マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
学園対抗戦から数日。万丈目は無事本校に復学した。
オシリスレッド所属という扱いになったけれど、その制服はノース校の頃からの黒いロングコートで通している。レッドの服を着るくらいならこっちの方が良いとかなんとか。まあ制服の改造はやっている生徒も多いので、そこまで問題にはなっていないようだ。
問題と言ったら、急に戻ったことで他の生徒からのやっかみがあるんじゃないかと思われていたが、これは意外にもそんなに多くはなかった。あの学園対抗戦のことが効いているらしく、どうやら一目置かれているようだ。
そして負けた十代の方だけど、こちらも表立った反感は今の所来ていない。負けたことで何かしらあちこちから文句が来るかと思ったが、こちらに関してはあの日の懇親会で一際戦いまくったことが効いているようだった。
何せ一人でノース校、本校問わず十人以上倒していたからな。ノース校側からも流石サンダーを苦しめた男と評価が高かった。流石にその疲れが祟って、万丈目と当たる前に三沢と戦って負けていたが。
三沢自身も十代が疲れていたのは知っていたようで、こんな状態のお前に勝つのは当然の結果だろうとこともなげに言っていたな。それと試したいことがあるとかで、普段とは違うデッキを使っていたのも意外だった。てっきりまた対十代用のデッキでも引っ提げてくると思ったんだけどな。
まあそんなこんなで少しずつ万丈目もこの学園に馴染んできた結果、
「こうして茂木の寮で精霊とのんびり戯れるくらいになったのでした」
「こいつらに無理やり引っ張り込まれたんだがっ!?」
目の前で茂木の所の精霊達に纏わりつかれている万丈目が、そうパワフルな突っ込みを返してきた。いつものクールな万丈目とはまた違う一面だ。それはそれで良いものだが。
「まあそう言うなよ万丈目! お前むちゃくちゃ懐かれてるじゃんか!」
「さんだ! だからこれはこいつらが勝手に纏わりついてくるだけだっ! こら離れろっ! 鬱陶しい」
「あはははっ! 初対面の人にこんなに精霊達が懐くなんて初めてだよ」
万丈目は腕をぶんぶん振って精霊達を引っぺがす。だけど精霊達は気分を害した様子もなく、そのままプカプカとそこらを漂っている。ある意味精霊に慕われるのも才能かね。
それを見て十代と茂木はニマニマと笑うものだから、万丈目は余計に怒り狂っている。
ちなみに茂木は俺達が来る前にたっぷり昼寝をしていたらしく、少しだけいつもよりシャキッとした顔つきをしている。……あくまでいつもに比べたらの話だが。
「それにしても万丈目、身体にどっか変な感じはないか? どっか頭がふわ~っというかもけもけ~っという感じにならないか?」
「もけもけ~ってどんな感じだっ!? ……今の所特に違和感は感じないな。周り中精霊だらけで驚いてはいるが」
一応聞いてみると、万丈目が手を開いたり閉じたりしながら自らの調子を確かめる。
今回茂木の寮に皆で遊びに来たのは、万丈目に茂木を紹介することも理由の一つではあるが、茂木の能力に万丈目が影響を受けるかどうかを試すためでもある。
茂木の近くに居る者が脱力するという現象。これが何故か俺と十代には効かなかった。二人に共通するのは精霊の姿が見えるかどうか。つまり同じように精霊が見える万丈目が効かないのであれば、脱力の原因はやはり精霊の力によるものということでほぼ確定だ。
なので万丈目には、先にそのことを説明して協力を頼んだ。もちろん本人の意思が第一なので断っても良いし、協力してくれる場合何か少しでも兆候が見られたら即座に外へ引っ張り出すことになっている。少しもけもけになったぐらいなら復帰できるのは前の一件で証明済みだしな。
万丈目も精霊のこと自体には興味があったようで、俺の知っていることについて出来るだけ話すと言ったら普通に引き受けてくれた。ありがたいことだがもうちょっと疑ったり安全性の確認なんかをしてほしい。……危険なことにはならないよう全力は尽くすが。
「話には聞いていたが、本当に精霊が多いなここは。うちの雑魚のような奴がそこら中にうようよしている」
『ちょっとヒドイよアニキ~。おいらのことをそんな風に言うなんてさ~』
万丈目の言葉に反応してか、おジャマ・イエローが半透明の姿で現れ万丈目に纏わりつく。まったく万丈目ときたら、そのやや口が悪い所は何とかした方が良いと思うんだけどな。根は良い奴なのに伝わりづらいというか。
「お~っ! 前に一度見たけど、こうやって顔を合わせるのは初めてだな! 俺遊城十代。よろしくな!」
「僕は茂木もけ夫。よろしくね。おジャマ・イエロー君」
「俺は前にも会ったよな。改めて、久城遊児だ」
『よ、よろしくなのよ。……アニキと違って皆優しいんだよ~! おいらのアニキときたら……』
おジャマ・イエローはその大きな目をうるうるさせながら皆に挨拶し、横目でチラッと拗ねるような目を万丈目に向ける。
「ふん。攻撃力0の雑魚を雑魚と言って何が悪い。悔しかったらデュエルで役に立って見せろ」
万丈目は冷たくシッシと手で払う仕草をする。確かにおジャマは単体ではただのバニラカードだからな。おジャマは他のメンツが揃ってこそ真価を発揮するタイプだ。
『う、うわ~ん。おいらだって、おいらだって兄弟が揃えばお役に立つのよ~ん。……そうだ! 誰かおいらの兄弟の事を知らない?』
「おジャマ・イエローの兄弟ってことはグリーンとかブラックとかか? 悪いけどそんな精霊は見たことないぜ」
「僕も残念だけど……久城君は何か知らないかい?」
茂木の問いに俺も知らないと首を横に振る。この時代ではまだ実装されているのはグリーンとブラックだけだろうが、それにしたってイエローがこの調子なら残り二体もかなりキャラが濃そうだ。そんなのを見たら忘れるはずないものな。
それを聞いて、イエローはがっくりと肩を落としてしょんぼりとした顔をする。すると、
『大丈夫。大丈夫だよ! ほら。笑って! 良い子良い子!』
『うおっ!? レティシアよ。急に出るんじゃない! 止めるのだ!』
カタカタ!?
笑顔じゃない姿に反応したのか、レティシアが不意に実体化! そのままおジャマ・イエローの頭を撫で始める。腕に抱かれていたネクも連鎖的に実体化させられ、それを止めようと慌てて罪善さんも出現する始末。
「なんだお前は? ……子供?」
『私レティシア! 黒っぽいお兄ちゃん。あんまりおジャマ・イエローちゃんを苛めちゃダメだよ。皆笑ってた方がずっと良いもの!』
『ふむ。直接見るとお前も我が生け贄にふさわしいな。よろしい。お前も生け贄候補として我が名に震え慄くが良い。いずれ復活する我が名は』
『ネクちゃん! 皆を怖がらせるなんてめっ! だよ』
万丈目は急に現れた人型の精霊に驚き、レティシアはイエローをあやしながら万丈目にダメ出しする。ついでにまたいつもの如く口上の後で名乗りを上げようとしたネクを叱ってたりする。もうなんかお約束みたいになってる気がするな。
イエローも撫でられてまんざらでもない様子で、すぐに泣き止み少しだけ笑顔を取り戻す。
「あ~。万丈目。この子はうちの精霊のレティシアと、色々あって部屋に置いているネクだ。何となく分かるかと思うけど……実体化してる」
「それくらい見りゃ分かる。……久城。精霊というのは皆こう実体化出来るものなのか?」
「それはまだなんとも。俺のデッキが特別ってこともあるかもしれない。他にも実体化出来るのが何体か居るし」
そう言うと、万丈目は額に手を当ててため息を吐く。
「なんだ? 怖いのか万丈目?」
「さんだ! 怖いというより面倒だ。考えてみろ。ただでさえ鬱陶しいこの雑魚が、最悪実体化して俺に四六時中纏わりつくんだぞ。頭が痛くなる」
『うっふ~ん。おいらと万丈目のアニキがより親密な関係になるのね~ん!』
「だから纏わりつくな! あっちへ行ってろ」
からかうように言う十代を、お前は分かっていないとばかりに説明する万丈目。そしてまたくっつこうとしたイエローを掴んで他の精霊達の方に放り投げた。
「レティシアもせっかくだからあっちで遊んでおいで。イエローと色々話したいこともあるだろ?」
『うん! 分かった。行ってくるね!』
『おジャマ・イエローか。攻撃力0だが上手く使えば復活の役に……うおっ!? レティシアよ。考え事をしている時はもっと優しく運ぶのだ!』
何やらブツブツ言っていたネクを抱いて、レティシアはそのままイエローの所に歩いていった。仲良く……なるイメージしかしないな。なんだかんだコミュ力高いレティシアだもの。
「さて、うっとうしい奴が消えた所で、そろそろ本題に入るとするか。俺がここに来たのは精霊関係について興味があったから。それで久城が知っている限りのことをここで話すと言ったからだ。……という訳で聞かせてもらえるか?」
「俺もそこまで詳しいって訳じゃないんだけど、約束だからな。良い機会だから、十代も茂木も今回は精霊について知ってることや感じたことを話しあってみよう。話のネタとしては中々だろ?」
ここに集まった精霊が見えるメンバー。俺は一種の例外的なものだから当てにはならないかもしれないが、俺以外に三人も居れば何かしら見えてくるものがあるかもしれない。
「そうだな。俺と
「じゃあ僕は茶菓子のおかわりを取ってくるね。……ふふっ! こんな風に友達何人かでおしゃべりするのも久しぶりで楽しみだな」
十代の話は前に聞いているから何となくわかるが、万丈目と茂木の出会いはそう言えばどんな感じなんだろうか?
退屈はしなさそうだな。
さらりと流しましたが三沢が十代に初勝利です。
ただ本人も言った通り、万全の状態じゃない十代に勝っても三沢の中じゃノーカンなので、まだブルーに上がるつもりはありません。
もう少し神楽坂には待ってもらうことになりそうです。
次回は明後日投稿予定です。