東方 白狐伝   作:蛸夜鬼の分身

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第十話 元部下との戦い

依姫「まさか、まだ生き残りがいたとは⋯⋯」

 

勇也「うへぇ⋯⋯俺知ってんだぜ? こういう時に現れる敵ってのは変に強いんだよ」

 

明理「それはゲームでの話でしょ? まあ、先程の攻撃を見る限り只者じゃないのは分かるけど⋯⋯」

 

 ⋯⋯何とか、俺だとバレずに済んでいるか。

 

 俺は変化の術で自分の姿を変え、狐火と幻術で攻撃を火球と火柱だと誤認させた。先程の火球は狐火。それもかなり小さなものだ。火柱も幻術で太く見せ掛けただけで、実際はかなり細い。

 

 今回俺の能力は使えないからな。コイツらにバレてしまえば色々と面倒だからだ。

 

依姫「貴方は? あの妖怪を逃がした所を見ると、妖怪の味方と考えても?」

 

雪「そう考えてもらって構わない。まあ、俺はアイツらを止めに来ただけだがな。その必要は無かったが⋯⋯」

 

 まさか三人で百近くいる妖怪共を倒しきるとは思っていなかった。コイツらも成長したのか。

 

雪「さて、俺の目的は完遂した。このまま何もしないから逃がしてくれ⋯⋯と、言っても無理なんだろう?」

 

依姫「ええ。貴方からは今回の襲撃の目的などを洗いざらい吐いてもらいます」

 

勇也「ま、そういうこった」

 

明理「ここで素直に投降してくれれば悪い様にはしませんが?」

 

 三人は逃がさないとばかりに俺を囲む。どうやら獲物は変わっていないのか、依姫は刀、勇也は散弾銃、明理はライフルを持っている。

 

 だが依姫の刀から何か神聖な力を感じる。あれが昔、噂に聞いていた祇園様の剣と呼ばれる刀か?

 

 ⋯⋯しかし、懐かしいな。俺が部隊にいた頃もこうやって三人一度に特訓してやったものだ。

 

雪「今回は実戦形式だがな⋯⋯」

 

依姫「何をブツブツと喋っているのですか?」

 

雪「いや、何もないさ⋯⋯さあ、来るなら来い」

 

 俺が狐火を浮かべると、三人は武器を構えた。

 

依姫「二人とも、今まで通りに!」

 

勇也「あいよ!」

 

明理「了解!」

 

 依姫の言葉を合図に二人も動き出す。恐らく勇也が特攻。依姫がその隙を攻撃。明理が狙撃で援護、と言った所だろうか。

 

 ならまずは手数を減らす。俺は明理に向かって狐火を放射した。

 

明理「無駄ですっ!」

 

 明理は能力で障壁を張る。火炎放射はその障壁によって防がれる。

 

 だが、そんなことは既に分かっているさ。

 

明理「消えた⋯⋯!?」

 

 火炎放射を目眩ましにして、俺は幻術を使って視界から消える。

 

 そして明理の後ろに回ると障壁を破る為に勢いよくそれを殴り付ける。

 

雪「っ!」

 

 だが、破る事は出来ず俺の拳は障壁によって防がれた。

 

勇也「喰らえっ!」

 

雪「チッ!」

 

 俺は勇也の散弾銃を避ける為に明理から離れる。勇也が撃った散弾は地面やらに接触すると爆発を起こした。

 

雪「⋯⋯以前よりも強いな」

 

 勇也の爆発も明理の障壁も、俺が覚えているものより強力になっている。

 

依姫「祇園様!」

 

雪「っ!」

 

 二人を警戒していると依姫が刀を地面に突き刺す。すると俺の周りに無数の刃が現れた。

 

雪「これは⋯⋯」

 

依姫「下手に動くと祇園様の怒りに触れますよ」

 

 祇園様⋯⋯牛頭天王こと須佐之男命(すさのおのみこと)だったか。依姫の言葉から察するに、動いたらこの刃でも飛んでくるんだろう。

 

雪「仕方ないな⋯⋯」

 

 俺はパチンッと指を鳴らす。すると周りの時間は凍り付き、動く者は俺だけとなる。

 

 その間に刃の中心から抜け出し、一番厄介そうな依姫と近付く。

 

 ⋯⋯時間だ。凍り付いていた時は解かれ、また動き出す。

 

依姫「⋯⋯っ!? な、何でっ!?」

 

 依姫の目には突然俺が現れたかの様に見えただろう。俺は依姫へと拳を突き出した。

 

依姫「くっ⋯⋯!」

 

明理「依姫さん!」

 

 だがそれは明理のスナイプによって妨害される。すると依姫が俺が拳を引く隙を狙って刀を振るう。何とか避けた俺は一度三人からある程度離れ、指先に霊力を集中する。

 

雪「マスタースパーク!」

 

 そして霊力を巨大な光線として発射。三人に向かってマスタースパークを放った。勿論、気絶する程度まで威力は落としてある。

 

依姫「石凝姥命(いしこりどめのみこと)!」

 

 すると依姫は神降ろしで黒髪の女神を呼び出す。その女神の手には一枚の鏡があった。

 

 マスタースパークは依姫達へと迫るが、三人の前に立っていた女神の鏡へと当たる。その次の瞬間

 

雪「何っ!?」

 

 キィンッ! という音と共に、俺のマスタースパークは反射された。

 

 突然の事に驚きながらも、反射された。マスタースパークを避ける。

 

 確かあの神の名は石凝姥命だったか。神々の三種の神器の一つ、八咫鏡(やたのかがみ)を製造した事で知られる鋳物(いもの)や金属加工の神とされている。

 

 つまりあの鏡は八咫鏡か。まさか光線を反射する能力を持っているとはな。

 

勇也「余所見してて良いのか、オッサン!」

 

雪「くっ!」

 

 するといつの間にか接近していた勇也が散弾銃を放つ。俺は狐火の壁で散弾を防ぎ、更にその狐火を飛ばした。

 

勇也「おっと! 今だぜ依姫!」

 

依姫「火雷神(ほのいかずちのかみ)!」

 

雪「っ!?」

 

 依姫の言葉と共に突如雨が降り、俺の立っていた場所に雷が落ちる。更にその雷は七頭の炎の龍となって俺に襲い掛かった。

 

雪「クソっ! やむを得ん!」

 

 俺は龍を巨大な水の刃を創り出すと龍へと放ってその首を飛ばす。更にその首を氷で包みぶつかり合わせて粉々に砕いた。

 

 首を失った炎の竜はその巨体を地面に倒すと四散して消滅する。

 

依姫「そんなっ!?」

 

雪「ふぅっ⋯⋯ふぅっ⋯⋯何て力だ」

 

 先程のは火雷神。神話では伊邪那美命(いざなみのみこと)の身体から生まれ、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)を追った七兄弟の神だったか⋯⋯。

 

 しかし、やむを得なかったとはいえ能力を使ってしまった。三人にバレないといいが⋯⋯。

 

依姫「⋯⋯二人とも、逃げてください」

 

 バレないか冷や冷やしていると、依姫が思いもよらない言葉を放つ。それを聞いた二人は目を見開いた。

 

依姫「奴は予想以上の腕前の持ち主です。奴の考えが変われば殺されるかもしれない⋯⋯もし死ぬなら、私だけで十分です」

 

勇也「なっ、馬鹿野郎っ! 隊長みてぇな事言ってんじゃねえぞ!」

 

明理「そうですよ! 三人で戦えばきっと⋯⋯」

 

依姫「二人には“子供”がいるでしょう!?」

 

二人「「っ!」」

 

雪「何っ!?」

 

 こ、子供だと!? この二人、そんな関係だったのか。確かにお揃いの指輪をしているなとは思っていたが⋯⋯。

 

 祝ってやりたいが、それは自分の正体を明かす事になる。だが部下二人が結ばれているのにそれを祝わない訳にも⋯⋯どうするか。

 

月読「何を悩んでおる?」

 

雪「っ!」

 

 すると後ろから突然として声を掛けられる。振り向くとそこには月の神、月読が立っていた。

 

依姫「月読様っ!?」

 

月読「おお、三人とも。励んでいるか?」

 

 月読は驚いてる三人へと軽く言葉を掛ける。そして俺へと向くと

 

月読「まさか生きておったとはな」

 

 そう、懐かしむ様な声色で声を掛けてきた。

 

雪「⋯⋯正体を知ってるのか」

 

月読「これでも私は神だぞ? お前の不完全な幻術など簡単に見破れる」

 

雪「むう⋯⋯」

 

月読「それに、姉からお前が生きていると聞いたからな。まさかあの妖怪の大群に加え、核弾頭から生き延びたとは思っていなかったが⋯⋯」

 

 月読の姉⋯⋯天照か。確かに諏訪大戦の時代に会ったな。

 

雪「まあ、そう考えるのが妥当だろうな」

 

 月読と話していると、警戒しているのか武器を構えた三人が近付いてくる。

 

依姫「月読様⋯⋯彼は一体?」

 

月読「ふむ。お前達が一番知っていると思うのだがな」

 

勇也「ええ? 俺達、こんな奴知らないんスけど⋯⋯」

 

明理「私もです」

 

 一瞬だが能力を見せたのにまだ気付かないのか。戦闘で興奮しているからなのか、単純に忘れているからなのか⋯⋯。

 

月読「⋯⋯だそうだ。正体を明かしたらどうだ?」

 

雪「はぁ⋯⋯まあ、俺も戦いたくは無かったからな」

 

 俺はため息を吐くと変化の術を解く。ボフンッと音を立てて煙が撒き散らされ、三人の目から俺の姿が消える。

 

依姫「なっ、煙幕っ!?」

 

月読「落ち着け。これは煙幕ではない」

 

 突然の煙に慌てる三人を月読が宥める。そして煙が晴れてくると、三人は目を見開いた。

 

依姫「なっ⋯⋯」

 

勇也「おい、二人とも⋯⋯俺達、夢見てねえよな?」

 

明理「嘘、そんな⋯⋯」

 

雪「久しぶりだな、お前ら」

 

 俺は戦う前に小さく呟いた言葉を、今度は真っ正面から三人に言う。

 

勇也「な、なあ月読様。この人⋯⋯本物の隊長っスか?」

 

月読「正真正銘、本物の雪だ。私が保障しよう」

 

 月読の言葉を聞いた三人は少しずつ俺へと近付く。そしてある程度まで近付いてくると

 

三人「「「隊長ー!!」」」

 

雪「うおっ!?」

 

 一斉に飛び付いてきた。俺は三人を受け止めきれず、後ろへと倒れる。

 

依姫「隊長、無事だったんですね! 本当に、本当によかったです!」

 

勇也「アンタが死んだと思って何日後悔してたと思ってたんスか!! 明理なんか仕事休んで家に引き篭もりがちになって⋯⋯」

 

明理「ちょっ、勇也は黙ってて!」

 

雪「お前ら⋯⋯一旦離れろ、重い」

 

 そう言うと三人は少し恥ずかしげに俺から離れる。三人に退いてもらった俺は服に付いた砂を払って立ち上がった。

 

雪「ったく⋯⋯お前らは子供じゃないんだ。大人が子供みたいに飛び付いてどうする」

 

依姫「す、すいません⋯⋯」

 

明理「申し訳ないです⋯⋯」

 

勇也「いや~、そんくらい嬉しかったんスよ。しょうがないじゃないっスか!」

 

雪「相変わらず減らず口が直らないな、勇也。あと男に抱き付かれて喜ぶ男がどこにいる」

 

勇也「ウッ⋯⋯」

 

 俺と勇也のやり取りに依姫と明理がクスクスと笑う。

 

月読「雪、久々の再会で嬉しいのは分かるが何か用があるのではないか?」

 

 すると蚊帳の外だった月読が話しかけてきた。

 

雪「ん、ああ。実はな⋯⋯」

 

 俺は四人に、友人を助ける為に封印の媒体を探している事を簡単に説明する。妖怪が攻めてきたのも、その首謀者である紫が媒体を奪う為だった事も。

 

月読「成る程⋯⋯用件は分かった。私の家に何かないか探してみよう。その間、お前達は数億年振りの再会を楽しむといい」

 

 そう言った月読は、能力か何かでその姿を消す。

 

雪「⋯⋯だそうだ。少しの間だが、今までの間にお前達にどんな事があったのか聞かせてくれないか? 俺も話したい事は色々あるからな」

 

依姫「勿論です。ただ、その前に⋯⋯」

 

 依姫は二人に目配せをして、それを見た二人は頷いて俺を見る。そして

 

三人「「「隊長、お帰りなさい!」」」

 

 そう、嬉しそうな声色で言ってきた。

 

雪「⋯⋯ああ、ただいま」

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