キメラアントの王にエクスカリバーをぶち込みたい   作:のくたーん

5 / 5
グリードアイランド編以上に面白い修行パートを見た事がありません。


病院×讃美歌×約束

 流星街で俺を育ててくれた目の死んだミトさんこと、リン。彼女から念能力習得のために教えてもらったキーワードが「ハリバード大学」だった。ロンストンシティの昼12時、お天道様が頭の上に昇ってこの街の建物を照らしているのを見つめながら、俺は大学捜索を開始した。

 

「それにしてもこの街は……人が多いなぁ」

 

ロンストンシティは一言で言えば、高い建物が少なく自然の多い東京都と言い表すことが出来る。忙しそうに道を歩くスーツ姿の人々、太陽の光を反射するオフィスビル、地中へ続く地下鉄駅の階段へ無限に流れ込んでいく人間たち。

 

一応、この世界にもいわゆるインターネットである電脳ページがあるが使用するには登録カードが必要になる。そして、その登録カードを発行するには電気店か市役所にいってIDを使って身分を証明しなければいけない。まぁ、誰かから登録カードを盗んでパソコンに挿入してハリバード大学を探すというのも方法の一つだが、まずは一つシンプルに行ってみよう。

 

「大体元の世界だとこういう駅前とかに……お、あったあった」

 

駐在員に通してもらったサウスアッシュ駅の駅前をうろうろと歩いていると、目当てのものを発見した。俺が探していたのは、案内ボード。駅前や観光地なんかに置いてある簡易的な地図だ。サウスアッシュ駅の駅前に設置されていた案内ボードは通りの名前やホテルそして病院の名前などが表示されていた。

 

地図を見て分かったがロンストンシティは市内を斜めに分断するように二本の大きなハイウェイが走っており、その二本のハイウェイの間に多くの建物が密集している。そのハイウェイの間を目を皿のようにして見つめて、ハリバードという単語を探してみると……あった。地図に確かにハリバード医療大学という病院の位置が記されている。幸い、今居るサウスアッシュ駅から北に2キロ程度しか離れていない。

 

ラッキーだ。人を騙したりぶん殴る事に何の躊躇もない俺が日頃の行いは口が裂けても良いとは言えないし、幸運だと思った事はこの世界に産まれて落ちてからあまりないが。まぁ、ともかくハリバード大学へと移動しよう。

 

 

 

 歩くことニ十分。レンガ造りのお洒落なアパートや苔むした大きな塔のある教会などを通り、案内ボードに書かれていた病院へと到着した。外から見る分では建物そのものは少し年季の入った校舎という感じだ。校舎の中から外へ音は聞こえず、校舎の周りは高さ2メートルほどの金網フェンスが張り巡らされている。大学病院というだけあってきちんと救急車が入れる搬送口も設置されている。

 

張り巡らされた金網フェンスに沿ってぐるりと周りを一周し、俺はハリバード医療大学と書かれたプレートがはめ込まれた大学の正門を通り抜けた。昼ということもあってか正門は開いた状態だったので、よじ登る必要はなかった。

 

正門から校舎の入り口まで続く舗装された道を歩き、大学の校舎まで到着した。ハリバード医療大学とデカデカと書かれた壁掛け看板と横開きの自動ドアが校舎への入口になっていた。俺が自動ドアの前に立つと静かにドアが横に開き、中へ入る事が出来た。

 

入口から中に入ると、出入り口のすぐ脇に円形の待ち合い室が設置されていた。四人掛けのソファや子供番組が流されている大きなテレビが待ち合い室にあり、待ち合い室の向かい側が受け付けになっている。受け付けには二人の女性の看護師が小さな声で雑談をしながら、穏やかな雰囲気の中で仕事をしている。

 

大学病院ってことは半分は大学で半分は病院ってことなんだろ?見た感じ十割病院だが。病院内は白を基調とした色合いで壁や床が色付けされていて、清潔そのものだ。ちなみに待ち合い室は五十人ほど収容できそうだが、今居るのは十人弱くらいだ。

 

とりあえず受け付けの看護師に話をしてみよう。俺は受け付けに近付き、二人の看護師を見上げつつ彼女たちに話しかけた。

 

「すいません看護師さん。この病院にサンビカ・ノートンって人いますか?」

 

「ん……?なんだ子供ね。残念ですけど個人の情報を部外者の方にお伝えする事は規則で禁じられております。どうぞ、お帰りください」

 

片方の看護師がきっぱりと答え、ハエをあしらうように手を振った。ちょっとピキピキっときたが、ここで大暴れして何もかも台無しにするわけにはいかない。だが、このまま居座り続けても事態は好転しないだろう。手を打たなければ目の前の看護師は口を割らず、サンビカ・ノートンの居場所は分からないままだ。

 

う~ん…………サンビカ・ノートンというキーワードだけじゃダメだな。もっとなんていうか関係者っぽい感じで関係者っぽい事を言わないと。そういえばリンはどうしてこのハリバード医療大学からあんな世間から完全に置き去りにされた流星街に居たのだろうか、リンがサンビカ・ノートンから念能力を教えてもらったという事は少なからずリンとサンビカは親しいもしくは密接な関係にあったはず。

 

リンはサンビカから離れるために流星街に行ったのだろうか。それともこの医療大学から離れるために流星街へ行ったのだろうか。俺は頭の底から湧き上がって来た疑問に応じるために受け付けから離れ、待ち合い室の座席に腰かけた。

 

目の死んだミトさんことリン。彼女は流星街に落ちた俺を拾い上げ、体からオーラが出ている事に気が付いた。成長に伴ってなのか、はたまたリンが意図的に閉じたのかは分からないが俺の精孔は閉じた。俺は成長し、念能力を得るために彼女からこの場所の名前と師の名前を聞いた。

 

サンビカ・ノートンは原作では選挙編にちょろっと顔を出しただけで、細かい性格や念能力なんかはまったくもって分からない。見た目とあの数行だけの台詞そのままの気弱な性格なのか、はたまたまったく違う性格なのかも分からない。

 

ただ、なんとなく、直感の類だがきっとリンとサンビカ・ノートンとの間には何かがあったんだ。研究に関する事なのか、念能力に関する事なのか、推測の域を出ないがそれでも決別する程の何かがあった事は分かる。決別したいと思わなければ社会的に死んでいる流星街の住人に真っ当な社会から戻ろうとは思わないだろう。

 

ぐるぐると滑車が回るように思考が同じ所を回り続け、答えがない意地悪なクイズを解いている回答者のような気分になってきた。そうして、気が付くと待ち合い室にはオレンジ色の夕日が差し込んでいた。周りを見ると待ち合い室に居た十人弱の人間がいなくなっている、どうやら考え事をし過ぎたせいで日が暮れてしまったよう。待ち合い室のソファに座りながら視線を受け付けの方に向けると、受け付けに居た二人の看護師までいなくなっていた。

 

 

 

「あなたが私を探しているぅ……人ですね。受け付けのカサンドラちゃんから話を聞きました。ど、どなたぁ……でしょうか?」

 

 夕日の差し込む俺一人だけの待ち合い室に声が響いた。遠慮がちでおっかなびっくりしているがその声には芯があった。声のした方を見ると一人の女性が立っていた。やや低めの身長、しっかりと見開かれた丸い瞳、夜の教会に灯る蝋燭の灯りのような淡い金色の短くまとめられた髪の毛、服装は防護服なくTシャツとジーンズというラフな恰好だったが、一目で彼女が俺の探し求めていた人物だと理解した。

 

「入り口から入ってきてぇ……私の名前を聞いてそれっきり待ち合い室のソファに座って動かないってぇ、カサンドラちゃんが怖がってて。あのぉ、どなたですか?」

 

「俺の名前は……731番じゃなくて、タテゴト・リュウジ。リンって女からアンタからなら――――念能力を覚えさせてくれるって言われて遠路はるばるここまでやって来た」

 

「…………リンちゃん。……きみはリンちゃんのお子さんですか?」

 

「いや、違う。だけど、育ての親みたいなもんだ。ま、俺はアイツに番号でしか呼ばれた事なかったけどな」

 

サンビカはリンの名前を聞くと目に見えて動揺した。思いもしなかった名前を聞いたというよりは、今まで心の中に抱えていたものが表面化したという感じに俺には思えた。サンビカは左腕で右腕の肘をぎゅっと強く握ると、少しの間静かに目を閉じた。そして、目を開けて俺の事を真っ直ぐに見つめた。

 

「なぜあなたが念能力を知っているのか、なぜあなたが念能力を習得したいのか、詳しい事は聞きません。リンちゃんの今の居場所ぉ……それを教えてください。そうすればあなたに念能力を教えます」

 

「あぁ、いいぜ。ただ、俺にアンタの居場所を教えた後にどこかへ雲隠れした可能性もあるが、それでもいいのか」

 

「えぇ……構いません」

 

「交渉成立だ。よろしく師匠」

 

 

 

 俺を弟子として迎えたサンビカは、どこか後悔したようなそれでいて嬉しそうな表情で俺の手を掴み病院の中をずんずんと進んで行った。スタッフオンリーのドアを通り抜け、いくつかの廊下の角を曲がった。しばらく猪のようにずかずかと進んでいくと、蛍光灯の付いたナースステーションへと辿り着いた。そこには四人程のナース服を着た看護師が待機しており、サンビカの顔を見ると全員の顔が笑顔に変わった。

 

「「「お疲れ様です。ノートン主任!」」」

 

「お疲れ様ですみなさん。えっとぉ……ハンターの仕事が入ったのでぇ……しばらく大学から離れますね。すいません、本当に急ですいません」

 

「「「大丈夫ですよノートン主任!いってらっしゃい!」」」

 

一呼吸もずれない完璧な連携でナース達はサンビカへ言葉を返し、サンビカはその様子を見て満足そうに微笑んだ。どうも彼女にとってこの一連の動作は日常生活の一部らしい。恐るべしシングルハンター。ナース達への挨拶を終えたサンビカは、ナースステーションを後にしすぐ近くの部屋に入った。中を覗いてみるとそこはロッカールームだった。

 

彼女はいくつも並ぶロッカーの一つを開けて中から鞄を取り出した。そうしてテキパキと帰り支度を済ませるともう一度俺の手を掴み、そのまま病院の外へと連れ出した。病院の外に出た俺とサンビカは歩いて病院の駐車場まで移動した。

 

駐車場へ着くとサンビカは鞄の中から鍵を取り出し、駐車場にあった小さな車に鍵を差し込んだ。前世ではあまり車に興味がなかったので、どんな車なのかは分からないが見た限りではシートは二つでどうもコンパクトカーのようだ。サンビカは見た限りでは体が小さいし、小さな車で充分なのかもしれない。まぁ、この可愛らしい見た目からビスケのムキムキボディへ変化したらトラウマとして魂に刻み込まれそうだが。

 

「さ、乗ってください。私の家へ向かいます。それでですねぇ、一緒に生活しつつ念の修行を行います」

 

「……住まわせてくれるのか?」

 

「さっき……あなたの手を掴んで歩いていた時に筋肉量や体内に含まれる脂肪を掴んだ手から測りましたぁ。栄養失調の三歩手前という感じです。念能力を会得するためにも規則正しい生活と充分な栄養補給を行いますぅ」

 

ずばり俺の体の具合を言い当てたサンビカは、車に乗り込みエンジンを回した。シートに座ったサンビカはちょいちょいと俺を手招きした。早く乗れという事だろう。運転席の反対側に回り込み、俺も車に乗り込んだ。ちなみに彼女の車は左ハンドルだった。

 

サンビカは俺を助手席に乗せて、車を発進させた。車のダッシュボードには小さいサイズの色々なぬいぐるみが乗っている。乗っているのは主に動物をデフォルメさせたぬいぐるみだが、たまにウィルスをキャラクターにしたような可愛らしいものも乗っている。

 

「…………リンちゃんの居場所を言うのは、修行が終わった後でいいですよぉ」

 

「え、なんで?もしかしたら俺、修行終わった途端にバックレるかもよ」

 

「念能力を覚えたての相手に不覚を取るようならぁ、ハンターにはなれませんよ。それにぃ、もし裏切ったらその時はどんな手を使っても喋ってもらいますからぁ」

 

サンビカの方からぞわりと重い空気のようなものが吹き付けられた。おそらく、これは殺気を混ぜ込んだ彼女のオーラだろう。原作でも言っていたが、オーラを身につけていない相手に対してオーラをぶつければそれだけで無防備な相手を殺す事が出来る。つまり、これは彼女からのメッセージなのだろう。

 

念能力は教える。ただし、居場所を言わないとお前を殺す、と。気弱そうな顔をしているがやはりプロのハンターだ。きっちりと獲物は逃がさないようだ。ていうか、このオーラ……浴びた途端に体が強張って動けなくなった。やはりハンターハンターの世界で戦って行くのにオーラは必要不可欠な要素だ。絶対に会得してエクスカリバーを出してやる。

 

サンビカはオーラを浴びせられて身動きが取れなくなった俺を見て満足そうに呟いた。

 

「これからよろしくお願いしますねぇ。タテゴトさん」

 

 

 




HUNTER×HUNTERの世界だったら、真祖とか居るかも。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。