マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 注意! 今回も独自設定タグがかなり仕事します。


精霊が見える者達の団欒 その二

 こうしてそれぞれの精霊との出会い。それをテーマに雑談に興じることになったのだが、それぞれの反応は中々に面白いものだった。

 

 まず万丈目とおジャマ・イエローの話からだが、

 

「船が遭難して、ノース校の潜水艦に拾われた時に市ノ瀬校長から貰った」

「いや待ってっ!? 最初から突っ込みどころ満載なんだけど!?」

 

 船が遭難してってなんだよっ!? いきなり大冒険の予感だよ万丈目。

 

「おおっ! いきなり面白そうな話じゃねえか! 続きを聞かせてくれよ万丈目!」

「さんだっ!」

 

 やっぱり呼び捨てには厳しい万丈目だったが、少しずつ学園を出た後の事を話してくれた。

 

 万丈目グループで所有している船で学園を出た所、途中水難事故に遭って遭難したこと。その際ノース校の潜水艦に拾われ、最初に会った時は身分を隠していた市ノ瀬校長からおジャマ・イエローを渡されたことなどだ。

 

「校長が言うには、このカードが俺の危機を察知したんだとよ」

『あの時は運命を感じたわ~ん。あの時のお礼をしてくれても良いのよん!』

「デッキに入れてやってるだけありがたいと思え」

『もう。いけず~!』

 

 途中から戻ってきたおジャマ・イエローがなんかくねくねして悶えてるが、なるほど。割と興味深いな。そうして考えてみると、見えるかどうかは別にしても市ノ瀬校長もおジャマ・イエローのことを知っていたっぽいな。次会うことがあったらちょっと話を聞いてみるか。と言ってもあんまり接点はないのだが。

 

 ちなみにその後の万丈目のノース校の話も手に汗握った。周囲を氷に囲まれた場所に存在するノース校。そこは厳しい自然と隣り合わせであり、入学試験もまた独特だ。

 

 まず扉はデッキの最低枚数である四十枚を確認しなければ開かないが、万丈目のデッキは海水でダメになっていた。その場合の補充用カードも用意されてはいたのだが、その場所がなんと学校の周りの()()()()

 

 おまけに強いカードほどより険しかったり見つけにくい所に置かれているという鬼畜ぶり。万丈目が言うには、断崖絶壁を登ったり洞窟やクレバスに入ったり、はたまたシロクマやシャチと戦ったりもしたらしい。

 

 まあいくら何でも多少の脚色はあるだろうが、ノース校では肉体が軟弱ではまず生き残れないみたいだ。カードにだけ集中させてほしい。

 

 そしてカードを集めて扉を何とか潜っても、そこから始まるのは新入生歓迎の死の五十人抜きデュエル。ランクの下の者から順に戦っていき、負けた所のランクから学園生活が始まるという荒行。

 

 だがそこは流石俺の推し。万丈目は五十人を全て倒した後、生徒会長の江戸川……この前ノース校の面々の中に居た屈強な男を破り、見事ノース校最高ランクであるキングの称号を手にしたという。

 

「何故かこの雑魚がデッキから離れようとしないので半ばハンデマッチになったが、まあ五十人程度なら恐れるに足らなかったな」

『あの時のアニキはカッコ良かったわよ~ん。もうおいらシビレちゃったのよ』

「凄いなあ万丈目君は。僕なんか確実に途中で眠くなってサレンダーしちゃうよ」

「良いな良いな! 万丈目の奴そんな楽しそうなことやってたのかよ! 俺もやってみてえ!」

 

 それぞれ方向性こそ違うものの、十代も茂木も万丈目の話にいたく感心していた。当然俺もだ。あと十代は割と似たようなことやってるだろうが。……この前の懇親会も、最後の相手が三沢じゃなかったらまだまだ連勝記録は続いていたと思うしな。

 

 

 

 

「じゃあ次は僕の番だね。と言ってもそこまで凄い出会いという訳でもないんだけど」

 

 もけもけ~!

 

 ふわりと飛んできたもけもけを優しく撫でながら、茂木はぽつりぽつりと話し始めた。

 

 聞いてみると、どうやら茂木は初等部の頃から時折精霊が見えたという。ただあくまでも調子が良かった時ぐらいで、月に一回見えるかどうかくらいだったらしい。

 

「でも中等部、特に一度入学前にこの学園の見学をした辺りから少しずつ見える頻度が増えてきてね。その時偶然拾ったのがもけもけとの出会いだよ」

「えっ!? お前それ拾ったの? 最初から持ってたとか貰ったとかじゃなくて?」

「そうだよ。それまでは見えると言ってもどこか朧気だったけど、もけもけを拾った時はいつになくはっきりと見えてね。それからはもうほとんど毎日見えるようになってた」

 

 茂木はそうどこか思い出すように微笑んだ。いや拾ったってそれかなり運命的じゃないか? つまり精霊関係の素養は元々あって、もけもけを切っ掛けに完全に開花したってことか?

 

 それからのことはおおよそクロノス先生が言っていた通りの事だった。

 

 三年前優秀なデュエリストとして周囲から認知されていたが、ある時を境にデュエルが変わる。戦った相手が脱力していくデュエルへと。それを重く見た学園側に隔離されて現在に至る……あれ?

 

「ちょっと待った。前デュエルした時から気になってたんだけどさぁ茂木。三年前に色々あってそれからこの寮に隔離されてたってことは……今お前学年はどうなってんだ?」

 

 十代が良いタイミングで俺の思ったことを代わりに質問してくれる。ずっとここに居たんじゃ出席日数なんかの問題もあるだろうしな。

 

「それがちょっとややこしいんだけど、デュエルで相手が脱力しちゃうようになったのが一年の半ば頃。そこからずっと隔離されてこの寮に居るけど、事情が事情ってことで授業は通信越しでやってるし、それなりに成績優秀だったからランクもそのまま。だから今は一応ブルーの三年生扱いかな。ただ進級は出来たけど卒業出来るかというと……」

 

 そこで茂木はその眠そうな垂れ目を少し引き締めてむ~と唸る。確かに学園側としては、この学園内で進級させるだけならまだしも下手に卒業させたら危ないと感じているかもしれない。

 

 この学園の卒業生が、外でデュエルして対戦相手を脱力させました。なんてことがホイホイ起きたらそれこそ厄介だし、少なくとも対処法が確立できるまではここに押し込める可能性も十分あり得る。

 

 十代も万丈目もその可能性に気が付いたのか、表情を少し険しくする。

 

「まあそこは難しく考えないでよ。僕も今の暮らしをそれなりに気に入っているんだから。卒業出来ないなら出来ないで、もうしばらくここを満喫するだけさ」

 

 そう言う茂木の顔は穏やかなものだった。本当にそう思っているようにも見えるし、内心を隠しているようにも見える。

 

「……そっか。分かった。なら俺は俺で、この学園にいる間はちょくちょくここに遊びに来るからな! 遊児! 万丈目! お前らもそうだろ?」

「万丈目さんだ。……ふん。まあ気が向いたらな」

「それにあくまでまだ可能性の話だしな。案外普通に卒業できるかもしれない。まあそれはこれからの茂木次第って奴だ。今日明日で何とかなる問題でもなさそうだし、じっくり考えていこうか」

 

 ただの問題の先送りかもしれないが、実際の所今の俺達に出来ることと言ったらほとんどない。ひとまず茂木の話はここでお開きとなった。

 

「ちなみに三年生ってことは敬語使った方が良いか? 茂木()()

「いや別に? 友達だし今さら畏まられてもね」

 

 試しにからかうように言ってもみたら、友達として普通に笑って返された。やるな。

 

 

 

 

「さてと。そんじゃ次は俺と相棒の話だな」

 

 クリクリ~!

 

 万丈目と茂木の話が終わり、次に語るのは十代とハネクリボーだった。と言っても俺は以前十代から聞かされたので多少知っているが。

 

 本校の入学試験の日。十代は遅刻して大慌てで会場に向かっていた。その途中偶然デュエルキングである武藤遊戯と出会い、その際にラッキーカードだと言われてハネクリボーを託されたのだという。

 

「あのデュエルキングに貰ったのか!?」

「それは羨ましいな~。世のデュエリストの憧れの的だもの」

 

 二人共これには驚いたようで十代を羨ましがっている。俺も遊戯には是非一度会ってみたかった。何せ一番最初の主人公だからな。それに闇のゲーム関係の話も聞いてみたい。もちろんやりたいとかじゃなくて対処法についてだ。

 

 あと強いて言えば、一戦交えてみたい気もない訳じゃない。この前の展示会でデッキだけは見たけれど、あれはあくまで当時のデッキだ。今はどんな風になっているかは気になる。

 

「じゃあそこから精霊が見えるようになったわけ……いやちょっと待った。確か以前怪談話を言い合った時、小さい頃モンスターの声が聞こえたって言ってたよな。その頃から素養自体はあったってことか? それがさっきの茂木と同じように、ハネクリボーと出会ったことで完全に開花したとか?」

「多分そうだな! 小さい頃は聞こえてたけど、ある程度大きくなったら聞こえなくなったし。ハネクリボー以外の精霊なんてその頃は見たことも……っ!?」

 

 話している途中で、一瞬十代が顔をしかめながら額を押さえる。

 

「んっ!? どうかしたの十代君?」

「いや、何か一瞬頭がズキッとして……うん。もう大丈夫だ」

 

 茂木が心配するように話しかけると、十代は軽く頭を振ってそのまま何事もなかったかのようにいつも通りに戻る。

 

「ほう? これは珍しい。このバカも一丁前に風邪でも引いたか? バカなのに」

「バカバカ言うなよ万丈目。もう大丈夫だっての! ……とまあ俺と相棒の話はそんなとこだ。それより遊児。最後はお前だぜ!」

 

 軽く万丈目とじゃれあいながら、これまで語っていない俺にバトンタッチする十代。トリかよ。と言っても正直どう語ったものか。ディーのことや幻想体のことをどう説明したら良いものやら。全部話すって訳にもいかないしな。

 

「あ~。正直皆に比べたらそこまで凄い話じゃないんだけど良いか? 十代と茂木には前少しだけ話したし、つまらないって思ったりしない?」

 

 一応予防線でも張ってハードルを下げようとしたのだが、

 

「多分それはねえよ。それに俺と茂木が聞いたのだって幻想体達に関しての事だけだったろ? 前から一度突っ込んだとこも聞いてみたかったんだよな!」

「久城……いや、俺のファンよ。幻想体というのが何かは知らないが、ここまで来て一人だけだんまりを決め込むというのはこの場では相応しくないだろうに」

「僕もちょっと興味あるな。久城君ももしかして僕みたいに拾ったりして出会ったの?」

 

 三人とも興味がある顔しているから困る。あと茂木。普通はそこまで運命的な出会いはしないから。まあ前回主人公から託されたり、漂流している時に命を救われたりとか他の二人も大概だけど。

 

 ……仕方ない。全て話すわけにはいかないが、どうにか言えそうな所だけでも語るとするか。

 

「それじゃあ俺と……この場合最初に精霊化した罪善さんかな。罪善さんの出会いから話すとするか」

 

 カタカタ?

 

 自分の名前が出たことに反応してか、さっきまで他の精霊達と一緒に居た罪善さんが俺の方にやってくる。まあ近くに居た方が説明はしやすいよな。

 

 俺は罪善さんに軽く笑いかけながら、皆にデュエルアカデミア……ひいてはこの世界に初めて来た時のことを語り始めた。

 




 今回の茂木の過去は完全に独自設定です。

 なにぶん精霊との出会いは詳しく描写されていないので想像ですが、能力の規模からみてかなり長い時間精霊と関係している可能性が高く、初等部からすでに素養はあったという扱いにしています。

 それがもけもけというきっかけを得て一気に成長し、成長し過ぎて制御しきれなくなって周囲が脱力してしまうという流れです。

 次回も明後日投稿予定です。
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