東方 白狐伝   作:蛸夜鬼の分身

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序章 古代都市の巻
第一話 初めての友人


 俺が転生してから約十年近く経った。どうやらこの身体は食事や睡眠を殆ど必要としないらしく、一年程何も食わない、不眠不休だった時があったが特に問題が無かった。

 

 俺はその間何もする事が無かったので旅の傍ら能力の検証を行っていた。

 

 俺の『氷を司る程度の能力』だが、手紙にも書いてあった様に氷に関するもの⋯⋯水や雪、冷気を創造、操作する事が出来た。シンプルだが汎用性が高いので使い易い。

 

 ただ、能力の使用には身体に流れる力(後に霊力と呼ぶと分かった)を消費するらしい。一度能力の使いすぎで倒れてしまった事があった。

 

?「しかし何も無いな⋯⋯古代だし当たり前か?」

 

 俺が今まで見てきた生物は古代特有の変な姿の魚や動物、無駄にデカい虫。そして

 

?「グルァアアア!」

 

?「おっと」

 

 動物とも違う姿を持つ異形─────妖怪。

 

 妖怪は動物の様に本能で行動している。そして俺に対して異様に攻撃的だ。白狐というのが関係してるのだろうか?

 

 因みに妖怪だと言ってる理由は、コイツらの中に猫又の様な妖怪や、牛鬼の様な妖怪が居たからだ。つまり仮で呼んでるだけで深い意味は無い。

 

?「全く、いつもいつも面倒だな」

 

 俺は能力で氷の槍を創造、妖怪に投擲した。槍は見事に命中して妖怪の腹に風穴を空ける。

 

 妖怪は大きな断末魔を上げるとドサリと倒れ動かなくなる。コイツら、寝てる時にも襲い掛かってくるから面倒なんだよな⋯⋯。

 

?「⋯⋯?」

 

 そんなどうでも良い事を考えていると、遠くから妖怪と、もう一つの別の声が聞こえた。

 

?「まさか、な⋯⋯」

 

 俺は自分の考えを確認する為に声が聞こえた方へ走っていく。まさか⋯⋯この時代に“人間”がいる訳ないだろう。

 

~少年移動中~

 

少女「ハァ⋯⋯ハァ⋯⋯」

 

妖怪「グゥウウウ⋯⋯」

 

 目的地に着くと、左右が赤と青で分かれている奇抜な服を着た銀髪の少女と、四本の腕を持つ熊の様な妖怪を見つけた。少女は怪我をしているのか、脚から血を流している。

 

 しかし、まさか本当に人間がいたとは。言葉は通じるのだろうか。

 

妖怪「ガァアアア!」

 

少女「っ⋯⋯!」

 

 妖怪はその巨大な剛腕を少女の頭部へと振り下ろす。

 

?「せあっ!」

 

 が、俺が阻止した為少女を殺せず、顎を勢い良く上に蹴られたので後ろに倒れた。

 

少女「⋯⋯えっ?」

 

 突然現れた俺を見て少女が驚いているが、今は説明をしてる暇が無い。

 

?「さて、さっさと終わらすか」

 

 俺は未だに倒れている熊の四肢(六肢?)に氷柱を突き刺して地面に固定、動けない様にした。

 

熊「ガ、ガァアアア!?」

 

 熊は動けない事に戸惑っている。俺はそれを無視して更に巨大な氷柱を創造する。そして氷柱の先を熊の心臓に合わせると⋯⋯

 

?「じゃあな」

 

 勢い良く落とした。氷柱はドスッと鈍い音を立てて熊の心臓に刺さり、熊は断末魔を上げる暇も無く絶命する。

 

 俺は熊が死んだのを確認すると少女に近寄る。

 

?「大丈夫か?」

 

少女「え、ええ⋯⋯助けてくれてありがとう」

 

?「礼は要らない。人を助けるのは当然だからな。立てるか?」

 

少女「ええ⋯⋯痛っ!」

 

 少女は立ち上がろうとするが顔を歪めて座り込む。見ると右足の膨ら脛に痛々しい傷があった。

 

 ⋯⋯しょうがないな。

 

 俺は水を創造して患部を洗い流し、着ていた羽織を破くとそれを巻き付けて少女を背負う。

 

少女「わっ! ちょっと!」

 

?「家は何処だ? 送ろうじゃないか」

 

少女「⋯⋯貴方、初対面の人間に妙に優しいわね」

 

?「そうか? ああ、そういえば名は何と言うんだ? ここで会ったのも何かの縁だろう」

 

少女「⋯⋯八意 ××よ」

 

?「⋯⋯んん?」

 

 何だ今の言語は。苗字は聞き取れたが名前が分からん。明らかに人間が話せる言葉じゃないな。

 

少女「『八意《やごころ》 永琳《えいりん》』で良いわ。他の人は私の名前は発音出来ないみたいだから。で、貴方の名前は?」

 

?「⋯⋯そういえば俺に名前は無かったな」

 

 その言葉を聞いた永琳はズルッと背中から落ちそうになる。

 

永琳「貴方、良くそんなで生活出来たわね」

 

?「今まで不便しなかったからな。そうだ、どうせだしお前が付けてくれ」

 

永琳「ええっ!? 急に言われても⋯⋯」

 

 永琳はそう言いながらもブツブツと何かを呟いている。すると

 

永琳「そういえば、貴方の種族は何と言うの?」

 

 と聞いてきた。

 

?「俺か? 俺は白狐だ。白い狐と書く」

 

永琳「白狐、か⋯⋯そうね、じゃあ⋯⋯『狐塚(こづか) (ゆき)』なんてどうかしら?」

 

雪「狐塚 雪⋯⋯うん、気に入った。ありがとう永琳」

 

永琳「どう致しまして。あ、それと雪⋯⋯」

 

雪「どうした?」

 

永琳「私が住んでる場所と逆方向に進んでるわよ」

 

雪「⋯⋯すまん」

 

 俺は来た道を引き返して永琳の案内の元、彼女が住んでいるという都市へ向かう。

 

 ⋯⋯今日、この日が俺の名前が決まった日であり、初めての友人である八意 永琳と出会った日だった。

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