マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 注意!! 今回独自設定タグが思いっきり仕事します。

 いやいやこんなわけないだろうと思う読者の方もおられるかとは存じますが、もしかしたらこうだった可能性も僅かにあるのではないかと寛容かつ温かい目で見守っていただければ幸いです。

 それと、前話のタイトルを一部修正いたしました。


課外授業 星の名を持った騎士

『……如何かしら? その涙と絶望で鍛えられた剣の味は。……本来なら騎士の礼に則って正面から行きたいところだけど、守るべき人が危険にさらされている危急の時だもの。多少の無作法は許してほしいものね』

 

 絶望の騎士が突如現れてそう言いながら、腕を押さえて悶絶する長槍兵達を睥睨する。()()()()()()()というのにそう思わせる隻眼は横から僅かに見えるだけでも鋭く、それを直接受けている長槍兵たちにはどれほど突き刺さっていることか。

 

『お、おのれ。墓荒らしの新手か』

『墓荒らしなどではないのだけれど……そうね。ここに入った時点で、貴方達の言う墓荒らしの範疇かしら。……どうする? まだ向かってくるのなら腕だけではすまないけれど、逃げるのなら追わないわ。……まだ私に、みすぼらしいけど騎士の矜持が残っている今の内ならね』

『くっ…………退くぞっ!』

 

 今の状況では不利だと判断したのだろう。長槍兵達は憎々しげにこちらを一瞥して、そのまま去っていった。……槍を置いていってしまったけど良いのか? あれじゃあ長槍兵じゃなくてただの兵じゃないか?

 

 兵達が走り去っていくのを確認すると、絶望の騎士はふぅと息を吐いてこちらに向き直る。

 

「あ……ありが……とう」

 

 礼を言おうとしたが、頭がガンガンして呂律が回らない。というか今にも気を失いそうだ。そうならないよう必死に意識を保つ。

 

 絶望の騎士はそんな俺に優しく手を伸ばし、

 

 

『嘆かわしいこと。こんな人が私が護るべき相手なんて。……恥を知りなさい』

 

 

 その手に横から飛来した細剣を掴み取り、そのまま俺の頬にピタリと当てる。

 

 ……動けない。頭がガンガンするのを差し引いたとしても、ほんの少しでも気を緩めたら、そのままこの刃が俺を害するぞと言わんばかりの威圧感だ。

 

 カタカタっ!?

 

 壁に叩きつけられたことからどうにか立ち直った罪善さんが、どこかオロオロとしながら俺と絶望の騎士を交互に振り向く。

 

『罪善は口を挟まないで。……いいこと? よく覚えておいて。()()()()()()()()()()()

 

 罪善さんを手で制しながら、絶望の騎士は冷たい声で剣を突き付けたままこちらに語り掛ける。その顔は先ほど長槍兵達に向けていたものよりはほんの少し穏やかで、しかし険が全くないという訳ではなかった。

 

『私は役割として誰かを守ることを自分に課している。今はたまたまそれが貴方というだけ。……私のカードの持ち主だというのなら、()()()()()()()()だというのなら……せめて守りたいと思わせる人であることね』

 

 確かに絶望の騎士の言う通りだ。俺はカードの持ち主ではあるけれど、俺自身に力は無くて幻想体達に対する強制力なんかも一切無い。あくまで皆は厚意で助けてくれているだけだ。

 

 対して絶望の騎士は今会ったばかり。厚意も何もあったものじゃない。むしろ初めて会ったはずの俺をこうして助けてくれただけでもありがたいことだ。

 

 どうやったら認められるのかは知らないけれど、俺に出来ることは今の所真摯にその言葉を受け入れることしかない。俺は何とか絶望の騎士の言葉に対して首を縦に振る。

 

『……良いでしょう。今の気持ちを忘れないように。……罪善ももう良いわよ』

 

 カタカタ!

 

 一瞬の間の後、剣を静かに引く絶望の騎士。その言葉を聞いた罪善さんが、すぐさま俺の近くに飛んできて光を放つ。……あぁ。少しずつではあるけれど、光を浴びて頭がはっきりしてきた感じがする。まだ痛いは痛いのだけど、大分マシになった感じだ。

 

「ありがとう罪善さん。……よっと! それと、改めてありがとう。えっと……絶望さん? いやしかしそれだとな」

『……どうとでも、お好きなように呼べば良いわ』

 

 どうにか立ち上がれるようになり、罪善さんに礼を言った後で絶望の騎士にも礼を言おうとする。しかし絶望の騎士とフルに毎回言うのは長いし、絶望さんというのはいくら何でも呼び方としては悪い気がするしな。

 

 まごまごしていると、御本人から気を遣われてしまった。かと言って絶望さんは…………うんっ!?

 

 そこで目についたのは、絶望の騎士の持っている剣の持ち手。ナックルガードも含めて星の模様があしらわれていて、纏っているドレスにも星空のような装飾がある。……そうだ!

 

「“セイ”……セイさんって呼んで良いかな? ほらっ! 星が好きみたいだし、漢字で星の事をセイとも言うから」

『セイ……ね。さん付けすると毒にもなる名前とはまた』

「あっ!? そ、そんなつもりはなかったんだけど」

 

 しまった!? 気に障ってしまったか。……俺がアタフタしていると、彼女はほんの僅か、よく見ないと分からないレベルで口角を少し上げて微笑む。

 

『フフッ。セイで良いわ。……では、この騎士の成れの果て。毒になるか薬になるかは貴方次第。しばらくの間、貴方を護りながら見極めさせてもらうわ』

「ああ。俺は久城遊児。よろしく頼むよ。セイさん」

 

 そうして絶望の騎士……セイさんの差し出した手を、俺は今度こそしっかり握りしめたのだった。

 

 

 

 

『……良いわ。こっちへ』

 

 カタカタ!

 

「分かった!」

 

 滑るように進むセイさんの声と罪善さんに促され、俺は素早く建造物を壁伝いに移動する。よくテレビで見てやってみたいとは思っていたけど、実際は相当しんどいぞ。

 

 まだ頭痛はするが、罪善さんのおかげでごく軽いもの。あそこで休んでいたらすぐにさっきの巡回が応援を連れてくるとセイさんに急かされ、俺達は今移動しながら他の飛ばされたであろうメンツを探しているのだ。しかし、

 

『侵入者だ! 侵入者だぞ!』

『探せっ!』

 

 さっきから巡回の動きが慌ただしい。陰に隠れて何度やり過ごしたことか。多分さっきセイさんが追い払った奴が他の奴に知らせたんだろう。もしくは十代達が同じように見つかったのかもしれないが。

 

『警戒厳重ね。……どうする? さっきの兵の数人程度であれば蹴散らすことは容易だけど?』

「……いや。どう考えても多勢に無勢で追い込まれるだろうし、出来ればこれ以上戦って大事にはしたくない。それが分かってるからセイさんもさっき、トドメを刺さずに腕を狙って槍を持てなくするだけに留めたんだろ?」

 

 さっきの攻撃。どれも正確に腕を貫いていた。相手が反応できなかったことから、やろうと思えば急所を射抜くことだって出来たはずだ。なのに誰一人殺さなかった。セイさんも俺と同じ考えなのだと勝手に推測する。

 

『……そこまで深く考えたわけじゃないわ。ただ()()()()()、不意打ちで仕留めるというのは恥だったというだけの事よ。逃げていく彼らを追撃しなかったのも同じ。……もちろんあそこでまだ向かってくるようであれば容赦する気はなかったし、貴方をこれ以上狙うようでも同じだったわ』

 

 セイさんはこともなげに言う。つまりセイさんは騎士としての在り方にこだわっている訳だ。だけど一応の護衛対象である俺が狙われるようであればこちらを優先すると。

 

 少しおっかない感じがするけど、どうやら予想より良い人らしい。

 

『……そのニマニマ笑いを止めて。……ひとまずあそこに隠れましょう』

 

 少し嫌そうな顔をしながらもセイさんが指差したのは、小さな建物らしき場所。ドアはなく入り口と窓があるだけで、中から音もしないことから空き家か何からしい。

 

 このまま動きっぱなしでは体力を消耗するだけだし、あそこなら少しは休めるかもしれない。おそらくそういうことも踏まえて言ってくれているのだろう。

 

「分かった。あそこでちょっと休んでいこう」

 

 俺達は巡回の目をどうにか盗んでその建物の中に転がり込んだ。

 

 

 

 

 中は特に何もないそこそこの広さのある空間だった。倉庫か何かかな? そこで身を潜め息を殺し、少しして巡回が離れていくのを確認しようやく一息つく。

 

「…………はあ~。ようやく行ったか」

『そのようね。……このままもう少し休んだら出るわよ』

 

 俺は少し息切れしているのに、セイさんはまるで疲れた様子を見せない。これが幻想体と人間の体力の差かよ。

 

 罪善さんから出る光を浴びながら、俺は少しずつ息を整える。そして、

 

「……なあ。ちょっと良いか? 気になってたんだけど、ディーが言うにはカードから幻想体は今呼び出せないらしいけど、なんでセイさんや罪善さんは普通に出てこれたんだ?」

『質問ね……まあ少しなら良いでしょう。答えは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。……そのペンダントを見れば思い出すかしら?』

 

 その言葉に、俺は首から下げていたペンダントをそっと手に取る。もう先ほどのような強い光と熱は発していないが、それでもほんのりとは放っている。

 

『幻想体はそれぞれ自分のカードを依り代に精霊化する。それは私も罪善も同じ。……だけど例外として、私達にはもう一つ依り代があるわ』

「そっか! このペンダント!」

 

 考えてみれば、このペンダントを作る際にディーにカードを選ばされてたな! つまりあの時選んだ幻想体はペンダントからでも呼び出せるって訳か!

 

『気が付いたようね。……私の場合正確にはまだ精霊化していないのだけど、この世界に満ちている力を使って無理やり実体化しているの。……この世界だから出せない幻想体も居れば、この世界だからこそ出せる者も居たということね』

「そうだったのか」

 

 まあ何はともあれこれは不幸中の幸いだ。罪善さんもセイさんも頼りになる幻想体だし、あの時この二体を引き当てて本当に助かっ……んっ!? 

 

 そう言えば、あの時もう一枚選んでいたよな。確か名前は…………ペスト、

 

『大分お疲れのようだね久城君。飲み物飲むかい?』

「ああ。ありがとう……って!? さっきから姿が見えないと思ったら、今までどこ行ってたんだよディー!?」

 

 あまりにも自然に飲み物を手渡してきたので一瞬スルーしかけたが、そこに現れたのはさっきからいつの間にか姿を消していたディーだった。

 

 

 

 

 ……ってあれ? 三枚目何て名前だったっけ? 

 




 という訳で、絶望の騎士ことセイさんでした。

 口調や名前は完全に独自設定です。実際はもっとダークかつ悲しみと絶望に満ちた性格だった可能性が高いのですが、あくまで本体の影法師ということで若干皮肉屋かつ真面目な性格になっています。

 個人的には、完全には絶望に堕ちていない騎士というイメージですね。

 次話も三日後投稿予定です。
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