マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
注意! 独自設定タグが少し仕事します。
『か~えろかえろ! お部屋に帰ろ! ルンルンル~ン!』
寮へと帰る道の途中、レティシアはいつものように自作であろう、美しいがどこか調子っぱずれな歌を響かせる。
『お前は相変わらず明るいな』
『だって笑っていた方が楽しいもの! ネクちゃんもほらっ! 笑って!』
そう言われてもどこに笑う要素があると言うのか……いや。くじけている場合ではない。今の所直接遊児からエネルギーを吸い取ることは失敗続き。こうしてレティシアに運んでもらわねばならない状況に甘んじている訳だが、私とて他に何の策もないわけではない。
ふむふむ。そうして考えると、あながち笑える要素が無いわけでもないな。奴の泣きっ面を想像すると多少は嗤えるというものだ。
ふっ! 自分に直接危害を加えられないからと言って油断している
『罰鳥さんこんにちは! ……ネクちゃん大丈夫? さっきから罰鳥さんに突っつかれてるけど』
『ぬお~っ!? 何故だ? 何故私がこんな目に~っ!?』
森から少し離れてきたというのに、わざわざ罰鳥が私達を察知して追ってきたらしい。
おのれこの毎回会う度に突っついてくる鳥め。我が器の頭に穴が開いたらどうしてくれるっ! 私が復活したら鳥かごにでも閉じ込めてくれるからな!
……あとレティシアよ。もしくはテディ。黙って見ていないで助けてくれ。頼むから。
昼間の散歩から戻った私達であるが、今日は幻想体の大半でお出かけだ。今回で二度目になるが、遊児が茂木という精霊を見ることの出来る男の部屋に向かうので同行することとなった。
森からあまり離れたがらないあの三鳥はあのまま巡回を続けている。一応カードは遊児が持っているので呼び出そうと思えばすぐに呼び出せるのだが、顔を合わせると攻撃してくるあいつらには会いたくないので呼ばないでほしい所だ。なのだが、
『だからなんで毎回私の頭を突っついてくるんだコイツはっ!?』
「それはお前……罰鳥の中で悪者認定されているからだろ?」
『言ってる場合かっ! アイタタっ!? 早く行くのだ我が生け贄よ!』
茂木の寮に入るための入り口は凶暴な鶏共に守られ、それを突破するのは困難だ。だが何故か鶏共と仲の良い罰鳥が居れば、奴らは出入りする者を襲わない。しかしその肝心の罰鳥は、毎回私を目の敵にして突っついてくるからたまらない。
結局罰鳥のこの暴挙は、我々が茂木の寮に入るまで続いた。ホントに何なのだアイツは?
こうして茂木の寮についたわけだが、今回はこの部屋の主である茂木や時折遊児の部屋に来る十代とは別の人間が同席していた。
「まあそう言うなよ万丈目! お前むちゃくちゃ懐かれてるじゃんか!」
「さんだ! だからこれはこいつらが勝手に纏わりついてくるだけだっ! こら離れろっ! 鬱陶しい」
「あはははっ! 初対面の人にこんなに精霊達が懐くなんて初めてだよ」
目の前で茂木の部屋の精霊達に纏わりつかれている男の名は万丈目。ここに居る他の奴らと同じく、精霊が見える体質の人間だ。
しかし本当に凄まじく懐かれているな。純粋な力だけならこの中ではやや低めだが、その分下級の精霊からしてみれば親しみやすいのだろう。現に万丈目にすげなく振り払われても、気分を害した様子もなくそこらを漂っている。
そうして人間達は人間達で、精霊は各自で雑談などをしていた訳だが、
『う、うわ~ん。おいらだって、おいらだって兄弟が揃えばお役に立つのよ~ん。……そうだ! 誰かおいらの兄弟の事を知らない?』
突如万丈目の手持ちらしいおジャマ・イエローの精霊が、情けなく瞳をうるうるさせながら聞きまわり始めた。しかし誰も知っているらしきものは居ず、おジャマ・イエローはそのまま肩を落としてしょんぼりとした顔をする。
……マズイっ! さっさとその情けない顔を何とかするのだそこのおジャマ・イエローよっ! さもなくば、
『大丈夫。大丈夫だよ! ほら。笑って! 良い子良い子!』
『うおっ!? レティシアよ。急に出るんじゃない! 止めるのだ!』
こうなるから嫌だったのだ。他者の悲しむ顔を見過ごせない我が運び手レティシアが、わざわざ実体化してまでそいつを慰めに入る。ついでに抱き抱えられていた私も巻き添えである。
しかし直接実体化して見てみると、目の前の万丈目とかいう男は中々に悪くない。確かに他のメンツに比べれば精霊力はやや劣るが、それは最近素質が開花したからであって時間をかければまだまだ伸びる。
『ふむ。直接見るとお前も我が生け贄にふさわしいな。よろしい。お前も生け贄候補として我が名に震え慄くが良い。いずれ復活する我が名は』
『ネクちゃん! 皆を怖がらせるなんてめっ! だよ』
むぅ。我が生け贄にふさわしい程の能力があると褒めたのだが叱られた。その後イエローは立ち直ってまた万丈目に纏わりついていたが、遂に万丈目に捕まって他の精霊達の所に放り投げられる。……
『おジャマ・イエローか。攻撃力0だが上手く使えば復活の役に……うおっ!? レティシアよ。考え事をしている時はもっと優しく運ぶのだ!』
私の策にどう組み込んでやろうかと考えていたのだが、レティシアがそのままイエローを追っていくので私も連れまわされることになった。運び手が活動的すぎるのも考え物だ。
さて。使い手達が話し合いをしている中、私を含む精霊達が何をしているかというと……。
『よ~し行くよ! ……えいっ!』
『ほほぅ。6か。良い目だな。流石我が運び手。着いた先は……何っ!? 振り出しに戻るだとっ!?』
『うっふ~ん! これでネクちゃんがビリなのね~ん』
『何故だあぁっ!?』
茂木の部屋には暇をつぶすためか、各種一人用のゲームが取り揃えられていた。だが決して多人数用のゲームがないわけではなく、こうして精霊同士で遊興に耽ることも出来るわけだ。
そこはデュエルだろうと言う者が居るかもしれないが、カードの精霊にとってデュエルとは特別な意味を持つ。場合によっては
もちろんよほどのことが無ければ消滅という事態にはならないが、なので遊興であっても精霊同士ではデュエルをあまりやることはなく、代わりにこのボードゲームを引っ張り出してきたという訳だ。
ちなみに今の参加者は私(サイコロを振るのはレティシア)、ハネクリボー、おジャマ・イエロー、あと近くで浮かんでいたもけもけである。
他の精霊達は思い思いに勝負を観戦したり、他のゲームで対戦したり、あるいは我関せずとのんびりする者もいた。ちなみに面倒な葬儀と罪善は、さっきからオセロとかいうゲームで対戦していてこちらから注意が逸れている。
クリクリ~!
ハネクリボーが自分の番だとばかりにサイコロを手に取り、コロンとそのまま振って自身のコマを動かしていく。……くっ!? またハネクリボーがトップか。
『すごいすごい! これで三連続でハネクリボーの勝ちだね!』
『負けて喜ぶんじゃないレティシアよ。……もう一度だ。次にやる者は誰だ?』
……っふっふっふ。この私がただ暇つぶしに双六に耽っていると思うなよ。これぞ壮大な我が策の一つなのだ。
遊児のエネルギーを直接吸い取ることは失敗した。
だが下手に他の人間に手を出せば遊児、そして幻想体達がおそらく黙っていないだろう。それこそあの忌々しい三鳥や、私とすこぶる相性の悪そうな罪善や葬儀の奴がここぞとばかりに実力行使に移るはずだ。
さらに言えば、確実に
以上の事から人間には手が出せん。かと言って、遊児の提案通り地道に手伝ってエネルギーを集めるなど屈辱以外の何物でもない。
なら人間以外、
だが気心の知れた仲であれば? それこそ多少吸い取っても笑って許せる間柄であればどうだ?
つまり端的に言えば、仲良くなる(フリ)ことでエネルギーを頂き、いずれ器を修復して溜め込んだエネルギーを使い復活するという作戦だ。
そのためならば、私は何度敗北という挫折を味わおうとも再び立ち上がって双六に興じることが出来る。さあ行くぞ。次のゲームだ。
クリクリ~?
もけもけ~?
『ネクちゃん。二人共今度は他のゲームやろうって言ってるよ!』
『そうねぇ。そろそろ他のゲームをやっても』
『おのれお前ら。特にハネクリボー。勝ち逃げは許さんぞ。もう一回だ!』
……別に双六で負けっぱなしは悔しいとか、一回くらいは勝ちたいとかそういうことはないぞ。
その後二度双六で勝負したが、今度はおジャマ・イエローともけもけにも一位を取られた。悔しくなんか……ないからなっ!
何故か書いていく内に、どこか最初に比べてこう何とも言えない感じになってきたネクの話でした。
次回は……ちょっと未定です。正月ですので。