東方 白狐伝   作:蛸夜鬼の分身

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第二話 宵闇の妖怪

 慧音と別れてから数週間後。俺はどこで道を間違えたのか、また深い森の奥に迷い込んでしまった。

 

 しょうがないので適当な方向へと進んでいると、どこからか血の臭いが漂ってくる。嫌な予感がしながら先へ進むと

 

雪「⋯⋯何だこれは」

 

 目の前に現れたのは妖怪に食い散らかされた人間の死体だ。その程度ならこのご時世、別に珍しくはないのだが、問題なのは咬傷とは別の傷だ。

 

 まるで腐り果てたかの様に、その傷は真っ黒に染まっている。しかも刃物で切られたかの様な傷だ。妖刀の類か何かか?

 

雪「相手は武器を持った人食い妖怪、という訳か」

 

 すると遠くから人間の断末魔が聞こえてくる。これは死んだな。わざわざ見に行く必要もない。逃げよう。

 

?「あら、また人間? もうお腹いっぱいなのだけど」

 

 すると目の前に金髪の女性が現れる。闇の様に真っ黒な服を着た彼女は大量の返り血を浴び、その手には聖者の十字架を変形させたかの様な赤黒い大剣を持っている。

 

雪「何でこういう時だけ都合良く出てくるんだろうか⋯⋯」

 

?「何言ってるの? それよりも貴方、人間じゃなくて狐なのかしら? それにしても雪みたいに白い髪。日焼けのない白肌。血の様に赤い瞳⋯⋯食べたら一体どんな味がするのかしら」

 

雪「お前、さっきお腹いっぱいとか言ってただろう」

 

?「貴方みたいな珍しいモノは別腹よ。それじゃあ早速!」

 

 妖怪は大剣を構えるとかなりの速さで振るってくる。俺は何とか回避したが、その際に腕を掠めた。

 

雪「っ!?」

 

?「あらら、白い肌が真っ黒になっちゃったわね」

 

 掠めただけなのに激痛が走る。見ると死体にあった傷の様な、真っ黒な傷があった。やはりこいつの仕業か⋯⋯これは早々治らない様だな。

 

 俺は氷のナイフを作ると掠めた部位を切り落とし、血は氷で強引に止血する。これで暫く大丈夫だろう。

 

雪「はあ⋯⋯随分な獲物を持っているんだな」

 

?「良いでしょう、これ。私の能力で作ったのよ」

 

雪「能力⋯⋯」

 

 そういえばこの近くの村で闇を操る妖怪の噂があったな。なんでも異国人の様な見た目をした人食い妖怪らしい。宵闇の妖怪とも呼ばれるそいつは、確か名前が⋯⋯

 

雪「⋯⋯『ルーミア』、だったか」

 

ルーミア「あら、私の事を知ってるのかしら?」

 

雪「ああ。近くの村で噂になってるからな」

 

 宵闇の妖怪と言われるくらいだ。恐らく能力は『闇を操る程度の能力』だろう。この傷との関係性はいまいち分からんが、能力による応用だろうな。

 

雪「まあ、噂だか何だかはどうでもいい。俺に危害を加えるならそれ相応の対応はさせてもらう」

 

ルーミア「言うじゃない。狐風情が」

 

 俺は氷の篭手を創り出す。そしてルーミアが突っ込んでくると、パチンッと指を鳴らした。

 

 その直後、世界の時間が凍結する。

 

雪「さて⋯⋯」

 

 ルーミアにある程度近付いた俺は深く腰を落とし、拳を叩き付ける。それと同時に凍結が解除された。

 

ルーミア「ガフッ!?」

 

 突っ込んできた速度に強く叩き付けられた衝撃でルーミアは崩れ落ちる。

 

ルーミア「ゲホッ、ゲホッ! な、何が⋯⋯」

 

雪「言っただろう。それ相応の対応はさせてもらうと」

 

 ルーミアは何が起こったか分からないという表情で俺を見る。俺は彼女を横目に雑嚢から一枚、札を取り出した。

 

ルーミア「そ、それは⋯⋯?」

 

雪「お前みたいな手に終えない妖怪の力を封じ込める札だ」

 

 この札、神社を出る前日に諏訪子から貰ったものなのだが、こんな所で使うとは思わなかったな。

 

 ただ一時的にしか効かないという話なので、陰陽道に知識がある紫に強力な札を用意してもらうとしよう。

 

ルーミア「っ! や、やめなさい!」

 

雪「それは出来ないな。お前をほっとくと何があるか分からん」

 

 俺はルーミアを押さえつけると札をリボンの様に髪に結ぶ。

 

ルーミア「あ⋯⋯」

 

 するとルーミアの放っていた強烈な妖力が消え、それと同時に気絶した。取り敢えず、これで大丈夫か?

 

雪「紫ー!」

 

紫「はいはい」

 

雪「コイツを幻想郷に送っといてくれ。それと力を封じ込める強力の札も頼む。これは一時的な物だからな」

 

紫「分かったわ。全く、わたしも暇じゃないんだからね」

 

雪「悪いな」

 

 ルーミアを抱えた紫はスキマへと消えていく。さてと⋯⋯

 

雪「死体片付けて⋯⋯傷も治さないとな」

 

 紫に着いていって幻想郷で永琳に治療してもらった方がよかっただろうか。そんな事を考えながら俺はルーミアの食い散らかしを片付けるのだった。

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