マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 お見舞いって良いですよね! 自分が弱っている時に手を差し伸べてくれる人が居る。それはとても良いことなのだと思います。


課外授業の後始末 その二

 

 放課後。

 

「お~っす! 元気か遊児! ……おわっ!?」

「ダメだよアニキ医務室で大きな声出しちゃ!? 久城君。お見舞いに来たよ!」

「ドローパン買ってきたんだな!」

 

 俺が医務室のベッドで明日に備えて予習をしていると、ガラリと扉を開けて十代達三人が入ってきた。幸い今は鮎川先生は出ているから良いけど、十代はもう少しそういうとこを勉強した方が良いかもな。

 

 まあ十代が驚いたのは、半透明で今も俺の腕にしがみついているレティシアとテディを見たからということもあるので仕方ないのだが。

 

「おう! ありがとうな皆。だけど昨日も来てくれたばかりだろうに、わざわざまた来てくれるなんてな。どうせ明日には俺も寮に戻れるんだから別に良いのに」

「へへっ! 寮に戻る前に寄るくらいなら手間にもならないぜ」

 

 十代は鼻を擦りながらそう返した。いやお前はそうかもだけどさ。隼人なんかまだ松葉杖を使ってるじゃないか。俺の視線に気づくと、隼人はそのまま軽く松葉杖を持ち上げてみせる。

 

「これなら心配要らないんだな! もうすっかり良くなったから、松葉杖を返しに来たっていうのも理由なんだな!」

「そうそう。だから別に気にしなくて良いんだよ久城君」

 

 お前達……まったく。こういう時こそ優しさが身に沁みるなぁ。皆して良い奴ばっかなんだから。こいつらといい()()()()()()

 

「まあ立ちっぱなしもなんだからそこに座ってくれよ。……そうだ! これ食うか? ついさっきまで明日香が見舞いに来てくれていたんだ。これはその土産」

「ありがとな! じゃあ俺このリンゴも~らいっ! だけど珍しいな遊児。お前いつも明日香の事天上院って呼んでなかったか?」

 

 ああそのことか。十代がかごに入った果物の詰め合わせからリンゴを取りながら不思議そうに聞いてくる。別になんてことは無い。さっきまで見舞いに来てくれていた明日香に「名前を呼ぶときは明日香で良いわよ。天上院さんって言うのも今更堅苦しいでしょうし」と言われたから呼び方を改めただけだ。

 

 元々心の中では普通に明日香と呼んでいたし、それに合わせるだけなら簡単だ。……万丈目の方は未だにさんと付け忘れるのでもう向こうも半分諦めつつあるけどな。

 

 そう説明すると、

 

「そっか。もうちょっと早く来ればよかったな。……どうせなら明日香も一緒に皆でもう一度この前の事を話しておこうと思ったんだけど」

 

 十代は軽く首を横に振りながらそう言う。この前の事という言葉に他の二人も僅かに反応する。

 

「あの事か……ねぇ。本当にあれって夢じゃなかったんだよね。僕今でも信じられないんだよ」

「昨日も散々話したじゃないか。夢なんかじゃないさ。俺達は間違いなくあの時精霊達の世界に居た。……これが証拠だ」

 

 翔のどこか不安そうな言葉に、十代は首から提げたペンダントを見せる。

 

 そう。昨日も見舞いに来てくれた十代、翔、隼人、明日香の異世界に行った面子でこの前の事、異世界での出来事を互いに話し合った。

 

 何せ十代、俺、そして他の皆の三手に分かれて跳ばされていたみたいだからな。互いにどういった状況だったかをすり合わせる必要があったわけだ。まさか俺が寝ている間に、闇のデュエルやら墓守達からの撤退戦があったなんて初めて聞いた時は驚いた。

 

 ちなみに大徳寺先生は欠席。引率している中生徒が二人も怪我(俺に至っては医務室に泊まる必要があるレベル)したので、上の方にみっちり注意などをされていたらしい。……注意だけで済んで良かったというべきかもな。減俸も十分あり得た。

 

 しかし話し合った後の今でも翔はまだ受け入れ切れていないようだ。まあ無理もないけどな。

 

「俺は眠っていたから分からないけど、実際にその世界の物がここに在るんだからある程度は認めても良いんじゃないか? ……俺や隼人も怪我を夢ってことでなくしたいけどな」

「あっ!? …………ごめん。隼人君も久城君も」

「俺は気にしてないんだなあ。それに、あの世界だからこそデス・コアラが力を貸してくれたんだと思うと……ちょっと嬉しいんだな」

 

 翔が謝ってくるが、隼人は本当に気にしていないようだし、俺も気に障ったということもないので軽く手を振っただけで返す。

 

 しかし話だけは聞いていたが、まさか隼人のデス・コアラが実体化してくるとはな。これやっぱり隼人もそういった方面の素養があるんじゃないか?

 

「そういえば遊児。遊児が寝ている間も凄かったぜ! どこからともなくやってきた漁船が墓守達をぶっ飛ばしたかと思ったら、そこから絶望の騎士が眠っているお前をお姫様抱っこして降りてきた時はもう唖然としたぜ!」

 

 漁船云々は何となく察しが付くから良いとしよう。俺があそこで急に眠くなったのもそれ関連だなと今考えれば分かる。……でもセイさんなんで俺をお姫様抱っこ? 普通逆じゃね? かなり恥ずかしいんですけどっ!?

 

 

 

 

「……よぉ。大分賑やかだな」

「おお! お前も来たのか万丈目!」

「さんだ」

 

 十代達と話し込んでいると、途中から万丈目もお見舞いに来てくれた。万丈目もレティシアとテディを見て一瞬驚いた顔だったが、そこは流石の俺の推し。すぐに気を取り直して何事もなかったかのように平静を装う。

 

「……って何で俺がここに居るって知ってるんだ?」

「こいつらがレッド寮の食堂で話しているのを偶々な。……水臭いぞ久城。俺にファンを労る度量がないとでも思ったか」

「ごめん。どうせ明日には復帰するし、一日や二日ぐらいなら敢えて言うこともないかなあってな」

 

 俺がそう言うと、万丈目はどこか呆れた様子で見舞いの品だろう包装された箱を差し出してきた。許可を取って早速開けてみると、中にはちょっとお高そうなクッキーの小袋が入っていた。

 

「次に茂木の所に行く時の手土産のつもりだったがお前にやる。それを食って早く怪我を治……ってお前らっ!?」

「いやあ悪いな万丈目! このクッキーめっちゃうんめぇ~っ!」

「ホントホント。とっても美味しいよ万丈目君!」

「このサクサク感が絶妙でたまらないんだな!」

 

 まだ話してる最中だってのに、十代達ときたらさっさとクッキーを食べ始めているじゃないか!? おいこらお前ら! それ一応俺への見舞いなんだぞ!

 

「ったくこいつらときたら……すまないな万丈目。クッキーありがたく頂くよ! けど茂木にも悪いな」

「心配するな。茂木用にはまた別の物を見繕うとする。え~いどけどけ。俺様の場所を空けろ!」

 

 万丈目はそう言いながら、強引に自分が座る場所を確保する。半透明だけど幻想体達も居るから割とキツキツだ。

 

「……それで? 一体何があってそんな怪我をした?」

「あ~。それね。この怪我はちょっとピクニックで遺跡に行って高い所から落ちて」

「嘘だな」

 

 バッサリだった。万丈目は俺の目を見据えながら続ける。

 

「お前ともあろうものが、ただ遺跡から転落して頭をぶつけるようなヘマをするとは思えん。そこの馬鹿共なら話は別だがな」

「お~い。それはないぜ万丈目……サンダー」

「そうっすよ! 酷い言われようっす!」

「あんまりなんだな!」

「うるさい馬鹿共! 食べかすをこぼすんじゃない」

 

 万丈目の一喝に、十代達は顔を見合わせてすごすご引き下がる。……まあ今のクッキーをモグモグやっている状態では説得力のかけらもないけどな。あと万丈目もここ医務室だからね!? 今は良いけど基本静かにな。

 

 しかしどうしたものか。やたら俺への信頼度が高いのはさておくとして、精霊の世界に行ってきたなんて普通に話して信じる訳が……いや待てよ!? 万丈目は精霊関係の事を知っているから、意外に信じてくれるかもしれないな。

 

 俺は十代達の方に目配せする。信じてもらえるかは別として、一応話して良いか同意を求めたのだ。俺の考えていることが伝わったのか、十代達は軽く頷く。……よし。なら話すとするか。

 

「実を言うと……笑わないでくれよ。俺達は遺跡から精霊の世界に行ってきたんだ」

 

 そうして俺は万丈目に、課外授業であったことを話し始めたのだ。その結果、

 

「……ということがあったんだ」

「ちなみにこれがそこで貰った奴な!」

「…………なるほど。災難だったな」

 

 普通に信じてくれました。十代が見せびらかすように掲げるペンダントはチラッと見るだけに留まる。あまりにもあっさりだからちょっと拍子抜けするくらいだ。

 

「疑わないのか? 普通こんなこと言われたら悪ふざけかなんかだと思うんじゃないか?」

「普通の奴が同じことを言ったら確かにそう思うが、少なくともお前とそこの馬鹿は普通ではないしな。ただ不注意で転落したよりはまだ信憑性がある。それに」

『アニキ~! おいら、あのペンダントから妙な力を感じるのよ~ん』

 

 突如おジャマ・イエローが半透明の姿で現れ、万丈目の肩に乗って十代のペンダントを指差す。

 

「この通りだ。この雑魚が授業の間もそのペンダントに反応してな。それも絡んでいるのであれば猶のことだ」

「そっか。そういうことなら納得だ! そう思うだろ遊児」

「……まあな」

 

 なんか俺の事をどう思っているのか小一時間ほど問い詰めたいワードが出てきたけど、万丈目はどうやら信じてくれるみたいだ。

 

 精霊が見えない翔と隼人はよく分からないと言った顔をしていたが、まあ万丈目が普通に信じた時点で改めて何か特に言うこともなかった。

 

 

 

 

「貴方達! もう日が暮れるし、明日も授業があるんだからそろそろお帰りなさい」

「あっ!? やべっ!? そろそろ帰るわ遊児」

「ああ」

 

 話し込んでいるといつの間にか時間は経つもので、戻ってきた鮎川先生に言われて窓の外を見ればもう薄暗い。これ以上暗くなっては帰りに差し障ることもあって、十代達と万丈目は慌てて帰り支度を始める。

 

「じゃっ! また明日授業でな! 待ってるぜ!」

「ちゃんと居眠りしないで起きて待ってろよ十代。翔も隼人も時折は横から注意してやってくれよ。こいつ佐藤先生に睨まれてるから。……それと万丈目。クッキーありがとうな。大事に食べさせてもらうよ」

「ふん。そんな大層な物でもない。さっさと食べてさっさとまた授業に来い。……待ってるぞ」

「お大事になんだな!」

「じゃあね!」

 

 口々にそう言いながら去っていく皆。……ふぅ。嵐みたいなやつらだった。

 

「ふふっ! 慕われてるわね。あんなに友達が来てくれて」

「まったく。俺にはもったいないくらいの奴らですよ」

 

 鮎川先生がそれを見てクスッと笑い、俺もしみじみそう思った。

 

 それからはしばらく見舞いに来る人もなく、怪我をして運ばれてくる人も居ないという静かな時間だった。聞こえてくるのは鮎川先生が書類を纏める音と、俺が予習でペンを走らせる音ぐらい。

 

 途中夕食(病院食のようなもの)を頂き、軽く鮎川先生と談笑し、その間幻想体達もそんなに話しかけてくることもなく時間だけが過ぎていく。……そして、

 

「……ふぅ。そろそろ時間ね。私は自室に戻らせてもらうけど、久城君はどうする? 明日の朝の授業から出れそうなら明日私の出勤と入れ替わりに出る?」

「はい。この調子なら直接ここから授業に向かえそうです。ペンやノートなんかもここに有りますし。お世話になりました」

 

 俺が頭を下げると、鮎川先生は大したことはしていないと笑って手を振る。

 

「それにお礼なら明日私と入れ替わりに授業へ向かう時に。生徒が元気になってここを出ていくのを見るのが私にとってのお礼なのよね!」

「そうでしたか。では、明日思いっきり元気になってここを出る姿をお見せしますとも」

「それは楽しみね。それじゃあ私は行きますから、今日はゆっくり休むと良いわ。お大事にね」

 

 そうして鮎川先生は席を立ち、医務室の扉を開けて出ていこうとし、

 

 

「にゃにゃっ!? すみません鮎川先生。まだ面会は可能ですかにゃ?」

 

 

 本日最後の見舞客がやってきた。

 





 という訳で本当にもう少しだけ続きます。

 ただ次回はちょっと大きめに話が動くかもしれません。独自設定タグもかなり仕事する予定です。お楽しみに。

 次回も三日後投稿予定です。
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