東方 白狐伝   作:蛸夜鬼の分身

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陸章 紅月血鬼の巻
第一話 異国での出会い


雪「っ⋯⋯油断したか」

 

 俺は、満月の光が照らす薄暗い森の中で木にもたれ掛かっていた。俺の右足には大きく抉られた傷がある。

 

 西行妖の事件から約百年。これといった問題にも出会わず、日本を何周と歩いた俺は紫に異国へ飛ばしてくれる様に頼み込んだ。元々日本を一周した時には考えていたんだがな。

 

 紫は最初は嫌がっていたが、俺が折れないと分かると渋々ながら俺を異国へと送り、もしもの為にと幻想郷にある紫の家に飛べるリボンを渡してくれた。

 

 その後、人目に付かない程度にこの国を散策していたんだが⋯⋯その夜、恐らく吸血鬼であろう敵に襲われ、何とか撃退したが足を怪我して動けなくなった⋯⋯というのが今までの経緯だ。

 

 アイシングで何とか止血したものの、痛みで歩く事も適わない。歩ける様になるまで二日は掛かるだろう。

 

雪「一日目で帰る、というのもな⋯⋯」

 

 それに帰ったとしたら紫に怒られるのがオチだろうな。それは避けたいものだが⋯⋯。

 

 すると、月が煌々と光っていた筈の明るい空が突如として暗くなる。見上げると、そこには蝙蝠の様な翼を生やした幼い少女が浮いていた。

 

少女「あら珍しい、赤眼白毛の狐が怪我をしているわ。大方、魔物にでもやられたのかしら」

 

雪「⋯⋯誰だ」

 

少女「私? 私は『レミリア・スカーレット』。高潔なる吸血鬼の一族、スカーレット家の現当主よ」

 

 吸血鬼⋯⋯まさか先の吸血鬼の仲間か? いや、それだったら既に襲い掛かっている筈だが⋯⋯。

 

レミリア「さあ、私は名乗ったわよ。貴方の名は何て言うのかしら?」

 

雪「⋯⋯俺は狐塚 雪⋯⋯いや、ユキ・コヅカ、だな」

 

レミリア「へえ、ユキねぇ。その服装、もしや極東の地の者かしら?」

 

雪「そうなるな⋯⋯で、その高潔なる吸血鬼とやらが俺に何の用だ? 動けないのを良いことに血でも吸っていくのか?」

 

レミリア「いいえ、人間の血以外は好まないわ。私は貴方に提案をしに来たの」

 

雪「提案?」

 

 レミリアは俺の言葉に頷く。

 

レミリア「実は、私の両親や従者達がとある理由で亡くなったのよ。そのせいで館は私と、今では唯一の肉親の妹だけ⋯⋯」

 

 レミリアは悲しげな表情で言葉を紡ぐ。

 

 ⋯⋯両親と従者が亡くなった、だと? それでも当主として動いているのか。まだこんなにも幼いのに。

 

レミリア「妹は事情があって館から出せない。だから私が人間を攫ったりしているけど、それも限界があるわ。そこで貴方よ」

 

 レミリアは降りてくると、膝を付いて俺の目線と合わせる。

 

レミリア「⋯⋯私、貴様の事が気に入ったわ。どう、私の従者にならない?」

 

 ⋯⋯レミリアの従者、か。承諾すれば、恐らく不便はしないと思われる。見た目は幼いが、主としての能力は持っているのだろう。

 

雪「⋯⋯百年だ」

 

レミリア「えっ?」

 

雪「俺の帰りが長引けば心配する者が多々いる。ソイツらを待たせる訳にもいかない。百年、お前の下につこう」

 

レミリア「フフッ⋯⋯十分よ」

 

雪「なら、契約成立だな」

 

 俺はレミリアが差し伸べた手を握る。百年程度なら妖怪だったり不老不死だったりするアイツらにとってはすぐだろう。

 

レミリア「それじゃ、早速私の館に招待するわ」

 

雪「おい、俺は足を「主従関係よ、ユキ」⋯⋯ご主人、俺は足を怪我しているのですが?」

 

レミリア「空は飛べないの?」

 

雪「⋯⋯その手があったか」

 

 俺は手足に氷を纏わせて宙に浮くと、前を行くレミリアに着いていく。

 

 暫くすると目の前にチカチカする程真っ赤な館が現れる。そしてレミリアは俺の方に振り向くと

 

レミリア「ようこそ紅魔館へ。ユキ、貴方を歓迎するわ」

 

 美しい満月を背に、俺を迎え入れた。

 

 そして今日から百年、レミリアに仕える従者として俺は過ごす事となった。

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