マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
注意! 今回独自設定タグがかなり仕事します。
「やあやあこんな時間になってすまないにゃ久城君! 傷はもう大丈夫かにゃ? 昨日は鮫島校長にみっちり注意……ゴホンゴホン。いや、重要な会議があってにゃ。結局一日遅れの見舞いになってしまったのにゃ!」
本来ならもう鍵を閉めてしまう頃合いだが、後で自分が鍵を戻しておくということで鮎川先生も了承して帰ったようだ。
チャリチャリと鍵の音を鳴らし、ナハハと軽薄な笑いを浮かべながら椅子に座り込む大徳寺先生。
「いえいえ。見舞いに来てくれただけでも嬉しいものですよ。ただ来るならもう少し早い方が色々と良かったですけどね」
「それはホントにすまないのにゃ。……実は今日ここに来たのは、君にどうしても言わなきゃいけないことがあるからなのにゃ」
「それは奇遇ですね。……こちらも丁度話がしたいと思っていた所です」
そこで大徳寺先生は普段のおちゃらけた態度から一変し、どことなく真面目な雰囲気を醸し出す。そして俺もまた、この人に尋ねなくてはならないことがあった。
「……久城遊児君。この度は本当に申し訳なかったにゃ」
先に切り出したのは大徳寺先生の方だった。大徳寺先生は敢えて俺をフルネームで呼ぶと、そのまま深々と頭を下げる。
「今回の一件、こんなことになってしまったのは僕のせいなのにゃ。僕が遺跡へのピクニックなんて企画したばっかりにこんなことに。君や隼人君に怪我をさせてしまって……いや、それ以外の生徒全員に対して、本当にすまなかったにゃ」
「……頭を上げてください」
大徳寺先生は少しだけ頭を上げてこちらの方を見る。……今の言葉、多分だけど本当だと感じた。本気で申し訳ないと思っているみたいだし、俺達全員への責任もおそらく感じている。
確かめなきゃいけない。俺の予想が外れていることを。そして外れていると分かったら、俺も誠心誠意謝ろう。
「俺はもうそのことは気にしていませんよ。この通り頭にガツンとやられたけど、明日には授業に復帰できそうです」
「それを聞いて安心したにゃ」
俺が優しく笑いかけると、明らかにホッとした様子を見せる大徳寺先生。そこへ、
「そうだ! 大徳寺先生。そこに万丈目が持ってきてくれた土産があるんですが、お一ついかがですか?」
「えっ!? いやあ悪いにゃそんな。……でもせっかく勧めてくれたものを断るのを悪いし、頂くとしましょうかにゃ!」
俺が机の上に置いた箱を手で指すと、しょげていた顔を一気に明るくして大徳寺先生はいそいそとその箱を手に取った。実に現金な話だ。そして、
「さ~て中身は何か……うにゃっ!?」
大徳寺先生は中身を見て箱を取り落しながらひっくり返る。
「どうしました大徳寺先生?」
「いやだって
あわあわと慌てていた大徳寺先生は、そこで何かに気づいたようにハッとした様子で口元に手を当てる。それはそうだろう。箱の底から罪善さんが急に出てきた様子を見たら大抵の人は驚く。だけど、
「そう。骸骨。俺のカードの『たった一つの罪と何百もの善』。通称罪善さんです。カードの精霊って奴ですよ。
俺は軽く息を吐き、しっかりと相手の目を見据えて肝心要の事を聞く。
「貴方は……罪善さんが見えているんですよね?
おかしいと思ったのは、以前大鳥が初めて精霊化した時のことだ。
あの時大鳥は精霊化し、扉をすり抜けて外に出ていった。あの時丁度の先に大徳寺先生が居て、驚いて尻餅をついたのを覚えている。そしてこう言ったのだ。『アイタタタ何なのにゃ今の
そして見えていると考えれば色々と腑に落ちることもあった。以前のダーク・ネクロフィアとの一戦。あれは元々俺ではなくこの大徳寺先生がやるはずだったのではないかという仮説。それがまさしく現実味を帯びていく。
それにあの時、大徳寺先生は精霊の研究をしているという話もあったしな。その過程で精霊を見る力に目覚めたのか、あるいは最初から見えていたから研究するようになったのか。
それを確かめるべく、大徳寺先生に会った時のために予め罪善さんに頼んでおいた。俺が何かを見せたり渡そうとした際に、それと重なるように精霊状態で姿を見せるようにと。
もし大徳寺先生に見る力がないのなら、普通に罪善さんに気づかず箱の中のクッキーを手に取っていただろう。だけど結果はこれだ。
「……と言っても、精霊が見えるかどうかは正直話のとっかかり程度に考えていただけで、それを隠していたことについては特に思うことは無いんです。俺が知りたいのはまた別の事なんです」
「別の事ですかにゃ?」
「はい。……俺が聞きたいのは、
そう。俺がはっきりさせたいのはこれなのだ。大徳寺先生には不審な行動が多すぎる。
例えば今回の一件。事前に翔から大徳寺先生の部屋で聞いた誰かとの会話。普通なら空耳とか勘違いで済ませる所だが、ここがアニメ版の世界であるのならそういう言葉は非常に高い確率で当たる。つまり大徳寺先生は、今回の事件を程度はどうあれ予想していたことになる。
もちろんこれだけではなく、俺が初めて特待生寮に行った時のことも気になっていた。
あの時十代達があそこに行くことになったのは、大徳寺先生が怪談話としてその話をしたから。つまりはあそこへ行くよう誘導したと言えなくもない。そしてその結果がタイタンとかいう自称闇のデュエリストとのデュエル。そして後半本当の闇のデュエルになったあの一戦だ。
さらに言えば、その後十代達が帰ってからの学園側の対応もおかしかった。ことが起きてから一日も経たずに事件の発覚。これはもう偶然誰かが目にしたというよりは、特待生寮自体が監視されていたか、あるいは
あの時十代と翔だけタレコミがあったのは今でもよく分からないが、考えれば考えるほど大徳寺先生への疑念が膨らんでいく。
そして、俺がこれまでの事を一つ一つ話していく間、大徳寺先生は何も言わずにただ聞いていた。
「……以上です。これが全て俺の勘違いか何かなら、怒ってくださっても笑い飛ばしてくださっても構いません。ですがもし……もしもそうでないのなら、俺はもう一度お聞きします。大徳寺先生。貴方は一体何をしようとしているんですか?」
その言葉と共に、医務室を静寂が支配した。……この静寂が答えだというんじゃないだろうな? それではあんまりだ大徳寺先生! 頼むから疑われて心外だと怒るとか、何を馬鹿なことをと笑い飛ばしてほしい。
これじゃあまるで、俺の疑念が合っているみたいじゃないか! それは違うと反論してほしい。
……それからしばらくして、不意に大徳寺先生はゆっくりと顔を上げ、
「久城君。僕は…………ぐうっ!?」
何か答えようとした時、急に大徳寺先生はうめき声と共にその場に崩れ落ちた。見ると右手を押さえながら、尋常じゃない汗を流している。
「先生っ!? どうしたんですか先生っ!?」
「……うぅっ! こ、こんな時に」
その声は明らかに弱々しく、どう考えてもただ事じゃない。だが幸いここは医務室。あとは鮎川先生を呼び戻せば診てもらえる! 携帯用タブレットから鮎川先生へ緊急連絡用のボタンを押そうとして、
「や……やめるにゃ」
「そんなことを言っている場合ですかっ! 早く鮎川先生を……っ!?」
俺を引き留める大徳寺先生の手。それを振り払おうとして見た時、俺は息が止まるかと思うほど驚いた。
大徳寺先生の手はカラカラに乾き……いや、そんな生易しいものじゃない。
「その手は……」
「はぁ……はぁ。だ、大丈夫にゃ。すぐに……収まるから」
大徳寺先生は弱々しい笑みを浮かべながら、服の内ポケットから何かを取り出す。それは一冊の本のようだった。表紙には古代エジプトでよく見られるウジャド眼が埋め込まれていて、見るからに普通の本とは違う何かだと思わせる風格がある。
「なっ!?」
その本を開きながら先生が右手に翳すと、何かの文様のようなものが手に浮かび上がり、みるみるうちにその手は生気を取り戻していく。まるで映像の逆再生でもしているかのように。
そして一分もしない内に、先ほどまで今にも崩れ落ちそうだった大徳寺先生の手はいつも通りの手に戻っていた。
「……大徳寺先生。貴方は」
「ふふっ。見られてしまっては……もう流石に言い逃れは出来そうにないにゃ」
そう言う大徳寺先生の顔は、どこか諦めたような、あるいは何か決心をしたような顔だった。
「本当はもう見舞いの時間も終了なのだけど、もう少しだけ付き合ってくれるかにゃ? 教師でありながら、生徒を巻き込んでまでことを成そうとした恥ずべき僕の……いや、
「……聞かせてください。最初からそのつもりです」
ああ。もう少しこの長い夜は続きそうだ。
という訳で大徳寺先生に対する追求回でした。ちなみに手の崩壊云々と本のあれこれは独自設定です。原作だと最後全身に回っていたけど、この時点で既に片手ぐらいならもうなっていたんじゃないかというあくまでも推測です。
次回で多分一段落着く予定です。第一章の終わり的な意味で。次も三日後……ですかね。
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