば楽になれる。妥協と諦めが心の中を埋め尽くし、
声が、聞こえた気がした。
観客の声援に混じって微かに、だが間違いなくそれで良いのかと万丈目に問いかける声が。
(良いのかだと?
万丈目はキッと俯きかけた顔を上げて前を向く。
その視線に捉えたのは、十代の勝利を確信した本校生徒達の中でただ一人、
敵対している十代の側の生徒ではあるが、万丈目の実力を信じているからこそこの状況になってもまだ何かやるかもしれないと思っている一人のファン。そして、
「諦めるなっ! サンダー!」
「「「サンダー!」」」
自分の
「最後まで奴が、そして後ろの馬鹿共が負けると思っていないのに、肝心の俺が諦める訳にはいかんよなあぁっ!」
万丈目の瞳に光が戻る。萎えかけた心と身体を奮い立たせ、力強く一歩前に踏み出す。
「罠発動! 『バーストブレス』!」
「何っ!?」
万丈目の
「このカードは、俺の場のドラゴン族モンスター一体を生け贄に発動できる。生け贄にしたモンスターの攻撃力以下の守備力を持つ場のモンスターを全て破壊する!」
アームド・ドラゴンLV7の命を燃やして放ったブレスが炎を押し返し、そのままフレイムウィングマンを逆に燃やし尽くす。そしてブレスを吐き終わったアームド・ドラゴンLV7もまた、どこか安らかな表情で消滅した。
「なっ!? 俺のフェイバリットカードが!?」
「……ハッ! 甘いんだよお前は。俺がこの程度で倒せるとでも思っていたのか?」
「なるほど。違いないな! 俺はこれでターンエンド!」
万丈目はビシッと十代を指差しながら宣言する。だが、必殺の一撃を躱されたというのに十代はどこか楽しそうだった。
そして、有る筈のない1ターンが幕を開ける。
◆◇◆◇◆◇◆◇
良いぞ良いぞっ! 流石俺の認めた二人だ! 俺は二人のギリギリの戦いに魅入っていた。
今のターン、間違いなく十代はこれで決めるつもりの一撃だった。おそらく通常の話なら、ここで勝ち確BGMでも流れるはずだったのだろう。
だがこれは学園対抗戦。アニメで言ったらおそらく前後編の大ボリュームだ。流石は万丈目。主力を失ったものの、無事持ちこたえた上にフレイムウィングマンも破壊した。これでまだ勝負は分からなくなった。
「あぁ。フレイムウィングマンがやられちゃった」
「やるな。万丈目。まさかあの状況から粘り切るとは」
「そうね。……以前の万丈目君ならここで決まっていたわ。だけど、今の万丈目君は間違いなくそれを凌駕している」
翔達が口々に言う。隼人に至っては言葉を発することもなく試合に魅入っている。そんな中、
『いやあこれはこれは。実に面白いことになってきたね』
「何だよ急に? 今良い所なんだから邪魔するなよ」
皆が試合の行方に集中している中、いつものように突然かつこっそりとディーが俺の真横に出現した。だが今はこの名勝負を見逃したくはない。ディーの方からすぐに視線を逸らし、俺は再び試合の行方を見守る。
『邪魔なんかするもんか。僕個人としても見逃せない一戦だからね。ついつい良い場所で見たくなっただけさ。……この試合どっちが勝つと思う?』
「……さあな。そんなの知るわけないだろ。だけど……勝者は一人だ」
十代 LP2700 手札0 モンスター なし 魔法・罠 なし
万丈目 LP2100 手札0 モンスター なし 魔法・罠 リビングデッドの呼び声
「俺のターン。……十代。さっきお前はデュエルするのは楽しいと、そう言ったな?」
「ああ! デュエルするのってむちゃくちゃ楽しいだろ? それは万丈目も同じのはずだぜ」
何故か万丈目は、ドローの前にどこか落ち着いた雰囲気で十代に話しかけた。十代はなんだそんなことかとばかりに軽く答える。
「そりゃあ勝ちゃあ楽しいだろうよ。俺にとってデュエルは、兄さん達に俺の価値を証明するための物だ。勝ち続けて兄弟の落ちこぼれなんかじゃないと認めさせるためのな。そしてそれは今でも変わらない。……だが、兄さん達には見限られたようだ」
その言葉にさっきまで万丈目の兄貴達が居た場所を見ると、あの二人まだ勝負が着いていないってのに帰ろうとしてやがる。応援が本人より先に諦めてんじゃないよ!
「……万丈目」
「さんだ。もうこうなっては万丈目一族のためも何もないな。だがそれとは別に、俺にも負けられない理由が出来た」
そこで万丈目は、それまでチラチラ見ていた兄弟達の方
「まだ俺が勝つことを信じて諦めない後ろの馬鹿共のためにも、俺の戦いを最後まで見届けようとしているファンのためにも、俺は負けん……いや、
今の状況は以前月一テストで十代と万丈目が戦った時の再現。互いの手札も場もほぼすっからかん。となればあとは純粋なドロー力の勝負となる。
「以前戦った時の言葉を引用させてもらうぜ十代。このターン。“俺が攻撃力2700以上のモンスターを出せたら面白いよなぁっ?”」
「……面白れぇ。面白れぇぜ万丈目っ! あん時の仕返しって訳か! じゃあ俺もお前の言葉で返すぜ。“出来るかな? そう簡単に”」
「今見せてやる。
気合を入れて万丈目がカードを引く。そのカードは、
「魔法発動。『早すぎた埋葬』! LPを800払い、俺の墓地のモンスター一体を攻撃表示で特殊召喚しこのカードを装備する。このカードが破壊された時そのモンスターも破壊される。俺が呼び出すのは、『闇より出でし絶望』!」
万丈目 LP2100→1300
闇より出でし絶望 ATK2800
おいおい!? ここで宣言通り引くとはなんて鬼引きだよ?
万丈目が墓地から呼び出したのは、アームド・ドラゴンの効果コストで墓地に送った上級モンスター。本来なら自慢のアームド・ドラゴンLV7を出したかったのだろうが、あのカードはLV5の効果以外では出せないという効果があるためこちらになったのだろう。
「……へへっ!」
宣言通りドローしたカードで奇跡を起こしてみせた万丈目に、十代はただ感心のあまり笑うことしかできなかった。……そうだよな。まさか手札0のこの状況で一発で引き当てるなんてそうそう出来ることじゃない。まあ十代はよくやってるからある意味因果応報だけどな。
そして、これが最後の攻撃。
「闇より出でし絶望で、十代にダイレクトアタック! これで……最後だっ!」
「ぐああああっ!?」
その影のような体躯の中で唯一はっきりとした紫の巨腕を伸ばし、絶望が十代のLPを磨り潰した。
十代 LP2700→0
デュエル終了。万丈目WIN!
今回の内容は本当にギリギリまで展開に悩んだ話でした。原作通りに十代が勝つか、それとも運命を変えて万丈目が勝つか。
結果としてこのような決着になったことは、完全に私の個人的嗜好によるものです。読者の皆様に読ませたい話というより、私自身が書きたい話になってしまいました。
なので賛否両論は読者の方々に委ねたく思います。
次回は三日後投稿予定です。