東方 白狐伝   作:蛸夜鬼の分身

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第五話 鬼という者・怪力乱神

勇儀「はあっ!」

 

雪「おっと」

 

 勇儀は俺の近くまで走ってくると大振りの拳を振るってくる。恐らく様子見、といったところか。

 

 だがその威力は凄まじく、拳圧だけで背後にあった木に拳の形に抉った。

 

雪「どんな拳圧だ、おかしいだろ!」

 

勇儀「まだまだこんなもんじゃないよ!」

 

 どうやら勇儀は萃香と違い純粋なパワー型の様だ。真っ正面から挑むのは無謀だな。

 

勇儀「さあ、どんどんいくよ!」

 

 勇儀は先程とは比べ物にならないくらいの速さで攻撃を仕掛ける。俺はそれを避け、いなしていく。

 

勇儀「ハハハハッ! いいねえ、楽しいよ雪!」

 

雪「そうか。それは良かった、なっ!」

 

 俺はそう答えながら勇儀の脇腹に攻撃。少し怯んだところに⋯⋯

 

雪「ハッ!」

 

勇儀「ぐっ⋯⋯!」

 

 顔に渾身の蹴りを当てる。だがあまりダメージは通ってなかったのか、少しよろけただけだな。

 

勇儀「良いねえ、今のは効いたよ」

 

雪「萃香にも言ったが、伊達に場数は踏んでないからな」

 

 しかし参ったな。恐らく俺の力じゃ有力な攻撃は入らない。能力の氷も、萃香の力でヒビが入ったのだから勇儀の前では役に立たないだろう。どうするか⋯⋯。

 

勇儀「喧嘩中に考え事とは、随分と余裕だね!」

 

雪「っ! しまっ─────」

 

 考え事をしていた俺は反応に遅れ勇儀の拳を受ける。モロに拳を喰らい、背後へと吹き飛んだ。

 

勇儀「どうだい。今のは効いただろう!」

 

 勇儀は吹き飛んだ先を見てそう言った。暫くすると砂煙が晴れ、そこに俺の─────

 

勇儀「⋯⋯? これは⋯⋯」

 

 ─────姿が模されたバラバラの人形が転がっていた。

 

雪「残念だったな」

 

勇儀「っ!? がふっ!」

 

 人形を見て呆然としている勇儀の背中に、巨大な氷の拳を叩き込む。勇儀はその奇襲に反応出来ず、大きく吹き飛んだ。

 

 俺は勇儀の拳を喰らう直前、能力で時間を凍らせた。そして凍っている内に人形と拳を創り、勇儀の後ろに回ったんだ。まあ、凍らせた際に少し間に合わず少々ダメージを受けたけどな。

 

勇儀「⋯⋯あたしは少し、アンタを舐めてたみたいだねえ」

 

 勇儀は血を吐き出しながらそう呟く。そしてギリッと拳を握ると大量の妖力を纏った。

 

鬼「お、おい! お前ら早く離れろ! 姐さんがアレをやる気だぞ!」

 

 それを見た鬼達は顔を青くしてその場から離れる。 

 

 何だ? 何が起きるんだ。

 

萃香「ちょ、勇儀!? 本当にやるのかい!?」

 

勇儀「ああ、コイツは⋯⋯雪はこれくらいやんなきゃいけないからねえ!」

 

 萃香の焦りを含む問いに勇儀は答える。そして俺の方を向くと

 

勇儀「雪! これがあたしの全力の攻撃だ! 付き合ってくれるかい!?」

 

 そう叫ぶ。全力の攻撃、か。付き合えというのは真っ向から受けてみろ、ということだろう。

 

雪「⋯⋯ああ、分かった。やってやろう!」

 

 そんなの、受けてやらなきゃ失礼じゃないか。

 

 俺は篭手を創り出し、その場に構えた。

 

 俺の答えに、勇儀は短く笑うと腰を落とし構えを取る。

 

勇儀「さあ行くぞ! 四天王奥義─────」

 

 

 ─────『三歩必殺』。

 

 

 勇儀が一歩踏み出すと、妖力が更に跳ね上がり地面がひび割れる。

 

 二歩目を踏み出すと、その妖力が全て拳に集まり空気が震える。

 

 そして三歩目。勇儀の姿が一瞬消えたかと思うと目の前に現れ、その膨大な妖力の拳を俺に打ち込んだ。

 

 バァアアアンッ! という轟音と共に辺りの空気が吹き飛んでいく。周りの木々は揺れ、地面は割れる。

 

 そして砂埃が晴れると、そこには氷の篭手が砕けボロボロになった俺と、腕の肉が裂け、血に濡れた勇儀が立っていた。

 

雪「勇儀⋯⋯耐えて、やったぞ」

 

勇儀「⋯⋯ああ、そうみたいだね」

 

 勇儀はそう答えるとドサリと後ろに倒れた。俺も疲弊からその場に座り込む。

 

勇儀「ああ⋯⋯久し振りに、負けた気がするよ」

 

雪「萃香と同じ様な事を言うんだな」

 

勇儀「鬼の四天王、なんて呼ばれるくらい強くなっちまったからねえ。まともに戦える相手が少ないんだよ」

 

雪「そうか」

 

 俺は立ち上がり、勇儀に手を差し伸べる。勇儀はその手を取って立ち上がると腕を掴んで周りに見せ付ける様に上げさせた。

 

勇儀「お前たち! コイツは私達から真っ正面から戦っていた勝利した! 雪はもう私達の友人だ、良いかい!」

 

 勇儀がそう叫ぶと周りの鬼は大きな歓声を上げた。そして俺の周りに集まる者。何故か酒やら何やらを集める者と騒がしくなる。

 

勇儀「雪。アンタ、酒はイケるかい?」

 

雪「まあ、多少は」

 

勇儀「よしっ! なら上等な酒を用意してもらおう! 今日は宴会だ!」

 

 そう言って勇儀は宴会の準備をしている鬼達に混じった。

 

 ⋯⋯今日は夜遅くまで起きる事になりそうだな。

 

雪「⋯⋯まあ、たまには悪くないか」

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