東方 白狐伝   作:蛸夜鬼の分身

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肆章 竹取物語の巻
第一話 白狐と隙間の出会い


雪「ふぅ⋯⋯今日はここで野宿するか」

 

 都を出てから数ヵ月が経過した。神子の死亡(実際は仮死だが)は即座に広がり、多くの人間が悲しみに暮れたという。

 

 俺はと言うと旅を続けている。村や都を転々としているが、今の様に野宿する時もあるな。

 

 因みに今は黒髪人間の姿だ。苦手な変化の練習に加え、いつ人間に会っても大丈夫な様にしている。

 

雪「⋯⋯ここを寝床にしよう」

 

 この辺りは妖怪も少なく綺麗な川も流れている。魚が泳いでいるので夕食には困らないな。

 

雪「少し早いが夕食にするか」

 

 俺は羽織を脱ぎ、着物と袴の裾を上げると川に入る。そして手で掬う様に魚を捕った。

 

 魚は逃げる時は必ず前に逃げようとする。それさえ分かっていれば手掴みも可能だ。

 

 ⋯⋯まあ、白狐の動体視力のお陰でもあるんだが。

 

雪「ほいっ、と」

 

 そして枯れた枝を集め狐火を投げ入れて焚き火を作る。捕った魚は串に刺して丸焼きにする。

 

 そして数分後。

 

雪「⋯⋯もう良いか」

 

 良い感じに焼けたので雑嚢から塩を取り出して魚に振る。

 

雪「いただきま─────」

 

?「あら、こんな所に人間?」

 

 魚を食べようとすると後ろから声が聞こえる。

 

 妖怪か。それも強めの⋯⋯もう少しで大妖怪になりそう、というくらいか。まあ敵じゃないな。無視して飯を食おう。

 

?「あら、無視? 良い度胸じゃない」

 

雪「⋯⋯」

 

?「⋯⋯ちょっと?」

 

雪「⋯⋯」

 

?「⋯⋯バーカ」

 

雪「誰が馬鹿だ」

 

?「ひゃん!?」

 

 俺は氷柱を後ろに飛ばす。元々当てるつもりはなかったが、氷柱は避けられてしまった。

 

?「ちょっと、危ないじゃない!」

 

雪「煩い、食事中だ。そんなに腹が減ってるなら⋯⋯魚食うか?」

 

?「⋯⋯いただくわ」

 

 妖怪は渋々といった感じで魚を受け取る。

 

?「あ、美味しい」

 

雪「そうか」

 

~白狐食事中~

 

?「ふぅ⋯⋯お腹一杯になっちゃった。貴方を食べる気が無くなっちゃったわ」

 

雪「ふん、俺を食おうなんて十年早い。それに人間と狐の違いくらい分かる様になるんだな」

 

?「え?」

 

 妖怪が何を言ってるんだという表情になったので幻術を解く。俺の髪が白くなり、頭から耳が生えてくる。

 

?「な、なな⋯⋯狐?」

 

雪「正確には白狐だがな」

 

 最近はずっと人間の姿だったからこの姿に戻るのは久々だな。

 

 因みに俺の正体が白狐という事を知った妖怪はシュン⋯⋯と落ち込む。何でも、もう少しで大妖怪になれる所だったので調子に乗っていたらしい。その高く伸びた鼻を俺が折った訳だ。

 

?「はぁ⋯⋯」

 

雪「いつまで落ち込んでるつもりだ」

 

?「だって⋯⋯」

 

雪「ずっと落ち込んでてもしょうがないだろう。今回は良い勉強になったと思え」

 

?「それもそうね。そうだ、丁度良いし⋯⋯私の名前は『八雲《やくも》 紫《ゆかり》』。私の友達になってくれないかしら?」

 

雪「唐突だな⋯⋯まあ、断る理由も無い。俺は狐塚 雪だ。よろしく頼む」

 

 俺の言葉に紫は小さくガッツポーズする。友人が少ないのだろうか。

 

紫「ところで雪。貴方、泊まる場所はあるの?」

 

雪「無いからここで野宿の準備をしているんだろう」

 

紫「あら、それだったら⋯⋯私の部屋にごあんなーい」

 

 突如、身体が宙に浮く。どうやら紫の能力か何かで落下している様だ。

 

 何とか着地すると、そこは先程の森ではなくギョロギョロと沢山の目が蠢く気味の悪い空間だった。

 

雪「気持ち悪っ!」

 

紫「酷い! 私だって好きでこんな空間にした訳じゃないのに!」

 

雪「大体、何で俺はここにいるんだ。お前の能力か何かか?」

 

紫「ええ。私はあらゆる境界を操れるの」

 

 境界を操る⋯⋯俺の氷とかを操る能力よりずっと強いじゃないか。まあ、俺の能力は汎用性が高いから良しとしよう。

 

雪「で、何で俺をここに?」

 

紫「あそこじゃ危ないから、ここで寝泊まりして良いわよ」

 

雪「⋯⋯今日会ったばかりだぞ?」

 

紫「そうだけど⋯⋯友達でしょ?」

 

 ⋯⋯こいつの考えを無下には出来ない、か。

 

雪「分かった。甘えさせてもらう」

 

紫「それが良いわ」

 

 こうして暫くの間、紫のスキマに住まわしてもらう事になった。

 

 そして紫に厄介になった数年後⋯⋯『かぐや姫』と呼ばれる絶世の美女の噂を耳にした。

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