マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
全然内容はクリスマスではないですが、何とかクリスマスに間に合いました。
さて。いざ自分の事を話すとなるとどう話したものか。目の前の三人とも期待しているが、話せるところは限られてるんだよな。上手くぼかして話せれば良いが。
「コホン。まず前提としてさ、今俺が使っている幻想体デッキ。これはある奴からの借り物なんだよ」
「借り物?」
十代が不思議そうに言う中、俺は懐からデッキを取り出し机の上に置く。
「ああ。ちょっと理由があってさ、このデュエルアカデミアで俺の本来のデッキは使えない。だから代わりにって渡してくれたんだ。罪善さんとはこのデッキを受け取った時に出会った。いきなり出てきた時は俺もビビって腰を抜かしたものさ!」
「なるほど。確かにインパクトのある顔だもんな」
罪善さんはそれを聞いてどこか笑うようにカタカタと骨を鳴らす。
思えば最初は尻餅を搗くくらい怖かったが、今ではもう慣れてしまって急に現れない限りは平気になった。……流石に夜中にヌッと現れたら驚くけどな。
「精霊が見えるようになったのはそれが最初だ。まあこの場合俺に素養があったというよりも、それ自体に強い力のあるカードを使い続けたから無理やり素養が引き出されたと言った方が正しいのかもしれない。なんせこのデッキに慣れるためにその借りた奴と納得いくまでデュエルしたからな」
「納得いくまでってどのくらいだ?」
「そうだな。……正確な時間は覚えていないけど、時々休憩を挟みながら百連戦ぐらいぶっ通しで」
「「「百連戦っ!?」」」
それを聞いた三人がどこか驚いた顔をした。そこまで驚くことかね?
確かにちょっと多いかもしれないが休憩や食事を挟みながらだったし、ディーもあくまでチュートリアルで最初の数回は俺に動かし方を教えながらって感じだったぞ。時間もたっぷりあったし割と余裕をもってやってたんだが。
それにさっきの万丈目の話でだって五十人抜きしてたようだし、十代だって普通に何人もと戦うから連戦でもおかしくはないはずだよな。
「そして大体デッキの動かし方を覚えて調整をした時にそいつは言った。幻想体は大半が精霊化出来るってな。その言葉通り、最初は罪善さんだけだったけど、続々とカードが精霊化して出てくるようになった。今の所精霊化出来るのは…………このカード達かな」
俺はデッキから、罪善さんを始めとした精霊として動ける面々のカードを取り出して並べる。
『たった一つの罪と何百もの善』。
『小さな魔女 レティシア』。
『オールアラウンドヘルパー』。
『死んだ蝶の葬儀』。
『蓋の空いたウェルチアース』。
『幸せなテディ』。
『三鳥 大鳥』。
『三鳥 罰鳥』。
『三鳥 審判鳥』。
幸いというか丁度全部デッキに入っていたから説明しやすいな。
「ふむ。一、二…………九枚もあるのか? 多すぎるぞ」
「え~っと。これが罪善さんだね。それとそこに居るレティシアに、幸せなテディ」
「おっ! この前見た大鳥と審判鳥、罰鳥も居るな」
皆で一つずつカードを確認していく。こういう情報共有はしておかないとな。しかし万丈目の言う通り、もう九枚にもなったのか。これ以上増えたら本当に収拾がつかなくなりそうだな。
『お兄ちゃん達。呼んだ?』
「呼んでな……いや、茶菓子があるから食べるかい?」
『良いのっ!? ありがとうっ!』
『我が運び手よ。喜ぶのは良いが手はちゃんと……わっ!? 止めろそのクリームでベタベタの手で私に触るんじゃないぃっ!?』
あと名前を呼ばれたと勘違いしたレティシアとテディ、そしてレティシアに抱かれたままのネクもこちらにトコトコやってきたので、折角だから茶菓子として用意された俺の分のシュークリームを一つ分ける。
レティシアはニコニコしながらそれを頬張り、ネクにも食べさせようとしてネクが閉口している。ちなみにテディは最初から菓子には興味がないようで、今度は俺の身体によじよじと登って背中におぶさってきた。
寂しくて持ち主を締め上げるという衝動は、ヘルパーの修繕やレティシアと日頃遊んでいることで多少抑えられてはいるが、それでもこうして定期的に甘えてくるのは変わらない。なので多少ビクビクしながらもある程度は好きにさせている。
「……それとこの通り、十代にも話したけど幻想体達は、短い時間なら精霊化を通り越して実体化して物に触ることも出来るみたいだ」
「それは……何とも面倒な話だな。それが久城のカードだけの事ならともかく、場合によってはうちの雑魚やここの奴らも普通に精霊化から実体化しかねないわけか」
こちらに気を遣ってか、万丈目は少しマイルドな言い方をして難しい顔をする。万丈目なら一目見てカードの実体化の危険性を察しているだろうからな。そこは性善説の塊みたいな十代とは違う所だ。
「そう。なので最悪の場合、俺の意思とは別に幻想体が何かしらやらかす危険性もあるわけだ。基本的には俺の言うことを聞いてくれるけど、あくまでも行動を全て縛れるわけじゃない。だから」
俺だって自分の身は可愛い。出来れば厄介なことは他の誰かに丸投げしたいし、それをやっても良いタイミングで丸投げできる相手が居るのであれば普通にやる。
だが幻想体関連はどう考えてもそうじゃない。基本的に俺自身で何とかしなきゃならない案件だ。だから危ないと思ったらすぐに逃げろと言おうとしたら、
「おう! 任せとけって遊児! 前にも言ったけど幻想体達も含めてお前がピンチになったら助けてやるよ!」
十代の奴自分の胸をドンっと叩いて自信満々に言ってのけた。……まあ十代なら普通にそう言うわな。前もそんなこと言ってたし。
だけど万丈目と茂木はそうじゃないはずだ。だから、
「万丈目も茂木も手伝ってくれるよな?」
「ふっ! その何かをやらかすような幻想体まで助ける義理は無いが、ファンを見捨てたとあっては万丈目一族の名折れ。力ぐらいは貸してやらんでもない」
「僕に出来るかどうかは分からないけど、ちょっとくらいなら手伝うよ。友達だからね」
って即答かよこの二人もっ! 十代の問いかけに万丈目は腕を組んで軽く鼻を鳴らし、茂木もその眠そうな目を少しだけ引き締めて応える。
……まったくこいつらは。なんだかんだ仲間思いな奴ばかりなんだから。
「……ああもうっ! これじゃあ危ないから逃げろなんて言えないじゃないかっ! ピンチになったらよろしく頼むよこの馬鹿野郎共っ!」
そんなこんなで皆の各精霊との出会いの話は終わり、そこからしばらくゆったりとした時間が流れた。
「ふわ~っ。少し眠くなってきちゃったよ」
「……っと。結構長く話し込んでたからな。十代と万丈目はどんな具合? 疲れたり頭がボヤ~ってしてるか?」
茂木の大きな欠伸に俺は部屋に備え付けられた時計を見る。ここに来てからざっと三時間って所か。流石に今はまだ茂木の事もあるからデュエルは出来ないが、話をしたり精霊達と遊んでたら大分時間が経っていた。
「うんっ!? うぉれもぅだもぅだふぇいきだじぇ(俺まだまだ平気だぜ)!」
「少し眠気というか疲れが出てきたという所だな」
十代は小腹が減ったのか口いっぱいに茶菓子を頬張りながら返し、万丈目も少し気だるげではあるが特に問題はなさそうだ。
あとで十代は軽く説教するとして、万丈目のそれは話疲れからなのか茂木の能力の影響なのか分からないな。ただ逆に言えば、三時間くらい経たないと効かないくらいには耐性があることになる。
どうやら茂木の脱力の力は精霊関係の物で、俺や十代、万丈目のように精霊が見えたり話が出来るくらいになると効かなくなるということはほぼ確定か。
「流石に長居し過ぎたな。そろそろお暇するとしようか。レティシア達もそろそろ帰るよ」
『分かったの。じゃあ皆。またね!』
俺の言葉にレティシア達も、ここの精霊達に軽く別れを告げて精霊化を解きカードに戻る。なんだか保父さんにでもなった気分だな。あと十代は早く口の中の物を呑み込めよ。
そうして軽く片づけを済ませて帰ろうとする俺達。茂木も入り口まで見送ってくれる。
「今回も盛大にもてなしてもらって悪かったな。……これ大したものじゃないけどお土産としてもらってほしい」
俺は少し前に購買部で買っておいた、リラックス効果があるというハーブの小袋を手渡した。最初に会った時からちょくちょく眠そうだったからな。眠るのが好きというならより良い眠りのためにやれることをやるべきだ。
「ありがとう。……ねえ。次はこっちから時間が空いた時に誘っても良いかい?」
「ああもちろんだ。また十代と万丈目を誘っていくよ。二人はそれで良いか?」
十代は当然だろとばかりに力強く、万丈目はまあ気が向いたらなとばかりに頷いた。
そして茂木にさよならを言ってこの寮から出ようとした時、
「……あっ!? そうだ万丈目君」
「何だ?」
茂木が急に万丈目を呼び止めた。どこか訝し気な態度をとる万丈目に対し、茂木はいつも通りのほほ~んとした態度を崩さない。
「僕はね。最初君と君の精霊の仲が悪ければ引き剥がそうかななんて思ってたんだ。久城君や十代君には悪いけど、それで精霊が幸せになるのならね。……だけど」
そこで茂木は一拍置いて、穏やかな顔で微笑みながら続ける。
「おジャマ・イエローも君も、間違いなく相性が良いと思う。だからこれからも仲良くね」
「なっ!? ちょっと待て!」
「じゃあね!」
万丈目の制止も虚しく、茂木はそのまま踵を返して部屋に戻っていった。万丈目は「こんな奴と俺のどこが相性が良いんだ」と憤慨しながら地団駄を踏む。
「素直になれよ万丈目~! さっきも精霊達に懐かれてたし、おジャマ・イエローとの出会いも運命的だったしよ。そう言った面の才能もあるんだって!」
「さんだっ! え~いそれ以上言うな! この雑魚がますますつけあがるだろうがっ!」
『えへへ~。茂木って人分かってるじゃな~い』
さっきからおジャマ・イエローは、どこか頬を赤らめながらまたくねくねしていた。相性が良いという言葉に反応したらしい。
そうして俺達は茂木の寮を後にした。
帰りは大分日が落ちてしまったので、森を巡回していた大鳥を呼んで案内を頼むことに。
万丈目は最初森の中から急に出てきた大鳥に警戒していたが、さっき確認したカードの中に居たと知るや少しだけ態度が軟化する。イエローは思いっきりビビっていたが。
「お~スゲースゲー! ちょっとゴワゴワしてるけどこりゃあ楽だぜ!」
「十代もうちょっと優しく乗れよ。ゴメンな大鳥。嫌になったら体を揺すって振り落してやっても良いから」
前は俺が乗ったからという理由で、今回は十代が大鳥の背に乗せてもらうことに。ランタンを翳しながら先頭をズシンズシンと進む大鳥を、俺と万丈目は歩いて着いて行く。
大鳥も分かっている様子で、歩きでも普通についてこれる程度に速度を抑えてくれている。なので帰り道も俺達は雑談に花を咲かせていた。
「そう言えば二人共。
大鳥の定期的な揺れを満喫しながら十代がそう切り出してきた。それというのも少し前の授業で、大徳寺先生がその日希望者を募ってちょっとしたピクニックを企画していると話したのだ。
島の一角には何故か変な遺跡があって、今回は観光がてらそこまで行って昼食を食べて帰るという。この島ホントどうなってんだ? そんな昔からあるの?
これは当日参加も認められていて、十代はオシリスレッドの義理で一応翔と隼人を誘っていくらしい。
「俺はパスだ。何故貴重な休日に遺跡へピクニックになぞ行かねばならんのだ」
「そっか。じゃあ仕方ないな。遊児はどうする?」
万丈目はどうやら不参加らしい。似合わないという訳ではないが、あくまで自由参加だからな。無理に誘うものでもないと、十代はすっぱり諦めて今度は俺に振る。……そうだなぁ。
「まあたまにはそういうのも良いか。俺も十代達に付き合うよ」
最近勉強や調べものばかりだったからな。それに遺跡見物というのも面白そうではある。
唯一の懸念はこれがアニメ版で何らかのイベントに繋がる場合だが、流石にそういうのは
まあそういう訳で、明日はのんびり外から遺跡を眺めるとするか。そう地味に明日を楽しみにしながら、俺達はオシリスレッド寮までの道を歩くのだった。
割とデカいフラグを立てていく遊児でした。
次回は三日後投稿予定です。