東方 白狐伝   作:蛸夜鬼の分身

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第三話 四季のフラワーマスター

雪「ここか⋯⋯これは凄いな」

 

 俺はかぐや姫から出された難題、妖怪の向日葵を取りに来ている。

 

 花を愛する妖怪が住んでいるという場所は、一面向日葵が咲き乱れ、見た者を圧巻させる景色が広がっていた。

 

雪「美しいな⋯⋯お前が育てているのか?」

 

?「あら、気付いていたのね」

 

 俺は後ろから近付いていた妖怪に声を掛ける。その妖怪は緑色の髪を持つ美しい女性の姿をしている。

 

?「貴方は誰? 私の庭に何の用かしら?」

 

雪「俺は狐塚 雪だ。お前に少し頼み事があってな」

 

?「私に? へぇ⋯⋯私の名前は『風見(かざみ) 幽香(ゆうか)』よ。それで、用って?」

 

雪「この向日葵を一本もらいたい。頼めるか?」

 

幽香「向日葵を? ええ、良いわよ」

 

 用件を伝えると幽香は微笑んで承諾する。何だ、随分楽じゃないか?

 

雪「ありがとう。では早速─────」

 

幽香「⋯⋯貴方の命と引き換えにね」

 

雪「っ!」

 

 幽香が日傘を閉じ、その先端を向けた瞬間、俺の頬を何かが掠めていった。皮膚が切れたのか、血が流れ出る感覚を感じる。

 

幽香「ほら、避けないと死ぬわよ?」

 

雪「チッ!」

 

 頬の血を拭った瞬間、幽香は先程よりも大量の何かを飛ばしてくる。

 

 何だこれは。見た感じ光の玉のようだが⋯⋯妖力の塊? こんな使い方もできるのか。

 

雪「⋯⋯こんな感じか?」

 

 俺は霊力を集める様なイメージで掌を突き出す。すると速度は遅いが、一発だけ霊力の塊が放たれた。

 

 なる程、練習すれば能力との併用も出来そうだな。

 

雪「今は練習する時間も無いが!」

 

幽香「貴方、避けてるばかりで勝てるのかしら?」

 

 大量の妖力弾を避けていると幽香がそんな事を言ってくる。

 

 確かに、このまま避け続けても勝てる筈がない。だがこの攻撃の中攻勢に出ようとは思えないしな⋯⋯。

 

雪「しょうがない。まだ練習途中なんだが⋯⋯」

 

 そう呟くと、俺はパチンと指を鳴らす。

 

 ─────刹那、俺以外のあらゆる事象が停止した。

 

 俺は動きの止まった妖力弾を避けながら幽香へと近付く。そして腰を落とすと⋯⋯

 

雪「女を殴る趣味なんて、俺には無いんだがなっ!」

 

 多少手加減しながら拳を突き出す。それと同時に止まっていたあらゆる事象が動き出した。

 

幽香「⋯⋯なっ! がふっ!」

 

 幽香は驚いた表情をしたと同時に殴り飛ばされる。

 

幽香「な、何を⋯⋯何故貴方が突然目の前に⋯⋯?」

 

雪「時間を止めた⋯⋯いや、時間を凍らせたの方が正しいか?」

 

 俺は今まで、この能力を何かに応用出来ないかずっと考えていた。確かに氷を生み出したり何かを凍結させるだけでも十分に強い。だが手数は多い方が良いだろうと、色々と試行錯誤していたんだ。

 

 そんな中、前世に読んでいた漫画で氷を操る女性キャラが時間を凍らせて強制的に止めていた技を思い出し、それを真似てずっと練習していた。今は3秒が限界だがな。

 

幽香「フ、フフフ⋯⋯貴方、面白いわね。ちょっと楽しくなってきたわ」

 

 そう言った幽香は日傘を振るってきた。俺は咄嗟に氷の篭手を作り、ガードする。

 

 っ⋯⋯凄い衝撃だ。何とか防げたがそう何度も受け止められる攻撃じゃないな。現に、受け止めた腕が痺れている。

 

雪「婦人の行いじゃないな! 日傘が折れるぞ!」

 

幽香「この日傘は特別製⋯⋯そう簡単に折れないわ!」

 

 今度は俺の顔面を狙ってきたのでそれを避け、幽香のカッターシャツの襟を掴み

 

雪「おお、らぁっ!」

 

 力業での背負い投げをする。しかし幽香は受け身でダメージを流すと日傘で俺を吹き飛ばした。

 

雪「ぐっ!?」

 

 俺は諸に食らったせいで数メートル吹き飛ばされ、受け身も取れずに地面に叩きつけられる。クソっ⋯⋯嫌な音したぞ。骨でも折れたか?

 

幽香「あら、苦しそうね」

 

雪「お陰様でな⋯⋯ゲホッ」

 

幽香「⋯⋯今、楽にしてあげるわ」

 

 幽香はそう言うと日傘を俺に向けてくる。一体何を⋯⋯

 

幽香「マスター⋯⋯」

 

 っ! 日傘の先端に妖力が集まっていく!? これを放ってくるって言うのか!?

 

雪「おい待て! そのままだと向日葵まで消し飛ぶぞ!」

 

 駄目だ、聞こえていない。そう思った瞬間、幽香のチャージが終わったのか、一度妖力の収束が止まり⋯⋯

 

幽香「⋯⋯スパーク!」

 

 辺りを照らす様な巨大な光線が放たれた。

 

雪「クソっ!」

 

 俺は咄嗟に足と地面を氷で固定し、身体がその場から動かない様にすると光線を受け止める。

 

雪「ぐぅうううう⋯⋯!」

 

 何だこれは。今までの攻撃で一番強力⋯⋯永琳達が住んでいた都市のレーザー砲よりも強いんじゃないか? 一度誤射されて食らったけどこれ程じゃなかったぞ?

 

 暫く耐えていると光線の威力は徐々に弱まっていき、遂には消滅する。しかし俺の服はボロボロになり、身体中傷だらけだ。

 

 後ろを振り向くと、向日葵畑には傷一つない。どうやら守れた様だ。

 

幽香「貴方⋯⋯どうして避けなかったの?」

 

 すると幽香が驚いた様な表情で話しかけてきた。

 

雪「⋯⋯避けたら、お前の向日葵が消し飛んだだろう?」

 

 俺がそう答えると同時に、意識が少しずつ落ちていく。最後に見たのは、こちらに向かって走ってくる幽香の姿だった。

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