東方 白狐伝   作:蛸夜鬼の分身

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第二話 孤独月の少女

 あの日、レミリアに仕えてから暫く経った。仕えてから数日は怪我の療養に専念し、完治してからは執事服を着ての生活だ。

 

 深夜に起き、レミリアを起こす時間まで紅魔館の掃除と夜食の準備。時間になったら彼女を起こし、夜食を摂らせる。

 

 その後は掃除仕切れなかった場所を掃除したり庭の手入れや町に出て食べ物を買う。他にも湯浴みの準備だったり朝食、昼食の準備もする。

 

 最初は中々慣れずレミリアに文句を言われたりしたが、数日もすれば慣れるものだ。

 

 しかし不思議な事が何個かある。この館には大きな図書館があるのだが、その奥に地下へ向かう階段が存在する。その奥には行かない様にと言われていて、先へ進んだ事もない。

 

 それにレミリアと出会った時に言っていた妹、とやらも見当たらない。食事の場に出てこないんだ。だが二人分作った食事は綺麗に無くなっているし、恐らく食べてはいるんだろうが⋯⋯。

 

雪「⋯⋯行ってみるか」

 

 俺はレミリアからの言いつけを破り、地下へ行ってみる事にした。

 

~白狐移動中~

 

雪「これは⋯⋯」

 

 地下への階段を降り、先に進んだ先に見えた物は『フランの部屋』と書かれた壁掛けが掛かった鉄の扉だった。

 

 辺りの空気は重々しい。それに今まで何度か体感したことがある⋯⋯死の空気、とでも言うものが充満していた。

 

雪「⋯⋯」

 

 俺は意を決して重い扉を開ける。中は飾り気のない暗い部屋で床には縫いぐるみや人形が、そして部屋の奥には大きなベッドが置かれている。

 

 ただ、壁や床の一部は壊れ、何個かの縫いぐるみ等もボロボロになっている。

 

?「貴方、だあれ?」

 

雪「っ!?」

 

 すると、突然として後ろから声を掛けられる。咄嗟に飛び退き振り返ると、そこには金髪のサイドテールの少女がいた。背中には八個の宝石の様な物がぶら下がった翼に似たものが生えている。

 

 まさか、この少女がレミリアの妹か?

 

雪「⋯⋯初めまして。俺はレミリア様に仕えている執事のユキ・コヅカと言います」

 

?「アイツの⋯⋯? ユキって言うの?」

 

雪「ええ。貴女のお名前を聞いても?」

 

?「⋯⋯フラン。『フランドール・スカーレット』」

 

 やはりこの少女がレミリアの妹か。だが何故こんな地下の部屋に?

 

フラン「ねえ、ユキは何で私の所に来たの?」

 

雪「ただの成り行きですよ。館の掃除をしていたら偶然、この部屋に辿り着いたのです」

 

フラン「そう」

 

 フランドールは素っ気なく答えるとスタスタと俺から離れる。そして次の瞬間、俺に向かって魔法弾を撃ち込んできた。

 

雪「っ!? 急に何を!?」

 

フラン「⋯⋯私ね? 数百年も前からずうっとこの部屋に閉じ込められてたの。私は生まれつき精神が不安定で、能力も危険だからって」

 

 精神が不安定⋯⋯情緒不安定というものだろうか?

 

フラン「私だって⋯⋯私だってみんなと一緒に遊びたいのに! お父様も、お母様も、お姉様も! みんな私から遠ざかるの! 誰も私を愛してくれないの、誰も!」

 

 フランドールは涙を流しながらそう叫ぶ。

 

 子供は親や兄弟からの愛情を受けて育つ。それなのに地下に監禁され、ほぼ誰とも会うこともない生活をしていれば、それは不安定な精神を更に悪化させる事になるのではないか? それを知らずにレミリア達はフランドールを?

 

フラン「⋯⋯でも、気付いたの。こんな悲しい想いをするなら─────」

 

 ─────みんな、いなくなっちゃえば良いんだって。

 

 そう言った瞬間、フランドールは先程とは比べ物にならないくらいの魔法弾を展開する。更にどこから持ってきたのか、グネグネと歪んだ棒を振るうとそれは炎の大剣となる。

 

フラン「ユキ、貴方にはコイン一個しかあげないわ。貴方がコンティニュー出来ないように!」

 

雪「チッ、やるしかないか!」

 

 フランドールは魔法弾を放ち、それと共に大剣を振りかぶりながら迫ってくる。俺は横に飛び魔法弾を避け、大剣を氷の籠手で防ぐ。

 

 っ⋯⋯近くにいるから分かるこの炎の熱量。もし擦りでもしたら傷どころか炭になるな。

 

雪「フッ!」

 

 俺は大剣を弾き、フランドールに殴りかかる。しかし流石は吸血鬼と言うべきか、俺の攻撃は容易く避けられてしまう。

 

フラン「フフッ、凄い凄ーい! 普通ならみんな動かなくなるのに!」

 

 フランドールは子供特有の無邪気な声を上げる。しかしその声にはどこか狂気を感じられた。

 

フラン「もっともっと遊びましょう? 貴方が壊れてしまうまで!」

 

雪「お断りだ!」

 

 クソッ、少女だからと手加減していたらこちらが殺される。それに能力も未知数だ。何があるか分からない。短期決戦で決めたいが⋯⋯。

 

フラン「アハハハハハ!!」

 

 フランドールからの攻撃が激しすぎる。乱暴な攻撃だがそれ故に次の行動が読めない。どうしたものか⋯⋯。

 

フラン「ユキ、避けてばっかじゃつまらないわ! もっと楽しみましょう!」

 

雪「殺し合いが楽しめる訳ないだろう!」

 

 俺は氷塊を創り出すとフランドールに投げつける。その隙に俺はとあるものを創り、こっそりとこの部屋から出す。

 

フラン「そう、それでいいの! 楽しんで楽しんで楽しんで楽しんで! 私が満足するまで壊レナイデ!」

 

雪「ぐぅっ!?」

 

 フランドールの声が段々と片言になるにつれ、攻撃が更に激しくなる。クソッ、アレ(・ ・)はまだなのか!?

 

フラン「アハハハ! 楽シイ、楽シイヨユキ! モットモット遊ビマショウ!」

 

雪「っ、ぐはっ!」

 

 攻撃を防いでいた俺だが、脇に重い魔法弾が当たってしまう。想像以上の衝撃を食らった俺は吹き飛ばされて壁に激突した。

 

フラン「マダ遊ベルデショ、ユキ? 今マデ遊ベナカッタ分、存分ニ遊ビマショウ!」

 

雪「⋯⋯成る程、そう言う事か」

 

 フランドールは数百年ほぼ誰とも会えず監禁されていた。まだ幼いフランドールにとってそれは何よりも悲しく、寂しい事だ。

 

 だから彼女は遊び相手を求めた。だが彼女が言っていた「みんないなくなればいい」という考えが邪魔して、かつて彼女と接触した者達はみんな殺してしまったのだろう。

 

 だから、今彼女に必要なのは遊び相手などではなく本当に愛情を向けられる者だ。だが俺はその役目は務められない。その役目を本当に果たせるのは⋯⋯

 

レミリア「フラン!!」

 

雪「やっと、来たか」

 

フラン「⋯⋯お姉、様?」

 

 フランドールの唯一の姉である、レミリアの他にいない。

 

 さて、ここが執念場だ。上手くいけば良いが⋯⋯。

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